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特許異議の申立て|113条〜120条の8の手続を短答用に整理

特許法・実用新案法 読了 約10分

弁理士試験短答式の特許異議の申立てを条文順に整理。何人も・特許掲載公報の発行から6月・理由の制限(113条)、申立書の補正、書面審理と職権審理、取消理由通知と訂正の請求(120条の5)、取下げの制限、取消決定と維持決定、無効審判との違いまで扱います。

特許異議の申立ては、特許法の113条から120条の8までの十数か条にまとまった手続です。短答では「無効審判との違い」の形で問われることが多い一方、申立書の補正、取下げの時期、訂正の請求の扱いなど、異議に固有の細かな規定からも枝が作られます。無効審判の知識で類推すると、ちょうど逆になっている規定で落とします。

結論から言うと、異議の枝は「申立て(113条)」「審理(118条〜120条の4)」「取消理由通知と訂正の請求(120条の5)」「決定(114条)」の4段階に分け、各段階で無効審判と逆になる規定を拾うと整理がつきます。申立ては何人もでき、期間は特許掲載公報の発行の日から6月、理由は公益的なものに限られます。審理は書面審理だけで、取消理由通知の後は申立てを取り下げられず、維持決定には不服を申し立てられません。

条文はe-Gov法令検索の特許法原文で確認しています。審判の種類全体と、異議を含む手続の一覧は「特許法の審判の種類」でまとめているので、この記事では異議の手続を条文順に深掘りします。

手続の流れ

特許異議の申立ての流れ
特許異議の申立ての流れ

異議は、次の順に進みます。

  1. 何人も、特許掲載公報の発行の日から6月以内に、特許異議申立書を特許庁長官に提出する(113条・115条1項)
  2. 審判長が申立書の副本を特許権者に送付する(115条3項)
  3. 3人又は5人の審判官の合議体が、書面審理で審理する(114条1項・118条1項)
  4. 取消決定をしようとするときは、特許権者と参加人に取消理由を通知し、意見書の提出の機会を与える(120条の5第1項)。特許権者はその期間内に訂正を請求できる(同条2項)
  5. 取消理由があれば取消決定、なければ維持決定をする(114条2項・4項)

異議は「審判」ではなく、結論は「審決」ではなく「決定」です。申立人と特許権者が対立する当事者として争う構造にもなっていません。後で見るように、申立人は取消理由通知を受ける側に含まれず、維持決定を争うこともできません。

申立ての要件(113条)

113条1項は、「何人も、特許掲載公報の発行の日から六月以内に限り、特許庁長官に、特許が次の各号のいずれかに該当することを理由として特許異議の申立てをすることができる」と定めます。後段で、二以上の請求項に係る特許については、請求項ごとに申立てができるとしています。

主体と期間

主体は「何人も」で、利害関係は求められていません。期間は「特許掲載公報の発行の日から」6月で、特許権の設定登録の日や特許査定の日から数えるのではありません。起算点の差し替えは典型的な枝の作り方です。

特許異議の申立ては何人もでき、期間は特許掲載公報の発行の日から6月以内
特許異議の申立ては何人もでき、期間は特許掲載公報の発行の日から6月以内

理由は1号〜5号に限られる

異議の理由は、次の5つです。

共同出願違反や冒認、特許後に生じた理由、訂正要件違反は、無効理由にはあるが異議の理由にはならない
共同出願違反や冒認、特許後に生じた理由、訂正要件違反は、無効理由にはあるが異議の理由にはならない
号 内容 無効理由(123条1項)との対応
1号 17条の2第3項(新規事項)を満たさない補正をした特許出願(外国語書面出願を除く) 1号と同じ
2号 25条・29条・29条の2・32条・39条1項〜4項違反 2号から38条違反を除いたもの
3号 条約違反 3号と同じ
4号 36条4項1号又は6項(4号を除く)の要件違反 4号と同じ
5号 外国語書面出願で、明細書等の記載が外国語書面の範囲内にない 5号と同じ

無効理由にあって異議の理由にないのは、次の4つです。

  • 38条違反(共同出願違反)
  • 123条1項6号(特許を受ける権利を有しない者の出願、いわゆる冒認)
  • 123条1項7号(特許後に権利享有能力を失ったなど、後発的な理由)
  • 123条1項8号(訂正の要件違反)

権利の帰属をめぐる争いと、特許後に生じた事情は、異議では扱いません。短答では「冒認を理由として特許異議の申立てをすることができる」とする枝が典型です。

申立書と、その補正(115条)

115条1項は、特許異議申立書に、申立人・代理人の氏名等、申立てに係る特許の表示、特許異議の申立ての理由及び必要な証拠の表示を記載することを求めます。

2項は、申立書の補正は要旨を変更するものであってはならないとしつつ、ただし書で例外を置いています。

申立ての理由と証拠の要旨を変える補正は、6月の経過時と取消理由通知時のいずれか早い時までしかできない
申立ての理由と証拠の要旨を変える補正は、6月の経過時と取消理由通知時のいずれか早い時までしかできない
  • 対象:1項3号の事項(申立ての理由及び必要な証拠の表示)についてする補正
  • 時期:113条の期間(公報発行から6月)が経過する時、又は120条の5第1項の取消理由通知がある時のいずれか早い時まで

6月の期間内であっても、取消理由通知が先にあれば、その時点で理由を差し替える補正はできなくなります。「6月以内であれば、いつでも理由の要旨を変更する補正ができる」という枝は誤りです。

3項は、審判長が申立書の副本を特許権者に送付しなければならないと定めます。4項は123条4項を準用し、審判長は専用実施権者その他その特許に関し登録した権利を有する者に、申立てがあった旨を通知します。

審理の規定(118条〜120条の4)

条文 内容 無効審判との違い
118条1項 審理は書面審理による 無効審判は口頭審理が原則(145条1項)。異議には口頭審理にできるただし書がない
119条1項 特許権についての権利を有する者その他利害関係を有する者は、決定があるまで、特許権者を補助するため参加できる 無効審判は請求人としての参加も可(148条1項)
120条の2第1項 特許権者・申立人・参加人が申し立てない理由も審理できる 職権審理は無効審判にもある
120条の2第2項 申立てがされていない請求項は審理できない 審理の対象は申立ての範囲内
120条の3第1項 同一の特許権に係る2以上の申立ては、特別の事情がある場合を除き、審理を併合する 原則として併合する
120条の4第1項 取消理由通知の後は、申立てを取り下げられない 無効審判は答弁書の提出後、相手方の承諾があれば取り下げられる(155条2項)

参加は「特許権者を補助するため」に限られています。申立人の側に立って参加する規定はありません。申立人と同じ立場で争いたい者は、6月の期間内であれば自ら申し立てることになります。

異議の審理は書面審理だけで、参加できるのは特許権者を補助する側に限られる
異議の審理は書面審理だけで、参加できるのは特許権者を補助する側に限られる

職権審理(120条の2第1項)は理由について及ぶのであって、請求項には及びません(同条2項)。「申立てのない請求項についても、職権で取消理由を通知できる」は誤りです。

取下げの制限は、無効審判と比べて問われます。異議では、取消理由通知があった後は、特許権者の承諾があっても取り下げられません。通知の前であれば取り下げられます。

取消理由通知と訂正の請求(120条の5)

取消理由の通知(1項)

審判長は、取消決定をしようとするときは、特許権者及び参加人に対し、取消理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければなりません。通知の相手に申立人は含まれていません。維持決定をするときは、この通知の手続を経る必要がありません。

取消理由は特許権者と参加人に通知され、申立人は通知の相手に含まれない
取消理由は特許権者と参加人に通知され、申立人は通知の相手に含まれない

訂正の請求(2項〜4項)

特許権者は、1項で指定された期間内に限り、明細書・特許請求の範囲・図面の訂正を請求できます。目的は訂正審判と同じ4つです。

  • 特許請求の範囲の減縮
  • 誤記又は誤訳の訂正
  • 明瞭でない記載の釈明
  • 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を、引用しないものとすること

3項は、請求項ごとに訂正の請求ができるとしつつ、ただし書で、異議が請求項ごとに申し立てられた場合は、請求項ごとに訂正の請求をしなければならないとします。4項は、一群の請求項があるときは、一群の請求項ごとに請求しなければならないとします。

申立人の意見書(5項)

訂正の請求があったときは、審判長は、取消理由を記載した書面と訂正の請求書等の副本を申立人に送付し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければなりません。ただし、申立人から意見書の提出を希望しない旨の申出があるとき、又は機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるときは除かれます。申立人に意見を述べる機会が保障されるのは、訂正の請求があった場面です。

先の請求のみなし取下げと、請求の取下げ(7項・8項)

同じ異議申立事件で訂正の請求をすると、先にした訂正の請求は取り下げられたものとみなされます(7項)。訂正の請求そのものは、訂正した明細書等について17条の5第1項の補正ができる期間内に限り取り下げることができ、請求項ごと・一群の請求項ごとに請求したときは、その全ての請求を取り下げなければなりません(8項)。

独立特許要件(9項)

9項は126条4項〜7項などを準用し、126条7項(独立特許要件)を「特許異議の申立てがされていない請求項に係る」減縮・誤記誤訳の訂正に読み替えています。申立てがされている請求項については、異議の審理の中で特許性が判断されるので、訂正の段階で重ねて独立特許要件を課しません。独立特許要件の比較は「特許法の審判の種類」の訂正の請求の表にもまとめています。

決定と、その後(114条・120条の6・120条の7・178条)

決定 条文 効果 不服申立て
取消決定 114条2項・3項 確定すると特許権は初めから存在しなかったものとみなす 東京高等裁判所に訴え(178条1項)
維持決定 114条4項・5項 特許は維持される 不服を申し立てられない

決定は文書で行い、決定の謄本は特許権者、申立人、参加人、参加を申請して拒否された者に送達されます(120条の6)。決定は申立事件ごとに確定し、請求項ごとに申し立てられた場合は、請求項ごと又は一群の請求項ごとに確定します(120条の7)。

取消決定には特許権者が東京高等裁判所に訴えられるが、維持決定には不服を申し立てられない
取消決定には特許権者が東京高等裁判所に訴えられるが、維持決定には不服を申し立てられない

取消決定に対する訴えは、178条1項により東京高等裁判所の専属管轄で、謄本の送達があった日から30日以内に提起します(同条3項)。被告は特許庁長官です(179条)。維持決定は114条5項で不服申立てができないので、申立人は、特許を争い続けたければ、利害関係人として無効審判を請求することになります。

なお、異議の決定には167条(一事不再理)は準用されていません(120条の8第1項の準用条文に167条は含まれない)。取消理由がないとされた事実・証拠でも、無効審判で改めて主張できます。

無効審判との違い

特許異議の申立てと特許無効審判の違い
特許異議の申立てと特許無効審判の違い
項目 特許異議の申立て 特許無効審判
請求できる者 何人も(113条1項) 利害関係人。38条違反・冒認は特許を受ける権利を有する者(123条2項)
時期 特許掲載公報の発行の日から6月以内 制限なし。特許権の消滅後も可(123条3項)
理由 113条1号〜5号 123条1項1号〜8号
審理の方式 書面審理のみ(118条1項) 口頭審理が原則(145条1項)
取下げ 取消理由通知の後は不可(120条の4第1項) 答弁書提出後は相手方の承諾が必要(155条2項)
参加 特許権者を補助する参加のみ(119条1項) 請求人としての参加も可(148条1項)
訂正 取消理由通知の指定期間内に訂正の請求(120条の5第2項) 答弁書提出期間などに訂正の請求(134条の2)
結論 取消決定・維持決定 審決
不服申立て 取消決定のみ訴え可。維持決定は不可 請求人・被請求人のいずれも訴え可
一事不再理 なし あり(167条)

無効審判は請求人と被請求人(特許権者)が対立する当事者として争う手続ですが、異議の申立人は取消理由通知の相手にも維持決定の不服申立ての主体にも入っていません。表の多くの行は、この構造の違いから説明できます。

実用新案法には、特許異議の申立てに当たる制度がありません。実用新案登録の有効性は、原則として何人も請求できる実用新案登録無効審判(実用新案法37条2項)で争います。違いは「実用新案法と特許法の違い」で整理しています。

短答の枝ではこう問われる

本試験と同じ形の枝を、条文から書き起こしました(過去問そのものではありません)。

例題 特許異議の申立てに関し、正しいものの数はいくつか。

  • イ 特許異議の申立ては、特許権の設定の登録の日から6月以内に限り、することができる。
  • ロ 特許異議申立書の申立ての理由及び必要な証拠の表示についてする補正は、特許掲載公報の発行の日から6月が経過する時までであれば、取消理由の通知があった後であっても、その要旨を変更するものとすることができる。
  • ハ 特許異議の申立てについての審理においては、特許異議の申立てがされていない請求項について審理することはできない。
  • ニ 特許異議の申立ては、取消理由の通知があった後は、特許権者の承諾を得ても取り下げることができない。
  • ホ 特許を維持すべき旨の決定に対しては、特許異議申立人は、東京高等裁判所に訴えを提起することができる。

正しいのはハ・ニの2つです。イは起算点が「特許掲載公報の発行の日」なので誤り、ロは115条2項ただし書が6月の経過時と取消理由通知時の「いずれか早い時まで」としているので誤り、ホは114条5項が維持決定に対する不服申立てを認めていないので誤りです。

学習の進め方

異議は、上の比較表を白紙に再現できるかどうかで仕上がりを測れます。行ごとに、異議の側の条文番号を書き添えられるようにします。115条2項ただし書、119条1項、120条の4第1項、120条の5第5項の4つは、無効審判の知識から類推できない規定なので、条文を直接読んでおきます。

次に、訂正の請求を3つ並べます。訂正審判(126条)、無効審判中の訂正の請求(134条の2)、異議中の訂正の請求(120条の5)で、時期と独立特許要件の違いを押さえます。個数問題で異議の枝が混ざったときの解き方は「短答式の個数問題対策」を、特許法全体の学習順序は「特許法・実用新案法の学習法」を参照してください。

まとめ

  • 特許異議の申立ては審判ではなく、結論は決定。何人も、特許掲載公報の発行の日から6月以内に、請求項ごとにできる(113条)
  • 理由は113条1号〜5号。38条違反・冒認・後発的理由・訂正要件違反は異議の理由にならない
  • 申立書の理由・証拠の要旨変更補正は、6月経過時と取消理由通知時のいずれか早い時まで(115条2項)
  • 審理は書面審理のみ。申し立てない理由も審理できるが、申立てのない請求項は審理できない。参加は特許権者の補助に限る
  • 取消理由通知は特許権者と参加人に。その期間内に訂正を請求でき、申立てのない請求項の減縮等にだけ独立特許要件がかかる。訂正の請求があれば申立人に意見書の機会
  • 取消理由通知の後は申立てを取り下げられない。取消決定は遡って効力を失わせ、特許権者は東京高裁に訴えられる。維持決定には不服申立てができず、一事不再理もない
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