弁理士試験AIブートラボ 弁理士AIブートラボ
記事 / 特許法・実用新案法 / 特許権の存続期間と延長登録|67条の20年・期間補償・...

特許権の存続期間と延長登録|67条の20年・期間補償・5年を整理

特許法・実用新案法 読了 約11分

弁理士試験短答式の特許法67条のまとめ。出願の日から20年の起算、平成28年改正で入った審査遅延に基づく延長(期間補償)の基準日と控除期間、安全性審査等の処分に基づく5年を限度とする延長、延長登録出願の時期と拒絶理由、68条の2の効力の範囲、延長登録無効審判、実用新案・意匠・商標との比較を条文に沿って整理します。

特許権の存続期間は「出願の日から20年」の一文で覚えている人が多いのですが、短答式では67条の2項以下に置かれた2種類の延長制度まで含めて問われます。平成28年の改正(環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律)で、従来からあった医薬品等の処分に基づく延長に加え、審査に時間がかかった場合の延長(期間補償)が入り、条文の番号も67条の2から67条の8まで組み直されました。古い教材のまま覚えていると、条番号と手続の対応が合いません。

結論から言うと、存続期間の枝は「起算日は出願の日」「延長は2系統あり、期間補償は基準日からの遅れ、処分に基づく延長は5年が上限」「延長登録の出願には時期の制限がある」「効力の範囲が制限されるのは処分に基づく延長だけ(68条の2)」の4点で読めば判断できます。これに実用新案10年・意匠25年・商標10年更新の横並びを加えれば、四法を横断する枝にも対応できます。

この記事では、67条1項の起算日、2項・3項の期間補償、4項の処分に基づく延長、延長登録出願の手続と拒絶理由、延長後の効力、延長登録無効審判、他の法との比較、短答で狙われる型の順に整理します。条文はe-Gov法令検索の特許法原文で確認しています。

存続期間は出願の日から20年(67条1項)

67条1項は、特許権の存続期間は特許出願の日から20年をもって終了すると定めています。起算点は出願の日であり、設定の登録の日ではありません。特許権は設定の登録により発生しますが(66条1項)、存続期間はそれより前の出願の日から数え始めます。審査に時間がかかるほど、権利として使える期間は短くなる構造です。

場面 20年の起算点 根拠
通常の出願 その出願の日 67条1項
分割出願 もとの出願の日(出願時が遡及する) 44条2項
変更出願 もとの出願の日 46条6項で44条2項を準用
国内優先権を主張した出願 後の出願(実際にした出願)の日 41条2項は29条等の判断についてだけ遡及させる
パリ条約の優先権を主張した出願 日本にした出願の日 優先権は新規性等の判断基準日を動かすだけ
国際特許出願 国際出願日 184条の3第1項

条文:特許法41条2項、44条2項、46条6項、66条1項、67条1項、184条の3第1項(e-Gov法令検索)

存続期間は設定登録ではなく出願の日から20年で、分割出願はもとの出願の日、国内優先権は後の出願の日から数える
存続期間は設定登録ではなく出願の日から20年で、分割出願はもとの出願の日、国内優先権は後の出願の日から数える

分割出願と国内優先権で扱いが違う点は、枝にされやすいところです。分割出願は44条2項により出願時そのものが遡るので、存続期間ももとの出願の日から20年です。国内優先権の後の出願は、41条2項が29条・29条の2・30条などの適用について先の出願の時にしたものとみなすだけで、出願日自体は後の出願の日のままなので、存続期間は後の出願の日から数えます。優先権と分割の違いは「国内優先権とパリ条約の優先権」と「分割出願の要件」でも扱っています。

延長は2系統ある

特許権の存続期間の2つの延長制度
特許権の存続期間の2つの延長制度

67条2項以下の延長は、理由が全く違う2つの制度です。

項目 期間補償の延長 処分に基づく延長
根拠 67条2項・3項 67条4項
理由 特許庁の審査に時間がかかり、設定登録が遅れた 医薬品等の安全性確保のための処分を受けるまで実施できなかった
延長できる期間 基準日から設定登録の日までの期間から、出願人側の事由による期間などを控除した期間 実施できなかった期間。5年を限度
出願の時期 設定の登録の日から3月以内 処分を受けた日から政令で定める期間内
出願の条文 67条の2 67条の5
拒絶理由 67条の3 67条の7
延長後の効力 制限なし 68条の2で処分の対象となった物(用途)に限られる
無効審判 125条の2 125条の3

条文:特許法67条2項〜4項、67条の2、67条の3、67条の5、67条の7、68条の2、125条の2、125条の3(e-Gov法令検索)

導入時期も違います。処分に基づく延長は昭和62年の改正で入った古い制度で、改正前は67条の2がその出願の条文でした。期間補償の延長は平成28年の改正で加わり、このときに条番号が後ろにずれています。

期間補償の延長(67条2項・3項)

基準日:出願から5年と審査請求から3年の遅い方

67条2項は、特許権の設定の登録が、特許出願の日から起算して5年を経過した日、または出願審査の請求があった日から起算して3年を経過した日のいずれか遅い日(基準日)以後にされたときは、延長登録の出願により存続期間を延長できると定めています。

「いずれか遅い日」なので、2つの日を比べて後の方が基準日になります。出願から間もなく審査請求をした場合は「出願から5年」の方が遅く、出願から3年近く経って審査請求をした場合は「審査請求から3年」の方が遅くなります。出願審査の請求ができる期間は出願の日から3年以内なので(48条の3第1項)、審査請求を出願から3年ぎりぎりにすれば、基準日は出願から6年近くになります。審査請求の制度は「意匠法の短答対策」で、意匠法に審査請求がないことと対比しています。

期間補償の延長の基準日は、出願から5年と審査請求から3年を比べて遅い方の日
期間補償の延長の基準日は、出願から5年と審査請求から3年を比べて遅い方の日

延長できる期間:遅れから出願人側の事由を引く

67条3項は、延長できる期間を、基準日から設定の登録の日までの期間に相当する期間から、同項各号に掲げる期間を合算した期間(重複する期間を除く)を控除した期間と定めています。控除されるのは、おおまかに言えば、出願人が行った手続や出願人の責めに帰すべき事由によって審査が進まなかった期間、拒絶査定不服審判や審決取消訴訟など審査以外の手続に要した期間などで、細目は政令に委ねられています。

考え方としては、「特許庁の審査が遅れた分だけ補償するのであって、出願人自身が時間をかけた分や、審判・訴訟で争った期間は補償しない」と押さえておけば足ります。各号の細かい内容は短答で深追いされにくい部分なので、条文の構造(基準日からの期間−控除期間)を優先します。

出願の時期:設定の登録の日から3月以内

67条の2は、期間補償の延長登録の出願について定めています。願書には延長を求める期間などを記載し、延長を求める期間が3項の期間を超えないようにします。出願ができるのは特許権の設定の登録の日から3月以内で、存続期間の満了後はできません。特許権が共有のときは共有者全員で出願しなければならないことも定められています。

延長登録の出願があったときは、存続期間は延長されたものとみなされます(出願が却下され、拒絶査定が確定し、または延長登録があったときはこの限りではありません)。審査中に権利が切れてしまうことを防ぐ規定で、処分に基づく延長にも同じ趣旨の規定があります。

期間補償の延長登録の出願は設定の登録の日から3月以内にし、特許権が共有なら共有者全員でする
期間補償の延長登録の出願は設定の登録の日から3月以内にし、特許権が共有なら共有者全員でする

拒絶理由(67条の3)

67条の3は、期間補償の延長登録出願の拒絶理由を列挙しています。延長を求める期間が延長可能な期間を超えているとき、出願人が特許権者でないとき、共有者全員でしていないときなどです。拒絶理由がなければ延長登録をすべき旨の査定をし、登録されれば公報に掲載されます。審査の手続については67条の4で拒絶理由通知などの規定が準用されます。

処分に基づく延長(67条4項)

要件:安全性確保等のための処分で実施できなかった期間

67条4項は、特許発明の実施について、安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であって、処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があったときは、5年を限度として、延長登録の出願により存続期間を延長できると定めています。

政令で定められている処分は、医薬品医療機器等法の承認や農薬取締法の登録などです。新薬は特許を取っても承認が下りるまで製造販売できないので、その間に存続期間が削られます。その削られた期間を取り戻すのがこの延長です。

医薬品等の安全性確保のための処分を受けるまで実施できなかった期間は、5年を限度に延長できる
医薬品等の安全性確保のための処分を受けるまで実施できなかった期間は、5年を限度に延長できる
要件 内容
処分の性質 安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分で、政令で定めるもの
必要性 その処分を受けることが特許発明の実施に必要であったこと
実施できなかった期間 処分を受けるために特許発明の実施をすることができなかった期間があること
上限 5年

条文:特許法67条4項(e-Gov法令検索)

期間補償の延長に上限の定めがないのに対し、処分に基づく延長には「5年を限度」という上限があります。「期間補償の延長は5年を限度とする」という枝は、上限の付け先を入れ替えた誤りです。

出願の時期と事前の書面(67条の5・67条の6)

67条の5は、処分に基づく延長登録の出願の願書の記載事項(延長を求める期間、処分の内容など)と、出願の時期を定めています。出願は、処分を受けた日から政令で定める期間内にしなければならず、存続期間の満了後はできません。

ここで問題になるのが、存続期間の満了直前に処分を受ける見込みの場合です。67条の6は、存続期間の満了前6月の前日までに処分を受けることができないと見込まれるときは、その満了前6月の前日までに、所定の事項を記載した書面を特許庁長官に提出しなければならないとし、この書面を提出しなければ延長登録の出願ができないとしています。出願の受付を待っている間に権利が切れることを避けるための事前届出です。

拒絶理由(67条の7)

67条の7は、処分に基づく延長登録出願の拒絶理由として、処分を受けることが必要であったとは認められないとき、特許権者またはその専用実施権者・通常実施権者が処分を受けていないとき、延長を求める期間が実施をすることができなかった期間を超えているとき、出願人が特許権者でないとき、共有者全員でしていないときを挙げています。

2つ目の拒絶理由は見落としやすい点です。処分を受けたのが特許権者本人でなくても、専用実施権者か通常実施権者が受けていれば足ります。他方で、実施権を持たない全くの第三者が受けた処分では延長できません。

処分を受けたのが専用実施権者や通常実施権者でも延長できるが、実施権のない第三者が受けた処分では延長できない
処分を受けたのが専用実施権者や通常実施権者でも延長できるが、実施権のない第三者が受けた処分では延長できない

延長後の効力の範囲(68条の2)

延長された特許権の効力の範囲(68条の2)
延長された特許権の効力の範囲(68条の2)

68条の2は、67条4項の延長登録がされた場合(処分に基づく延長)について、延長された期間中の特許権の効力は、その延長登録の理由となった処分の対象となった物(その処分でその物の使用される特定の用途が定められている場合はその用途に使用されるその物)についての特許発明の実施以外の行為には及ばないと定めています。

延長の理由は「その物について処分を受けるまで実施できなかった」ことなので、延長された期間に守られるのも、処分の対象になった物(と用途)に限るという対応関係です。特許請求の範囲が広くても、延長期間中はその全体に効力が及ぶわけではありません。

一方、期間補償の延長(67条2項)には68条の2のような制限はありません。審査の遅れは特許発明全体に及ぶ不利益なので、延長された期間も通常の特許権と同じ効力を持ちます。「期間補償の延長がされた特許権の効力は処分の対象となった物に限られる」という枝は、68条の2が4項の延長についてだけ定めていることを問うものです。

延長登録無効審判(125条の2・125条の3)

延長登録に瑕疵があるときは、特許無効審判とは別に、延長登録無効審判で争います。期間補償の延長登録は125条の2、処分に基づく延長登録は125条の3が定めています。

項目 125条の2(期間補償) 125条の3(処分に基づく延長)
無効理由 延長期間が延長可能期間を超えている、特許権者でない者の出願、共有者全員でない出願 処分を受けることが必要であったとは認められない、処分を受けていない、延長期間が実施できなかった期間を超えている、特許権者でない者の出願、共有者全員でない出願
審決確定の効果 延長登録は初めからされなかったものとみなす。期間超過の無効理由のときは、超える期間についてだけされなかったものとみなす 同じ構造

条文:特許法125条の2、125条の3(e-Gov法令検索)

無効理由は、それぞれの拒絶理由(67条の3・67条の7)とほぼ対応しています。延長期間が長すぎることだけが理由のときは、延長登録全体が消えるのではなく、超えた部分だけが無効になる点が特徴です。審判の請求人や手続の多くは特許無効審判の規定が準用されます。審判の全体像は「特許法の審判の種類」で、延長登録無効審判の位置付けを含めて整理しています。

実用新案・意匠・商標との比較

存続期間は四法で起算点も長さも違い、横断する枝が毎年のように作られます。

存続期間は特許が出願から20年、実用新案が出願から10年、意匠が出願から25年、商標が設定登録から10年で更新できる
存続期間は特許が出願から20年、実用新案が出願から10年、意匠が出願から25年、商標が設定登録から10年で更新できる
法 存続期間 起算点 延長・更新 条文
特許 20年 出願の日 期間補償の延長、処分に基づく延長(5年限度) 特許法67条
実用新案 10年 出願の日 なし 実用新案法15条
意匠 25年 出願の日(関連意匠は基礎意匠の出願の日) なし 意匠法21条
商標 10年 設定の登録の日 更新登録の申請により何度でも更新できる 商標法19条

条文:特許法67条、実用新案法15条、意匠法21条、商標法19条(e-Gov法令検索)

商標だけが設定の登録の日から数え、しかも更新で半永久的に続きます。商標は創作ではなく使用によって蓄積した信用を守る制度なので、使い続ける限り保護する建付けです。意匠の25年は令和元年の改正で設定登録から20年から改められたもので、関連意匠は基礎意匠の出願の日から25年です。実用新案法は10年で、延長の制度はありません。四法の期間の数字をまとめて覚える方法は「条文の覚え方」で扱っています。実用新案法との他の違いは「実用新案法と特許法の違い」を参照してください。

短答で狙われる型

第1の型:起算日の入替え。「特許権の存続期間は設定の登録の日から20年」は誤りで、出願の日からです。分割出願はもとの出願の日から、国内優先権の後の出願は後の出願の日から数えます。商標法19条と混ぜて「出願の日から10年」とする枝も作られます。

第2の型:延長の上限と理由の入替え。5年の上限があるのは処分に基づく延長(67条4項)だけです。期間補償の延長の長さは基準日からの遅れで決まり、「出願から5年、審査請求から3年のいずれか遅い日」の「遅い」を「早い」に変えた枝が典型です。

第3の型:出願の時期。期間補償の延長登録の出願は設定の登録の日から3月以内、処分に基づく延長は処分を受けた日から政令で定める期間内で、どちらも存続期間の満了後はできません。満了前6月の前日までに処分を受けられない見込みのときは、67条の6の書面を出さなければ出願できません。

第4の型:効力の範囲。68条の2が効力を制限するのは処分に基づく延長だけです。期間補償の延長に68条の2を当てはめた枝は誤りです。

第5の型:処分を受けた者。処分を受けたのが専用実施権者や通常実施権者でも延長はできます。「特許権者自身が処分を受けていなければ延長できない」は67条の7の文言に反します。

学習の進め方

まず67条を1項から4項まで通して読み、2項の「いずれか遅い日」、3項の「控除」、4項の「5年を限度」に線を引きます。次に67条の2から67条の8までを、期間補償(67条の2〜67条の4)と処分(67条の5〜67条の8)の2ブロックに分けて、出願の時期と拒絶理由だけ対照表にします。68条の2と125条の2・125条の3は、どちらの延長についての規定かを条文の冒頭で確認する癖をつけます。

最後に、実用新案法15条、意匠法21条、商標法19条を続けて読み、起算点と長さを1枚の表にします。四法横断の枝は、この表を思い出せれば判断できます。特許法全体の中での位置付けと学習順序は「特許法の短答勉強法」を参照してください。

まとめ

  • 存続期間は特許出願の日から20年(67条1項)。分割出願はもとの出願の日から、国内優先権の後の出願は後の出願の日から数える
  • 期間補償の延長(67条2項・3項):設定登録が、出願から5年と審査請求から3年のいずれか遅い日(基準日)以後のとき、基準日からの遅れから出願人側の事由などを控除した期間を延長できる。出願は設定登録から3月以内(67条の2)
  • 処分に基づく延長(67条4項):安全性確保等の処分を受けるために実施できなかった期間について、5年を限度に延長できる。出願は処分から政令の期間内、満了前6月の前日までに処分が見込めないときは事前の書面が必要(67条の5・67条の6)
  • 延長後の効力が処分の対象となった物(用途)に限られるのは、処分に基づく延長だけ(68条の2)
  • 延長登録無効審判は125条の2(期間補償)と125条の3(処分)。期間超過だけが理由なら超える部分だけ無効
  • 実用新案は出願から10年、意匠は出願から25年、商標は設定登録から10年で更新可

出願の手続と存続期間が交わる論点として、出願公開後の補償金請求権は「出願公開と補償金請求権」で扱っています。

特許・実用新案の論点を、そのまま問題で確かめる

特許・実用新案の肢別演習を一覧で一気に○×。解説と条文がその場で開きます。

関連記事