不法に商標等を付した産品の差押え・不正競争の防止・博覧会の仮保護(9〜11条)ふほうにしょうひょうとうをふしたさんぴんのさしおさえふせいきょうそうのぼうしはくらんかいのかりほご
不法に商標等を付した産品の差押え・不正競争の防止・博覧会の仮保護とは、パリ条約の9条から11条が定める、不法に商標又は商号を付した産品や虚偽の原産地等の表示がある産品を輸入の際や国内で差し押さえる仕組み(9条・10条)、同盟国の国民を不正競争から有効に保護する約束(10条の2・10条の3)、同盟国の領域内で開催される公の国際博覧会に出品される産品の発明・実用新案・意匠・商標に与える仮保護(11条)です。いずれも工業所有権の保護を権利の登録だけでなく取締りや競争秩序にまで広げる規定です。
外国の有名ブランドの偽物が港に着いたとき、税関がそれを止められなければ、商標を登録していても市場は偽物であふれてしまいます。また、新製品を国際博覧会に出品して発表すると、出願前に公開したことになって特許や意匠が取れなくなるおそれがあります。パリ条約の9条から11条は、権利を登録させるだけでなく、不法な産品の差押え、不正競争からの保護、博覧会出品の仮保護という形で、工業所有権が現実の取引の中で働くようにした規定です。各国の制度の違いが大きい分野なので、国内法令に委ねる書きぶりが多くなっています。

不法に商標又は商号を付した産品は輸入の際に差し押さえられ、付した国や輸入国の国内でも差し押さえられますが、通過の場合には差押えを要しません
9条(1)は、不法に商標又は商号を付した産品は、その商標又は商号について法律上の保護を受ける権利が認められている同盟国に輸入される際に差し押さえられると定め、(2)は、差押えは産品に不法に商標若しくは商号を付する行為が行われた同盟国又はその産品が輸入された同盟国の国内においても行われるとします。「その産品が輸入された同盟国の国内においても行われる」という枝は正しいです。(3)により差押えは検察官その他の権限のある当局又は利害関係人の請求により各同盟国の国内法令に従って行われ、(4)により当局は通過の場合には差押えを行うことを要しません。単に国を通り抜けるだけの産品にまで差押えを義務づけると国際物流を妨げるからです。10条(1)はこれらの規定を、産品の原産地又は生産者、製造者若しくは販売人に関し直接又は間接に虚偽の表示が行われている場合にも適用し、(2)はその産品の生産・製造・販売に従事し、偽って表示された土地や国、虚偽表示が行われている国に住所を有する者をすべての場合において利害関係人と認めます。虚偽の原産地表示の産品についても、通過の場合の差押えは要りません。
- 差押えの場面保護を受ける権利が認められている同盟国への輸入の際、不法に付する行為が行われた同盟国の国内、輸入された同盟国の国内です(9条(1)(2))
- 請求権者検察官その他の権限のある当局又は利害関係人で、各同盟国の国内法令に従います(9条(3))
- 通過差押えを行うことを要しません(9条(4))
- 虚偽の原産地等の表示9条の規定を適用し、偽って表示された土地や国に住所を有する生産者等を利害関係人と認めます(10条)
輸入の際の差押えを認めない国は輸入禁止か国内の差押えで代え、それも認めない国は法令の修正までの間、内国民に保障する訴訟その他の手続で代えることができます
9条(5)は、同盟国の法令が輸入の際における差押えを認めていない場合には、その差押えの代わりに輸入禁止又は国内における差押えが行われるとし、(6)は、同盟国の法令が輸入の際における差押え、輸入禁止及び国内における差押えのいずれも認めていない場合には、その法令が必要な修正を受けるまでの間、これらの措置の代わりに、その同盟国の法令が同様の場合に内国民に保障する訴訟その他の手続が認められると定めます。各国の取締りの仕組みが違うので、三つの措置のいずれかを直ちに義務づけるのではなく、内国民待遇による訴訟手続で足りるとする段階的な規定になっています。「内国民に保障する訴訟その他の手続が、認められる」という枝は正しいです。輸入の際に常に差押えをしなければならないわけではなく、三つの措置のいずれかを認める法令を持つことを義務づけられてもおらず、そのような法令を持たない国がこれらの措置を直ちにとらなければならないわけでもありません。日本では関税法69条の11の輸入してはならない貨物の規定が、商標権や不正競争防止法に違反する物品の輸入を水際で止めています。

各同盟国は同盟国の国民を不正競争から有効に保護し、混同を生じさせる行為、信用を害する虚偽の主張、公衆を誤らせる表示は特に禁止されます
10条の2(1)は、各同盟国は同盟国の国民を不正競争から有効に保護すると定め、(2)は、工業上又は商業上の公正な慣習に反するすべての競争行為は不正競争行為を構成するとします。(3)は特に禁止される三つを挙げます。いかなる方法によるかを問わず競争者の営業所、産品又は工業上若しくは商業上の活動との混同を生じさせるようなすべての行為、競争者の営業所、産品又は活動に関する信用を害するような取引上の虚偽の主張、産品の性質、製造方法、特徴、用途又は数量について公衆を誤らせるような取引上の表示及び主張です。公衆を誤らせる表示は「不正競争行為として禁止されない」という枝は誤りです。10条の3は、9条から10条の2までの行為を有効に防止する適当な法律上の救済手段を他の同盟国の国民に与えること、利害関係を有する生産者等を代表する団体が司法的手段や行政機関への申立てをできるように措置を講じることを約束させます。1条(2)が工業所有権の保護の対象に不正競争の防止を含めているので、内国民待遇もこれに及びます。日本では不正競争防止法2条1項1号の混同惹起、21号の信用毀損、20号の誤認惹起がこれに対応しています。
同盟国の領域内で開催される公の国際博覧会に出品される産品には発明・実用新案・意匠・商標について仮保護を与えますが、優先期間は延長されず、搬入の日からの開始は各国の選択です
11条(1)は、同盟国は、いずれかの同盟国の領域内で開催される公の又は公に認められた国際博覧会に出品される産品に関し、国内法令に従い、特許を受けることができる発明、実用新案、意匠及び商標に仮保護を与えると定めます。「特許を受けることができる発明、実用新案、意匠及び商標に仮保護を与える」という枝は正しいです。義務があるのは同盟国の領域内の博覧会だけなので、同盟に属しない国の博覧会に出品される産品について仮保護を与える義務はなく、対象は産品に関する四つの権利なので、役務に関しサービス・マークに仮保護を与える義務もありません。仮保護の方法は国内法令に委ねられ、日本では特許法30条・意匠法4条の新規性喪失の例外と商標法9条の出願時の特例がこれに当たります。(2)は、仮保護は4条に定める優先期間を延長するものではないとし、後に優先権が主張される場合には、各同盟国の主管庁はその産品を博覧会に搬入した日から優先期間が開始するものとすることができるとします。搬入の日からの開始は「できる」であって義務ではありません。「その産品を博覧会に搬入した日から優先期間が開始するものとすることができる」という枝は正しく、搬入した日からの開始を各同盟国の義務と読むのは誤りです。(3)により各同盟国は、産品が展示された事実と搬入の日付を証明する証拠書類を要求できます。

パリ条約10条の2各同盟国は,同盟国の国民を不正競争から有効に保護する。
工業上又は商業上の公正な慣習に反するすべての競争行為は,不正競争行為を構成する。
特に,次の行為,主張及び表示は,禁止される。
1. いかなる方法によるかを問わず,競争者の営業所,産品又は工業上若しくは商業上の活動との混同を生じさせるようなすべての行為
2. 競争者の営業所,産品又は工業上若しくは商業上の活動に関する信用を害するような取引上の虚偽の主張
3. 産品の性質,製造方法,特徴,用途又は数量について公衆を誤らせるような取引上の表示及び主張
パリ条約11条同盟国は,いずれかの同盟国の領域内で開催される公の又は公に認められた国際博覧会に出品される産品に関し,国内法令に従い,特許を受けることができる発明,実用新案,意匠及び商標に仮保護を与える。
試験ではこう問われる
- 不法に商標・商号を付した産品は輸入の際に差し押さえられ、付した国と輸入国の国内でも差押えが行われる。通過の場合は差押えを要しない
- 虚偽の原産地・生産者等の表示にも9条を適用し、偽って表示された土地・国に住所を有する生産者等は利害関係人と認められる。通過の際の差押えは要らない
- 輸入の際の差押えを認めない国は輸入禁止・国内の差押えで代え、それも認めない国は法令の修正まで内国民に保障する訴訟手続で代える。常に差押えを要するわけではなく、いずれかを義務づけてもいない
- 不正競争は公正な慣習に反するすべての競争行為。特に禁止されるのは混同を生じさせる行為、信用を害する虚偽の主張、公衆を誤らせる表示・主張の三つ
- 仮保護は同盟国の領域内で開催される公の又は公に認められた国際博覧会に出品される産品の発明・実用新案・意匠・商標。非同盟国の博覧会とサービスマークには義務がない
- 仮保護の方法は国内法令に委ねられ、新規性喪失の例外に限られない
- 仮保護は優先期間を延長しない。搬入の日から優先期間を開始させることは「できる」であって義務ではない
- 各同盟国は展示の事実と搬入の日付を証明する証拠書類を要求できる
この用語が問われた枝
不法に商標又は商号を付した産品は、その商標又は商号について法律上の保護を受ける権利が認められている同盟国に輸入される際に差し押えられるが、差押えは、産品に不法に商標若しくは商号を付する行為が行われた同盟国又はその産品が輸入された同盟国の国内においても行われる。
不法に商標を付した産品は、その商標について法律上の保護を受ける権利が認められている同盟国に輸入される際に差し押さえられるが、同盟国の法令が輸入の際における差押え、輸入禁止及び国内における差押えを認めていない場合には、その法令が必要な修正を受けるまでの間、これらの措置の代わりに、その同盟国の法令が同様の場合に内国民に保障する訴訟その他の手続が、認められる。
産品の性質、製造方法、特徴、用途又は数量について公衆を誤らせるような取引上の表示及び主張は、不正競争行為として禁止されない。
同盟国は、いずれかの同盟国の領域内で開催される公の又は公に認められた国際博覧会に出品される産品に関し、国内法令に従い、特許を受けることができる発明、実用新案、意匠及び商標に仮保護を与える。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。