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商標・地理的表示・意匠(15〜26条)しょうひょうちりてきひょうじいしょう

条約 第4章 TRIPS協定 短答で18枝

商標・地理的表示・意匠とは、TRIPS協定の第2部第2節から第4節が定める、商標の保護の対象・権利・例外・保護期間・使用の要件・使用許諾と譲渡(15〜21条)、地理的表示の保護とぶどう酒・蒸留酒の追加的保護(22〜24条)、意匠の保護の要件と内容・保護期間(25条・26条)の最低基準です。

日本の企業が外国で商標を取ろうとしたら、「実際に使ってからでないと出願できない」「登録は3年しか続かない」と言われたら困ります。TRIPS協定の第2部は、特許だけでなく商標・地理的表示・意匠についても、加盟国の法律がこれだけは備えるべきという最低基準を置きました。商標では識別力のある標識を登録でき、使用前でも出願でき、登録は7年以上で何回でも更新できること、地理的表示では公衆を誤認させる表示を止められること、意匠では新規性又は独創性のある意匠を少なくとも10年保護することが、その中身です。

特許庁の商標の窓口の場面。先生が窓口担当役(札「特許庁」)でカウンターの内側に座る。カウンターの外に出願人の男性(札「出願人」)が「商標登録願:音の商標」と書かれた書類と音符の描かれた紙を差し出し、吹き出し「目に見えない音でも登録できるので

15条は、識別することができる標識を商標として登録でき、視覚による認識可能性は条件とすることができ、実際の使用を出願の条件としてはならないと定めます

15条1は、ある事業に係る商品若しくはサービスを他の事業に係る商品若しくはサービスから識別することができる標識又はその組合せを商標とすることができるとし、単語、文字、数字、図形及び色の組合せとこれらの組合せを登録することができると定めます。標識自体によって識別できない場合には使用によって獲得された識別性を登録要件とすることができ、視覚によって認識することができるものであることを登録の条件とすることができます。いずれも「できる」規定なので、「使用によって獲得された識別性を商標の登録要件とすることができる」という枝は正しく、「標識を視覚によって認識することができることを登録の条件として要求しなければならない」という枝は誤りです(音や香りのような視覚で認識できない標識を登録するかどうかは各国に委ねられているからです。日本は平成26年改正で音の商標を認めました)。15条3は、使用を登録要件とすることができるが商標の実際の使用を登録出願の条件としてはならず、出願は意図された使用が出願日から3年の期間が満了する前に行われなかったことのみを理由として拒絶されてはならないと定めます。「商標の実際の使用を登録出願の条件としてはならない」という枝は正しく、「意図された使用が出願日から3年の期間が満了する前に行われなかったことのみを理由として拒絶されてはならない」という枝も正しいです。15条4は、商標が出願される商品又はサービスの性質はいかなる場合にもその商標の登録の妨げになってはならないと定め、「商標が出願される商品又はサービスの性質は、いかなる場合にも、その商標の登録の妨げになってはならない」という枝は正しいです。15条5は、登録の前又は登録後速やかに商標を公告し、登録を取り消すための請求の合理的な機会を与えることを義務とし、異議を申し立てる機会は与えることができるとします。

16条は、同一又は類似の標識の使用で混同を生じさせるおそれがある場合の排他的権利を与え、同一の商品について同一の標識を使用する場合に限り混同のおそれを推定します

16条1は、登録された商標の権利者に、承諾を得ていないすべての第三者が、登録に係る商品又はサービスと同一又は類似の商品又はサービスについて同一又は類似の標識を商業上使用することの結果として混同を生じさせるおそれがある場合に、その使用を防止する排他的権利を与えます。同一の商品又はサービスについて同一の標識を使用する場合には混同を生じさせるおそれがあると推定されますが、推定はこの場合だけなので、「類似の商品又はサービスについて類似の標識を使用する場合は、混同を生じさせるおそれがあると推定されなければならない」という枝は誤りです。この権利は既得権を害さず、加盟国が使用に基づいて権利を認める可能性にも影響しません。16条2はパリ条約6条の2(周知商標)をサービスに準用し、商標が広く認識されているかの判断では関連する公衆の有する知識(商標の普及の結果として獲得された知識を含む)を考慮します。16条3は、パリ条約6条の2を登録に係る商品又はサービスと類似していない商品又はサービスに準用し、その使用が「当該類似していない商品又はサービスと当該登録された商標の権利者との間の関連性を示唆し、かつ、当該権利者の利益が当該使用により害されるおそれがある場合に限る」という枝は正しいです。17条は、記述上の用語の公正な使用のような限定的な例外を、商標権者及び第三者の正当な利益を考慮することを条件として定めることができるとする任意規定なので、「記述上の用語の公正な使用に関して限定的な例外を定めなければならない」という枝は誤りです。

登録と更新は7年以上で何回でも更新でき、不使用による取消しは少なくとも3年間継続して使用しなかった後に限られ、正当な理由と管理下の他人の使用が考慮されます

18条は、商標の最初の登録及び登録の更新はそれぞれ7年以上の期間について効力を有し、何回でも更新することができると定めます。「商標の最初の登録及び登録の更新の存続期間は、少なくとも5年とする」という枝は誤りです(日本の商標法19条の10年は7年以上なので適合します)。19条1は、登録の維持のために使用が要件とされる場合、少なくとも3年間継続して使用しなかった後においてのみ登録を取り消すことができるとし、商標権者が使用に対する障害の存在に基づく正当な理由を示す場合は取り消せません。「少なくとも3年間継続して使用しなかった後においてのみ、取り消すことができる」という枝は正しく、3年の不使用で常に取り消されるという枝は誤りです。商標権者の意思にかかわりなく生じる状況で商標の使用に対する障害となるもの(輸入制限や商品についての政府の要件など)は正当な理由として認められるので、「商標の使用に対する障害となるものは、使用しなかったことの正当な理由として認められない」という枝は誤りです。19条2は、商標権者の管理の下にある他の者による使用を登録を維持するための使用と認めるので、管理の下にある他人の使用が「登録を維持するための商標の使用として認められない」という枝は誤りです。20条は、他の商標との併用、特殊な形式による使用、識別能力を損なわせる方法による使用のような特別な要件で商標の商業上の使用を不当に妨げてはならないと定めるので、「他の商標との併用、特殊な形式による使用又はある事業に係る商品若しくはサービスを他の事業に係る商品若しくはサービスと識別する能力を損なわせる方法による使用等特別な要件により不当に妨げられてはならない」という枝は正しいです。21条は、使用許諾と譲渡の条件を加盟国が定められるとしつつ、商標の強制使用許諾は認められないこと、登録された商標の権利者は商標が属する事業の移転が行われるかどうかを問わず商標を譲渡する権利を有することを了解事項とします。日本の商標法50条の不使用取消審判(3年)はこの19条に沿った制度です。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から札「商標の登録(7年以上、何回でも更新 18条)」「3年間継続して使用しない」「取り消すことができる(19条1)」の3本が立ち、3本
  • 登録の対象(15条)識別することができる標識です。使用による識別性と視覚による認識可能性は条件に「できる」で、実際の使用を出願の条件にはできません(3年)
  • 権利(16条)同一・類似の商品についての同一・類似の標識で混同のおそれがある場合に防止できます。同一の商品について同一の標識なら混同のおそれを推定します
  • 周知商標(16条2・3)パリ条約6条の2をサービスと、関連性の示唆と利益を害するおそれを条件に非類似の商品・サービスに準用します
  • 例外(17条)記述上の用語の公正な使用などの限定的な例外を定めることができます
  • 期間(18条)登録と更新は7年以上で、何回でも更新できます
  • 使用の要件(19条)取消しは少なくとも3年間の継続した不使用の後だけで、権利者の意思によらない障害は正当な理由、管理下の他人の使用は使用です
  • 使用許諾・譲渡(21条)強制使用許諾は認められず、事業の移転の有無を問わず譲渡できます

地理的表示は公衆を誤認させる使用を防止し誤認させる商標を拒絶・無効とし、ぶどう酒・蒸留酒は誤認の有無を問わず追加的に保護されます

22条1は地理的表示を、商品の確立した品質、社会的評価その他の特性が地理的原産地に主として帰せられる場合に、加盟国の領域又はその領域内の地域若しくは地方を原産地とするものであることを特定する表示と定義します。22条2は、公衆を誤認させるような方法で商品の原産地を表示する手段の使用と、パリ条約10条の2の不正競争行為となる使用を防止する法的手段を利害関係を有する当事者に確保することを求め、22条3は、表示された領域を原産地としない商品についての地理的表示を含む商標が真正の原産地について公衆を誤認させる場合に、職権により(国内法令により認められる場合に限る)又は利害関係を有する者の申立てにより登録を拒絶し又は無効とすることを求めます。一般の商品では誤認が要件なので、ぶどう酒・蒸留酒以外の地理的表示について「当該加盟国において真正の原産地について公衆を誤認させるか否かにかかわらず」拒絶し又は無効としなければならないという枝は誤りです。23条1は、ぶどう酒・蒸留酒について、真正の原産地が表示される場合、地理的表示が翻訳されて使用される場合、「種類」「型」「様式」「模造品」等の表現を伴う場合でも、その産地以外を原産地とするぶどう酒・蒸留酒への使用を防止する法的手段を確保させ、23条2は誤認の有無を問わずその商標を拒絶・無効とします。「ぶどう酒又は蒸留酒を特定する地理的表示が当該地理的表示によって表示されている場所を原産地としないぶどう酒又は蒸留酒に使用されることを防止するための法的手段を確保しなければならない」という枝は正しいです。24条7は、商標の使用又は登録に対するこの節に基づく申立てを、保護されている表示の不当な使用が一般的に知られるようになった日の後、又は登録の日がその日より早い場合には商標がその登録の日までに公告されていることを条件に登録の日の後、5年以内にしなければならないと定めることができるとし、悪意の使用・登録には適用しません。申立ては「当該登録の日の後5年以内にされなければならないことを定めることができる」という枝は正しいです。24条9は、原産国で保護されていない若しくは保護が終了した地理的表示、又は原産国で使用されなくなった地理的表示を保護する義務を負わないと定めるので、「原産国において保護されていない若しくは保護が終了した地理的表示又は当該原産国において使用されなくなった地理的表示を保護する義務を負わない」という枝は正しいです。日本の商標法4条1項17号は、ぶどう酒・蒸留酒の産地を表示する標章を含む商標をその産地以外の商品について不登録とする23条2の対応規定です。

ワインショップの店先の場面。先生が先生役(札「先生」)で店の前に立つ。店主の男性(札「店主」)が「シャンパン風 発泡ぶどう酒(原産地:X国)」と書かれたラベルの瓶を掲げ、吹き出し「真正の原産地も書いたし「風」と付けたから、誰も誤認しないはず

意匠は独自に創作された新規性又は独創性のある意匠を保護し、技術的・機能的な意匠の除外は定めることができ、複製の製造・販売・輸入を防止でき、保護期間は少なくとも10年です

25条1は、独自に創作された新規性又は独創性のある意匠の保護について定めることを加盟国に義務づけ、その上で、既知の意匠又は既知の意匠の主要な要素の組合せと著しく異なるものでない意匠を新規性又は独創性のある意匠でないものとすること、主として技術的又は機能的考慮により特定される意匠に保護が及ばないことを定めることができるとします。後の二つは任意なので、「当該意匠を新規性又は独創性のある意匠でないものとすることを定めることができる」という枝と、「主として技術的又は機能的考慮により特定される意匠については、独自に創作された新規性又は独創性のある意匠の保護が及んではならないことを定めることができる」という枝は正しいです。25条2は、繊維の意匠の保護を確保するための要件、特に費用、審査又は公告に関する要件が保護を求め又は取得する機会を不当に害さないことを各加盟国が確保すると定め、この義務は意匠法又は著作権法のいずれによって履行してもよいとします。「費用、審査又は公告に関する要件が保護を求め又は取得する機会を不当に害さないことを確保する」という枝は正しく、意匠法に限って履行させる規定ではありません。26条1は、保護されている意匠の権利者に、承諾を得ていない第三者が保護されている意匠の複製又は実質的に複製である意匠を用いており又は含んでいる製品を商業上の目的で製造し、販売し又は輸入することを防止する権利を与えます。特許の28条1と違って販売の申出は列挙にないので、意匠の権利者が「商業上の目的で販売の申出をすることを防止する権利を有することは規定されていない」という枝は正しいです。26条2は、第三者の正当な利益を考慮し、通常の実施を不当に妨げず権利者の正当な利益を不当に害さない限定的な例外を定めることができるとし、26条3は保護期間を少なくとも10年とします。意匠の節には、創作地による差別の禁止、公序良俗による除外、取消しに対する司法上の審査の規定が無く、特許の節との違いとして問われます。日本の意匠法21条の存続期間は出願の日から25年で、26条3に適合します。

特許庁の意匠の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、「布地の意匠」と書かれた模様入りの布の見本を数枚広げている。向かいに繊維メーカーの担当者の男性(札「出願人(繊維メーカー)」)が立ち、吹き出し「布の模様は季節ごとに何百も
  • 保護の要件(25条1)独自に創作された新規性又は独創性のある意匠を保護します。既知の意匠と著しく異ならない意匠の除外と技術的・機能的な意匠の除外は「定めることができる」です
  • 繊維の意匠(25条2)費用・審査・公告の要件が保護の機会を不当に害さないことを確保し、意匠法か著作権法で履行できます
  • 権利(26条1)複製又は実質的に複製である意匠を用いた製品の商業上の目的での製造・販売・輸入を防止します。販売の申出は入りません
  • 例外・期間(26条2・3)特許の30条と同じ構造の限定的な例外を定めることができ、保護期間は少なくとも10年です
TRIPS協定15条1

ある事業に係る商品若しくはサービスを他の事業に係る商品若しくはサービスから識別することができる標識又はその組合せは,商標とすることができるものとする。その標識,特に単語(人名を含む。),文字,数字,図形及び色の組合せ並びにこれらの標識の組合せは,商標として登録することができるものとする。標識自体によっては関連する商品又はサービスを識別することができない場合には,加盟国は,使用によって獲得された識別性を商標の登録要件とすることができる。加盟国は,標識を視覚によって認識することができることを登録の条件として要求することができる。

TRIPS協定19条1

登録を維持するために使用が要件とされる場合には,登録は,少なくとも3年間継続して使用しなかった後においてのみ,取り消すことができる。ただし,商標権者が,その使用に対する障害の存在に基づく正当な理由を示す場合は,この限りでない。商標権者の意思にかかわりなく生じる状況であって,商標によって保護されている商品又はサービスについての輸入制限又は政府の課する他の要件等商標の使用に対する障害となるものは,使用しなかったことの正当な理由として認められる。

TRIPS協定23条1

加盟国は,利害関係を有する者に対し,真正の原産地が表示される場合又は地理的表示が翻訳された上で使用される場合若しくは「種類(kind)」,「型(type)」,「様式(style)」,「模造品(imitation)」等の表現を伴う場合においても,ぶどう酒又は蒸留酒を特定する地理的表示が当該地理的表示によって表示されている場所を原産地としないぶどう酒又は蒸留酒に使用されることを防止するための法的手段を確保する。(注)
(注)
加盟国は,これらの法的手段を確保する義務に関し,第42条第1段の規定にかかわらず,民事上の司法手続に代えて行政上の措置による実施を確保することができる。

TRIPS協定26条3

保護期間は,少なくとも10年とする。

試験ではこう問われる

  1. 視覚による認識可能性を登録の条件と「することができる」。「要求しなければならない」という枝は誤り。使用による識別性を登録要件にできる(15条1)
  2. 使用を登録要件にできるが「商標の実際の使用を登録出願の条件としてはならない」。意図された使用が出願日から3年の満了前にされないことのみを理由に拒絶できない(15条3)。商品・サービスの性質は登録の妨げにならない(15条4)
  3. 混同のおそれの推定は「同一の商品について同一の標識」の場合だけ。類似まで推定という枝は誤り(16条1)。パリ6条の2の準用は関連性の示唆と利益を害するおそれが条件(16条3)
  4. 17条の限定的な例外は「定めることができる」。「定めなければならない」という枝は誤り。登録と更新は7年以上で何回でも更新(18条)。5年という枝は誤り
  5. 不使用取消しは「少なくとも3年間継続して使用しなかった後においてのみ」。輸入制限など権利者の意思によらない障害は正当な理由、管理下の他人の使用は使用(19条)
  6. 地理的表示を含む商標の拒絶・無効は公衆を誤認させる場合(22条3)。ぶどう酒・蒸留酒は真正の原産地の表示・翻訳・「種類」「型」等を伴っても防止し、誤認を問わず拒絶・無効(23条)
  7. 申立ては一般に知られた日又は登録の日から5年以内と定めることができる(24条7)。原産国で保護されない・使用されなくなった表示は保護義務なし(24条9)
  8. 意匠は技術的・機能的な意匠の除外を「定めることができる」。「定めなければならない」という枝は誤り。繊維の意匠は意匠法又は著作権法で履行できる。権利は製造・販売・輸入(販売の申出なし)、期間は少なくとも10年(15年は誤り)

この用語が問われた枝

令和元年度 問49 枝イ誤り

加盟国は、標識を視覚によって認識することができることを登録の条件として要求しなければならない。

令和4年度 問50 枝ハ正しい

加盟国は、商標の実際の使用を登録出願の条件としてはならない。

平成30年度 問50 枝イ正しい

商標の出願は、意図された使用が出願日から3年の期間が満了する前に行われなかったことのみを理由として拒絶されてはならない。

平成28年度 問49 枝イ正しい

商標が出願される商品又はサービスの性質は、いかなる場合にも、その商標の登録の妨げになってはならない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

条約を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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