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意匠法の画像・建築物・内装|令和元年改正の保護対象を整理

意匠法 読了 約10分

弁理士試験短答式の意匠法・令和元年改正で保護対象に加わった画像・建築物・内装のまとめ。操作画像と表示画像の限定、画像の実施行為、土地の定着物かつ人工構造物という建築物の要件、8条の2の内装の3要件、無効理由にならない点までを条文と審査基準で整理します。

令和元年の意匠法改正は、保護対象、関連意匠、存続期間など多くの点を一度に変えた改正です。なかでも短答式で問われやすいのが、保護対象の拡充です。それまで「物品」の外観に限られていた意匠に、画像、建築物、内装のデザインが加わりました。受験生の使う過去問の多くは改正前の年度のものなので、改正後の条文で解き直さないと、正しい枝を誤りと判断してしまいます。

結論から言うと、3つの新しい保護対象は「どの条文で、何に限って、どんな要件で」保護されるかを分けて覚えると整理できます。画像は2条1項で意匠の定義に加わり、機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限られます。建築物も2条1項で加わり、審査基準上は土地の定着物であって人工構造物であることが要件です。内装は2条ではなく8条の2の規定で、施設の内部の設備・装飾を構成する物品・建築物・画像が、内装全体として統一的な美感を起こさせるときに一意匠として登録できます。いずれも令和2年4月1日に施行されました。

この記事では、改正の全体像、画像、建築物、内装の順に、条文と意匠審査基準の考え方を整理し、最後に3つを比べて短答の型を確認します。条文はe-Gov法令検索の意匠法原文で、審査基準は特許庁の意匠審査基準(令和5年12月改訂の現行版。令和6年1月1日以降の出願に適用)で確認しています。意匠法全体の中での位置付けは「意匠法の短答対策」で扱っています。

令和元年改正の全体像

改正法は令和元年5月17日に法律第3号として公布されました。特許庁の「令和元年意匠法改正特設サイト」によれば、改正項目と施行期日は次のとおりです。

改正項目 施行日
保護対象の拡充(画像・建築物・内装) 令和2年4月1日
関連意匠制度の拡充 令和2年4月1日
存続期間を出願日から25年に変更 令和2年4月1日
創作非容易性の水準の明確化 令和2年4月1日
組物の意匠の拡充(組物の部分意匠) 令和2年4月1日
間接侵害の対象拡大 令和2年4月1日
損害賠償算定方法の見直し 令和2年4月1日
複数意匠一括出願手続の導入 令和3年4月1日
物品区分の扱いの見直し 令和3年4月1日
手続救済規定の拡充 令和3年4月1日

出典:特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」(2026年9月7日更新)

保護対象の拡充は、関連意匠や存続期間と同じ令和2年4月1日施行です。令和3年4月1日施行の3項目と混同しないようにします。関連意匠の変更点は「意匠法の関連意匠まとめ」で扱っています。

令和元年改正で加わった3つの保護対象
令和元年改正で加わった3つの保護対象

画像:2条1項で意匠の定義に加わった

条文の限定

現行の2条1項は、意匠の定義に「画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。…)」を加えています。画像なら何でもよいわけではなく、次のいずれかに当たるものに限られます。

画像は操作画像か表示画像に限られ、映画やゲームなどのコンテンツは意匠にならない
画像は操作画像か表示画像に限られ、映画やゲームなどのコンテンツは意匠にならない
  • 機器の操作の用に供される画像(審査基準は「操作画像」と呼ぶ。例:クリックするとソフトウェアが立ち上がる操作ボタン)
  • 機器がその機能を発揮した結果として表示される画像(「表示画像」と呼ぶ)

意匠審査基準(第IV部第1章)は、この限定の理由を、意匠権という強い独占権を与える以上、全ての画像を意匠とすることは適切ではないためと説明しています。そのうえで、映画やゲームなどのコンテンツは操作画像にも表示画像にも当たらず、意匠を構成しないとしています。電化製品の3Dオブジェクトのような仮想的なものは、ここでいう「機器」に当たらないともしています。

画像意匠と、物品等の部分に画像を含む意匠

改正前も、平成18年改正以降は、物品の操作の用に供される画像を「物品の部分」として保護していました。改正後は、物品から離れた画像そのものも保護されるようになったので、画像を含む意匠の登録を受ける方法は2通りになりました。

方法 内容 願書の「意匠に係る物品」の欄
画像意匠 表示する物品や建築物を特定せず、画像それ自体を保護 画像の用途(例:アイコン用画像、情報表示用画像)
物品等の部分に画像を含む意匠 物品又は建築物と一体的に創作された画像を、その部分として保護 物品又は建築物

6条1項3号は、願書の記載事項を「意匠に係る物品又は意匠に係る建築物若しくは画像の用途」としています。画像意匠では、物品名の代わりに画像の用途を書くということです。審査基準は、「画像意匠」「画像」とだけ書くのは不適切な記載の例としています。

また改正前の2条2項は、物品の部分としての画像に「これと一体として用いられる物品に表示されるもの」を含めていました。審査基準によれば、改正でこの規定が削除されたため、例えばテレビに表示される録画機の操作画像は、録画機の部分としての画像とは認められなくなりました。このような画像は、画像意匠として出願するか、物品と画像からなる組物の意匠として出願することになります。

画像の実施と間接侵害

画像を保護対象にしたことに合わせて、2条2項の「実施」にも画像についての号が置かれました。2条2項3号は、画像(その画像を表示する機能を有するプログラム等を含む)について、次の行為を実施としています。

  • イ 画像の作成、使用又は電気通信回線を通じた提供若しくはその申出
  • ロ 画像を記録した記録媒体又は内蔵する機器(画像記録媒体等)の譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出

物品の実施(1号)に「製造」があるのに対し、画像は「作成」、流通は「電気通信回線を通じた提供」という言葉になっている点が枝になります。38条も、7号から9号で画像の作成に用いる物品やプログラム等、画像の提供のための保有などを侵害とみなす行為として定めています。

定義の括弧書きの例外

2条1項の括弧書きは、画像の限定について「次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き」としています。たとえば3条2項(創作非容易性)の「形状等又は画像に基づいて」の画像には、この限定がかかりません。登録を受けられる画像は操作画像・表示画像に限られる一方、創作非容易性の判断の基礎になる公知の画像は限定されていない、という読み分けです。

画像意匠と物品の意匠の類否

審査基準は、画像意匠と物品の部分としての画像を含む意匠の類否も、意匠全体の用途・機能から判断するとしています。例として、「電子メール送受信用画像」と「電子メール送受信機能付き電子計算機」は用途・機能が類似するが、「電子メール送受信機能付き冷蔵庫」の画像部分とは、冷蔵庫としての用途・機能が外観に顕著に表れているため類似しない、としています。ただし冷蔵庫の意匠が先に公知になっていれば、表示部の画像も画像意匠として新規性等の判断の資料になります。

建築物:土地の定着物で、人工構造物

条文と審査基準の要件

2条1項は「建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等」を意匠に加えました。建築物の定義は条文にありませんが、意匠審査基準(第IV部第2章)は、意匠法上の建築物に当たるための要件として次の2つを挙げています。

意匠法上の建築物は土地の定着物かつ人工構造物で、仮設テントや船舶、キャンピングカーは当たらない
意匠法上の建築物は土地の定着物かつ人工構造物で、仮設テントや船舶、キャンピングカーは当たらない
要件 審査基準の説明
土地の定着物であること 継続的に土地に固定して使用されるもの。土地には海底・湖底などの水底を含む
人工構造物であること 建築基準法の定義より広く、建設される物体を指し、土木構造物を含む

該当する例は、商業用建築物、住宅、学校、病院、工場、競技場、橋りょう、電波塔などです。該当しない例として、審査基準は次のものを挙げています。

  • 土地に定着させ得るが動産として取引されるもの(庭園灯)
  • 一時的に設営される仮設のもの(仮設テント)
  • 登記の対象となり得るが動産として取引されるもの(船舶、航空機、キャンピングカー)
  • 自然の山・岩・樹木、自然物や地形を主な要素とするもの(スキーゲレンデ、ゴルフコース)
  • 土地そのもの、土地を造成したにすぎないもの

建築物に当たらない動産でも、物品に当たれば物品の意匠として登録の対象になりえます。また、通常の使用状態で視認される建築物の内部の形状等も建築物の意匠に含まれ、内部の一部だけを部分意匠にすることもできるとされています。

建築物の実施と不登録事由

2条2項2号は、建築物の実施を「建築、使用、譲渡若しくは貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出」としています。物品の実施(1号)と比べると、製造の代わりに建築が入り、輸出と輸入がありません。不動産である建築物の性質から当然ですが、枝で入れ替えられやすいところです。

建築物の実施は建築・使用・譲渡・貸渡し等で、物品と違い製造の代わりに建築が入り、輸出と輸入はない
建築物の実施は建築・使用・譲渡・貸渡し等で、物品と違い製造の代わりに建築が入り、輸出と輸入はない

5条3号の不登録事由も、「物品の機能を確保するために不可欠な形状」と並べて、「建築物の用途にとつて不可欠な形状のみからなる意匠」「画像の用途にとつて不可欠な表示のみからなる意匠」を定めています。

用途・機能の類否

審査基準は、建築物同士の用途・機能の類否は、詳細に比べる必要はなく、使用の目的や状態に共通性があれば類似すると判断するとしています。住宅、病院、レストラン、オフィスのように、人が内部に入り一定時間を過ごすものは用途・機能が類似します。また建築物の「住宅」と物品の「組立家屋」も、人が居住するために用いる点で用途・機能が類似するとされています。物品と建築物の間でも類否の判断はありうるということです。

内装:8条の2で一意匠として登録できる

条文

8条の2は、内装の意匠を次のように定めています。

店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾(以下「内装」という。)を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠は、内装全体として統一的な美感を起こさせるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。

内装は2条1項の定義に並べられたのではなく、家具、什器、壁、床などの複数の物品等から成るものを一つの意匠として出願できるようにする、7条(一意匠一出願)の例外として置かれています。8条の組物と同じ位置付けです。

審査基準の3つの要件

意匠審査基準(第IV部第4章)は、内装の意匠に当たるための要件を次のように整理しています。

内装の意匠は施設の内部であること、複数の物品等で構成されること、内装全体として統一的な美感を起こさせることが要件
内装の意匠は施設の内部であること、複数の物品等で構成されること、内装全体として統一的な美感を起こさせることが要件
要件 内容
施設の内部であること 人がその内部で一定時間を過ごすための施設。床・壁・天井のいずれか一つ以上が図面に開示されていること
複数の物品・建築物・画像で構成されること 意匠法上の物品等に限られ、二以上から構成されること
内装全体として統一的な美感を起こさせること 全体として視覚的に一つのまとまりのある美感

「その他の施設」には、宿泊施設、医療施設、教育施設、興行場、住宅などが広く含まれます。要件を満たせば動産でもよく、組立式の簡易店舗や、車両・旅客機・客船の内装も対象になるとされています。一方、天井裏、床下、壁裏、パイプスペースのように、利用者が通常視認しない範囲は施設の内部に当たりません。

統一的な美感を起こさせるものの例として、審査基準は、構成物に共通の形状等の処理がされているもの、全体として一つのまとまった形状又は模様を表しているもの、観念上の共通性があるもの、統一的な秩序に基づいて配置したものを挙げています。構成物の全てに同じ処理がされている必要はないとされている点が、組物との違いの一つです。内装と組物の比較は「組物の意匠」で表にしています。

拒絶理由だが無効理由ではない

内装や組物の要件違反は拒絶理由(17条1号)だが、意匠登録無効審判の理由(48条1項1号)にはならない
内装や組物の要件違反は拒絶理由(17条1号)だが、意匠登録無効審判の理由(48条1項1号)にはならない

17条1号は拒絶理由として「第八条、第八条の二」を挙げていますが、48条1項1号の無効理由には8条も8条の2も入っていません。内装や組物の要件を満たさないまま登録されても、手続上の不備にとどまり、意匠登録無効審判の理由にはならないということです。7条(一意匠一出願)も17条3号の拒絶理由ですが、無効理由ではありません。

3つの保護対象を比べる

項目 画像 建築物 内装
根拠 2条1項 2条1項 8条の2
限定・要件 操作画像又は表示画像 土地の定着物・人工構造物 施設の内部・複数の物品等・統一的な美感
部分意匠 できる(画像の部分) できる(建築物の部分) 内装の一部についてもできる
実施の定義 作成・使用・電気通信回線を通じた提供等(2条2項3号) 建築・使用・譲渡・貸渡し等(同項2号) 内装専用の号はない
画像を含む意匠の2つの保護の受け方
画像を含む意匠の2つの保護の受け方

短答の枝ではこう問われる

本試験と同じ形の枝を、条文と審査基準から書き起こしました(過去問そのものではありません)。

改正の枝は限定の外し方、実施行為の入替え、根拠条文の入替え、施行日の4つの型で作られる
改正の枝は限定の外し方、実施行為の入替え、根拠条文の入替え、施行日の4つの型で作られる

例題 意匠法に関し、正しいものの数はいくつか。

  • イ 映画のワンシーンの画像は、機器の表示部に表示されるものであれば、画像の意匠として意匠登録を受けることができる。
  • ロ 意匠に係る建築物について、その建築物を輸出する行為は、意匠の実施に該当する。
  • ハ 内装の意匠は、内装全体として統一的な美感を起こさせるときに、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。
  • ニ 内装の意匠として登録された意匠が、内装全体として統一的な美感を起こさせるものでなかったことは、意匠登録無効審判の請求の理由となる。
  • ホ 画像を記録した記録媒体を譲渡する行為は、画像の意匠の実施に該当する。

正しいのはハとホの2つです。イは、コンテンツは操作画像にも表示画像にも当たらず意匠を構成しないので誤り。ロは、2条2項2号の建築物の実施に輸出が含まれないので誤り。ニは、8条の2が48条1項1号の無効理由に挙げられていないので誤りです。個数問題の解き方は「個数問題の解き方」で整理しています。

型としては次のものが繰り返し使われます。

限定の外し方。「画像であれば全て保護される」「建築物であれば仮設のものでもよい」のように、条文や審査基準の限定を外した枝です。画像は操作画像・表示画像、建築物は土地の定着物・人工構造物と、必ず限定をセットで覚えます。

実施行為の入替え。物品の「製造」、建築物の「建築」、画像の「作成」の入替えや、建築物に輸出入を加えた枝です。

根拠条文の入替え。内装を2条1項の定義で保護されると書いた枝、画像を8条の2で書いた枝などは誤りです。内装は組物と並ぶ一意匠一出願の例外です。

施行日と改正前の知識。保護対象の拡充は令和2年4月1日施行です。「建築物の意匠は意匠登録を受けることができない」という枝は、改正前の制度に基づく誤りです。

学習の進め方

改正部分は、改正前と改正後の条文を並べると定着が早くなります。e-Gov法令検索では過去の時点の条文も確認できるので、2条(定義と実施)、5条3号、6条1項3号、8条、8条の2、38条を改正前後で見比べ、「どこに画像・建築物という言葉が入ったか」に印を付けます。

過去問を解くときは、令和2年4月1日より前の制度を前提とした枝に印を付け、現行法で正誤が変わるかを確かめます。法域別の足切りを避けるための意匠法の目標点は「短答式の合格基準と科目別足切り」で確認してください。

まとめ

  • 令和元年改正(令和元年5月17日公布)で、画像・建築物・内装が保護対象に加わった。施行は令和2年4月1日
  • 画像は2条1項。機器の操作の用に供される画像か、機器がその機能を発揮した結果として表示される画像に限る。コンテンツは意匠を構成しない
  • 画像の実施は作成・使用・電気通信回線を通じた提供等と、画像記録媒体等の譲渡等(2条2項3号)
  • 建築物は2条1項。審査基準上、土地の定着物で人工構造物(土木構造物を含む)。実施は建築・使用・譲渡・貸渡し等で、輸出入は含まない
  • 内装は8条の2。施設の内部を構成する物品・建築物・画像が内装全体として統一的な美感を起こさせるとき、一意匠として登録できる
  • 8条・8条の2の違反は拒絶理由(17条1号)だが、無効理由(48条1項1号)ではない
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