分割出願の時期的要件|特許法44条の3つの窓と遡及効を短答用に整理
分割出願の時期的要件は特許法44条1項の3つ。補正ができる時又は期間内(1号)、特許査定の謄本送達から30日以内(2号、前置審査等の査定は除く)、最初の拒絶査定の謄本送達から3月以内(3号)です。主体・実体の要件、出願日の遡及とその例外(29条の2・30条3項)、審査請求と50条の2の通知まで整理します。
分割出願は、短答式の特許・実用新案20問で毎年のように顔を出す論点です。条文は44条の1か条ですが、分割できる時期が3つの号に分かれ、効果の規定にはただし書と読み替えが付き、さらに審査請求(48条の3)や50条の2の通知といった別の条文とも結びつきます。枝がどの要件の話かを切り分けられないと、条文を覚えていても正誤を落とします。
結論から言うと、分割出願の枝は「時期」「主体」「実体」の3軸で要件を読み、そのうえで「効果(遡及と例外)」と「付随手続」を別の箱として押さえると整理がつきます。時期は44条1項各号の3つの窓、主体はもとの出願の出願人、実体は審査基準が示す3つの要件です。効果は44条2項本文で出願日が遡り、ただし書で遡らない場面が限定列挙されています。この5つの箱のどれを問う枝かが分かれば、判断はかなり速くなります。
条文はe-Gov法令検索の原文で、審査の運用は特許庁の審査基準で確認しています。
分割の要件を「時期・主体・実体」の3軸に分ける
44条1項の柱書(特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる)に、3つの軸がすべて入っています。
| 軸 | 条文上の手がかり | 中身 |
|---|---|---|
| 時期 | 「次に掲げる場合に限り」 | 1項1号〜3号の3つの窓 |
| 主体 | 「特許出願人は」 | もとの出願の出願人であること |
| 実体 | 「二以上の発明を包含する」「一部を」 | 審査基準の要件1〜要件3 |
主体については、審査基準が、原出願の出願人と分割出願の出願人とは、特許出願の分割時において一致していなければならないとしています。

審査基準は、主体と時期を「形式的要件」、明細書等の記載の範囲に関するものを「実体的要件」と呼んで区別しています。形式的要件を満たさない分割出願は出願自体が却下され、実体的要件を満たさない分割出願は、原出願の時にしたものとはみなされず、現実の出願時にしたものとして扱われます。
出典:特許庁「特許・実用新案審査基準」第Ⅵ部第1章
短答では「実体的要件を満たさない分割出願は却下される」という枝が作れます。却下されるのは形式的要件の欠缺であり、実体的要件の欠缺は遡及効を失うだけです。
時期的要件は1項1号〜3号の3つの窓
44条1項は、分割できる場合を次の3つに限っています。
| 号 | 分割できる時期 | 押さえどころ |
|---|---|---|
| 1号 | 明細書・特許請求の範囲・図面について補正をすることができる時又は期間内 | 17条の2第1項と連動する |
| 2号 | 特許をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内 | 括弧書きで除外される査定がある |
| 3号 | 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3月以内 | 「最初の」拒絶査定に限る |
1号は補正の時期をそのまま借りる
1号の窓は、補正の時期的制限(17条の2第1項)と重なります。拒絶理由通知を受ける前であれば、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前はいつでも補正でき、したがって分割もできます。拒絶理由通知を受けた後は、指定期間内や拒絶査定不服審判の請求と同時など、17条の2第1項各号の場面に限られます。補正の時期の全体像は「特許法の補正の時期的制限|17条の2を短答用に整理」でまとめているので、1号の枝はそちらの表に当てはめて判断します。
2号は特許査定後の30日
2号は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内の分割を認めます。ただし括弧書きで、次の2つの特許査定が除かれています。

- 163条3項において準用する51条の規定による特許をすべき旨の査定(前置審査での特許査定)
- 160条1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定(拒絶査定不服審判で「さらに審査に付すべき旨」の審決を受けた後の特許査定)
つまり2号の窓が開くのは、審判の段階を経ていない通常の審査での特許査定に限られます。前置審査や差戻し後の審査で特許査定を受けた場合、2号を根拠に分割することはできません。
もう1点、審査基準は、特許査定の謄本送達日から30日以内であっても、特許権の設定登録がなされた後は特許出願が特許庁に係属しなくなるため分割できないとしています。
出典:特許庁「特許・実用新案審査基準」第Ⅵ部第1章
3号は最初の拒絶査定後の3月
3号は、拒絶をすべき旨の「最初の」査定の謄本の送達があった日から3月以内の分割を認めます。拒絶査定不服審判の請求期間(121条1項)と同じく3月です。「最初の」とあるので、拒絶査定不服審判で差し戻された後の審査で再び拒絶査定を受けても、その2回目の拒絶査定は3号の起点になりません。
期間の延長と追完(5項〜7項)
2号・3号の期間には、延長と追完の規定があります。
- 5項 2号の30日は、4条または108条3項により108条1項の期間(第1年から第3年までの特許料の納付期間)が延長されたときは、その延長された期間を限り延長されたものとみなす
- 6項 3号の3月は、4条により121条1項の期間(拒絶査定不服審判の請求期間)が延長されたときは、その延長された期間を限り延長されたものとみなす
- 7項 責めに帰することができない理由により2号・3号の期間内に分割できないときは、その理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、期間の経過後6月以内に分割できる
5項と6項で連動する相手を入れ替えた枝に備え、「2号は特許料、3号は審判」と対で覚えます。7項の救済は2号・3号だけが対象で、1号は挙がっていません。
実体的要件は審査基準の3要件で判断する
条文は「二以上の発明を包含する特許出願の一部を」としか書いていません。具体的な判断は審査基準が次の3つの要件で示しています。

| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 要件1 | 原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が、分割出願の請求項に係る発明とされたものでないこと |
| 要件2 | 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること |
| 要件3 | 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であること |
出典:特許庁「特許・実用新案審査基準」第Ⅵ部第1章
要件2と要件3は、比べる相手が違います。要件2は「出願当初」、要件3は「分割直前」です。出願後の補正で記載を削った事項は、出願当初の明細書等には書かれていても、分割直前の明細書等には残っていません。そのため、原則としてその事項を分割出願に取り込むことはできません。
ただし審査基準は、原出願の明細書等について補正をすることができる時期に分割がなされた場合は、要件2が満たされれば要件3も満たされることとしています。1号の窓で分割するなら、補正で削った事項も戻せる時期なので、実質的には出願当初の記載の範囲内かどうかを見れば足ります。一方、2号・3号の窓は査定の後で補正ができない時期なので、要件2と要件3の両方が必要です。
要件1について、審査基準は、分割出願の特許請求の範囲の記載が原出願の特許請求の範囲の記載と同一であることのみでは要件1が満たされていないことにはならないとしています。「請求項が原出願と同じなら分割は認められない」と言い切る枝は誤りと判断できます。
分割の効果は出願日の遡及と、その例外
2項本文のみなし遡及
44条2項本文は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなすと定めます。新規性・進歩性・先願(39条)などの判断基準日は、原則として原出願の日になります。
2項ただし書で遡及しない規定
ただし書は、遡及しない場面を限定列挙しています。条文は「ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。」です。ここに挙がっているのは、次の2種類だけです。

- 分割出願が、後の出願を排除する側(29条の2の「他の特許出願」、実用新案法3条の2の「特許出願」)として使われる場面
- 新規性喪失の例外の手続を定める30条3項の適用
前者により、分割出願が拡大先願として他人の後願を排除できるかどうかは、原出願の日ではなく分割出願の現実の出願日を基準に判断します。逆に、分割出願自身が審査を受ける側として29条の2を適用される場面は、ただし書に含まれていません。「排除する側」と「排除される側」を入れ替えた枝に注意します。
後者の30条3項は、新規性喪失の例外の適用を受けたい旨の書面を特許出願と同時に、証明書を出願の日から30日以内に提出することを求める規定です。この手続は分割出願の現実の出願を基準にし、4項のみなし提出が補います。
3項の読み替えと4項のみなし提出
3項は、パリ条約による優先権証明書類等の提出期限(43条2項)を読み替えます。43条2項は「最先の日から一年四月以内」と定めていますが、分割出願では「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とされます。
4項は、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について30条3項、41条4項、43条1項及び2項(43条の2第2項・43条の3第3項で準用する場合を含む)の規定により提出しなければならないものは、新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなすと定めます。
分割に伴う手続(審査請求と50条の2の通知)
審査請求の期間の特則(48条の3第2項)
出願審査の請求は、特許出願の日から3年以内にしなければなりません(48条の3第1項)。分割出願の「特許出願の日」は2項本文により原出願の日とみなされるため、分割した時点で3年を過ぎていることがあります。

そこで48条の3第2項は、分割に係る新たな特許出願については、1項の期間の経過後であっても、特許出願の分割の日から30日以内に限り審査請求ができると定めています。出願の変更に係る特許出願と、実用新案登録に基づく特許出願も同じ扱いです。「3年経過後の分割出願は審査請求できない」「分割の日から3月以内」といった枝は誤りです。
50条の2の通知と補正の制限
50条の2は、審査官が拒絶の理由を通知しようとする場合に、その理由が他の特許出願についての拒絶理由通知に係る理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならないと定めます。ここでいう他の特許出願は、括弧書きで「当該特許出願と当該他の特許出願の少なくともいずれか一方に第四十四条第二項の規定が適用されたことにより当該特許出願と同時にされたこととなつているもの」に限られます。つまり、原出願と分割出願、または同じ原出願から生まれた分割出願どうしの関係です。さらに、当該特許出願についての出願審査の請求前に出願人がその内容を知り得る状態になかったものは除かれます。
この通知を受けると、最初の拒絶理由通知であっても、補正に目的の制限(17条の2第5項)がかかり、違反すれば補正の却下(53条1項)の対象になります。原出願で示された拒絶理由が分割出願でも繰り返されるときに、補正の自由度を最後の拒絶理由通知の後と同じ水準に絞る仕組みです。補正の側から見た整理は「特許法の補正の時期的制限」の目的の制限と補正の却下の節で扱っています。
実用新案・意匠・商標の分割との比較
分割の制度は4法すべてにありますが、時期の定め方と遡及の例外が法ごとに違います。
| 法 | 根拠 | 分割できる時期 | 遡及しない規定 |
|---|---|---|---|
| 特許法 | 44条 | 1項1号〜3号の3つの窓 | 29条の2・実用新案法3条の2の他の出願、30条3項 |
| 実用新案法 | 11条1項で特許法44条を準用 | 準用による(査定の手続は無い) | 準用による |
| 意匠法 | 10条の2 | 審査・審判・再審に係属している場合 | 4条3項、準用する特許法43条1項・2項 |
| 商標法 | 10条 | 審査・審判・再審に係属、又は拒絶審決に対する訴えが係属している場合(手数料の納付が必要) | 9条2項、準用する特許法43条1項・2項 |
実用新案法は11条1項で特許法43条から44条までを準用しています。実用新案登録出願は無審査で登録されるため査定の手続がなく、2号・3号の窓が開く場面は生じません。分割は補正ができる期間内に限られると考えておけば足ります。
意匠法10条の2第1項は「審査、審判又は再審に係属している場合に限り」、二以上の意匠を包含する意匠登録出願の一部を新たな意匠登録出願とすることができると定めます。
商標法10条1項は、審査・審判・再審に加えて、拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合も分割を認めます。ただし、76条2項により納付すべき手数料を納付していることが条件です。分割の対象も「二以上の商品又は役務を指定商品又は指定役務とする」出願の一部であり、発明や意匠の数ではなく指定商品・役務で切り分けます。
遡及の例外も違います。意匠法と商標法は、新規性喪失の例外や出願時の特例の証明書(意匠法4条3項、商標法9条2項)と、準用する特許法43条1項・2項の優先権の手続について遡及を外し、そのうえで原出願で提出した書面を分割出願と同時に提出したものとみなす規定を置いています。特許法の2項ただし書にある29条の2型の例外は、意匠法・商標法の分割の規定にはありません。意匠法の各論は「意匠法の短答対策」で扱っています。
短答で狙われる型
分割の枝には、決まった作られ方があります。

「補正できる時」の言い換え。1号を「補正をした時」「補正書と同時に」と書き換える型です。条文は補正が「できる」時又は期間内であり、補正の有無は関係ありません。また、拒絶理由通知の指定期間を過ぎた後は、補正ができないので1号の窓も閉じています。
30日と3月の入れ替え。2号(特許査定後30日)と3号(最初の拒絶査定後3月)の数字を入れ替える型です。48条の3第2項の審査請求(分割の日から30日)も混ぜてくるので、起点と期間を対で覚えます。
2号の括弧書き。前置審査での特許査定や、差戻し後の審査での特許査定の後に「30日以内なら分割できる」とする枝は誤りです。設定登録後は30日以内でも分割できない点もあわせて押さえます。
遡及例外の取り違え。「分割出願について29条の2の適用は現実の出願日を基準とする」と、排除される側まで例外に含める型です。ただし書が外しているのは、分割出願が「他の特許出願」として後願を排除する側に立つ場面です。
形式と実体の効果の取り違え。実体的要件を満たさないと却下される、とする枝は誤りで、現実の出願日で審査されます。却下されるのは主体・時期の要件を欠くときです。
分割の分割(孫出願)。審査基準は、子出願が親出願に対して分割の要件をすべて満たし、孫出願が子出願に対して分割の要件をすべて満たし、かつ孫出願が親出願に対して実体的要件をすべて満たす場合に、孫出願を親出願の時にしたものとして扱うとしています。子出願の段階で要件を欠いていれば、孫出願は親出願の日まで遡りません。
出典:特許庁「特許・実用新案審査基準」第Ⅵ部第1章
学習の進め方
分割は、補正と同じ時系列の表に載せると定着します。出願、拒絶理由通知、応答、特許査定または拒絶査定、審判請求という横軸を引き、補正ができる期間の上に1号、特許査定の後ろに2号の30日、最初の拒絶査定の後ろに3号の3月を書き込みます。2号の下に「前置・差戻し後は除く」「設定登録まで」と添えれば、時期の枝はこの1枚で判断できます。特許法全体を手続の流れで組み立てる方法は「特許法・実用新案法の学習法」で扱っています。
効果は、44条2項ただし書を一字一句読み、29条の2・実用新案法3条の2・30条3項の3つが出てくること、43条はただし書ではなく3項と4項で扱われていることを確認します。意匠法10条の2と商標法10条の2項を並べて読むと、特許だけに29条の2型の例外がある点がはっきりします。
演習では、枝を読んだら「時期・主体・実体・効果・手続」のどの箱かを先に決め、間違えた枝を箱ごとに記録します。枝単位の記録と復習の回し方は「短答式の過去問は肢別で回す」で整理しています。
よくある質問
分割出願の時期的要件を一言で言うと
「補正できる時」「特許査定後30日」「最初の拒絶査定後3月」の3つです(44条1項1号〜3号)。どれか1つの窓が開いていれば分割できます。
拒絶査定不服審判の請求と同時に分割できますか
できます。審判請求と同時は補正ができる時期(17条の2第1項4号)に当たるので、44条1項1号の窓として分割できます。ただし、拒絶査定の謄本送達から3月以内という「3号」の窓とは別の根拠なので、枝がどちらの号を聞いているかを取り違えないようにします。
特許査定後の分割はいつでも30日以内ならできますか
通常の審査での特許査定なら30日以内です。前置審査での特許査定(163条3項で準用する51条)と、差戻し後の審査での特許査定(160条1項)は2号の括弧書きで除かれています。また、30日以内でも設定登録の後は出願が係属していないので分割できません。
まとめ
- 分割出願の要件は「時期・主体・実体」の3軸で読み、効果と付随手続を別の箱で押さえる
- 時期は44条1項の3つの窓。1号は補正ができる時又は期間内、2号は特許査定謄本送達から30日(前置審査・差戻し後の特許査定は除く)、3号は最初の拒絶査定謄本送達から3月
- 2号の30日は特許料の納付期間、3号の3月は審判請求期間の延長に連動して延び、7項の追完は2号・3号だけが対象
- 実体的要件は審査基準の要件1〜3。形式的要件を欠くと却下、実体的要件を欠くと現実の出願日で審査される
- 出願日は原出願の時に遡るが、29条の2・実用新案法3条の2の他の出願としての適用と30条3項の適用は遡らない。43条2項は3項で読み替え、書面は4項で同時提出とみなされる
- 審査請求は3年経過後でも分割の日から30日以内に可能(48条の3第2項)。50条の2の通知を受けると最初の拒絶理由通知でも補正に目的の制限がかかる
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