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特許法の審判の種類一覧|請求人・時期・効果を短答用に整理

特許法・実用新案法 読了 約10分

弁理士試験短答式の特許法の審判を一覧で整理。拒絶査定不服審判(121条)・特許無効審判(123条)・延長登録無効審判(125条の2・125条の3)・訂正審判(126条)の請求人と時期、訂正の請求、審判ではない特許異議の申立てと判定、審決取消訴訟(178条・179条)と一事不再理(167条)まで扱います。

審判は、特許法の条文の中でも規定の数が多い分野です。121条から170条までに審判の種類と手続がまとまり、そこに特許異議の申立て(113条以下)、判定(71条)、再審(171条以下)、審決取消訴訟(178条以下)が前後から関わってきます。短答の枝は、ある審判の要件を別の審判の要件と入れ替えて作られることが多く、一覧で並べて違いを覚えていないと判断がぶれます。

結論から言うと、特許法の審判は「拒絶査定不服審判」「特許無効審判」「延長登録無効審判」「訂正審判」の4種類で、これを「特許庁長官が被告になる2種」と「当事者が被告になる2種」に分けると、審理の方式、一事不再理、審決取消訴訟の被告がまとめて説明できます。特許異議の申立てと判定は審判官が審理しますが、審判ではありません。訂正の請求も、独立した審判ではなく、無効審判や異議の中でする手続です。

条文はe-Gov法令検索の特許法・実用新案法の原文で確認しています。

4つの審判の一覧

特許法の審判と、審判ではない手続
特許法の審判と、審判ではない手続

まず4種類を1つの表に並べます。

審判 条文 請求できる者 請求できる時期 審理の方式(145条) 取消訴訟の被告(179条)
拒絶査定不服審判 121条 拒絶をすべき旨の査定を受けた者 査定の謄本の送達があった日から3月以内 書面審理 特許庁長官
特許無効審判 123条 利害関係人(冒認・共同出願違反は特許を受ける権利を有する者) いつでも。特許権の消滅後も可 口頭審理 請求人又は被請求人
延長登録無効審判 125条の2・125条の3 利害関係人 いつでも。特許権の消滅後も可 口頭審理 請求人又は被請求人
訂正審判 126条 特許権者 異議・無効審判の係属中は不可。消滅後も可 書面審理 特許庁長官
被告が特許庁長官の審判と、当事者の審判
被告が特許庁長官の審判と、当事者の審判

145条1項は、特許無効審判と延長登録無効審判は口頭審理によるとし、ただし審判長は申立て又は職権で書面審理にできるとしています。2項は、それ以外の審判は書面審理によるとし、審判長は申立て又は職権で口頭審理にできるとしています。原則と例外が逆になっている点を押さえます。

179条は、審決取消訴訟では特許庁長官を被告としなければならないとし、ただし書で、特許無効審判・延長登録無効審判(とその確定審決に対する再審の審決)に対する訴えは、その審判の請求人又は被請求人を被告とすると定めています。対立する当事者がいる2種と、特許庁と出願人・特許権者だけの2種という区別が、ここにもそのまま表れます。

拒絶査定不服審判(121条)

121条1項は、拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定の謄本の送達があった日から3月以内に拒絶査定不服審判を請求できると定めます。2項は、責めに帰することができない理由により期間内に請求できないときは、その理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、期間の経過後6月以内に請求できるとしています。

特許を受ける権利が共有のときは、132条3項により共有者の全員が共同して請求しなければなりません。

拒絶査定不服審判は謄本送達から3月以内に請求し、請求と同時に補正があると前置審査が行われる
拒絶査定不服審判は謄本送達から3月以内に請求し、請求と同時に補正があると前置審査が行われる

この審判には、審査とのつながりを示す特則がいくつかあります。

  • 158条 審査においてした手続は、拒絶査定不服審判においても効力を有する
  • 162条 審判の請求と同時に明細書・特許請求の範囲・図面について補正があったときは、特許庁長官は審査官にその請求を審査させなければならない(前置審査)
  • 159条2項 審判で査定の理由と異なる拒絶の理由を発見したときは、50条(拒絶理由通知)を準用する
  • 160条1項・2項 査定を取り消すときは、さらに審査に付すべき旨の審決ができ、その判断は審査官を拘束する

審判請求と同時にする補正は、17条の2第1項4号の場面で、最後の拒絶理由通知後と同じ内容の制限がかかります。補正の側からの整理は「特許法の補正の時期的制限」にまとめています。なお、53条の補正の却下の決定には原則として不服を申し立てられませんが、53条3項ただし書により、拒絶査定不服審判を請求した場合の審判では争えます。

特許無効審判(123条)

無効理由と請求の単位

123条1項は無効理由を1号から8号まで列挙し、2以上の請求項に係るものは請求項ごとに請求できるとしています。

号 主な内容
1号 新規事項を追加した補正(17条の2第3項違反)
2号 25条・29条・29条の2・32条・38条・39条1項〜4項違反
3号 条約違反
4号 36条4項1号・6項(4号を除く)の記載要件違反
5号 外国語書面出願の原文の範囲を超える記載
6号 特許を受ける権利を有しない者の出願(冒認)
7号 特許後に権利享有能力を失った場合・条約違反となった場合(後発的理由)
8号 訂正の要件違反

2号の38条違反(共同出願違反)と6号の冒認は、74条1項の移転請求に基づいて特許権の移転の登録があったときは除かれます。

請求人と時期

特許無効審判は利害関係人が請求でき、冒認・共同出願違反を理由とするときは特許を受ける権利を有する者に限られる
特許無効審判は利害関係人が請求でき、冒認・共同出願違反を理由とするときは特許を受ける権利を有する者に限られる

123条2項により、特許無効審判は利害関係人に限り請求できます。ただし、38条違反(2号)又は6号を理由とする場合は、特許を受ける権利を有する者に限られます。3項は、特許権の消滅後も請求できると定めています。

効果と手続の特則

125条は、無効審決が確定したときは特許権は初めから存在しなかったものとみなすとし、ただし7号(後発的理由)の場合は、その号に該当するに至った時から存在しなかったものとみなします。

手続面では次の規定がよく問われます。

  • 132条1項 同一の特許権について無効審判を請求する者が2人以上あるときは、共同して請求できる
  • 132条2項 共有に係る特許権について請求するときは、共有者の全員を被請求人としなければならない
  • 155条2項 審判の請求は、答弁書の提出があった後は、相手方の承諾を得なければ取り下げられない
  • 164条の2 審決をするのに熟した場合に請求に理由があると認めるときなどは、審判長は審決の予告をし、訂正を請求するための期間を指定しなければならない

延長登録無効審判(125条の2・125条の3)

延長登録無効審判の条文は2つあります。存続期間の延長には2つの種類があり、それぞれに無効審判が用意されているからです。

条文 対象の延長登録 延長の中身
125条の2 67条の3第3項の延長登録 設定の登録が基準日(出願から5年又は審査請求から3年のいずれか遅い日)以後にされた場合の延長(67条2項)
125条の3 67条の7第3項の延長登録 政令で定める処分を受けるために特許発明を実施できなかった期間の延長(67条4項)

どちらも利害関係人に限り請求でき(125条の2第2項、125条の3第2項による準用)、123条3項の準用により特許権の消滅後も請求できます。無効審決が確定すると延長は初めからされなかったものとみなされますが、延長された期間が長すぎたことを理由とする場合は、超える期間についてだけ延長がされなかったものとみなします(125条の2第4項ただし書、125条の3第3項ただし書)。

「延長登録無効審判は125条の2」とだけ覚えていると、医薬品等の処分に基づく延長の枝で条文番号を取り違えます。

訂正審判と訂正の請求

訂正審判(126条)

126条1項は、特許権者は明細書・特許請求の範囲・図面の訂正をすることについて訂正審判を請求できるとし、訂正の目的を4つに限っています。特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明、他の請求項の記載を引用しないものとすることです。

内容の制限は5項から7項です。新規事項の追加の禁止(5項)、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないこと(6項)、そして減縮又は誤記・誤訳の訂正を目的とする訂正は、訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないこと(7項、独立特許要件)です。

特許異議の申立てや特許無効審判が係属している間は訂正審判を請求できず、その手続の中で訂正を請求する
特許異議の申立てや特許無効審判が係属している間は訂正審判を請求できず、その手続の中で訂正を請求する

時期の制限は2項と8項にあります。

  • 2項 特許異議の申立て又は特許無効審判が特許庁に係属した時から、その決定又は審決が確定するまでの間は請求できない
  • 8項 特許権の消滅後も請求できる。ただし、取消決定により取り消され、又は無効審判により無効にされた後はできない

専用実施権者又は質権者があるときは、その承諾を得た場合に限り請求できます(127条)。共有の特許権なら132条3項で全員が共同して請求します。

訂正の請求(134条の2・120条の5)

無効審判や異議の係属中は訂正審判を請求できない代わりに、その手続の中で訂正を請求できます。

手続 条文 できる者 時期 独立特許要件
訂正審判 126条 特許権者 異議・無効審判の係属中以外 減縮・誤記誤訳の訂正で必要
無効審判中の訂正の請求 134条の2 無効審判の被請求人 答弁書提出期間・審決の予告後などの指定期間内 無効審判の請求がされていない請求項についてのみ必要
異議中の訂正の請求 120条の5第2項 特許権者 取消理由通知で指定された期間内 異議の申立てがされていない請求項についてのみ必要

独立特許要件の違いは、134条の2第9項と120条の5第9項の読み替えから出てきます。無効審判や異議で争われている請求項は、その手続の中で特許性が判断されるため、訂正の段階で重ねて独立特許要件を課さない仕組みです。134条の2第6項は、同じ審判事件で後に訂正の請求をすると先の請求は取り下げられたものとみなすとしています。

審判ではない手続

特許異議の申立て(113条)

113条1項は、何人も、特許掲載公報の発行の日から6月以内に限り、特許異議の申立てができると定めます。審理と決定は審判官の合議体が行いますが(114条1項)、手続の名前は「審判」ではなく、結論も「審決」ではなく「決定」です。

異議の理由は1号から5号で、無効理由より狭くなっています。冒認(123条1項6号)、共同出願違反(38条)、後発的理由(7号)、訂正の要件違反(8号)は異議の理由になりません。権利の帰属にかかわる理由や特許後に生じた事情は、無効審判でだけ争えます。

特許異議の申立ては特許掲載公報の発行から6月以内なら何人もでき、審判官が審理するが審判ではなく結論は決定
特許異議の申立ては特許掲載公報の発行から6月以内なら何人もでき、審判官が審理するが審判ではなく結論は決定

114条2項は取消理由があると認めるときは取消決定をしなければならないとし、4項はそうでないときは維持決定をするとし、5項はその維持決定に対しては不服を申し立てられないと定めます。取消決定に対しては、特許権者が178条1項の訴えを提起できます。

判定(71条)

判定は特許庁長官が指定する3名の審判官が技術的範囲について行うが、審判ではなく審決取消訴訟の対象にもならない
判定は特許庁長官が指定する3名の審判官が技術的範囲について行うが、審判ではなく審決取消訴訟の対象にもならない

71条1項は、特許発明の技術的範囲について特許庁に判定を求めることができるとし、2項は特許庁長官が3名の審判官を指定して判定をさせると定めます。審判官が判断しますが、審判ではなく、審決取消訴訟の対象にもなりません。71条4項は、不適法な判定の請求を却下する決定(135条の読み替え準用)に対して不服を申し立てられないとしています。

再審(171条)

確定した取消決定と確定審決に対しては、当事者又は参加人が再審を請求できます(171条1項)。請求期間は取消決定又は審決の確定後に再審の理由を知った日から30日以内で(173条1項)、確定した日から3年を経過した後は請求できません(173条4項)。

審決取消訴訟と一事不再理

審決取消訴訟(178条・179条)

178条1項は、取消決定又は審決に対する訴えと、特許異議申立書・審判や再審の請求書・訂正の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄とすると定めます。

項目 条文 内容
原告適格 178条2項 当事者、参加人、参加を申請して拒否された者
出訴期間 178条3項・4項 審決又は決定の謄本の送達があった日から30日。不変期間
審決に対する訴えに限る 178条6項 審判を請求できる事項に関する訴えは、審決に対するものでなければ提起できない
被告 179条 原則は特許庁長官。無効審判・延長登録無効審判は請求人又は被請求人

178条6項により、拒絶査定に不服があっても、いきなり裁判所に拒絶査定の取消しを求めることはできず、拒絶査定不服審判を経る必要があります。

一事不再理(167条)

無効審判の確定審決による一事不再理は当事者と参加人にだけ及び、第三者は同一の事実・証拠でも請求できる
無効審判の確定審決による一事不再理は当事者と参加人にだけ及び、第三者は同一の事実・証拠でも請求できる

167条は、特許無効審判又は延長登録無効審判の審決が確定したときは、当事者及び参加人は、同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができないと定めます。効力が及ぶのは「当事者及び参加人」だけで、それ以外の第三者は同一の事実・証拠でも請求できます。対象も2つの無効審判に限られ、拒絶査定不服審判や訂正審判には167条の適用はありません。

短答で狙われる型

審判と審判でない手続の混同。「特許異議の申立ては審判の一種であり、その結論は審決である」「判定に不服があれば審決取消訴訟を提起できる」は誤りです。

請求人の入れ替え。特許無効審判は利害関係人(冒認・共同出願違反は特許を受ける権利を有する者)、特許異議の申立ては何人も、訂正審判は特許権者です。実用新案登録無効審判は、実用新案法37条2項により原則として何人も請求できるので、特許と入れ替えた枝に注意します。実用新案との違いは「実用新案法と特許法の違い」で整理しています。

時期の入れ替え。拒絶査定不服審判は3月、特許異議の申立ては特許掲載公報の発行から6月、審決取消訴訟は30日、再審は30日(確定から3年まで)です。

消滅後の請求。特許無効審判と訂正審判は特許権の消滅後も請求できます。ただし訂正審判は、取消決定や無効審決で特許がなくなった後はできません。

一事不再理の範囲。「確定審決の効力は何人にも及ぶ」とする枝は誤りで、167条は当事者及び参加人に限っています。

被告の取り違え。訂正審判の審決に対する訴えの被告は特許庁長官です。無効審判の審決に対する訴えの被告を特許庁長官とする枝は誤りです。

学習の進め方

審判は、この記事の最初の表を白紙に再現できるかどうかで仕上がりを測れます。行に4つの審判と特許異議の申立て・判定を置き、列に「請求人」「時期」「審理の方式」「一事不再理」「取消訴訟の被告」を置いて埋めます。空欄になったマスの条文だけを読み返せば、復習の範囲を絞れます。

枝の正誤を記録するときは、どの審判のどの列を問う枝だったかを添えておくと、弱い列が見えてきます。審判の枝は「正しいものはいくつあるか」という形式で出されることも多いので、個数問題の解き方は「短答式の個数問題対策」を参考にしてください。特許法全体を手続の時系列で組み立てる方法は「特許法・実用新案法の学習法」で扱っています。

まとめ

  • 特許法の審判は拒絶査定不服・特許無効・延長登録無効・訂正の4種類。特許異議の申立て・判定は審判官が扱うが審判ではない
  • 特許無効審判・延長登録無効審判は口頭審理が原則で、取消訴訟の被告は相手方当事者。拒絶査定不服・訂正審判は書面審理が原則で、被告は特許庁長官
  • 拒絶査定不服審判は謄本送達から3月。前置審査は審判請求と同時に補正があったときに行われる
  • 特許無効審判は利害関係人が請求し(冒認・共同出願違反は権利者のみ)、消滅後も請求できる。延長登録無効審判は125条の2と125条の3の2つ
  • 訂正審判は異議・無効審判の係属中は請求できず、その間は訂正の請求(120条の5・134条の2)で訂正する
  • 審決取消訴訟は東京高等裁判所の専属管轄で謄本送達から30日。一事不再理は無効審判の当事者及び参加人にだけ及ぶ
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