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権利行使の一般的義務・民事手続・暫定措置(41〜50条)けんりこうしのいっぱんてきぎむみんじてつづきざんていそち

条約 第4章 TRIPS協定 短答で18枝

権利行使の一般的義務・民事手続・暫定措置とは、TRIPS協定の第3部第1節から第3節が、知的所有権の侵害に対して効果的な行使手続を確保する一般的義務(41条)、民事上の司法手続で当事者に保障する権利と司法当局に与える証拠提出命令・差止命令・損害賠償・廃棄・情報提供・濫用の賠償の権限(42〜49条)、侵害の防止と証拠の保全のための暫定措置の要件(50条)を加盟国に定めたものです。

外国で特許や商標を取れても、その国の裁判所が何年も動かなかったり、証拠が相手の手元にあって出させられなかったりすれば、権利は絵に描いた餅です。TRIPS協定は第3部で、権利を「持てる」だけでなく「使える」ことまで加盟国に求めました。41条が手続全体の一般的義務を置き、42条から49条までが民事の裁判で当事者に保障する権利と裁判所に持たせる権限を並べ、50条が本案の決定を待てない場面の暫定措置を定めます。ただし、どこまでが義務でどこからが「与えることができる」かが条ごとに違うので、そこが短答で問われます。

裁判所の受付の場面。先生が裁判所の書記官役(札「裁判所」)でカウンターの内側に座る。カウンターの外に外国企業の担当者の男性(札「権利者(加盟国Xの企業)」)が「訴状」と書かれた書類を抱えて立ち、吹き出し「この国で特許侵害を訴えたいのですが、

41条は、効果的な行使手続を確保し、公正かつ公平で遅延のない手続と、意見を述べる機会を与えられた証拠にのみ基づく本案の決定と、司法当局による審査の機会を求めますが、別個の司法制度を設ける義務は生じさせません

41条1は、協定が対象とする知的所有権の侵害行為に対し、侵害を防止する迅速な救済措置と追加の侵害を抑止する救済措置を含む効果的な行使手続を国内法で確保することを求め、その手続を正当な貿易の新たな障害となることを回避し、かつ、濫用に対する保障措置を提供するような態様で適用すると定めます。「正当な貿易の新たな障害となることを回避し、かつ、濫用に対する保障措置を提供するような態様で適用する」という枝は正しいです。41条2は、手続は公正かつ公平なものとし、不必要に複雑な又は費用を要するものであってはならず、不合理な期限を付され又は不当な遅延を伴うものであってはならないとします。41条3は、本案についての決定はできる限り書面により理由を示し、少なくとも手続の当事者が不当に遅滞することなく利用できるようにし、当事者が意見を述べる機会を与えられた証拠にのみ基づくと定めるので、「本案についての決定は、当事者が意見を述べる機会を与えられた証拠にのみ基づく」という枝は正しいです。41条4は、最終的な行政上の決定と、事件の重要性に関する国内法の管轄の規定に従うことを条件に、最初の司法上の決定の少なくとも法律面について司法当局による審査の機会を当事者に与えますが、刑事事件の無罪判決については義務を負わないので、「刑事事件の無罪判決に関し手続の当事者に司法当局による審査の機会を与える義務を負わない」という枝は正しいです。41条5は、第3部が一般的な法の執行のための司法制度とは別の知的所有権の執行のための司法制度を設ける義務を生じさせず、法の執行一般の能力にも資源配分にも影響しないと確認するので、「一般的な法の執行のための司法制度とは別の知的所有権に関する執行のための司法制度を設ける義務を生じさせるものである」という枝は誤りです。

42条・43条は、当事者に主張を裏付けること及びすべての関連する証拠を提出する権利を保障し、司法当局に相手方の証拠の提示を命ずる権限を与え、情報の提供を拒む当事者に対しては提供された情報に基づく決定の権限を与えることができます

42条は、権利者に民事上の司法手続を提供することを求め、被申立人は主張の根拠を含む十分に詳細な書面による通知を適時に受ける権利を有し、当事者は独立の弁護人を代理人とすることができ、義務的な出頭に関して過度に重い要件を課してはならず、すべての当事者はその主張を裏付けること及びすべての関連する証拠を提出することについて正当な権利を有し、手続は秘密の情報を特定し保護する手段を提供すると定めます。43条1は、一方の当事者がその主張を十分裏付ける合理的に入手可能な証拠を提出し、かつ、他方の当事者が有する主張の裏付けに関連する証拠を特定した場合に、司法当局が秘密の情報の保護を条件として他方の当事者にその証拠の提示を命ずる権限を有すると定めます。空欄補充では、42条が当事者の権利として「その主張を裏付けること及びすべての関連する証拠」の提出を、43条1が提示命令の要件として「その主張を十分裏付ける合理的に入手可能な証拠」の提出を定めると入れた枝が正しく、両者を逆にした枝は誤りです。43条2は、当事者が必要な情報の利用の機会を故意にかつ十分な理由なしに拒絶し、合理的な期間内に提供せず、又は手続を著しく妨げる場合に、双方の当事者が主張又は証拠について意見を述べる機会を与えられることを条件として、提供された情報に基づいて暫定的及び最終的な決定を行う権限を司法当局に与えることができるとします。「双方の当事者が主張又は証拠に関し意見を述べる機会を与えられることを条件として、提供された情報に基づいて、暫定的及び最終的な決定を行う権限を司法当局に与えることができる」という枝は正しいです。意見を述べる機会を与えられることが条件であり、権限の付与も「与えることができる」という任意の規定です。日本の特許法105条の書類提出命令と105条の2以下の査証は、43条の仕組みに対応します。

44条から48条までは、差止め、損害賠償、廃棄、情報提供、濫用の賠償の権限を司法当局に持たせますが、善意の取得者への差止め、善意侵害者への利益回復・法定損害賠償、第三者の通報は義務ではありません

44条1は、司法当局に侵害をやめることを命ずる権限(輸入物品が通関後直ちに流通経路に入ることの防止を含む)を与えますが、取引が侵害を伴うことを知る前又は知ることができる合理的な理由を有する前に取得され又は注文された保護対象については、その権限を与える義務を負いません。そこで善意で取得・注文された物に関して「知的所有権を侵害しないことを当該関係者に命じる権限を与える義務を負う」という枝は誤りです。44条2は、政府又は政府の許諾を受けた第三者による権利者の許諾のない使用(31条の場面)について、第2部の規定に従うことを条件に救済措置を31条(h)の報酬の支払に限定できるとするので、「当該使用に対する救済措置を、許諾の経済的価値を考慮し、特許権者に対する、個々の場合における状況に応じた適当な報酬の支払に限定することができる」という枝は正しいです。45条1は、侵害活動を行っていることを知っていたか又は知ることができる合理的な理由を有していた侵害者に対し、権利者が被った損害を補償するために適当な賠償を支払うよう命ずる権限を司法当局に与えます。45条2は、費用(適当な弁護人の費用を含むことができる)の支払を命ずる権限を与え、善意の侵害者に対する利益の回復又は法定の損害賠償の支払を命ずる権限は、適当な場合に与えることができるにとどめます。そこで善意の侵害者についても「利益の回復又は法定の損害賠償の支払を命ずる権限を司法当局に与える必要がある」という枝は誤りで、「いかなる弁護人の費用も含めて権利者に支払うよう命じる権限を与えてはならない」という枝も誤りです。46条は、侵害していると認めた物品を権利者に損害を与えない態様でいかなる補償もなく流通経路から排除し、又は憲法上の要請に反しない限り廃棄することと、主として侵害物品の生産に使用される材料及び道具を追加の侵害の危険を最小とする態様で補償なく排除することを命ずる権限を与え、侵害の重大さと救済措置の均衡と第三者の利益を考慮します。侵害物品を「権利者に損害を与えないような態様でいかなる補償もなく流通経路から排除し又は、現行の憲法上の要請に反しない限り、廃棄することを命ずる権限を有する必要がある」という枝は正しいです。不正商標商品については、違法に付された商標の単なる除去は例外的な場合を除き流通経路への流入を認めるのに十分でないので、「いかなる場合でも、違法に付された商標の単なる除去により流通経路への商品の流入を認めることができる」という枝は誤りです。47条は、侵害の重大さと均衡を失しない限度で、侵害者に第三者を特定する事項と流通経路を権利者に通報するよう命ずる権限を司法当局が有することを定めることができるとする任意規定なので、「侵害物品又は侵害サービスの流通経路を権利者に通報するよう命ずる権限を有する必要がある」という枝は誤りです。48条1は、申立てにより措置がとられ行使手続を濫用した当事者に対し、不法に要求又は制約を受けた当事者の損害の適当な賠償と費用の支払を命ずる権限を与えるので、「その濫用により不法に要求又は制約を受けた当事者が被った損害に対する適当な賠償を支払うよう命ずる権限を有する必要がある」という枝は正しいです。48条2は、公の機関と公務員の責任の免除を善意の行為に限り、49条は本案の行政手続にこの節と実質的に同等の原則を適用します。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で法壇に座り、左右に二つの札を立てている。左の札「義務(権限を与える):差止命令(44条1)/損害賠償と費用(45条)/補償なき排除・廃棄(46条)/濫用の賠償(48条)」、右の札「任意(与
  • 義務(権限を与える)差止命令(44条1)、知っていたか又は知り得た侵害者への損害賠償と費用(45条)、侵害物品と材料・道具の補償なき排除・廃棄(46条)、濫用した申立人への賠償と費用(48条1)です
  • 任意(与えることができる)情報の提供を拒む当事者に対する提供された情報に基づく決定(43条2)、善意侵害者への利益回復・法定損害賠償(45条2)、第三者と流通経路の通報(47条)です
  • 義務を負わない善意で取得・注文された物についての差止め(44条1)、刑事事件の無罪判決の審査(41条4)、別個の司法制度(41条5)です
  • 限定できる政府使用に対する救済を31条(h)の報酬に限定できます(44条2)

50条の暫定措置は、侵害の防止と証拠の保全を目的とし、回復できない損害のおそれ又は証拠破棄の明らかな危険があれば他方の当事者に意見を述べる機会を与えることなくとれますが、事後の通知と審査、担保、取消し時の賠償で均衡をとります

50条1は、司法当局に、(a) 侵害の発生を防止すること(輸入物品が通関後直ちに流通経路に入ることの防止を含む)と、(b) 申し立てられた侵害に関連する証拠を保全することを目的として、迅速かつ効果的な暫定措置を命ずる権限を与えるので、証拠を保全することを目的とした「迅速かつ効果的な暫定措置をとることを命じる権限を有しない」という枝は誤りです。50条2は、特に遅延により権利者に回復できない損害が生ずるおそれがある場合、又は証拠が破棄される明らかな危険がある場合には、他方の当事者に意見を述べる機会を与えることなく暫定措置をとる権限を司法当局に与えます。相手に知らせれば証拠を隠される場面を想定した規定なので、「他方の当事者に意見を述べる機会を与えることを条件として、暫定措置をとる権限を有しなければならない」という枝は誤りです。二つの場合は「又は」でつながっており、「特に」と前置きされた例示でもあるので、両方がそろう場合に限ると読むのは誤りです。50条3は、申立人が権利者であり権利が侵害され又は侵害の差し迫ったおそれがあることを十分な確実性をもって確認するために合理的に入手可能な証拠の提出を要求し、被申立人の保護と濫用の防止に十分な担保又は同等の保証を命ずる権限を与えます。50条4は、意見を述べる機会を与えることなくとられた暫定措置について、影響を受ける当事者が最も遅い場合でも実施後遅滞なく通知を受け、被申立人の申立てにより意見を述べる機会のある審査を通知後合理的な期間内に行って措置を変更・取消し・確認することを定めるので、「最も遅い場合においても、当該暫定措置の実施後遅滞なく通知を受ける」という枝は正しいです。50条5は、暫定措置を実施する機関が申立人に関連物品の特定に必要な他の情報の提供を要求できるとするので、「関連物品の特定に必要な情報を提供するよう要求することができる」という枝は正しいです。50条6は、本案の決定に至る手続が合理的な期間(司法当局が定めない場合は20執務日又は31暦日のいずれか長い期間を超えない期間)内に開始されないときは被申立人の申立てにより暫定措置を取り消し又は失効させます。50条7は、暫定措置が取り消された場合、申立人の作為又は不作為により失効した場合、侵害又はそのおそれがなかったと後に判明した場合に、被申立人の申立てに基づき申立人に適当な賠償を命ずる権限を与えるので、「暫定措置が取り消された場合には、司法当局は、被申立人の申立てに基づき、申立人に対し、当該暫定措置によって生じた損害に対する適当な賠償を支払うよう命ずる権限を有する」という枝は正しいです。50条8は行政手続による暫定措置にも同等の原則を求めます。日本では民事保全法の仮処分(23条)がこの暫定措置に当たります。

裁判所の裁判官室の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で机に座り、「暫定措置の申立書」と書かれた書類を手にしている。向かいに権利者の男性(札「申立人(権利者)」)が立ち、吹き出し「相手に知らせたら、証拠の帳簿を捨ててしまいます。意見を聞く前
  • 目的(50条1)侵害の防止(通関後直ちに流通経路に入ることの防止を含む)と証拠の保全です
  • 意見の機会なし(50条2)回復できない損害のおそれ「又は」証拠破棄の明らかな危険があれば、他方の当事者に意見を述べる機会を与えることなくとれます
  • 申立人への要求(50条3・5)合理的に入手可能な証拠の提出、担保又は同等の保証、物品の特定に必要な情報です
  • 事後の手続(50条4・6)実施後遅滞なく通知し、被申立人の申立てで意見の機会のある審査をします。本案の手続が合理的な期間内に開始されなければ取消しです
  • 賠償(50条7)取消し、申立人の作為・不作為による失効、侵害がなかったと判明した場合に、被申立人の申立てで申立人に賠償を命ずる権限です
TRIPS協定41条3(第3文)

本案についての決定は,当事者が意見を述べる機会を与えられた証拠にのみ基づく。

TRIPS協定45条1

司法当局は,侵害活動を行っていることを知っていたか又は知ることができる合理的な理由を有していた侵害者に対し,知的所有権の侵害によって権利者が被った損害を補償するために適当な賠償を当該権利者に支払うよう命じる権限を有する。

試験ではこう問われる

  1. 41条の手続は公正かつ公平で、不必要に複雑・費用を要せず、不合理な期限・不当な遅延がない。本案の決定は意見を述べる機会を与えられた証拠にのみ基づく。刑事事件の無罪判決の審査義務はなく、別個の司法制度を設ける義務を生じさせるという枝は誤り
  2. 42条は「その主張を裏付けること及びすべての関連する証拠」の提出権、43条1は「その主張を十分裏付ける合理的に入手可能な証拠」の提出が提示命令の要件。空欄補充で入れ替わる
  3. 43条2の提供された情報に基づく決定の権限は、双方に意見を述べる機会を与えることを条件に「与えることができる」。関係なく与えなければならないという枝は誤り
  4. 44条1の差止命令は義務だが、侵害を知る前に取得・注文された物については権限を与える義務を負わない。「義務を負う」という枝は誤り。政府使用の救済は31条(h)の報酬に限定できる(44条2)
  5. 45条1は知っていたか知り得た侵害者への損害賠償。45条2の費用には弁護人の費用を含むことができ、善意侵害者への利益回復・法定損害賠償は「与えることができる」。必要があるという枝は誤り
  6. 46条の補償なき排除・廃棄と材料・道具の排除は権限を有する必要がある。不正商標商品は商標の単なる除去では例外的な場合を除き足りない。47条の第三者・流通経路の通報は「定めることができる」
  7. 48条1の濫用した当事者への賠償命令の権限は必要。50条1の暫定措置は侵害の防止と証拠の保全の両方
  8. 50条2は回復できない損害のおそれ「又は」証拠破棄の明らかな危険で意見の機会なしにとれる。「に限り」「意見の機会を条件として」という枝は誤り。実施後遅滞なく通知(50条4)、物品特定の情報要求(50条5)、取消し時の賠償命令の権限(50条7)

この用語が問われた枝

令和3年度 問50 枝イ正しい

「第3部 知的所有権の行使」に規定する行使手続は、正当な貿易の新たな障害となることを回避し、かつ、濫用に対する保障措置を提供するような態様で適用する。

令和3年度 問50 枝ハ正しい

本案についての決定は、当事者が意見を述べる機会を与えられた証拠にのみ基づく。

令和3年度 問50 枝ニ正しい

加盟国は、刑事事件の無罪判決に関し手続の当事者に司法当局による審査の機会を与える義務を負わない。

令和3年度 問50 枝ホ誤り

「第3部 知的所有権の行使」の規定は、加盟国に対して、一般的な法の執行のための司法制度とは別の知的所有権に関する執行のための司法制度を設ける義務を生じさせるものである。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

条約を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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