PCT19条補正と34条補正の違い|期限・対象・提出先と国内移行の扱い
19条補正は国際調査報告の送付から2月または優先日から16月の遅い方までに、請求の範囲だけを国際事務局へ。34条補正は国際予備審査報告の作成前に、明細書・図面も含めて国際予備審査機関へ。期限・対象・回数・提出先の違いと、国内移行時の184条の7・184条の8の扱いを弁理士試験の短答用に整理します。
条約は短答式で10問出題され、4問未満なら総合点に関係なく不合格になります。その10問の中で、PCTの国際段階の手続は繰り返し問われる分野であり、なかでも19条補正と34条補正は、似た名前の2つの制度を入れ替えて誤りを作る枝の定番です。
結論から言うと、19条補正は「国際調査報告の後に、国際事務局へ、請求の範囲だけを、1回に限り」、34条補正は「国際予備審査を請求した後、報告の作成前に、国際予備審査機関へ、請求の範囲・明細書・図面を」補正する制度です。国内移行の場面では、19条補正は特許法184条の7(日本語特許出願)と184条の4(外国語特許出願の翻訳文)で、34条補正は184条の8で受け止められ、いずれも国内処理基準時の属する日までに写しや翻訳文を出さなければ、補正はされなかったものとみなされます。
PCTの条文は特許協力条約の和文、規則の期間は特許庁と世界知的所有権機関(WIPO)の日本語資料、特許法はe-Gov法令検索の原文で確認しています。
補正は国際段階のどこに置かれるか
PCTの国際出願は、国際出願、国際調査、国際公開、国際予備審査(任意)、国内移行という順に進みます。全体の流れと条約10問の中でのPCTの比重は「条約の短答対策」で概観しているので、ここでは補正に絞ります。
補正の位置は、それぞれの前提となる書類で覚えると崩れません。
- 19条補正の前提は国際調査報告。国際調査機関の報告を受け取った後に初めてできる
- 34条補正の前提は国際予備審査の請求。予備審査を請求しない出願人には、34条補正の機会がそもそもない
国際予備審査は出願人の請求があったときだけ行われるので、19条補正は予備審査を請求するかどうかに関係なくできる一方、34条補正は請求を前提とします。
19条補正:国際事務局に、請求の範囲だけを1回
条文の要件
PCT19条(1)は、出願人は国際調査報告を受け取った後、所定の期間内に国際事務局に補正書を提出することにより、国際出願の請求の範囲について一回に限り補正をすることができると定めています。1文の中に、短答で問われる要素がすべて入っています。
| 要素 | 19条(1)の文言 |
|---|---|
| 時期 | 国際調査報告を受け取った後、所定の期間内 |
| 提出先 | 国際事務局 |
| 対象 | 国際出願の請求の範囲 |
| 回数 | 一回に限り |
同項の第2文は、出願人は同時に、補正とその補正が明細書および図面に与えることのある影響について、規則の定めるところにより簡単な説明書を提出することができるとしています。説明書は「できる」であり、義務ではありません。
19条(2)は、補正は出願時における国際出願の開示の範囲を超えてしてはならないと定めます。ただし19条(3)は、指定国の国内法令が開示の範囲を超える補正を認めている場合には、(2)に従わないことは当該指定国においていかなる影響も及ぼさないとしています。
所定の期間
19条(1)の「所定の期間」は規則46.1で定められています。WIPOの日本語資料によれば、国際調査報告の送付の日から2月の期間または優先日から16月の期間のうち、いずれか遅く満了する期間内に国際事務局に提出します。
出典:WIPO「外国出願におけるPCTの活用 第2回」(WIPOウェビナー資料)

2月と16月の組み合わせと、「遅く満了する方」をセットで覚えます。
指定官庁への送達
19条補正は国際事務局に出すので、指定官庁には国際事務局から届きます。PCT20条(2)は、19条(1)の補正がされた場合、指定官庁に送達される文書に出願時と補正後の請求の範囲(または補正を明記する記載)と説明書を含めると定めています。国内移行の条文に出てくる「20条の規定に基づく送達」は、これを受けたものです。
34条補正:国際予備審査機関に、明細書・図面も
条文の要件
PCT34条(2)は、国際予備審査機関における出願人の権利を並べた規定です。
- (a) 出願人は、国際予備審査機関と口頭および書面で連絡する権利を有する
- (b) 出願人は、国際予備審査報告が作成される前に、所定の方法でおよび所定の期間内に、請求の範囲、明細書および図面について補正をする権利を有する。この補正は、出願時における国際出願の開示の範囲を超えてしてはならない
- (c) 出願人は、国際予備審査機関が所定の条件をすべて満たしていると認める場合を除くほか、少なくとも一回当該国際予備審査機関から書面による見解を示される
19条(1)と比べると、違いは3つです。対象が請求の範囲に限られず明細書と図面を含むこと、提出先が国際事務局ではなく国際予備審査機関であること、そして 19条(1)の「一回に限り」に当たる文言が34条(2)(b)には無い ことです。
補正できる時期
特許庁の手続案内は、規則66.1を根拠に、34条補正ができるのは国際予備審査の請求をした時から国際予備審査報告の作成が開始されるまでの期間だとしています。また規則66.4の2により、見解書または国際予備審査報告の作成を開始した後に受理した補正書は、その作成の際に考慮に入れる必要がないとされています。

出典:特許庁「特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の手続」第8章 国際予備審査機関に対する手続
34条補正を国際予備審査の請求書と同時に出すこともでき、その場合は当該補正を基礎として国際予備審査の開始を希望する旨を表示します(規則53.9)。前提となる国際予備審査の請求の期限は、同じ資料によれば、国際調査報告(または国際調査報告を作成しない旨の宣言)および国際調査機関の見解書の送付日から3月、または優先日から22月のうち、いずれか遅く満了する期間までです(規則54の2.1)。
19条補正との関係

19条補正をした後に国際予備審査を請求するときは、請求書の中で、国際予備審査のために19条補正を考慮するか、それとも34条補正によって19条補正は取り消されたものとして34条補正を基礎に予備審査を始めるかを表示します(規則53.9、前掲の特許庁資料による)。
19条補正と34条補正の比較
ここまでの要件を、枝で入れ替えられやすい項目に絞って並べます。
| 項目 | 19条補正 | 34条補正 |
|---|---|---|
| 前提 | 国際調査報告の受領 | 国際予備審査の請求 |
| 時期 | 規則46.1の期間内 | 国際予備審査報告の作成前(規則66.1) |
| 提出先 | 国際事務局 | 国際予備審査機関 |
| 対象 | 請求の範囲のみ | 請求の範囲・明細書・図面 |
| 回数 | 1回に限る | 条文上「一回に限り」の文言なし |
| 出願人の手当て | 簡単な説明書を出せる(任意) | 機関と口頭・書面で連絡できる |
| 開示の範囲 | 超えてはならない(19条(2)) | 超えてはならない(34条(2)(b)) |
| 国内移行時 | 184条の7、184条の4第2項・第6項 | 184条の8 |
開示の範囲を超えてはならないという制限だけは、両者に共通です。国内の特許法でいえば17条の2第3項の新規事項の追加禁止に相当します。国内の補正制度とどう違うかは「特許法の補正の時期的制限」と見比べると、条約の補正が「時期の窓が1つずつ開く」構造であることがよく分かります。
国内移行時の扱い:184条の7と184条の8
国際段階の補正は、そのままでは日本の特許出願の補正になりません。特許法184条の3以下の特例が、国内の手続につなぎます。
前提になる定義
- 国際特許出願(184条の3):国際出願日が認められた国際出願で、指定国に日本国を含むもの(特許出願に係るものに限る)は、その国際出願日にされた特許出願とみなされる。これを国際特許出願という
- 日本語特許出願と外国語特許出願:日本語でされた国際特許出願が日本語特許出願(184条の6第2項)、外国語でされた国際特許出願が外国語特許出願
- 国内書面提出期間(184条の4第1項):優先日から2年6月。外国語特許出願の出願人は、この期間内に明細書・請求の範囲・図面・要約の日本語による翻訳文を提出しなければならない。期間の満了前2月から満了の日までの間に184条の5第1項の書面を提出した場合は、その提出の日から2月(翻訳文提出特例期間)以内に翻訳文を提出できる
- 国内処理基準時(184条の4第6項):国内書面提出期間が満了する時。ただし、国内書面提出期間内に出願人が出願審査の請求をするときは、その請求の時
184条の4第3項により、国内書面提出期間(翻訳文提出特例期間の場合はその期間)内に明細書の翻訳文と請求の範囲の翻訳文の提出がなかったときは、その国際特許出願は取り下げられたものとみなされます。補正の翻訳文を出さなかったときの効果(補正がされなかったものとみなす)と、ここでの効果(出願の取下げ擬制)を混同しないことが大切です。
19条補正:日本語特許出願は184条の7
184条の7第1項は、日本語特許出願の出願人が19条(1)の補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに、19条(1)に基づき提出された補正書の写しを特許庁長官に提出しなければならないと定めます。
- 写しが提出されると、その写しにより、願書に添付した特許請求の範囲について17条の2第1項の規定による補正がされたものとみなされる(2項本文)
- ただし、20条に基づき同じ期間内に補正書が特許庁に送達されたときは、その補正書により補正がされたものとみなされる(2項ただし書)
- 期間内に写しの提出がなかったときは、19条(1)の補正はされなかったものとみなされる。ただし、2項ただし書の場合はこの限りでない(3項)
国際事務局からの送達が間に合っていれば、写しを出していなくても補正は生きるということです。

19条補正:外国語特許出願は184条の4
184条の7の見出しは「日本語特許出願に係る条約第十九条に基づく補正」で、外国語特許出願の19条補正は翻訳文の規定で処理されます。
- 184条の4第2項:19条(1)の補正をしたときは、請求の範囲の翻訳文に代えて、補正後の請求の範囲の翻訳文を提出することができる
- 184条の4第6項:請求の範囲の翻訳文を提出した出願人は、19条(1)の補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに限り、補正後の請求の範囲の翻訳文を更に提出することができる
- 184条の6第3項:2項または6項により補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合は、その翻訳文が、願書に添付して提出した特許請求の範囲とみなされる
- 184条の4第7項:2項または6項の翻訳文が提出されなかった場合には、184条の7第3項本文が準用される。つまり19条(1)の補正はされなかったものとみなされる
日本語特許出願では「17条の2第1項の補正とみなす」、外国語特許出願では「補正後の請求の範囲の翻訳文を特許請求の範囲とみなす」と、条文の組み立てが違います。また、外国語特許出願の7項は184条の7第3項の「本文」だけを準用しており、20条の送達による救済(ただし書)は付いてきません。
34条補正:184条の8

34条補正は、日本語特許出願と外国語特許出願の両方について184条の8が受け止めます。
- 国際特許出願の出願人は、34条(2)(b)の補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに、日本語特許出願では補正書の写しを、外国語特許出願では補正書の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない(1項)
- 写しまたは翻訳文が提出されると、それにより、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について17条の2第1項の規定による補正がされたものとみなされる。ただし、日本語特許出願について36条(3)(a)に基づき同じ期間内に補正書が特許庁に送達されたときは、その補正書により補正がされたものとみなされる(2項)
- 期間内に手続がなかったときは、34条(2)(b)の補正はされなかったものとみなされる。ただし、2項ただし書の場合はこの限りでない(3項)
- 外国語特許出願について2項により補正がされたものとみなされたときは、その補正は17条の2第2項の誤訳訂正書を提出してされたものとみなされる(4項)
184条の7第2項が「特許請求の範囲」だけなのに対し、184条の8第2項は「明細書、特許請求の範囲又は図面」です。国際段階での対象の違いが、国内にもそのまま引き継がれています。
国内での補正はいつからできるか
184条の12第1項は、国内での手続の補正ができる時期を、日本語特許出願と外国語特許出願で分けて定めています。日本語特許出願は、184条の5第1項の書面を提出し、かつ195条2項の手数料を納付した後でなければ補正できません。外国語特許出願は、184条の4第1項または4項の翻訳文と184条の5第1項の書面を提出し、手数料を納付した後であって、さらに国内処理基準時を経過した後でなければ補正できません。「国内処理基準時の経過」が要件になるのは外国語特許出願だけで、日本語特許出願にまでこの要件を広げた枝は誤りです。なお括弧書きで、184条の7第2項と184条の8第2項の補正はこの制限から除かれています。
短答で狙われる型
条約は10問しかなく、4問未満なら足切りです。条約で4点を確保する意味は「短答式の合格基準と科目別足切り」で整理していますが、PCTの補正は型が決まっているので、得点源にしやすい論点です。

対象の入れ替え。「19条補正により明細書を補正することができる」という枝は誤りです。19条は請求の範囲のみ、34条は明細書と図面も含みます。国内移行時の184条の7第2項(特許請求の範囲)と184条の8第2項(明細書、特許請求の範囲または図面)でも同じ入れ替えが起こります。
提出先の入れ替え。19条補正は国際事務局、34条補正は国際予備審査機関です。「受理官庁に」「国際調査機関に」と書き換えた枝も出ます。19条補正は国際調査報告を受けてするものですが、提出先は国際調査機関ではありません。
回数と前提。19条補正は「一回に限り」、しかも国際調査報告の受領後です。34条補正は国際予備審査の請求が前提で、請求していない出願人はできません。
期間の言い換え。19条補正の期間は国際調査報告の送付の日から2月または優先日から16月のいずれか遅く満了する方です。「早い方」への入れ替えや、国際予備審査の請求期限(3月または22月)との入れ替えに注意します。
翻訳文や写しを出さなかったときの効果。補正の写し・翻訳文を国内処理基準時の属する日までに出さなければ、補正は「されなかったものとみなす」にとどまり、出願そのものは取り下げられません。出願が取り下げられたものとみなされるのは、明細書と請求の範囲の翻訳文を国内書面提出期間内に出さなかったとき(184条の4第3項)です。
救済の有無。日本語特許出願では、国際事務局からの送達(20条・36条(3)(a))が期間内にあれば写しを出さなくても補正が生きます。外国語特許出願の19条補正には、この救済がありません(184条の4第7項は184条の7第3項本文のみを準用)。
国内処理基準時の言い換え。国内処理基準時は国内書面提出期間の満了時が原則で、その期間内に出願審査の請求をしたときはその請求の時に早まります。「優先日から2年6月を経過した時」とだけ書いた枝は、審査請求の場合を落としている点で誤りになりえます。「国内処理基準時まで」ではなく「国内処理基準時の属する日まで」という日単位の書き方にも注意します。
学習の進め方
条約と特許法の条文は、次の順で往復させると定着します。
- PCT19条(1)と34条(2)(b)を並べて読み、時期・提出先・対象・回数の4点に線を引く
- 規則46.1(19条補正の期間)と規則54の2.1(予備審査請求の期限)の数字を、「遅く満了する方」という共通点ごと1枚の表に書く
- 特許法184条の7、184条の8、184条の4第2項・第6項・第7項を、日本語特許出願と外国語特許出願の2列の表にして、それぞれ「何を」「いつまでに」「出さなかったらどうなるか」を書き込む
- 過去問を枝ごとに解き、誤った枝が上の型のどれに当たるかを記録する
枝単位の記録の付け方は「短答式の過去問は肢別で回す」で整理しています。PCTの補正は特許法の国際出願の特例とセットで学べるので、特許法の学習中に片付けるのが効率的です。
よくある質問
34条補正の期限はいつまでですか
国際予備審査の請求をした時から、国際予備審査報告の作成が開始されるまでです(規則66.1)。見解書や報告の作成を開始した後に受理した補正書は考慮されないことがあります(規則66.4の2)。19条補正のような「2月または16月」という月数の定めはありません。
19条補正の期限はいつまでですか
国際調査報告の送付の日から2月、または優先日から16月のうち、遅く満了する方の期間内です(規則46.1)。提出先は国際事務局で、補正できるのは請求の範囲だけです。
34条補正はどのような様式で出しますか
補正した請求の範囲・明細書・図面の差替え用紙と、補正の根拠を示す書簡を国際予備審査機関に提出します(規則66.8)。出願時の国際出願の開示の範囲を超える補正はできません(34条(2)(b))。細かな書式は特許庁の「PCT国際出願の手続」の案内に従います。
国内移行の後も19条・34条の補正は効きますか
効きます。19条補正は184条の7、34条補正は184条の8で、翻訳文を提出すると国内の手続補正書による補正とみなされます。翻訳文を出さなければ、その補正はなかったものとみなされます。
まとめ
- 19条補正は、国際調査報告の受領後、規則46.1の期間内に、国際事務局に、請求の範囲のみを1回に限り補正する
- 34条補正は、国際予備審査の請求を前提に、国際予備審査報告の作成前に、国際予備審査機関に、請求の範囲・明細書・図面を補正する
- どちらも出願時の国際出願の開示の範囲を超えてはならない(19条(2)、34条(2)(b))
- 日本語特許出願の19条補正は184条の7、外国語特許出願の19条補正は184条の4第2項・第6項・第7項と184条の6第3項、34条補正は両方とも184条の8が受け止める
- 写し・翻訳文は国内処理基準時の属する日までに出し、出さなければ補正はされなかったものとみなされる。出願の取下げ擬制(184条の4第3項)と混同しない
- 国内処理基準時は国内書面提出期間の満了時で、その期間内に審査請求をしたときはその請求の時
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