マドリッド協定議定書|従属性5年と再出願を商標法と対応で整理
弁理士試験短答式のマドリッド協定議定書(マドプロ)を条文で整理。基礎出願・基礎登録と本国官庁、国際登録の日、領域指定と事後指定、拒絶通報の期間、5年の従属性とセントラルアタック、9条の5の再出願、存続期間と更新を、商標法68条の2以下の対応条文と並べてまとめます。
マドリッド協定議定書(マドプロ)は、1つの国際出願で複数の締約国に商標の保護を求めるための条約です。条約科目の10問の中ではパリ条約・PCTより出題は少ないものの、商標法68条の2以下に対応する国内規定があるため、条約と商標法の両方から問われます。数字(2箇月・1年・18箇月・5年・3箇月・10年)が多く、入れ替えの枝が作りやすい分野です。
結論から言うと、マドプロの枝は「国際出願は本国官庁の基礎出願・基礎登録を基礎に、本国官庁を通じて国際事務局に出す」「本国官庁の締約国は指定できない」「国際登録の日から5年間は基礎に従属し、その間に基礎が消えれば国際登録も取り消される」「取消しの日から3箇月以内に同一の標章で再出願すれば国際登録の日にしたものとみなす」「存続期間は10年で、更新も10年」の5点で判断できます。日本の商標法の側では、基礎にできるのは自己の商標登録出願・防護標章登録出願と自己の商標登録・防護標章登録(68条の2)、再出願は68条の32、存続期間は68条の21です。
議定書は世界知的所有権機関(WIPO)の英文正文と特許庁の和文(特許庁「マドリッド議定書」、2024年3月4日更新)、商標法はe-Gov法令検索の原文で確認しています。条約科目全体の中での位置付けは「条約の短答対策」で扱っています。
議定書の仕組み
議定書による国際登録は、次の順に進みます。
- 出願人は、ある締約国の官庁に標章登録出願をするか、標章登録を受けている(基礎出願・基礎登録)
- その官庁(本国官庁)を通じて、国際事務局に国際出願をする。保護を求める締約国を指定する
- 国際事務局が国際登録簿に登録し、指定された締約国の官庁に通報する
- 指定締約国の官庁は、自国の法令に従って審査し、保護を与えられない場合は期間内に拒絶の通報をする
- 拒絶の通報がなければ、その締約国で登録されたのと同一の保護が与えられる
PCTが「出願」の手続を束ねるだけで特許付与は各国に任せるのに対し、マドプロは「登録」までを国際事務局で一元化し、各国は拒絶するかどうかだけを判断する点が違います。
基礎出願・基礎登録と本国官庁(2条)
議定書2条(1)は、いずれかの締約国の官庁に標章登録出願をした場合、または標章登録がされた場合に、その基礎出願・基礎登録の名義人が、国際事務局の国際登録簿への国際登録を受けることで、締約国の領域で保護を確保できると定めています。基礎は出願でも登録でもよい点が、議定書の特徴です。

名義人の資格として、2条(1)(i)は、国である締約国の官庁に基礎出願をし、または基礎登録がされた場合には、その名義人がその締約国の国民であるか、その締約国に住所または現実かつ真正の工業上・商業上の営業所を有していることを求めています。
2条(2)は、国際出願は基礎出願を受理し、または基礎登録をした官庁(本国官庁)を通じ、国際事務局に対して行うと定めます。国際事務局に直接出すことはできません。
商標法68条の2
日本を本国官庁とする場合、商標法68条の2第1項が出願人と基礎を定めています。
- 出願人:日本国民、または日本国内に住所・居所(法人は営業所)を有する外国人
- 基礎:特許庁に係属している自己の商標登録出願または防護標章登録出願(1号)、自己の商標登録または防護標章登録(2号)
- 出願先:特許庁長官
- 共同出願:経済産業省令で定める要件に該当するときは、2人以上が共同してできる
防護標章登録出願・防護標章登録も基礎にできることと、基礎が「自己の」ものであることが枝になります。防護標章の制度は「防護標章登録」で整理しています。
本国官庁の証明と国際登録の日(3条)
議定書3条(1)により、本国官庁は、国際出願の願書の記載事項が基礎出願・基礎登録の記載事項と一致している旨を証明し、国際出願を受理した日を願書に記載します。商標法68条の3は、特許庁長官が願書等を国際事務局に送付し、記載事項が一致するときはその旨と受理の日を記載すると定めています。

国際登録の日は3条(4)で決まります。
| 国際事務局が国際出願を受理した時期 | 国際登録の日 |
|---|---|
| 本国官庁の受理の日から2箇月の期間内 | 本国官庁が国際出願を受理した日 |
| 2箇月の期間の満了後 | 国際事務局が国際出願を受理した日 |
また4条(2)は、すべての国際登録について、パリ条約4条Dの手続に従うことを要することなく、同条の優先権を認めています。
領域指定と事後指定(3条の2・3条の3)
3条の2は、国際登録による保護の効果は、出願人または名義人が指定した締約国にのみ及ぶとし、ただし書で、その官庁が本国官庁に当たる締約国は指定できないと定めています。日本の特許庁を本国官庁とする国際出願で日本を指定することはできません。日本での保護は基礎出願・基礎登録で足りるからです。

3条の3(1)は国際出願の際の指定、(2)は国際登録後の指定(事後指定)を定めます。事後指定は国際事務局が直ちに記録し、国際登録簿に記録された日から効力を生じ、その国際登録の存続期間の満了によって効力を失います。事後指定をしても、その部分だけ存続期間が延びるわけではありません。
商標法68条の4は、国際登録の名義人が事後指定を特許庁長官にすることができると定めています。
日本を指定する国際登録の扱い
逆に、外国の官庁を本国官庁として日本を指定した場合、商標法68条の9第1項により、その領域指定は国際登録の日(事後指定の場合は事後指定の日)にされた商標登録出願とみなされます。これを国際商標登録出願といいます。国際商標登録出願については、分割(10条)と出願の変更(11条・65条)の規定は適用されません(68条の12・68条の13)。
拒絶の通報(5条)
5条(1)は、指定締約国の官庁が、関係法令が認める場合に、保護を与えることができない旨を拒絶の通報で宣言する権利を持つとします。拒絶の理由は、その官庁に直接出願された標章についてパリ条約上援用できる理由に限られます。

期間は5条(2)で決まります。
- (a) 原則:国際事務局が領域指定の通報をした日から1年の期間が満了する前
- (b) 締約国は、この1年を18箇月とする旨を宣言できる
- (c) (b)の宣言に、異議申立ての結果による拒絶は18箇月経過後も通報されうる旨を明示できる。この場合、18箇月の満了前にその可能性を国際事務局に通報し、異議申立期間の満了から1箇月以内、かつ異議申立期間の開始から7箇月以内に通報する
5条(5)により、期間内に暫定的または最終的な拒絶の通報をしなかった官庁は、その国際登録について拒絶の権利を失います。
従属性とセントラルアタック(6条)
5年間の従属
6条(1)は、国際事務局における標章登録の存続期間を10年とします。6条(2)は、国際登録は国際登録の日から5年の期間が満了したときに、基礎出願・基礎出願による登録・基礎登録から独立すると定めます。

6条(3)は、国際登録の日から5年の期間が満了する前に、基礎出願・基礎登録が取り下げられ、消滅し、放棄され、または確定的な決定により拒絶・抹消・取消し・無効とされた場合には、国際登録による保護は、指定された商品・役務の全部または一部について主張できなくなるとします。国際登録が移転の対象になったかどうかを問いません。
さらに、5年の満了前に始まった次の手続の結果、5年の満了後に基礎が確定的に拒絶・取消し等をされた場合も同様です。
- 基礎出願の効果を否認する決定に対する不服の申立て
- 基礎出願の取下げを求める申立て、または基礎出願による登録・基礎登録の抹消・取消し・無効を求める申立て
- 基礎出願に対する異議の申立て
第三者が本国で基礎登録の無効審判などを請求して基礎を消滅させ、それによって全指定国の保護をまとめて失わせることを、一般にセントラルアタックと呼びます。
6条(4)により、本国官庁は関係する事実と決定を国際事務局に通報し、該当する範囲で国際登録の取消しを請求します。国際事務局はその範囲で国際登録を取り消します。
商標法68条の20
日本を指定する国際登録が取り消されるなどして消滅したときは、国際商標登録出願はその消滅した範囲で取り下げられたものとみなされ、設定登録を受けた国際登録に基づく商標権はその範囲で消滅したものとみなされます(68条の20第1項・第2項)。効果は国際登録簿から国際登録が消滅した日から生じます(3項)。
再出願(9条の5・商標法68条の32)
セントラルアタックで国際登録が取り消されても、各指定国での保護を失わせるのは酷なので、議定書は国内出願への変更を認めています。
9条の5は、6条(4)に基づく本国官庁の請求で国際登録が取り消された場合に、名義人であった者が、領域指定が行われていた締約国の官庁に同一の標章の標章登録出願をしたときは、次の条件を満たせば、国際登録の日(または事後指定の記録の日)にされたものとみなし、優先権も維持するとしています。
- (i) 国際登録が取り消された日から3箇月以内の出願であること
- (ii) 出願の商品・サービスが、その締約国に係る国際登録で指定されていた商品・サービスに実際に含まれること
- (iii) 手数料の支払を含む関係法令上のすべての要件を満たしていること
日本の受け皿は商標法68条の32です。
- 1項:議定書6条(4)により日本国を指定する国際登録が取り消されたときは、名義人であった者は、その商品・役務について商標登録出願をすることができる
- 2項:取り消された日から3月以内の出願で、商標が国際登録の対象であった商標と同一で、指定商品・役務が国際登録の範囲に含まれるときは、国際登録の日(事後指定の場合は事後指定の日)にされたものとみなす
- 3項・4項:国際商標登録出願に認められていた優先権は、再出願にも認められる
- 6項:責めに帰することができない理由で3月以内に出願できないときは、その理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、期間経過後6月以内に出願できる
日本で国際登録に基づく商標権の設定登録まで受けていた場合の再出願(旧国際登録に係る商標権の再出願)については、15条1号・2号の拒絶理由は適用されません(68条の34第2項)。すでに審査を経て登録されていたからです。
なお、議定書の廃棄により名義人が国際出願の資格を失った場合にも再出願が認められ、その期間は廃棄の効力が生じた日から2年以内です(68条の33)。3月と2年の入れ替えに注意します。
存続期間と更新(6条・7条)
| 項目 | 議定書 | 商標法 |
|---|---|---|
| 存続期間 | 10年(6条(1)) | 国際登録に基づく商標権は国際登録の日から10年。設定登録前に国際登録が更新されていれば直近の更新の日から(68条の21第1項) |
| 更新 | 前の期間の満了から10年、手数料の支払のみで更新(7条(1)) | 国際登録の存続期間の更新により更新(68条の21第2項)。19条〜22条の更新登録の申請は適用しない(68条の22) |
| 猶予期間 | 割増手数料の支払で6箇月(7条(4)) | ― |
| 更新がなかったとき | ― | 存続期間の満了の時にさかのぼって消滅したものとみなす(68条の21第4項) |
7条(2)は、更新によって国際登録の最新の態様に変更をもたらすことはできないとしています。7条(3)により、国際事務局は満了の6箇月前に非公式の通報で満了日を知らせます。
国内の商標権の存続期間は設定の登録の日から10年(19条1項)ですが、国際登録に基づく商標権は国際登録の日から10年である点が違います。商標法68条の5は、名義人が国際登録の存続期間の更新の申請を特許庁長官にすることができると定めています。
短答で狙われる型

第1の型:本国官庁と指定。「本国官庁の締約国を指定することができる」は誤りです(3条の2ただし書)。「国際出願は国際事務局に直接することができる」も誤りです(2条(2))。
第2の型:基礎の範囲。議定書では基礎出願だけでもよく、商標法では防護標章登録出願・防護標章登録も基礎になります。「基礎登録がなければ国際出願できない」は議定書では誤りです。
第3の型:期間の数字。国際登録の日の2箇月、拒絶通報の1年(宣言で18箇月)、従属期間5年、再出願3箇月、存続期間10年、更新の猶予6箇月。数字と起算点をセットで入れ替えます。従属期間の起算点は国際登録の日で、基礎登録の日ではありません。
第4の型:再出願の要件と効果。同一の標章であること、商品・役務が国際登録の範囲に含まれること、3箇月以内であること。効果は再出願の日ではなく国際登録の日(事後指定なら事後指定の日)に出願したものとみなすことです。
第5の型:事後指定の効力。事後指定は記録の日から効力を生じ、国際登録の存続期間の満了で効力を失います。事後指定の日から10年ではありません。
短答の枝ではこう問われる
本試験と同じ形の枝を、条文から書き起こしました(過去問そのものではありません)。
例題1 標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書に関し、正しいものの数はいくつか。
- イ 国際出願は、基礎出願を受理し又は基礎登録をした官庁を通じ、国際事務局に対して行う。
- ロ 本国官庁が国際出願を受理した日から2箇月の期間内に国際事務局が国際出願を受理したときは、本国官庁が国際出願を受理した日が国際登録の日となる。
- ハ 国際出願の出願人は、本国官庁に当たる締約国を指定することができる。
- ニ 国際登録の後にした領域指定は、国際登録簿に記録された日から効力を生じ、その日から10年間存続する。
- ホ 国際登録は、国際登録の日から5年の期間が満了したときは、議定書6条(3)及び(4)に規定する場合を除き、基礎出願又は基礎登録から独立した標章登録を構成する。
正しいのはイ・ロ・ホの3つです。ハは3条の2ただし書、ニは3条の3(2)(国際登録の存続期間の満了により効力を失う)に反します。
例題2 商標法の国際登録出願等に関し、誤っているものはどれか。
- イ 日本国内に住所を有する外国人は、特許庁に係属している自己の商標登録出願を基礎として、国際登録出願をすることができる。
- ロ 自己の防護標章登録を基礎として、国際登録出願をすることができる。
- ハ 議定書6条(4)の規定により日本国を指定する国際登録が取り消された場合、その名義人であった者が取り消された日から3月以内に同一の商標について商標登録出願をしたときは、その指定商品が国際登録で指定されていた範囲に含まれていれば、その出願はその商標登録出願の日にされたものとみなされる。
- ニ 国際登録に基づく商標権の存続期間は、原則として、その国際登録の日から10年をもって終了する。
- ホ 国際商標登録出願については、出願の分割の規定は適用されない。
誤っているのはハです。68条の32第2項により、国際登録の日(事後指定の場合は事後指定の日)にされたものとみなされます。
学習の進め方
マドプロは、議定書と商標法の対応を1枚の表にするのが最短です。議定書2条(基礎と本国官庁)と商標法68条の2、3条の3(事後指定)と68条の4、6条(従属性)と68条の20、9条の5(再出願)と68条の32、6条・7条(存続期間・更新)と68条の21・68条の22を、左右に並べて書き込みます。
次に、数字だけを抜き出して「起算点」と一緒に覚えます。2箇月は本国官庁の受理の日から、1年・18箇月は領域指定の通報の日から、5年は国際登録の日から、3箇月は国際登録が取り消された日から、10年は国際登録の日から、です。
意匠の国際登録の仕組みは「ハーグ協定」で扱っているので、出願先や基礎の要否をマドプロと並べて比べておくと、条約間の入れ替えの枝に強くなります。商標法側の論点全体は「商標法の短答対策」、PCTとの比較で国際出願の手続を整理したい場合は「PCT19条補正と34条補正の違い」も参考になります。
よくある質問
マドリッド協定議定書に基づく国際登録の存続期間は何年ですか
10年です(議定書6条(1))。国際登録の日から10年で、更新は10年ごとに何回でもできます(7条)。日本の商標法では68条の21が対応します。
事後指定をすると存続期間は延びますか
延びません。事後指定の効力は国際登録簿に記録された日から生じますが、その国際登録の存続期間の満了によって一緒に効力を失います(3条の3(2))。
国際登録はいつ基礎出願・基礎登録から独立しますか
国際登録の日から5年を経過したときです(6条(2))。それまでに基礎が消滅すると国際登録も取り消され(セントラルアタック)、取消しの日から3箇月以内なら再出願で国際登録の日を確保できます(9条の5、商標法68条の32)。
まとめ
- 国際出願は、基礎出願または基礎登録を基礎に、本国官庁を通じて国際事務局に出す(2条)。商標法では防護標章登録出願・防護標章登録も基礎になる(68条の2)
- 国際登録の日は、本国官庁の受理から2箇月以内に国際事務局が受理すれば本国官庁の受理の日(3条(4))
- 本国官庁の締約国は指定できない(3条の2)。事後指定は記録の日から効力を生じ、国際登録の満了で失効(3条の3(2))
- 拒絶の通報は1年以内、宣言により18箇月(5条(2))。期間内に通報しなければ拒絶の権利を失う
- 国際登録の日から5年間は基礎に従属(6条(2)(3))。基礎が消えると本国官庁の請求で国際登録が取り消される(6条(4))
- 取消しの日から3箇月以内に同一の標章で再出願すれば国際登録の日の出願とみなす(9条の5、商標法68条の32)。廃棄の場合は2年(68条の33)
- 存続期間は10年、更新も10年(6条(1)・7条(1))。国際登録に基づく商標権は国際登録の日から10年(68条の21)
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