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実用新案法と特許法の違い|無審査登録・技術評価書・訂正を整理

特許法・実用新案法 読了 約10分

弁理士試験短答式の実用新案法を特許法との違いで整理。保護対象(物品の形状・構造・組合せ)、無審査登録と存続期間10年、実用新案技術評価書(12条)と権利行使の制限(29条の2・29条の3)、1回限りの訂正(14条の2)、実用新案登録に基づく特許出願(特許法46条の2)と出願の変更を扱います。

実用新案法は、短答式では特許・実用新案の20問の中に含まれ、単独の科目としては扱われません。条文の多くは特許法の準用で済んでいるため、特許法を学んだ後に「特許と違うところ」だけを拾えば得点源になります。逆に、違いを押さえずに特許法の知識で解くと、同じ言葉の枝で正誤が反転します。

結論から言うと、実用新案法の特有の規定は「無審査で登録する」という前提に結びつけて覚えると整理がつきます。登録までに実体審査がないので、補正の期間は短く、登録料は出願と同時に納め、存続期間は10年です。権利の有効性を特許庁が確かめていない状態で登録されるので、技術評価書を提示して警告してからでないと権利を行使できず、無効になれば原則として損害賠償の責任を負います。審判は無効審判だけで、訂正は1回に限られます。この「前提から派生する規定」の順に並べると、個別の規定を思い出しやすくなります。

条文はe-Gov法令検索の実用新案法・特許法・実用新案法施行規則の原文で確認しています。

特許法との違いの一覧

特許法と実用新案法の比較
特許法と実用新案法の比較
項目 特許法 実用新案法
保護対象 発明(2条1項) 物品の形状・構造・組合せに係る考案(1条・3条1項)
進歩性の水準 容易に発明をすることができたとき(29条2項) きわめて容易に考案をすることができたとき(3条2項)
実体審査 あり(出願審査の請求が必要) なし。放棄・取下げ・却下の場合を除き設定登録(14条2項)
存続期間 特許出願の日から20年(67条1項) 実用新案登録出願の日から10年(15条)
同日出願 協議で定めた一の出願人のみ(39条2項) いずれも登録を受けられない(7条2項)
権利行使 制限なし 技術評価書を提示して警告した後(29条の2)
訂正 訂正審判・訂正の請求 訂正は原則1回限り(14条の2)、訂正審判なし
審判 拒絶査定不服・無効・延長登録無効・訂正 実用新案登録無効審判のみ(37条)
異議 特許異議の申立てあり なし
無効審判の請求人 利害関係人 何人も(37条2項本文)

保護対象は物品の形状・構造・組合せ

1条は、実用新案法の目的を「物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ること」としています。考案の定義は「自然法則を利用した技術的思想の創作」(2条1項)で、特許法の発明の定義(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)から「高度のもの」が抜けた形です。

実用新案の対象は物品の形状・構造・組合せに係る考案で、方法の考案は登録を受けられない
実用新案の対象は物品の形状・構造・組合せに係る考案で、方法の考案は登録を受けられない

3条1項は、産業上利用することができる考案であって「物品の形状、構造又は組合せに係るもの」が登録を受けられるとしています。方法の考案や、一定の形状を持たない物質・組成物は対象外です。短答では「製造方法について実用新案登録を受けることができる」という枝が作れます。

3条2項の進歩性は「きわめて容易に考案をすることができたとき」に登録を受けられないという書き方で、特許法29条2項の「容易に」より基準が緩くなっています。

無審査で登録される

基礎的要件と補正命令

実体審査はありませんが、何も見ないわけではありません。6条の2は、考案が物品の形状・構造・組合せに係るものでないとき、公序良俗違反等で登録できないもの(4条)であるとき、明細書等に必要な事項が記載されていないか記載が著しく不明確であるときなどに、特許庁長官が補正を命ずることができると定めています。

補正は出願から1月

2条の2第1項ただし書は、経済産業省令で定める期間の経過後は、明細書・実用新案登録請求の範囲・図面・要約書について補正ができないとしています。その期間は施行規則1条で、実用新案登録出願の日から1月です。特許法の17条の2のような段階的な時期的制限はなく、「出願から1月」の1本だけです。補正の内容は、願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でしなければなりません(2条の2第2項)。

登録料は出願と同時に

32条1項は、第1年から第3年までの各年分の登録料を、実用新案登録出願と同時に一時に納付しなければならないと定めています。特許では、第1年から第3年までの特許料は特許をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があった日から30日以内に納めます(108条1項)。

存続期間は出願から10年

15条は、実用新案権の存続期間は実用新案登録出願の日から10年をもって終了すると定めます。特許権は特許出願の日から20年(67条1項)です。いずれも「登録の日から」ではなく「出願の日から」数えます。

実用新案技術評価書(12条)

誰が、いつ請求できるか

12条1項は、実用新案登録出願又は実用新案登録について、何人も、特許庁長官に実用新案技術評価を請求できると定めます。2以上の請求項があるときは請求項ごとに請求できます。

論点 条文 内容
請求人 12条1項 何人も
消滅後 12条2項 実用新案権の消滅後も請求できる。無効審判で無効にされた後は不可
特許出願後 12条3項 46条の2の特許出願がされた後は請求できない
取下げ 12条6項 請求は取り下げることができない
通知 13条2項 出願人・権利者以外が請求したときは、その旨を出願人・権利者に通知

評価の対象は限られている

評価の対象は、12条1項が列挙する規定に限られます。3条1項3号(刊行物に記載された考案等)と、それに基づく3条2項の進歩性、3条の2(拡大先願)、7条1項から3項まで及び6項(先願)です。3条1項1号(公然知られた考案)と2号(公然実施をされた考案)は入っていません。文献で確認できない事情は評価の対象外、と理解しておくと覚えやすくなります。

技術評価の対象は刊行物等に基づく新規性・進歩性、拡大先願、先願に限られ、公然知られた・公然実施は入らない
技術評価の対象は刊行物等に基づく新規性・進歩性、拡大先願、先願に限られ、公然知られた・公然実施は入らない

権利行使の制限と責任

評価書を提示して警告した後でなければ行使できない

実用新案権者は、技術評価書を提示して警告した後でなければ侵害者に権利を行使できない
実用新案権者は、技術評価書を提示して警告した後でなければ侵害者に権利を行使できない

29条の2は、実用新案権者又は専用実施権者は、実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、侵害者等に対し権利を行使できないと定めます。評価の結果が「登録を受けられない」という内容であっても、提示と警告という手続の要件自体は条文上区別されていません。

無効になったときの損害賠償責任

29条の3第1項は、権利を行使し又は警告をした後に実用新案登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、権利者等は相手方に与えた損害を賠償する責任を負うと定めます。後発的理由(37条1項6号)による無効は除かれます。

ただし書は、責任を負わない場合として、登録を受けられない旨の評価を受けたものを除く技術評価書の評価に基づいて行使・警告したとき、その他相当の注意をもって行使・警告したときを挙げています。「有効」という評価を得て行使したなら原則として免責される、という構造です。2項は、訂正によって登録時の請求の範囲から外れた考案について行使・警告した場合にも1項を準用しています。

訂正は1回限り(14条の2)

実用新案法には訂正審判がありません。訂正は、実用新案権者が訂正書を提出してする手続です。

実用新案法に訂正審判はなく、訂正は権利者が訂正書を出して原則1回に限りできる
実用新案法に訂正審判はなく、訂正は権利者が訂正書を出して原則1回に限りできる
論点 条文 内容
回数 14条の2第1項 1回に限り
時期の制限 1項1号 最初の技術評価書の謄本の送達があった日から2月を経過したときは不可
時期の制限 1項2号 無効審判で最初に指定された答弁書提出期間を経過したときは不可
目的 2項 請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明、他の請求項の引用をやめること
内容 3項・4項 新規事項の追加の禁止、実質上の拡張・変更の禁止
請求項の削除 7項 削除を目的とする訂正は1回の制限とは別にできる(無効審判の審理終結通知の後は不可)
消滅後 8項 消滅後もできる。無効審判で無効にされた後は不可

特許法126条1項2号が「誤記又は誤訳の訂正」であるのに対し、実用新案法14条の2第2項2号は「誤記の訂正」だけです。また、特許法126条7項の独立特許要件に当たる規定は14条の2にはありません。訂正後の実用新案登録請求の範囲が登録要件を満たすかは、評価書や無効審判で判断されることになります。

審判と異議

実用新案法の審判は、実用新案登録無効審判(37条)だけです。査定がないので拒絶査定不服審判はなく、訂正は14条の2の手続でするので訂正審判もありません。特許異議の申立てに当たる制度もありません。

実用新案法の審判は無効審判だけで、何人も請求できる点が特許無効審判の利害関係人と違う
実用新案法の審判は無効審判だけで、何人も請求できる点が特許無効審判の利害関係人と違う

37条2項本文は、実用新案登録無効審判は何人も請求できると定めています。共同出願違反又は冒認を理由とする場合だけは、実用新案登録を受ける権利を有する者に限られます(同項ただし書)。特許無効審判の「利害関係人に限り」と入れ替えた枝が典型です。特許法の審判の一覧は「特許法の審判の種類一覧」にまとめています。

特許への乗り換え(46条の2と出願の変更)

実用新案登録に基づく特許出願ができなくなる時点
実用新案登録に基づく特許出願ができなくなる時点

実用新案登録に基づく特許出願(特許法46条の2)

実用新案権者は、自己の実用新案登録に基づいて特許出願ができます。この場合、その実用新案権を放棄しなければなりません(46条の2第1項後段)。次の場合はできません。

号 できなくなる場合
1号 実用新案登録出願の日から3年を経過したとき
2号 出願人又は実用新案権者自身が技術評価の請求をしたとき
3号 出願人・権利者以外の者がした技術評価の請求について、13条2項の最初の通知を受けた日から30日を経過したとき
4号 無効審判で最初に指定された答弁書提出期間を経過したとき

2号と3号の違いに注意します。自分で評価を請求すれば直ちに乗り換えの道が閉じますが、他人が請求した場合は、通知から30日の猶予があります。そして他人の請求の後に46条の2の特許出願がされたときは、その評価の請求はされなかったものとみなされます(実用新案法12条7項)。

2項は、特許出願に記載した事項が実用新案登録の明細書等に記載した事項の範囲内にあるものに限り、実用新案登録出願の時にしたものとみなすとしています。ただし書により、29条の2の他の特許出願として後願を排除する場面、30条3項、36条の2第2項ただし書、48条の3第2項の適用については遡りません。専用実施権者・質権者・一定の通常実施権者があるときは、その承諾が必要です(4項)。

出願の変更

登録前の出願段階であれば、出願の変更で行き来できます。

変更の方向 条文 できなくなる時点
実用新案登録出願 → 特許出願 特許法46条1項 実用新案登録出願の日から3年を経過した後
特許出願 → 実用新案登録出願 実用新案法10条1項 最初の拒絶査定の謄本送達から3月を経過した後、又は特許出願の日から9年6月を経過した後

変更があると、もとの出願は取り下げたものとみなされます(特許法46条4項、実用新案法10条5項)。変更後の出願は、もとの出願の時にしたものとみなされます(特許法46条6項による44条2項の準用、実用新案法10条3項)。実用新案登録出願は無審査で設定登録されるため、特許法46条1項の変更が実際に使える期間は短く、登録後の乗り換えは46条の2によることになります。

特許法と共通のところ

11条1項は、特許法30条(新規性喪失の例外)、38条(共同出願)、43条から44条まで(パリ条約による優先権主張の手続等と出願の分割)を実用新案登録出願に準用しています。新規性喪失の例外の期間も特許と同じ1年です。この点は「新規性喪失の例外(特許法30条)」で扱っています。国内優先権は準用ではなく実用新案法8条に独自の規定があり、特許法41条と同じ骨格です。分割については、査定がないため補正ができる期間内に限られると考えておけば足ります(「特許法の分割出願の要件」参照)。

短答で狙われる型

出願審査の請求・訂正審判・異議の申立てなど、特許法の規定を実用新案にそのまま当てはめた枝は誤り
出願審査の請求・訂正審判・異議の申立てなど、特許法の規定を実用新案にそのまま当てはめた枝は誤り

特許法の規定をそのまま当てはめる。「実用新案登録出願について出願審査の請求をしなければならない」「実用新案権者は訂正審判を請求できる」「実用新案登録について異議の申立てができる」は、いずれも誤りです。

技術評価の対象。「公然実施をされた考案であることを理由に、登録を受けることができない旨の評価がされる」は誤りです。評価の対象は3条1項3号・2項(3号関係)・3条の2・7条に限られます。

評価請求の主体と取下げ。技術評価は何人も請求でき、消滅後も請求できますが、取り下げることはできません。

訂正の回数と目的。訂正は1回に限られ(請求項の削除は別)、目的に誤訳の訂正はありません。

46条の2の期限。3年、自己の評価請求、他人の評価請求の通知から30日、無効審判の最初の答弁書提出期間の4つです。「他人が技術評価を請求した時点で特許出願はできなくなる」は誤りです。

同日出願の扱い。実用新案法7条2項は同日の2以上の出願について「いずれも」登録を受けられないとし、協議の制度はありません。

学習の進め方

実用新案法は、条文を頭から読むより、特許法の条文集の余白に「実案では」と書き込む形で学ぶほうが効率的です。特許法の17条の2の横に「実案は出願から1月(2条の2、施行規則1条)」、67条の横に「10年(15条)」、126条の横に「訂正審判なし、14条の2で1回」、123条2項の横に「何人も(37条2項)」と書いておけば、特許法を復習するたびに違いも一緒に目に入ります。

そのうえで、実用新案法固有の条文である12条・13条・14条の2・29条の2・29条の3と、特許法46条の2だけは、条文を通して読みます。数字は「1月」「10年」「2月」「3年」「30日」の5つに絞れます。この記事の一覧表を白紙に再現し、空欄になった行の条文を読み返すのが最短の復習です。特許法全体の中での位置づけは「特許法・実用新案法の学習法」を参照してください。

まとめ

  • 実用新案法の特有の規定は、無審査登録から派生している。保護対象は物品の形状・構造・組合せ、進歩性は「きわめて容易」
  • 補正は出願から1月、登録料は出願と同時に納付、存続期間は出願から10年
  • 技術評価は何人も請求でき、消滅後も可、取下げ不可。対象は刊行物等に基づく新規性・進歩性、拡大先願、先願に限られる
  • 権利行使には技術評価書を提示した警告が必要で、無効審決が確定すると原則として損害賠償責任を負う
  • 訂正は1回限りで訂正審判はない。審判は無効審判だけで、何人も請求できる
  • 実用新案登録に基づく特許出願は出願から3年以内などの制限があり、実用新案権の放棄が条件。出願段階なら出願の変更で行き来できる
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