周知商標・国の紋章等・代理人による登録(6条の2・6条の3・6条の7)しゅうちしょうひょうくにのもんしょうとうだいりにんによるとうろく
周知商標・国の紋章等・代理人による登録とは、パリ条約が同盟国に約束させている三つの商標の拒絶・無効・使用禁止の仕組みで、他人の周知商標の複製・模倣・翻訳で混同を生じさせやすい商標(6条の2)、国の紋章・旗章・記章や監督用・証明用の公の記号・印章、政府間国際機関の記章等(6条の3)、商標権者の許諾を得ない代理人・代表者の自己名義の登録(6条の7)を対象にします。日本の商標法4条1項1号〜3号・5号・10号・19号と53条の2がこれを受けています。
外国で広く知られている商標を、その国で登録していないことに目を付けて先に出願する人がいます。国旗や国際機関の記章を商標に取り込む人もいますし、海外メーカーの日本の代理店が、メーカーに無断で自分の名義で商標を登録してしまうこともあります。商標は登録した国でしか守られないのが原則なので、こうした場面では登録していない本当の持ち主が負けてしまいます。パリ条約の6条の2、6条の3、6条の7は、この三つの場面について、同盟国が登録を拒絶・無効にし、使用を禁止することを約束させています。

同盟国は、周知商標の複製である商標や、混同を生じさせやすい模倣・翻訳である商標の登録を拒絶・無効とし、使用を禁止することを約束します
6条の2(1)は、一の商標が、この条約の利益を受ける者の商標としてかつ同一若しくは類似の商品について使用されているものとしてその同盟国において広く認識されているとその権限のある当局が認める他の一の商標の複製である場合、又はその他の一の商標と混同を生じさせやすい模倣若しくは翻訳である場合には、同盟国の法令が許すときは職権をもって、又は利害関係人の請求により、その登録を拒絶し又は無効とし、及びその使用を禁止することを同盟国に約束させています。周知であるかどうかはその同盟国の権限のある当局が認め、登録の有無は問いません。「職権をもって、又は利害関係人の請求によって、当該一の商標の登録を拒絶し又は無効とし、及びその使用を禁止することを約束する」という枝は正しいです。同項の後段は、商標の要部が周知商標の複製である場合又は混同を生じさせやすい模倣である場合も同様とします。要部について挙げられているのは複製と模倣だけで、翻訳は書かれていません。商標の要部が周知商標の「翻訳である場合」に拒絶等を約束するという枝は誤りです。商標イが同盟国Xで広く認識され、商標ロの要部がイの複製である事例で、「X国は、利害関係人の請求によりロの登録を無効とする、という義務を負っているわけではない」という枝は誤りです。日本の商標法4条1項10号は未登録の周知商標と、19号は外国の周知商標の不正の目的の使用をこの規定を受けて不登録事由にしています。
- 対象となる周知商標この条約の利益を受ける者の商標で、同一若しくは類似の商品について使用され、その同盟国で広く認識されていると権限のある当局が認めるものです。登録は要りません
- 拒絶等の対象周知商標の複製、混同を生じさせやすい模倣又は翻訳です。要部については複製と混同を生じさせやすい模倣だけです
- 手続同盟国の法令が許すときは職権で、又は利害関係人の請求によります
- 効果登録の拒絶・無効と使用の禁止です
周知商標と抵触する登録の無効請求には登録の日から少なくとも5年の期間を認め、使用禁止の請求期間は国内法令に委ね、悪意なら期間を定めません
6条の2(2)は、周知商標と抵触する商標の登録を無効とすることの請求について、登録の日から少なくとも5年の期間を認めなければならないとし、使用の禁止を請求することができる期間は同盟国が定めることができるとします。(3)は、悪意で登録を受け又は使用された商標の登録を無効とし又は使用を禁止することの請求については期間を定めないものとします。5年の最低期間が義務づけられるのは無効の請求だけです。使用禁止の請求について「登録の日から少なくとも5年の期間を認めなければならない」という枝は誤りです。「悪意で登録を受け又は使用された商標の登録を無効とし又は使用を禁止することの請求については、期間を定めないものとする」という枝は正しいです。無効請求の期間を5年より長い7年とすること自体は(2)に反しませんが、悪意で登録された商標まで含めてすべての商標について期間を7年に限ると、悪意の場合に期間を定めないとする(3)に反します。日本の商標法47条1項は4条1項10号違反の無効審判に5年の除斥期間を置き、不正競争の目的で登録を受けた場合を除いています。

国の紋章・旗章・記章と監督用・証明用の公の記号・印章、政府間国際機関の記章等は商標として登録されず、記号・印章についてだけ同一・類似の商品の限定があります
6条の3(1)(a)は、同盟国の国の紋章、旗章その他の記章、同盟国が採用する監督用及び証明用の公の記号及び印章並びに紋章学上それらの模倣と認められるものについて、商標又はその構成部分としての登録を拒絶し又は無効とし、権限のある官庁の許可を受けない使用を適当な方法によって禁止すると定めます。国家の威信を守り、公の記号を私人に独占させないためです。対象に地方公共団体の記章は掲げられていないので、「地方公共団体の記章」を含めて拒絶・無効とするという枝は誤りです。(2)は、監督用及び証明用の公の記号及び印章の禁止に関する規定を、その記号又は印章を含む商標がその記号又は印章の用いられている商品と同一又は類似の商品について使用されるものである場合に限り適用するとします。限定が付くのは記号・印章だけで、紋章・旗章には付きません。「同一又は類似の商品について使用されるものである場合に限り、適用する」という枝は正しく、類似の商品について使用される場合には「適用されない」という枝は誤りです。(1)(b)は政府間国際機関の紋章、旗章その他の記章、略称及び名称にも同じ規定を適用しますが、(1)(c)により、使用者とその国際機関との間に関係があると公衆に誤って信じさせるようなものと認められない場合には適用を要しません。誤信させるものと「認められない場合であっても」禁止しなければならないという枝は誤りです。(3)は、国の記章と監督用・証明用の記号・印章の一覧表を国際事務局を通じて相互に通知することに同意するとし、国の旗章に関しては通知は義務的でないとします。「その通知は国の旗章に関しては義務的ではない」という枝は正しいです。(9)は、他の同盟国の国の紋章について、その使用が商品の原産地の誤認を生じさせるようなものである場合には、許可を受けない取引上の使用を禁止することを約束させます。日本の商標法4条1項1号〜3号・5号がこれらを受けています。

代理人又は代表者が許諾なく自己の名義で登録出願をしたときは、商標権者は異議・無効・移転を請求し使用を阻止できますが、正当な理由を明らかにしたときは除かれます
6条の7(1)は、同盟国において商標に係る権利を有する者の代理人又は代表者が、その者の許諾を得ないで、一又は二以上の同盟国においてその商標について自己の名義による登録の出願をした場合、その権利者は、登録異議の申立てをし、又は登録を無効とすること、若しくはその国の法令が認めるときは登録を自己に移転することを請求できると定めます。ただし、代理人又は代表者がその行為につきそれが正当であることを明らかにしたときはこの限りでありません。(2)は、権利者が許諾を得ない代理人又は代表者の商標の使用を阻止する権利を持つとし、(3)は、これらの権利を行使できる相当の期間を国内法令で定めることができるとします。信頼関係を利用した横取りを防ぎつつ、正当な理由がある代理人まで責めないための規定です。代理人又は代表者が「正当であることを明らかにしたときは、商標を使用することを阻止する権利を有しない」という枝は正しいです。日本では商標法53条の2の取消審判がこの規定に応えており、その審判は商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は請求できません(53条の3)。
パリ条約6条の2(1)に規定する商標の登録を無効とすることの請求については,登録の日から少なくとも5年の期間を認めなければならない。同盟国は,そのような商標の使用の禁止を請求することができる期間を定めることができる。悪意で登録を受け又は使用された商標の登録を無効とし又は使用を禁止することの請求については,期間を定めないものとする。
パリ条約6条の7同盟国において商標に係る権利を有する者の代理人又は代表者が,その商標に係る権利を有する者の許諾を得ないで,1又は2以上の同盟国においてその商標について自己の名義による登録の出願をした場合には,その商標に係る権利を有する者は,登録異議の申立てをし,又は登録を無効とすること若しくは,その国の法令が認めるときは,登録を自己に移転することを請求することができる。ただし,その代理人又は代表者がその行為につきそれが正当であることを明らかにしたときは,この限りでない。
試験ではこう問われる
- 周知商標の複製、混同を生じさせやすい模倣・翻訳は拒絶・無効・使用禁止。要部については複製と模倣だけで、要部が周知商標の「翻訳である場合」という枝は誤り
- 周知であるかは同盟国の権限のある当局が認め、登録の有無を問わない。法令が許すときは職権でもできる
- 無効の請求には登録の日から少なくとも5年。使用禁止の請求期間は国内法令に委ねるので、使用禁止について「少なくとも5年の期間を認めなければならない」という枝は誤り
- 悪意で登録・使用された商標の無効・使用禁止の請求には期間を定めない。悪意の場合も含めて期間を7年に限る法令は条約に違反する
- 国の紋章・旗章・記章、監督用・証明用の公の記号・印章が対象で、地方公共団体の記章は含まれない。同一・類似の商品の限定は記号・印章だけ
- 政府間国際機関の記章等は、関係があると公衆に誤信させるものでなければ適用を要しない。一覧表の通知は旗章については義務的でない
- 他の同盟国の国の紋章を原産地の誤認を生じさせるように取引で使うことは、許可が無ければ禁止する義務がある(6条の3(9))
- 代理人・代表者の無断の自己名義の出願には異議・無効・移転(法令が認めるとき)の請求と使用の阻止。正当であることを明らかにすれば除かれ、行使できる期間は国内法令で定められる
この用語が問われた枝
同盟国は、一の商標が、他の一の商標でこの条約の利益を受ける者の商標としてかつ同一若しくは類似の商品について使用されているものとしてその同盟国において広く認識されているとその権限のある当局が認めるものの複製である場合、その同盟国の法令が許すときは職権をもって、又は利害関係人の請求によって、当該一の商標の登録を拒絶し又は無効とし、及びその使用を禁止することを約束する。
同盟国は、一の商標の要部が、他の一の商標でこの条約の利益を受ける者の商標としてかつ同一若しくは類似の商品について使用されているものとしてその同盟国において広く認識されているとその権限のある当局が認めるものの翻訳である場合、その同盟国の法令が許すときは職権をもって、又は利害関係人の請求によって、当該一の商標の登録を拒絶し又は無効とし、及びその使用を禁止することを約束する。
悪意で登録を受け又は使用された商標の登録を無効とし又は使用を禁止することの請求については、期間を定めないものとする。
各同盟国は、パリ条約第6条の2(1)に規定するいわゆる周知商標の使用を禁止することの請求について、その商標の登録の日から少なくとも5年の期間を認めなければならない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。