特許法の間接侵害(101条)|1号〜6号の類型を短答用に整理
弁理士試験短答式の特許法101条・間接侵害のまとめ。物の発明(1号〜3号)・方法の発明(4号・5号)・生産方法の生産物(6号)の6類型を、のみ品・不可欠品・所持の3つの型で整理し、主観要件と「広く一般に流通しているもの」、一太郎事件、罰則、実用新案・意匠・商標のみなし侵害との違いまで扱います。
間接侵害は、特許発明の実施そのもの(直接侵害)ではないのに、特許権を侵害するものとみなされる行為です。部品を売る、方法の実施に使う装置を売る、完成品を倉庫に置いておく、といった行為が対象になります。短答の特許・実用新案20問では、101条の各号の要件を入れ替えた枝として、また意匠法38条・商標法37条との比較として問われます。
結論から言うと、101条の6つの号は「発明の種類(物・方法・物を生産する方法)」と「行為の型(のみ品・不可欠品・所持)」の組合せで読みます。のみ品(1号・4号)は主観要件がなく、不可欠品(2号・5号)は「広く一般に流通しているものを除く」と「知りながら」が加わり、所持(3号・6号)は譲渡等又は輸出のための所持に限られます。この格子を押さえ、どの行為が列挙されていないかを確認すれば、101条の枝は判断できます。
条文はe-Gov法令検索の特許法・実用新案法・意匠法・商標法の原文で、判例は裁判所ウェブサイトの判決文で確認しています。
101条の6類型を格子で整理する
101条柱書は「次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす」と定め、1号から6号を並べています。
| 行為の型 | 物の発明 | 方法の発明 | 物を生産する方法の発明 |
|---|---|---|---|
| のみ品(主観要件なし) | 1号:その物の生産にのみ用いる物 | 4号:その方法の使用にのみ用いる物 | (4号の方法に含まれる) |
| 不可欠品(主観要件あり) | 2号:その物の生産に用いる物で課題の解決に不可欠なもの | 5号:その方法の使用に用いる物で課題の解決に不可欠なもの | (5号の方法に含まれる) |
| 所持 | 3号:その物を譲渡等又は輸出のために所持 | なし | 6号:その方法により生産した物を譲渡等又は輸出のために所持 |
のみ品と不可欠品の号では、対象となる行為は「生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出」です。ここに「使用」と「輸出」は入っていません。2条3項1号の物の発明の実施には「輸出」が含まれますが、101条1号・2号・4号・5号の行為には挙がっていないので、「部品を業として輸出する行為は101条1号の間接侵害に当たる」という枝は、条文の列挙に照らして判断します。所持の号(3号・6号)は、所持の目的として「譲渡等又は輸出」を挙げています。
どの号にも「業として」が付いています。
のみ品(1号・4号)
1号は、特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為です。4号は、特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物について同じ行為をするものです。

1号・4号には、行為者が特許の存在を知っていることなどの主観的な要件がありません。「のみ」という客観的な要件だけで侵害とみなされます。その代わり、他の用途がある物は「のみ」に当たらず、1号・4号では捕捉できません。この隙間を埋めるのが2号・5号です。
不可欠品(2号・5号)
平成14年改正で加わった類型
2号・5号は、平成14年法律第24号による改正で新設され、平成15年1月1日に施行されました(一太郎事件の知財高裁判決が経緯として述べています)。条文の要件を分解すると次のとおりです。

| 要件 | 2号(物の発明) | 5号(方法の発明) |
|---|---|---|
| 対象 | その物の生産に用いる物 | その方法の使用に用いる物 |
| 除外 | 日本国内において広く一般に流通しているもの | 同じ |
| 重要性 | その発明による課題の解決に不可欠なもの | 同じ |
| 主観 | その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら | 同じ |
| 行為 | 業として、生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出 | 同じ |
主観の要件は2つの事実を知っていることです。特許発明であることだけを知っていても、その物が発明の実施に用いられることを知らなければ、要件を満たしません。
一太郎事件(知財高裁大合議)
知的財産高等裁判所特別部平成17年9月30日判決(平成17年(ネ)第10040号)は、文書作成ソフトウエア(一太郎)と図形作成ソフトウエア(花子)の製造・譲渡等について、2号の間接侵害を認めた事件です。判決は2号・5号の要件について次のように述べました。

- 課題の解決に不可欠:ソフトウエアをインストールすることで、特許発明の構成を有するパソコンが初めて完成するので、そのソフトウエアは課題の解決に不可欠なものに該当する
- 広く一般に流通しているもの:典型的には、ねじ、釘、電球、トランジスター等のような、日本国内において広く普及している一般的な製品、すなわち、特注品ではなく、他の用途にも用いることができ、市場において一般に入手可能な状態にある規格品、普及品を意味する。問題のソフトウエアは、特許発明の構成を有する物の生産にのみ用いる部分を含むので、これに当たらない
- 主観的要件を具備すべき時点:差止請求の関係では、差止請求訴訟の事実審の口頭弁論終結時であり、この事件では遅くとも訴状の送達を受けた日には知ったものと認められる
一方、方法の発明についての判決当時の101条4号(現行5号)の間接侵害は否定されました。判決は、同号は、その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物についてこれを生産、譲渡等する行為を侵害とみなすものであって、そのような物の生産に用いられる物を製造、譲渡等する行為を侵害とみなしているものではないとしました。ソフトウエアの提供は、方法の使用に用いるパソコンの生産に用いる物の提供にとどまる、という判断です。なお、この事件では、特許が進歩性を欠き無効にされるべきものとして、104条の3第1項により権利行使が制限され、請求は棄却されています。
出典:知的財産高等裁判所特別部平成17年9月30日判決・平成17年(ネ)第10040号(裁判所ウェブサイト掲載の判決文と判決要旨)
判決の当時、101条は1号から4号までの4号構成でした。平成18年改正で所持の類型(現行3号・6号)が加わり、方法の発明の不可欠品は現行5号に繰り下がっています。判決を引用する枝では号数のずれに注意します。
所持(3号・6号)
3号は、特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為です。6号は、特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為です。

平成18年法律第55号の附則は、101条の改正規定を平成19年1月1日から施行するとし、施行日以後にした行為について適用すると定めています。
3号・6号の対象は、特許発明に係る物そのもの(6号は生産方法による生産物)で、部品ではありません。譲渡や輸出の前段階である所持を捉える規定です。所持の目的は「譲渡等又は輸出」に限られ、「使用のための所持」は挙がっていません。また、単なる方法の発明(4号・5号の対象)には、所持の類型がありません。方法の使用によって生産される物がないからです。
間接侵害の効果
101条は「侵害するものとみなす」規定なので、直接侵害と同じく、差止請求(100条)や損害賠償の対象になります。損害額の推定(102条)と過失の推定(103条)については「特許法102条の損害額の推定」で整理しています。
罰則は直接侵害と分かれています。

| 行為 | 条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 特許権又は専用実施権の侵害(101条のみなし侵害を除く) | 196条 | 10年以下の拘禁刑若しくは1千万円以下の罰金、又は併科 |
| 101条により侵害とみなされる行為 | 196条の2 | 5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又は併科 |
法人の業務に関して従業者等が違反したときは、196条・196条の2のいずれについても、法人に3億円以下の罰金刑が科されます(201条1項1号)。
直接侵害がない場合
間接侵害が直接侵害の成立を前提とするか(いわゆる従属説と独立説)は、学説上の論点です。一太郎事件の判決は、ソフトウエアを専ら個人的ないし家庭的用途に用いる利用者が少なからぬ割合を占めるとしても、法人など業としてこれをパソコンにインストールして使用する利用者が存在することを指摘し、独立説の立場ではもとより、従属説の立場においても2号の間接侵害の成立は否定されないとしました。短答では、101条の条文の要件(のみ・不可欠・主観・業として)で判断できる枝がほとんどなので、まず条文の列挙に当てはめます。
実用新案・意匠・商標のみなし侵害との比較
| 法 | 条文 | 構成 | 特許法との主な違い |
|---|---|---|---|
| 特許法 | 101条 | 1号〜6号 | 物・方法・生産方法の3種類 |
| 実用新案法 | 28条 | 1号〜3号 | 登録実用新案に係る物品についての、のみ品・不可欠品・所持の3つ。方法の類型は無い |
| 意匠法 | 38条 | 1号〜9号 | 物品・建築物・画像ごとに、のみ品・不可欠品・所持(建築物は所有、画像は保有を含む)。不可欠の対象は「視覚を通じた美感の創出」 |
| 商標法 | 37条 | 1号〜8号 | 類似範囲での使用(1号)、商標を付した商品の所持、商標を表示する物の所持・製造・輸入など |
実用新案法28条は、考案の対象が物品の形状・構造・組合せに限られるため、特許法の1号〜3号に対応する3つの号だけを置いています。2号の不可欠品の要件(広く一般に流通しているものを除く、課題の解決に不可欠、知りながら)は特許法と同じ構造です。
意匠法38条は、登録意匠又はこれに類似する意匠を対象にし、物品・建築物・画像の3つの類型ごとに号を分けています。不可欠品の号(2号・5号・8号)では、「課題の解決」ではなく「視覚を通じた美感の創出に不可欠なもの」が要件です。建築物については「業としての譲渡又は貸渡しのために所有する行為」(6号)、画像については「業としての電気通信回線を通じた提供のために保有する行為」(9号)が含まれます。画像・建築物の意匠は「画像・建築物・内装の意匠」で扱っています。
商標法37条は性格が違います。1号は、指定商品・役務についての登録商標に類似する商標の使用や、類似する商品・役務についての登録商標又は類似商標の使用を侵害とみなす規定で、商標権の効力(25条)が及ぶ範囲を類似範囲まで広げる役割を持ちます。2号以下は、商標を付した商品の所持や、商標を表示する物の所持・製造・輸入などを対象にしています。商標権の効力の範囲は「商標権の効力と26条の制限」で整理しています。
短答の枝ではこう問われる
本試験と同じ形の枝を、条文と判例から書き起こしました(過去問そのものではありません)。

例題 特許法101条に関し、正しいものの数はいくつか。
- イ 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産にのみ用いる物を業として輸出する行為は、当該特許権を侵害するものとみなされる。
- ロ 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産にのみ用いる物を業として譲渡する行為は、その発明が特許発明であることを知らないでしたときであっても、当該特許権を侵害するものとみなされる。
- ハ 特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物であってその発明による課題の解決に不可欠なものを業として譲渡する行為は、その物が日本国内において広く一般に流通しているものであっても、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながらしたときは、当該特許権を侵害するものとみなされる。
- ニ 特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡のために所持する行為は、当該特許権を侵害するものとみなされる。
- ホ 特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての使用のために所持する行為は、当該特許権を侵害するものとみなされる。
正しいのはロ・ニの2つです。イは1号の行為に輸出が挙がっていないので誤り。ロは1号に主観要件がないので正しい。ハは5号が広く一般に流通しているものを除いているので誤り。ニは6号どおりで正しい。ホは3号の所持の目的が譲渡等又は輸出に限られるので誤りです。
学習の進め方
101条は、この記事の最初の表(発明の種類×行為の型)を白紙に再現するところから始めます。各マスに号数を書き、のみ品と不可欠品のマスには「生産・譲渡等・輸入・申出(使用と輸出は無い)」、不可欠品のマスには「流通品の除外・不可欠・知りながら」、所持のマスには「譲渡等又は輸出のため」と書き込みます。これで枝の大半は判断できます。
次に、実用新案法28条・意匠法38条・商標法37条を並べ、号の数と「不可欠」の対象(課題の解決か、美感の創出か)の違いを確認します。論文式では間接侵害の成否を要件ごとに当てはめる形で問われるので、答案の型は「論文式の書き方」も参考にしてください。特許法全体の中での位置付けは「特許法・実用新案法の学習法」を参照してください。
まとめ
- 101条は発明の種類(物・方法・物を生産する方法)と行為の型(のみ品・不可欠品・所持)の組合せ。1号〜3号が物、4号・5号が方法、6号が生産方法の生産物
- のみ品(1号・4号)は主観要件なし。行為は生産・譲渡等・輸入・譲渡等の申出で、使用と輸出は含まない
- 不可欠品(2号・5号)は、日本国内で広く一般に流通しているものを除き、課題の解決に不可欠で、特許発明であること及び実施に用いられることを知りながらする行為。平成14年改正で新設
- 一太郎事件(知財高判平成17年9月30日)は、広く一般に流通しているものを規格品・普及品と解し、主観要件の時点を差止請求では事実審の口頭弁論終結時とした。方法の発明の類型は、その物自体で方法を実施できる物に限った
- 所持(3号・6号)は譲渡等又は輸出のための所持に限る。平成18年改正で新設
- 罰則は直接侵害が10年以下・1千万円以下、みなし侵害が5年以下・500万円以下(196条・196条の2)
- 実用新案法28条は3つの号、意匠法38条は9つの号で不可欠の対象は美感の創出、商標法37条は類似範囲の使用と表示物の所持等を対象にする
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