セントラルアタックとトランスフォーメーション(6条(2)〜(4)・9条の5)せんとらるあたっくととらんすふぉーめーしょん
セントラルアタックとは、マドリッド協定の議定書6条(3)により、国際登録の日から5年の期間が満了する前に基礎出願又は基礎登録が取下げ・消滅・放棄・確定的な拒絶・抹消・取消し・無効となったときに、国際登録による保護をその範囲で主張できなくなる仕組みです。トランスフォーメーションとは、9条の5により、そうして取り消された国際登録の名義人が取消しの日から3月以内に指定締約国の官庁へ同一の標章の国内出願をすれば、その出願が国際登録の日にされたものとして取り扱われる救済です。
国際登録は本国の基礎出願や基礎登録を土台にして各国に広がる仕組みなので、土台が崩れると建物も崩れます。国際登録の日から5年の間に本国の出願が拒絶されたり登録が無効にされたりすると、国際登録は指定したすべての国でまとめて効力を失います。本国で一つ争えば世界中の保護を一度に倒せるので、これをセントラルアタックと呼びます。ただし名義人を丸裸にはせず、3月以内に各国へ国内出願をし直せば国際登録の日を保ったまま出願したことにする救済があり、これがトランスフォーメーションです。

国際登録は国際登録の日から5年の間は基礎出願・基礎登録に従属し、この5年を宣言で短くすることはできません
6条(2)は、国際登録の日から5年の期間が満了したときに、国際登録が基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録から独立したものとなると定めます。裏返せば、5年の間は基礎出願等に従属します。本国での審査結果を一定期間は国際登録に反映させることで、本国で守れない標章を国際登録の形で各国に押し付けないようにするためです。議定書には5年を短縮する宣言の定めがなく、従属の期間中でも基礎登録の移転は禁じられていません。
5年満了前に基礎出願等が取下げ・消滅・放棄・確定的な拒絶・抹消・取消し・無効となれば、該当する範囲で国際登録による保護を主張できなくなります
6条(3)は、国際登録の日から5年の期間が満了する前に、基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が、取り下げられ、消滅し、放棄され、又は確定的な決定により拒絶され、抹消され、取り消され若しくは無効とされた場合に、国際登録による保護を、指定された商品及びサービスの全部又は一部について主張することができないと定めます。基礎登録が一部の商品についてだけ取り消されれば、国際登録もその範囲だけ効力を失います。同項の後段は、5年の期間の満了前に取消し・無効・取下げ命令を求める手続が開始され、確定的な決定が5年の満了後に出た場合も同じ扱いにします。手続の開始が5年以内なら、結果が後から確定しても逃げられません。「基礎出願の取下げを求める申立ての手続が開始され、当該5年の期間の満了後に基礎出願が確定的な決定により取下げを命ぜられた場合」に保護を主張できないという枝は正しいです。

- 従属の期間国際登録の日から5年です。満了すると基礎出願等から独立します
- 保護を失う事由基礎出願等の取下げ、消滅、放棄、確定的な決定による拒絶、抹消、取消し、無効です
- 5年後に確定した場合5年満了前に取消し・無効・取下げ命令を求める手続が開始されていれば、5年満了後の確定でも保護を失います
- 失う範囲指定された商品及びサービスの全部又は一部で、基礎出願等が効力を失った範囲に対応します
取消しは本国官庁が国際事務局に請求し、国際事務局が該当する範囲について国際登録を取り消します
6条(4)は、本国官庁に、6条(3)の事実と決定を国際事務局に通報し、該当する範囲について国際登録の取消しを請求することを求め、国際事務局はその請求により国際登録を取り消します。基礎出願等の運命を知っているのは本国官庁なので、本国官庁が動く仕組みです。日本国特許庁が本国官庁のときは、特許庁がこの通報と取消しの請求を行います。
取り消された国際登録の名義人は、取消しの日から3月以内に国内出願をすれば、国際登録の日に出願したものとして扱われます
9条の5は、6条(4)により国際登録が取り消された場合に、その国際登録の名義人であった者が、指定締約国の官庁に同一の標章について登録出願をしたときは、その出願を国際登録の日(事後指定による保護なら事後指定の日)にされたものとして取り扱うと定めます。条件は、取消しの日から3月以内に出願すること、出願の商品及びサービスが取り消された国際登録でその締約国について指定されていたものに含まれること、その締約国の法令の要件(手数料を含む)を満たすことです。本国での一撃で各国の保護をすべて失う名義人に、指定国ごとの国内出願に乗り換える道を残し、出願日の利益を保つためです。取り消された国際登録の名義人であった者は、同一の標章について、指定されていた締約国の国内出願に乗り換えることができ、その出願は国際登録の日(事後指定の日)にされたものとして扱われます。日本での受け皿が商標法68条の32(国際登録の取消し後の商標登録出願の特例)で、取り消された日から3月以内であること、同一の商標であること、指定されていた商品又は役務の範囲に含まれることの三つを満たせば、国際登録の日(事後指定の日)にされた出願とみなされます。68条の33は議定書の廃棄で資格を失った名義人に同じ仕組みを準用する規定で、こちらの期間は廃棄の効力が生じた日から2年以内です。

マドリッド協定の議定書6条国際登録による標章の保護については、当該国際登録が移転の対象となったかどうかを問わず、その国際登録の日から5年の期間が満了する前に、基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が取り下げられ、消滅し、放棄され又は、確定的な決定により、拒絶され、抹消され、取り消され若しくは無効とされた場合には、当該国際登録において指定された商品及びサービスの全部又は一部について主張することができない。
マドリッド協定の議定書9条の5国際登録が、当該国際登録において指定された商品及びサービスの全部又は一部につき第6条(4)の規定に基づく本国官庁の請求により取り消された場合において、当該国際登録に係る領域指定が行われていた締約国の官庁に対し当該国際登録の名義人であった者が同一の標章に係る標章登録出願をしたときは、当該標章登録出願は、次の(i)から(iii)までの条件を満たすことを条件として、第3条(4)に規定する国際登録の日又は第3条の3(2)に規定する領域指定の記録の日に行われたものとみなし、かつ、当該国際登録についてその名義人が優先権を有していた場合には、当該名義人であった者は、同一の優先権を有するものとする。(i) 標章登録出願が国際登録の取り消された日から3箇月以内に行われること。
試験ではこう問われる
- 従属は国際登録の日から5年。期間を3年に短縮する宣言の定めはない
- 5年満了前に基礎出願等が取下げ・消滅・放棄・確定的な拒絶・抹消・取消し・無効となれば、その範囲で保護を主張できない
- 5年満了前に取消し・無効・取下げ命令を求める手続が開始され、満了後に確定した場合も同じ。「当該5年の期間の満了後に」確定的に取り消された事例でも保護を失う
- 取消しは本国官庁からの該当する範囲についての請求により国際事務局が行う(6条(4))
- 5年の従属期間中でも基礎登録の移転はできる
- トランスフォーメーションは取消しの日から3月以内。指定されていた締約国の国内出願に乗り換えると、その出願は国際登録の日(事後指定の日)にされたものとして扱われる。日本では商標法68条の32・33
この用語が問われた枝
「議定書」において、国際登録による標章の保護は、その国際登録の日から5年の期間の満了前に基礎出願の取下げを求める申立ての手続が開始され、当該5年の期間の満了後に基礎出願が確定的な決定により取下げを命ぜられた場合は、当該国際登録において指定された商品及びサービスの全部又は一部について主張することができないとされている。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。