拒絶査定不服審判(121条)|請求期間・前置審査・審決を整理
弁理士試験短答式の拒絶査定不服審判(特許法121条)を手続の順に整理。謄本送達から3月の請求期間と4条の延長・2項の救済、共有者全員での請求(132条3項)、請求と同時の補正(17条の2第1項4号)、前置審査(162条〜164条)、合議体と書面審理、159条の拒絶理由通知と補正の却下、160条の差戻し、審決取消訴訟、分割出願の時期まで扱います。
拒絶査定不服審判(121条)は、審査で拒絶をすべき旨の査定を受けた出願人が、その査定の当否を審判官に判断し直してもらう手続です。条文は121条の2項だけですが、補正(17条の2)、前置審査(162条〜164条)、拒絶査定不服審判の特則(158条〜161条)、審決取消訴訟(178条)、分割(44条)と、関係する条文が手続の段階ごとに散らばっています。短答では、この段階をまたいだ枝がよく作られます。
結論から言うと、拒絶査定不服審判の枝は「請求(3月・共有者全員・同時の補正)」「前置審査(補正があったときだけ・審査官は特許査定か報告)」「審判の審理と審決(合議体・書面審理・新たな拒絶理由は通知・自判か差戻し)」「その後(審決取消訴訟30日・分割の窓)」の4段に置いて読みます。どの段の話かが決まれば、使う条文も決まります。
条文はe-Gov法令検索の特許法原文で確認しています。審判の種類全体は「特許法の審判の種類」で一覧にしているので、この記事では拒絶査定不服審判だけを手続の順に深掘りします。
手続の流れを4段に分ける
拒絶査定から審決取消訴訟までを並べると、次のようになります。
| 段階 | 主な条文 | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 請求 | 121条、132条3項、17条の2第1項4号 | 謄本送達から3月。共有なら全員で。補正は請求と同時に |
| 前置審査 | 162条〜164条 | 請求と同時に補正があったときだけ。審査官は特許査定をするか、長官に報告する |
| 審判の審理・審決 | 136条、145条、153条、158条〜161条 | 合議体・書面審理。新たな拒絶理由は通知する。特許審決か差戻しか請求不成立 |
| 審決の後 | 178条、179条、44条 | 審決取消訴訟は謄本送達から30日、被告は特許庁長官 |
条文:特許法121条、162条〜164条、178条(e-Gov法令検索)
請求期間(121条)
査定の謄本の送達があった日から3月
121条1項は、拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、その査定の謄本の送達があった日から3月以内に拒絶査定不服審判を請求できると定めます。起算点は査定の日ではなく、謄本の送達があった日です。意匠法46条1項、商標法44条1項も同じ3月です。
4条の延長
4条は、特許庁長官は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、請求により又は職権で、121条1項の期間を延長できると定めます。延長は長官の裁量で、審判長が延長するわけではありません。121条1項の期間は法定期間なので、指定期間の延長を定める5条1項ではなく、4条の対象として列挙されています。

期間を過ぎたときの救済(2項)
121条2項は、請求する者がその責めに帰することができない理由により期間内に請求できないときは、その理由がなくなった日から14日(在外者にあっては2月)以内で、期間の経過後6月以内に請求できるとします。
ここで注意したいのは文言です。出願審査の請求(48条の3第5項)や特許料の追納(112条の2第1項)の救済は、現行法では「故意に」期間内に手続をしなかったと認められる場合を除いて認める形になっています。これに対し121条2項は、現行法でも「その責めに帰することができない理由」です。救済の要件を「正当な理由があるとき」や「故意でないとき」に差し替えた枝は、121条2項については誤りになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 要件 | その責めに帰することができない理由により期間内に請求できない |
| 期間 | 理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内 |
| 上限 | 期間の経過後6月以内 |
条文:特許法121条2項(e-Gov法令検索)
請求できる者と共有(132条3項)
共有者の全員が共同して請求する
拒絶査定不服審判を請求できるのは、拒絶をすべき旨の査定を受けた者です。特許を受ける権利が共有に係るときは、132条3項により、共有者の全員が共同して請求しなければなりません。一部の共有者だけがした請求は不適法です。審判手続の中断又は中止の原因が共有者の一人にあるときは、その中断又は中止は全員について効力を生じます(132条4項)。

審決取消訴訟も共有者の全員で
拒絶査定不服審判の請求不成立の審決に対する審決取消訴訟についても、最高裁平成7年3月7日判決は、実用新案登録を受ける権利の共有者が提起する場合には共有者の全員で提起しなければならない固有必要的共同訴訟であるとしています。特許を受ける権利でも同じ考え方で整理されます。権利の帰属を共有者の間で合一に確定する必要があるからです。
これに対し、成立した権利が共有で、その権利を失わせる審決・決定が出た場面(商標登録の無効審決、特許の取消決定)では、平成14年の最高裁判決が、共有者の一人でも保存行為として取消訴訟を提起できるとしています。短答では、この2つを入れ替えた枝が作られます。
請求と同時の補正(17条の2第1項4号)
拒絶査定を受けた時点で、出願人はすでに拒絶理由通知を受けています。17条の2第1項ただし書により、拒絶理由通知を受けた後は1号から4号の場合に限って補正ができ、拒絶査定の後に残っている窓は4号の「拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき」だけです。審判の請求後に補正をしたくなっても、前置審査又は審判で拒絶理由通知(163条2項・159条2項で準用する50条)を受けない限り、補正の機会はありません。

4号の補正には、新規事項の追加禁止(3項)、シフト補正の禁止(4項)に加えて、請求項の削除・限定的減縮・誤記の訂正・明りょうでない記載の釈明に限る目的の制限(5項)がかかります。限定的減縮では独立特許要件(6項)も問われます。補正の内容の制限は「特許法の補正の時期的制限」で詳しく扱っています。
前置審査(162条〜164条)
補正があったときだけ審査官が審査する

162条は、拒絶査定不服審判の請求があった場合に、その請求と同時に明細書、特許請求の範囲又は図面について補正があったときは、特許庁長官は審査官にその請求を審査させなければならないと定めます。これが前置審査です。補正がなければ前置審査はなく、すぐに審判の審理に入ります。長官に裁量はなく「させなければならない」です。
審査官ができること、できないこと
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 163条1項 | 48条、53条、54条を準用。53条の補正の却下は17条の2第1項1号・3号・4号の補正が対象(1号・3号は審判請求前の補正を除く) |
| 163条2項 | 査定の理由と異なる拒絶の理由を発見したときは50条・50条の2を準用(拒絶理由通知) |
| 163条3項 | 審判の請求を理由があるとするときは51条・52条を準用(特許査定) |
| 164条1項 | 特許をすべき旨の査定をするときは、審判の請求に係る拒絶査定を取り消さなければならない |
| 164条2項 | 特許査定をする場合を除き、補正の却下の決定をしてはならない |
| 164条3項 | 特許査定をする場合を除き、査定をしないで審査の結果を特許庁長官に報告しなければならない |
条文:特許法163条、164条(e-Gov法令検索)
前置審査の審査官は、拒絶査定をすることができません。特許にできないと判断したときは、査定をせずに長官に報告し、判断は審判に委ねられます。「前置審査において、審査官は補正を却下したうえで再び拒絶をすべき旨の査定をすることができる」という枝は、164条2項・3項に反するので誤りです。
審判の審理
合議体と書面審理
審判は、3人又は5人の審判官の合議体が行い、合議は過半数で決します(136条1項・2項)。拒絶査定不服審判は無効審判とは違い、書面審理が原則です。145条2項は、無効審判と延長登録無効審判以外の審判は書面審理によるとし、審判長は当事者の申立てにより又は職権で口頭審理によるものとすることができるとしています。
審判では、当事者が申し立てない理由についても審理できます(153条1項)。この場合、審判長は審理の結果を通知し、意見を申し立てる機会を与えなければなりません(同条2項)。
審査の手続は引き継がれる
158条は、審査においてした手続は拒絶査定不服審判においても効力を有すると定めます。審査段階で提出した意見書や補正、手続はそのまま審判でも生きています。
新たな拒絶理由は通知し、補正の機会を与える
159条2項は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に50条・50条の2を準用します。審判合議体は、新しい理由で拒絶の審決をするなら、先に拒絶理由を通知して意見書を出す機会を与えなければなりません。この通知を受けると、17条の2第1項1号又は3号の窓が開き、指定期間内に補正ができます(17条の2第1項1号の括弧書きは、159条2項で準用する50条の通知を含むとしています)。
159条1項は53条を準用し、審判でも補正の却下ができるとします。対象は17条の2第1項1号・3号・4号の補正で、1号・3号については審判請求前にした補正を除きます。審判請求と同時にした4号の補正は、前置審査では特許査定の場合を除き却下されませんが、審判では却下の対象になります。
拒絶査定不服審判に適用されない規定
161条は、134条1項から3項まで(答弁書)、134条の2、134条の3(訂正の請求)、148条・149条(参加)を拒絶査定不服審判に適用しないとしています。被請求人のいない査定系の審判なので、答弁書も参加もありません。
審決の3つの形
| 審決 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 請求不成立 | 157条 | 拒絶査定を維持する。出願人は審決取消訴訟で争える |
| 特許をすべき旨の審決 | 159条3項(51条を準用) | 審判の請求を理由があるとし、合議体が自ら特許をする |
| さらに審査に付すべき旨の審決 | 160条1項 | 査定を取り消し、審査に差し戻す |
条文:特許法157条、159条3項、160条(e-Gov法令検索)

160条2項は、差戻しの審決における判断は、その事件について審査官を拘束すると定めます。審査官は審決と異なる理由ではなく、審決の判断を前提に審査をやり直します。160条3項は、差戻しの審決をするときは159条3項(特許審決の準用)を適用しないとしています。
審決取消訴訟(178条・179条)
請求不成立の審決に不服があるときは、東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起します(178条1項)。出訴期間は審決の謄本の送達があった日から30日で(3項)、不変期間です(4項)。審判長は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、職権で附加期間を定めることができます(5項)。
| 項目 | 拒絶査定不服審判の請求 | 審決取消訴訟 |
|---|---|---|
| 期間 | 謄本送達から3月(121条1項) | 謄本送達から30日(178条3項) |
| 延長 | 長官が延長できる(4条) | 審判長が職権で附加期間(178条5項) |
| 相手方 | なし(査定系) | 特許庁長官が被告(179条本文) |
| 共有の場合 | 全員で請求(132条3項) | 全員で提起(固有必要的共同訴訟) |
条文:特許法4条、121条、132条3項、178条、179条(e-Gov法令検索)
178条6項は、審判を請求できる事項に関する訴えは、審決に対するものでなければ提起できないとします。拒絶査定に対して直接裁判所に取消しを求めることはできず、必ず拒絶査定不服審判を経ます。被告は、無効審判と違い、特許庁長官です(179条)。
分割出願との関係(44条1項)
拒絶査定不服審判の手続のどこで分割ができるかは、44条1項の3つの窓で判断します。

| 時点 | 分割できるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 最初の拒絶査定の謄本送達から3月以内 | できる | 44条1項3号 |
| 審判の請求と同時 | できる | 44条1項1号(17条の2第1項4号の補正ができる時) |
| 審判で拒絶理由通知を受けた指定期間内 | できる | 44条1項1号 |
| 前置審査・差戻し後の審査で特許査定を受けた後 | 2号の30日の窓は使えない | 44条1項2号括弧書き |
条文:特許法44条1項(e-Gov法令検索)
3号の3月は、4条により121条1項の期間が延長されたときは、その延長された期間を限り延長されたものとみなされます(44条6項)。審判請求期間と分割の期間が連動しているわけです。また2号は、163条3項で準用する51条の特許査定(前置審査での特許査定)と、160条1項の審査に付された出願の特許査定(差戻し後の特許査定)を括弧書きで除いています。
請求不成立の審決が出た後は、拒絶理由通知の指定期間でもなく、「最初の査定」の後の3月でもないので、44条1項の窓がありません。分割を考えるなら、審判の請求と同時か、審判の拒絶理由通知の指定期間内に行います。窓の全体は「特許法の分割出願の要件」で整理しています。
短答の枝ではこう問われる
本試験と同じ形の枝を、条文から書き起こしました(過去問そのものではありません)。
例題 拒絶査定不服審判に関し、正しいものはどれか。
- イ 拒絶査定不服審判は、拒絶をすべき旨の査定の日から3月以内に請求しなければならない。
- ロ 拒絶査定不服審判の請求と同時に補正があった場合において、前置審査の審査官は、その補正が17条の2第5項に違反すると認めるときは、補正を却下したうえで拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
- ハ 特許を受ける権利の共有者の一人は、他の共有者の同意を得れば、単独で拒絶査定不服審判を請求することができる。
- ニ 拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見したときは、審判官は、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならない。
- ホ 拒絶査定不服審判において請求が成り立たない旨の審決がされたときは、その審決の謄本の送達があった日から3月以内に限り、特許出願の分割をすることができる。
正しいのはニです。イは起算点が査定の謄本の送達があった日なので誤り、ロは164条2項・3項により前置審査の審査官は特許査定をする場合を除き補正の却下も査定もできないので誤り、ハは132条3項により共有者の全員が共同して請求しなければならないので誤り、ホは44条1項3号の窓は「最初の」拒絶査定の謄本送達から3月であり、審決の後には分割の窓がないので誤りです。ニは159条2項で50条が準用されるので正しい枝です。
学習の進め方
拒絶査定不服審判は、手続の順に条文番号を書き出すと整理できます。121条(請求)→17条の2第1項4号(同時の補正)→162条〜164条(前置審査)→158条〜161条(審判の特則)→157条・160条(審決)→178条・179条(訴訟)と並べ、各段に期間と主体を書き込みます。期間は「3月・14日(在外者2月)・6月・30日」、主体は「特許庁長官・審査官・合議体・東京高等裁判所」の4つに分かれます。
次に、前置審査の審査官と審判合議体を並べ、補正の却下・拒絶理由通知・特許にする場合・特許にしない場合の4行を比べます。164条2項・3項の「特許査定をする場合を除き」を言えるようになれば、前置審査の枝は判断できます。過去問の回し方は「短答式の過去問の使い方」を参照してください。
よくある質問
審判請求の後に補正をすることはできますか
前置審査又は審判で拒絶理由通知(163条2項・159条2項で準用する50条)を受けた場合に、その指定期間内であれば補正ができます。それ以外の時期には、17条の2第1項の窓がないので補正できません。補正をするなら、審判の請求と同時(4号)が基本です。
補正をしないで審判を請求すると前置審査はありますか
ありません。162条は、請求と同時に明細書、特許請求の範囲又は図面について補正があったときに限って前置審査をさせるとしています。補正がなければ、そのまま審判官の合議体が審理します。
審決取消訴訟の被告は誰ですか
拒絶査定不服審判の審決に対する訴えでは、特許庁長官が被告です(179条本文)。請求人又は被請求人が被告になるのは、無効審判と延長登録無効審判の審決に対する訴えです(179条ただし書)。
まとめ
- 拒絶査定不服審判は、拒絶査定の謄本の送達があった日から3月以内に請求する(121条1項)。4条で長官が延長でき、2項は「責めに帰することができない理由」で14日(在外者2月)・6月以内の救済
- 特許を受ける権利が共有なら共有者の全員で請求する(132条3項)。拒絶審決の取消訴訟も固有必要的共同訴訟
- 拒絶査定後、新たな拒絶理由通知がなければ、補正の窓は審判請求と同時(17条の2第1項4号)だけ。目的の制限(5項)がかかる
- 請求と同時に補正があれば前置審査(162条)。審査官は特許査定をするときだけ拒絶査定を取り消し、それ以外は補正の却下も査定もせず長官に報告(164条)
- 審判は合議体・書面審理が原則。審査の手続は効力を有し(158条)、新たな拒絶理由は通知する(159条2項)。答弁書・訂正の請求・参加の規定は適用しない(161条)
- 審決は請求不成立、特許審決(159条3項)、差戻し(160条)。差戻しの判断は審査官を拘束する
- 審決取消訴訟は謄本送達から30日、被告は特許庁長官。分割は44条1項の窓で判断し、前置審査・差戻し後の特許査定には2号の30日がない
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