弁理士試験AIブートラボ 弁理士AIブートラボ

国境措置と刑事手続(51〜61条)こっきょうそちとけいじてつづき

条約 第4章 TRIPS協定 短答で16枝

国境措置とは、TRIPS協定51条から60条までが定める、不正商標商品又は著作権侵害物品の輸入のおそれがあるときに権利者の申立てで税関当局が物品の自由な流通への解放を停止する手続と、その申立て・担保・通知・期間・賠償・点検・廃棄の要件です。刑事手続とは、61条が、少なくとも故意による商業的規模の商標の不正使用及び著作物の違法な複製について刑事上の手続及び刑罰を定めることを加盟国に求める規定です。

偽ブランドのかばんが大量に輸入されてから一つずつ裁判で止めるのでは間に合いません。国境で、つまり税関の段階で止めるのが一番効きます。TRIPS協定の第3部第4節は、不正商標商品と著作権侵害物品について、権利者の申立てで税関当局が物品の解放を止める手続を加盟国に義務づけ、その代わりに、申立ての証拠、担保、輸入者への通知、10執務日という期限、不当な留置の賠償という歯止めを並べました。第5節の61条は、故意の商業的規模の商標の不正使用と海賊版には刑事罰を用意することまで求めています。

港の税関の窓口の場面。先生が税関職員役(札「税関」)でカウンターの内側に座り、「解放の停止の申立書」と書かれた書類を受け取っている。カウンターの外に商標権者の男性(札「商標権者」)が偽ブランドのかばんの写真を示し、吹き出し「この偽物が輸入さ

51条は、不正商標商品又は著作権侵害物品の輸入のおそれがあるときに権利者が解放の停止を申し立てる手続の採用を義務づけ、他の知的所有権の侵害物品と輸出については任意とします

51条は、不正商標商品又は著作権侵害物品が輸入されるおそれがあると疑うに足りる正当な理由を有する権利者が、税関当局による物品の自由な流通への解放の停止を求めて、行政上又は司法上の権限のある当局に書面で申立てを提出することができる手続を採用することを加盟国に求めます。「不正商標商品が輸入されるおそれがあると疑うに足りる正当な理由を有する権利者が、当該商品の自由な流通への解放を税関当局が停止するよう、行政上又は司法上の権限のある当局に対し書面により申立てを提出することができる手続を採用しなければならない」という枝は正しいです。義務の対象はこの二つで、他の知的所有権の侵害を伴う物品についてはこの節の要件を満たすことを条件に申立てを認めることができ、輸出される侵害物品の解放の停止についても同様の手続を定めることができるにとどまります。そこで特許権侵害物品について申立手続を採用することは義務ではなく、空欄補充で義務の対象を「不正商標商品又は著作権侵害物品」とした枝は正しいです。51条の注は、権利者の同意を得て他国の市場に置かれた物品の輸入と通過中の物品には手続を適用する義務がないと了解しています。不正商標商品とは、有効に登録された商標と同一又は本質的な側面で区別できない商標を許諾なく付した物品(包装を含む)、著作権侵害物品とは、権利者の同意なく作られた複製物で輸入国の法令上著作権又は関連する権利の侵害となるものを指します。日本は関税法69条の11で、特許権・実用新案権・意匠権・育成者権の侵害物品まで輸入してはならない貨物とし、69条の13で認定手続の申立てを認めているので、協定より広い保護です。

申立人は侵害の事実を一応確認するに足りる適切な証拠と物品の十分詳細な記述を提出し、当局は担保又は同等の保証を要求する権限を持ちますが、手続の利用を不当に妨げてはなりません

52条は、申立人に、輸入国の法令上侵害の事実があることを権限のある当局が一応確認するに足りる適切な証拠と、税関当局が容易に識別することができるよう物品に関する十分詳細な記述の提出を求め、当局は申立ての受理の有無と措置の期間を合理的な期間内に申立人に通知します。空欄補充では、52条の証拠として「一応確認するに足りる適切な証拠」、記述として「容易に識別することができるよう物品に関する十分詳細な記述」を入れた枝が正しく、両者を入れ替えた枝は誤りです。53条1は、権限のある当局が、被申立人及び権限のある当局を保護し濫用を防止するために十分な担保又は同等の保証を申立人に要求する権限を有すると定め、担保は手続の利用を不当に妨げるものであってはならないとします。「担保又は同等の保証は、手続の利用を不当に妨げるものであってはならない」という枝は正しく、担保を「要求しなければならない」とした枝は誤りです(要求するかどうかは権限であって義務ではないからです)。53条2は、意匠、特許、回路配置又は開示されていない情報に係る物品について、司法当局その他の独立した当局以外の決定を根拠に解放が停止され、55条の期間が暫定的な救済なく満了したときは、輸入の他の条件が満たされていることを条件に、所有者・輸入者・荷受人が権利者を保護するに十分な担保の提供により解放を受ける権利を有するとします。空欄補充でこの対象を「意匠、特許、回路配置又は開示されていない情報」とした枝は正しいです。商標と著作権の侵害物品はこの解放の権利の対象から外れており、証明が比較的容易な不正商標商品・著作権侵害物品と、判断に専門性がいる特許等の物品を分けた扱いです。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から札「解放の停止(輸入者と申立人に速やかに通知 54条)」「申立人への通知の送達」「10執務日(適当な場合は10執務日延長)」「本案手

解放の停止は輸入者と申立人の双方に速やかに通知し、10執務日以内に本案手続の開始等が通報されなければ物品は解放され、不法な留置の賠償を命ずる権限が当局に与えられます

54条は、51条による解放の停止を輸入者及び申立人に速やかに通知すると定めるので、通知を受けるのは申立人だけではありません。55条は、申立人が停止の通知の送達を受けてから10執務日を超えない期間内に、本案の決定に至る手続が被申立人以外の当事者により開始されたこと、又は正当に権限を有する当局が停止を延長する暫定措置をとったことを税関当局が通報されなかった場合には、輸入又は輸出のための他のすべての条件が満たされていることを条件に物品を解放し、適当な場合にはこの期限をさらに10執務日延長できるとします。解放は他の条件が満たされている場合に限られ、停止が解けても輸入の他の要件を免れるわけではありません。本案の手続が開始されたときは、被申立人の申立てにより意見を述べる機会のある審査を合理的な期間内に行い、司法上の暫定措置として停止が続く場合は50条6が適用されます。56条は、関係当局が、不法な留置又は55条により解放された物品の留置によって生じた損害について、申立人に輸入者・荷受人・所有者への適当な賠償を命ずる権限を有すると定めます。命ずる権限を与える規定であって、常に命ずる義務を課すものではありません。57条は、秘密の情報の保護を害することなく、権利者が主張を裏付けるために税関当局により留置された物品を点検する十分な機会を与える権限を権限のある当局に付与し、輸入者にも同等の機会を与える権限を与えるので、「権利者が自己の主張を裏付けるために税関当局により留置された物品を点検するための十分な機会を与える権限を付与する」という枝は正しいです。本案について肯定的な決定が行われた場合に、荷送人・輸入者・荷受人の名称及び住所と物品の数量を権利者に通報する権限を当局に与えることは加盟国の任意なので、その権限を「与えてはならない」という枝は誤りです。58条は、職権で解放を停止する制度をとる加盟国について、権利者からの情報の求め、輸入者と権利者への速やかな通知、善意の行為に限った当局・公務員の免責を定めます。

  • 申立て(52条)権限のある当局が一応確認するに足りる適切な証拠と、税関当局が容易に識別できる物品の十分詳細な記述です
  • 担保(53条1)要求する権限があり、手続の利用を不当に妨げてはなりません。意匠・特許・回路配置・開示されていない情報の物品は期間満了後に担保で解放を受ける権利があります(53条2)
  • 通知(54条)輸入者及び申立人に速やかに通知します
  • 期間(55条)通知の送達から10執務日(適当な場合は10執務日延長)以内に本案手続の開始等の通報がなければ、他の条件を満たす限り解放します
  • 賠償(56条)不法な留置の損害について申立人に賠償を命ずる権限です
  • 点検・情報(57条)権利者と輸入者に点検の機会を与える権限は義務、肯定的な決定後の荷送人等の通報の権限は任意です

侵害物品は46条の原則で廃棄・処分でき、不正商標商品は例外的な場合を除き変更のない状態での積戻しを許さず、少量の非商業的な輸入は除外でき、税関当局間の協力を促進します

59条は、権利者の他の請求権を害さず、司法当局による審査を求める被申立人の権利に服することを条件に、権限のある当局が46条の原則に従って侵害物品の廃棄又は処分を命ずる権限を有すると定め、不正商標商品については例外的な場合を除くほか、変更のない状態で侵害商品の積戻しを許容し又は異なる税関手続に委ねてはならないとします。「不正商標商品については、例外的な場合を除くほか、変更のない状態で侵害商品の積戻しを許容し又は異なる税関手続に委ねてはならない」という枝は正しく、「いかなる場合でも、変更のない状態で侵害商品の積戻しを許容し又は異なる税関手続きに委ねてはならない」という枝は誤りです。60条は、旅行者の手荷物に含まれ又は小型貨物で送られる少量の非商業的な性質の物品をこの節の適用から除外することができると定めるだけで、商業的な性質の物品は除外できません。そこで旅行者の手荷物に含まれる少量の不正商標商品であっても、商業的な性質を有する物品であれば、51条の手続の対象から外すことはできません。69条は、加盟国が侵害物品の国際貿易を排除するために相互に協力することを合意し、国内行政機関に連絡先を設けて通報し、特に不正商標商品及び著作権侵害物品の貿易について税関当局間の情報の交換と協力を促進すると定めるので、「知的所有権を侵害する物品の国際貿易を排除するため、相互に協力することを合意する」という枝は正しく、「司法当局間で情報の交換及び協力を促進しなければならない」という枝は誤りです。

61条は、少なくとも故意による商業的規模の商標の不正使用及び著作物の違法な複製について刑事上の手続及び刑罰を義務づけ、特許権の侵害などは定めることができるにとどめます

61条は、少なくとも故意による商業的規模の商標の不正使用及び著作物の違法な複製について、刑事上の手続及び刑罰を定めることを加盟国に求め、制裁には同等の重大性を有する犯罪に適用される刑罰の水準に沿った抑止力のある拘禁刑又は罰金を含め、適当な場合には侵害物品と主として犯罪に使用された材料・道具の差押え、没収及び廃棄も含めます。故意が要件なので、「故意か過失かを問わずに、商業的規模の商標の不正使用について適用される刑事上の手続及び刑罰を定めなければならない」という枝は誤りです。その他の知的所有権の侵害、特に故意にかつ商業的規模で行われるものについては刑事上の手続及び刑罰を定めることができるとされているだけなので、特許権の侵害について刑事上の手続及び刑罰を定めることは義務ではありません。日本は特許法196条や商標法78条で特許権侵害・商標権侵害に刑事罰を置いており、協定が義務づける範囲を超えて保護しています。

税関の保税倉庫の場面。先生が税関職員役(札「税関」)で、「不正商標商品」と札の付いた偽ブランドのかばんの山の前に立つ。輸入業者の男性(札「輸入業者」)が船を指さし、吹き出し「侵害品だと決まったなら、このまま船に積み戻して別の国へ送ります」。
TRIPS協定51条(第1文)

加盟国は,この節の規定に従い,不正商標商品又は著作権侵害物品(注1)が輸入されるおそれがあると疑うに足りる正当な理由を有する権利者が,これらの物品の自由な流通への解放を税関当局が停止するよう,行政上又は司法上の権限のある当局に対し書面により申立てを提出することができる手続(注2)を採用する。

試験ではこう問われる

  1. 解放停止の申立手続の採用義務は「不正商標商品又は著作権侵害物品」。特許権侵害物品について義務という枝は誤り、義務はないという枝は正しい。輸出・通過は任意(51条)
  2. 申立人が出すのは権限のある当局が「一応確認するに足りる適切な証拠」と税関当局が「容易に識別することができるよう物品に関する十分詳細な記述」。入れ替えた枝は誤り(52条)
  3. 担保又は同等の保証は要求する「権限」で、手続の利用を不当に妨げてはならない。「要求しなければならない」という枝は誤り(53条1)。意匠・特許・回路配置・開示されていない情報の物品は期間満了後に担保で解放の権利(53条2)
  4. 通知は輸入者「及び」申立人に速やかに(54条)。10執務日(10執務日延長可)以内に本案手続の開始等の通報がなければ、他の条件を満たす場合に限り解放(55条)
  5. 不法な留置の賠償は命ずる「権限」(56条)。点検の機会を与える権限の付与は義務、肯定的な決定後の荷送人等の通報の権限は「付与することができる」(57条)
  6. 不正商標商品は例外的な場合を除き変更のない状態での積戻し・異なる税関手続は不可。「いかなる場合でも」という枝は誤り(59条)。少量輸入の除外は非商業的な性質のものだけ(60条)
  7. 刑事罰は少なくとも「故意による」商業的規模の商標の不正使用と著作物の違法な複製。過失を含む枝、特許権侵害に義務とする枝は誤り(61条)
  8. 69条の協力は「税関当局間」。司法当局間という枝は誤り

この用語が問われた枝

平成29年度 問50 枝ハ正しい

加盟国は、不正商標商品が輸入されるおそれがあると疑うに足りる正当な理由を有する権利者が、当該商品の自由な流通への解放を税関当局が停止するよう、行政上又は司法上の権限のある当局に対し書面により申立てを提出することができる手続を採用しなければならない。

令和5年度 問49 枝ハ正しい

1意匠法又は著作権法2特許若しくは効果的な特別の制度又はこれらの組合せ3不正商標商品又は著作権侵害物品4意匠、特許、回路配置又は開示されていない情報

令和8年度 問49 枝ハ正しい

国境措置では、権限のある当局は、申立人に対し、被申立人及び権限のある当局を保護し並びに濫用を防止するために十分な担保又は同等の保証を提供するよう要求する権限を有するが、担保又は同等の保証は、手続の利用を不当に妨げるものであってはならない。

令和7年度 問50 枝ニ正しい

秘密の情報の保護を害することなく、加盟国は、権限のある当局に対し、権利者が自己の主張を裏付けるために税関当局により留置された物品を点検するための十分な機会を与える権限を付与する。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

条約を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

関連する用語

TRIPS協定

TRIPS協定の基本原則(1〜8条)

TRIPS協定の基本原則とは、世界貿易機関の加盟国が知的所有権の保護について守る最低基準の性格(1条)、パリ条約1...
TRIPS協定

商標・地理的表示・意匠(15〜26条)

商標・地理的表示・意匠とは、TRIPS協定の第2部第2節から第4節が定める、商標の保護の対象・権利・例外・保護期間...
TRIPS協定

権利行使の一般的義務・民事手続・暫定措置(41〜50条)

権利行使の一般的義務・民事手続・暫定措置とは、TRIPS協定の第3部第1節から第3節が、知的所有権の侵害に対して効...
TRIPS協定

その他の分野と協定の運用(9〜14条・39条・40条・62〜73条)

その他の分野と協定の運用とは、TRIPS協定のうち、著作権及び関連する権利(9〜14条)、開示されていない情報の保...
パリ条約

不法に商標等を付した産品の差押え・不正競争の防止・博覧会の仮保護(9〜11条)

不法に商標等を付した産品の差押え・不正競争の防止・博覧会の仮保護とは、パリ条約の9条から11条が定める、不法に商標...