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PCT国際出願の国内移行|特許法184条の3以下の30月・翻訳文・特例を整理

条約 読了 約10分

弁理士試験短答式のPCT国際出願の国内移行(特許法184条の3〜184条の20)のまとめ。国際出願日にされた特許出願とみなす規定、優先日から30月の国内書面提出期間、翻訳文の不提出による取下げ擬制と正当な理由の救済、国内公表と補償金請求権、出願審査請求・新規性喪失の例外・特許管理人の特例を条文で整理します。

PCT(特許協力条約)に基づく国際出願は、国際段階が終わると各国の国内段階に入ります。日本を指定国とする国際出願がどのように日本の特許出願になるかを定めているのが、特許法第9章「特許協力条約に基づく国際出願に係る特例」(184条の3から184条の20)です。短答式では条約の科目だけでなく特許法の科目でも、この章の期間と手続が繰り返し問われます。

結論から言うと、国際出願は国際出願日に日本でされた特許出願とみなされ(184条の3)、出願人は優先日から30月の国内書面提出期間内に、外国語の出願なら翻訳文を、いずれの出願でも国内書面を出すのが国内移行の骨格です。翻訳文を出さなければ出願は取り下げられたものとみなされ、正当な理由がある場合だけ救済があります。そして、国内書面提出期間が満了する時(または期間内に出願審査請求をした時)が「国内処理基準時」となり、補正や特許管理人などの特例がこの時点を基準に組み立てられています。

この記事では、みなし特許出願の規定、国内書面提出期間と翻訳文、国内書面と国内処理基準時、国際段階の補正の扱い、国内公表と補償金請求権、出願審査請求などの特例、短答で狙われる型の順に整理します。条文はe-Gov法令検索の特許法原文で確認しています。国際段階の19条補正・34条補正そのものは「PCT19条補正と34条補正の違い」で、条約科目全体の進め方は「条約の短答対策」で扱っています。

国際出願日にされた特許出願とみなす(184条の3)

184条の3第1項は、PCT11条(1)もしくは(2)(b)又は14条(2)の規定に基づく国際出願日が認められた国際出願であって、PCT4条(1)(ii)の指定国に日本国を含むもの(特許出願に係るものに限る)は、その国際出願日にされた特許出願とみなすと定めます。この規定で日本の特許出願になった国際出願を「国際特許出願」と呼びます。

2項は、国際特許出願については43条1項から4項まで(パリ条約による優先権主張の手続と優先権書類の提出)を適用しないとしています。優先権の主張は国際段階でPCT8条に基づいて行われ、優先権書類も国際事務局を通じて扱われるためです。パリ優先権と国内優先権の違いは「国内優先権とパリ優先権」で整理しています。

日本を指定国に含む国際出願は、国際出願日に日本でされた特許出願とみなされ、国際特許出願と呼ばれる
日本を指定国に含む国際出願は、国際出願日に日本でされた特許出願とみなされ、国際特許出願と呼ばれる

条文:特許法184条の3(e-Gov法令検索)

この章では、国際出願を言語で2つに分けて呼びます。

呼び方 内容 翻訳文
日本語特許出願 日本語でされた国際特許出願 不要
外国語特許出願 外国語でされた国際特許出願 国内書面提出期間内に必要

条文の多くは外国語特許出願についてだけ追加の手続を課しており、短答では「日本語特許出願にも翻訳文の提出が必要」といった取り違えの枝が出ます。

国内書面提出期間と翻訳文(184条の4)

優先日から30月

184条の4第1項は、外国語特許出願の出願人は、優先日から2年6月(国内書面提出期間)以内に、国際出願日における明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る)及び要約の日本語による翻訳文を特許庁長官に提出しなければならないと定めます。PCT22条が定める期限と同じで、日本は30月を採用しています。

ただし書により、国内書面提出期間の満了前2月から満了の日までの間に国内書面(184条の5第1項)を提出した外国語特許出願は、国内書面の提出の日から2月(翻訳文提出特例期間)以内に翻訳文を提出できます。期限間際に国内書面だけ先に出した出願人に、翻訳文の準備期間を与える規定です。

外国語特許出願は、優先日から30月の国内書面提出期間内に明細書などの日本語の翻訳文を出す
外国語特許出願は、優先日から30月の国内書面提出期間内に明細書などの日本語の翻訳文を出す

19条補正をした場合の翻訳文

国際段階でPCT19条(1)に基づく請求の範囲の補正をした出願人は、国際出願日における請求の範囲の翻訳文に代えて、補正後の請求の範囲の翻訳文を提出できます(184条の4第2項)。

出さなければ取下げ擬制、正当な理由があれば救済

184条の4第3項は、国内書面提出期間(翻訳文提出特例期間)内に明細書の翻訳文及び請求の範囲の翻訳文の提出がなかったときは、その国際特許出願は取り下げられたものとみなすと定めます。図面の中の説明や要約の翻訳文が欠けても取下げ擬制にはならず、補正命令の対象になるにとどまります。

4項は、取り下げられたものとみなされた外国語特許出願の出願人が、期間内に翻訳文を提出できなかったことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、翻訳文を提出できると定めます。平成26年改正で設けられた救済規定です。5項により、この翻訳文は国内書面提出期間が満了する時に提出されたものとみなされます。

条文:特許法184条の4(e-Gov法令検索)

外国語特許出願の国内移行の流れ
外国語特許出願の国内移行の流れ

国内書面と国内処理基準時(184条の5)

国内書面

184条の5第1項は、国際特許出願の出願人は、国内書面提出期間内に、出願人の氏名又は名称及び住所、発明者の氏名及び住所、国際出願番号などを記載した書面(国内書面)を特許庁長官に提出しなければならないと定めます。日本語特許出願でも外国語特許出願でも必要です。

2項は、国内書面を提出しない場合、手数料を納付しない場合、翻訳文の提出がない場合(外国語特許出願で、要約の翻訳文などが欠けるとき)などに、特許庁長官が相当の期間を指定して手続の補正を命ずることができるとし、3項は、補正をしないときは国際特許出願を却下できると定めています。

国内処理基準時

国内処理基準時は国内書面提出期間が満了する時で、期間内に出願審査の請求をすればその請求の時になる
国内処理基準時は国内書面提出期間が満了する時で、期間内に出願審査の請求をすればその請求の時になる

184条の4第6項は、国内処理基準時を、国内書面提出期間(翻訳文提出特例期間)が満了する時、又はその期間内に出願人が出願審査の請求をするときはその請求の時、と定義しています。国内段階の手続の多くが、この時点を基準に動きます。

規定 国内処理基準時との関係
19条・34条補正の写し・翻訳文(184条の7・184条の8) 国内処理基準時の属する日までに提出
特許管理人の選任届(184条の11) 国内処理基準時の属する日後、省令で定める期間内
新規性喪失の例外の書面・証明書(184条の14) 国内処理基準時の属する日後、省令で定める期間内

国際段階の明細書・補正の扱い(184条の6〜184条の8)

184条の6は、国際特許出願の国際出願日における願書を36条2項の願書とみなし、日本語特許出願の国際出願日における明細書・請求の範囲・図面・要約を願書に添付した明細書等とみなします。外国語特許出願では、翻訳文が明細書等とみなされます(図面は、図面そのものと図面の中の説明の翻訳文)。19条補正後の請求の範囲の翻訳文が提出されたときは、それが請求の範囲とみなされます。

国際段階でした補正を日本の国内段階に反映させるには、別の手続が要ります。

国際段階の19条補正・34条補正は、写しや翻訳文を国内処理基準時の属する日までに出すと17条の2の補正とみなされる
国際段階の19条補正・34条補正は、写しや翻訳文を国内処理基準時の属する日までに出すと17条の2の補正とみなされる
補正 日本語特許出願 外国語特許出願 効果
19条補正(184条の7) 補正書の写しを国内処理基準時の属する日までに提出 補正後の請求の範囲の翻訳文を提出(184条の4第2項) 17条の2第1項の補正とみなす
34条補正(184条の8) 補正書の写しを国内処理基準時の属する日までに提出 補正書の日本語による翻訳文を国内処理基準時の属する日までに提出 17条の2第1項の補正とみなす

条文:特許法184条の6〜184条の8(e-Gov法令検索)

184条の7と184条の8は、期間内に写し・翻訳文の提出がなかったときは、その補正はされなかったものとみなすと定めています。ただし、国際事務局から特許庁に補正書の送付があったときは、提出があったものとみなされます。

外国語特許出願の国内段階での補正には、もう1つ特則があります。184条の12第2項により、外国語特許出願の17条の2の補正は、翻訳文ではなく国際出願日における明細書等(原文)の範囲内で行う必要があります。翻訳の誤りは誤訳訂正書で直す仕組みで、外国語書面出願(36条の2)と同じ考え方です。

国内公表と補償金請求権(184条の9・184条の10)

日本語特許出願は、PCT21条の国際公開が出願公開の役割を果たします。外国語特許出願は国際公開が外国語なので、184条の9により、翻訳文の提出後、国内書面提出期間の経過後(期間内に出願審査の請求があったときはその請求の後)遅滞なく、特許庁長官が国内公表をします。

外国語特許出願で補償金請求権の警告ができるのは、国際公開の後ではなく国内公表の後
外国語特許出願で補償金請求権の警告ができるのは、国際公開の後ではなく国内公表の後

184条の10は、補償金請求権(65条)の特例です。日本語特許出願は国際公開の後、外国語特許出願は国内公表の後に、出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告することで、補償金を請求できます。外国語特許出願で国際公開後・国内公表前に警告しても、65条の警告にはなりません。補償金請求権の仕組みは「出願公開と補償金請求権」で扱っています。

条文:特許法184条の9・184条の10(e-Gov法令検索)

出願審査請求・新規性喪失の例外・特許管理人の特例

出願審査請求の時期の制限(184条の17)

国際特許出願の出願人は、日本語特許出願なら国内書面の提出と手数料の納付、外国語特許出願ならそれに翻訳文の提出を加えた手続の後でなければ、出願審査の請求ができません。出願人以外の者は、国内書面提出期間の経過後でなければ請求できません。48条の3の「出願の日から3年」の期間自体は、国際出願日から数えます。

新規性喪失の例外の特例(184条の14)

30条2項の適用を受けるための書面と証明書(30条3項)は、通常は出願と同時・出願から30日以内ですが、国際特許出願では、国内処理基準時の属する日後、経済産業省令で定める期間内に提出できます。国際段階では日本の様式での提出ができないための調整です。30条の原則は「新規性喪失の例外(30条)」で整理しています。

特許管理人(184条の11)

在外者は原則として特許管理人によらなければ手続ができません(8条)が、国際特許出願の出願人である在外者は、国内処理基準時までは特許管理人によらないで手続ができます。そのうえで、国内処理基準時の属する日後、経済産業省令で定める期間内に特許管理人を選任して届け出なければならず、届出がないときは、その国際特許出願は取り下げられたものとみなされます。

在外者の国際特許出願の出願人は、国内処理基準時までは特許管理人によらずに手続でき、その後は選任の届出が必要
在外者の国際特許出願の出願人は、国内処理基準時までは特許管理人によらずに手続でき、その後は選任の届出が必要

その他の特例

条文 内容
184条の13 29条の2の「他の特許出願」としての扱い。取下げ擬制された外国語特許出願は含まれず、外国語特許出願は原文と翻訳文の双方に記載された発明が基準
184条の15 国内優先権の主張の特例
184条の16 出願の変更の特例(国際実用新案登録出願からの変更など)
184条の18 外国語特許出願の拒絶理由等の特例(原文新規事項)
184条の20 国際出願日の認定が拒否された場合などに、決定により特許出願とみなされる国際出願

条文:特許法184条の11〜184条の20(e-Gov法令検索)

国内移行で期限になる3つの時点
国内移行で期限になる3つの時点

短答の枝ではこう問われる

本試験と同じ形の枝を、条文から書き起こしました(過去問そのものではありません)。

例題 PCT国際出願の国内移行に関し、正しいものはどれか。

  • イ 日本語でされた国際特許出願の出願人は、国内書面提出期間内に明細書の日本語による翻訳文を提出しなければならず、提出がないときは当該出願は取り下げられたものとみなされる。
  • ロ 外国語特許出願の出願人が、国内書面提出期間内に要約の翻訳文を提出しなかったときは、その外国語特許出願は取り下げられたものとみなされる。
  • ハ 外国語特許出願の出願人は、国際公開がされた後であれば、国内公表前であっても、発明の内容を記載した書面を提示して警告をすることにより、特許法65条1項の補償金を請求することができる。
  • ニ 国際特許出願の出願人である在外者は、国内処理基準時までは、特許管理人によらないで手続をすることができる。
  • ホ 国際特許出願については、特許法43条1項から4項までの規定が適用されるため、出願人は優先権を主張する旨を記載した書面を特許庁長官に提出しなければならない。

正解はニです(184条の11第1項)。イは日本語特許出願に翻訳文が不要なので誤り。ロは取下げ擬制の対象が明細書と請求の範囲の翻訳文の不提出に限られるので誤り。ハは外国語特許出願の警告が国内公表後でなければならない(184条の10)ので誤り。ホは184条の3第2項が43条1項から4項までを適用しないとしているので誤りです。

型としては次の4つが繰り返し使われます。

日本語と外国語の入替え。翻訳文、国内公表、補償金請求権の警告時期は外国語特許出願だけの話です。

取下げ擬制の対象。明細書と請求の範囲の翻訳文の不提出だけが取下げ擬制で、図面の説明や要約は補正命令の対象です。

期間の数え方。30月は優先日から、48条の3の3年は国際出願日から、翻訳文提出特例期間は国内書面の提出日から2月です。

国内処理基準時を基準にする手続。19条・34条補正の写し、特許管理人の届出、30条の書面の3つを、国内書面提出期間満了と混同させる枝が出ます。

学習の進め方

第9章は条文番号が枝番で続くので、まず184条の3(みなし出願)、184条の4(翻訳文)、184条の5(国内書面)の3条を軸に、時系列の図を自分で描きます。国際出願日、優先日、国内書面提出期間の満了、国内処理基準時の4点を横軸に置き、各条文の手続をその上に書き込むと、残りの特例条文がどこに位置するかが見えてきます。

次に、184条の6以下を「国内の通常の出願と何が違うか」の観点で読みます。差分だけを覚える方法は「条文の覚え方」で紹介しています。条約科目では、PCTの条文(22条の30月、19条・34条の補正)と特許法第9章を対にして出題されるので、両側から同じ図を見られるようにしておきます。

まとめ

  • 日本を指定国とする国際出願は、国際出願日にされた特許出願とみなされる(184条の3)。43条1項〜4項は適用しない
  • 外国語特許出願は、優先日から30月(国内書面提出期間)内に明細書・請求の範囲・図面の説明・要約の翻訳文を提出。期限前2月以内に国内書面を出せば、その日から2月の特例期間
  • 明細書と請求の範囲の翻訳文がなければ取下げ擬制(184条の4第3項)。正当な理由があれば救済(4項)
  • 国内書面は日本語・外国語を問わず必要(184条の5)。国内処理基準時は国内書面提出期間の満了時か、期間内の出願審査請求の時
  • 19条・34条補正は、写しまたは翻訳文を国内処理基準時の属する日までに提出して17条の2の補正とみなされる
  • 外国語特許出願は国内公表(184条の9)の後でなければ補償金請求権の警告ができない(184条の10)
  • 出願審査請求は所定の手続の後、他人は国内書面提出期間の経過後(184条の17)。30条の書面と特許管理人の届出は国内処理基準時の属する日後の省令期間内
条約の論点を、そのまま問題で確かめる

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