弁理士試験AIブートラボ 弁理士AIブートラボ
記事 / 学習法 / 弁理士論文式の過去問の使い方|公表される論点と何年分・何周

弁理士論文式の過去問の使い方|公表される論点と何年分・何周

学習法 読了 約9分

弁理士論文式の過去問は、特許庁が平成14年度から問題と「論点」を公表しています。模範解答がない中での論点の読み方、何年分をどの順で何周回すか、1問の回し方、令和元年意匠法改正のような法改正で前提が変わった問題の扱い方を、特許庁の公表資料と条文で整理します。

弁理士試験の論文式筆記試験は、短答式と同じく特許庁が過去問を公表しています。ただし公表の中身は短答式とまったく違い、正解の代わりに「論点」が載っているだけです。

結論から言うと、論文式の過去問は「解いて答え合わせをする教材」ではなく、「公表された論点を採点の軸として、自分の答案構成で論点を拾えるかを確かめる教材」です。直近10年分程度を答案構成中心に2〜3周し、古い年度は論点の一覧として使うのが効率的です。この記事では、特許庁が実際に何を公表しているか、論点の読み方、何年分をどの順で回すか、1問の回し方、法改正で前提が変わった問題の扱いを整理します。

短答式の過去問の使い方(枝単位で回す方法)は「短答式の過去問は肢別で回す」で扱っています。この記事は論文式(必須科目)に絞ります。

特許庁が公表している論文式の過去問

特許庁が公表している過去問の中身。短答式は正解番号、論文式は論点、口述はテーマのみ
特許庁が公表している過去問の中身。短答式は正解番号、論文式は論点、口述はテーマのみ

公表されている年度と中身

特許庁の「過去の試験問題」のページには、平成14年度から令和7年度までの各年度の問題が並び、令和8年度分は別のページで公表されています。論文式の必須科目については、各年度に「論文式筆記試験(必須科目)問題及び論点」のページがあります(平成14年度・平成15年度は必須・選択を分けない「論文式筆記試験問題及び論点の公表」)。平成14年度から令和8年度までで25年度分です。

各年度のページに置かれているのは、次の6つのPDFです。

区分 特許・実用新案 意匠 商標
試験問題 問題冊子 問題冊子 問題冊子
論点 論点の一覧 論点の一覧 論点の一覧

出典:特許庁「過去の試験問題」「令和7年度弁理士試験論文式筆記試験(必須科目)問題及び論点」「令和8年度弁理士試験論文式筆記試験(必須科目)問題及び論点」

ページには、試験問題及び論点について、試験委員及び事務局への個々の問い合わせには一切応じないとも書かれています。模範解答や採点基準は公表されていません。

公表の方針

工業所有権審議会の「弁理士試験の具体的実施方法について」は、論文式について、問題は試験終了後にできるだけ速やかにホームページで公表し、解答は「論点を公表する」と定めています。科目内の問題ごとの配点は問題中に明示するとしています。令和8年度の受験案内でも、論文式の公表内容は「試験問題、論点及び結果概要」とされています。

試験 公表される内容
短答式 試験問題、解答及び結果概要
論文式 試験問題、論点及び結果概要
口述 試験問題テーマ

出典:工業所有権審議会「弁理士試験の具体的実施方法について」(令和6年4月18日改正)、特許庁「令和8年度弁理士試験受験案内」

口述試験のテーマも同じ「過去の試験問題」のページに年度ごとに載っています。口述の準備での使い方は「口述試験の対策」で扱っています。

「論点」は何を教えてくれるか

令和7年度の論点の例

論点のPDFは1科目1ページ程度で、問題ごとに「何の理解を問うか」が列挙されています。令和7年度の必須科目の論点を要約すると次のとおりです。

科目 問題 論点(要約)
特許・実用新案 問題Ⅰ 実用新案登録出願の方式要件・基礎的要件、国内優先権主張の要件と不適法な手続の取扱い、分割出願におけるパリ条約による優先権の主張、特許権の移転
特許・実用新案 問題Ⅱ 専用実施権者の無効審判への補助参加の可否、補助参加人が審判手続で行い得る行為、特許権の持分の移転請求と発明者の認定、直接侵害と間接侵害
意匠 問題Ⅰ 新規性喪失の例外、優先権主張、関連意匠、他人の登録意匠との関係、真正品の輸入に対する意匠権の行使
意匠 問題Ⅱ 共同開発契約の事例での侵害訴訟における権利行使の制限、先使用権の抗弁、関連意匠の意匠権の移転とその特例
商標 問題Ⅰ 商標権の消滅原因
商標 問題Ⅱ 商標権侵害と真正商品の並行輸入、国際登録の取消し後の商標登録出願の特例、4条1項11号と19号

出典:特許庁「令和7年度弁理士試験論文式筆記試験(必須科目)問題及び論点」

論点は「採点の軸」として読む

論点の一覧は、答案に何を書くべきかの結論ではありません。書かれているのは「どの制度・どの条文の理解を問うか」だけで、当てはめの結論や、どこまで書けば何点かは分かりません。

公表された論点と自分の答案構成を突き合わせ、拾えた・不十分・落としたの3つに分ける
公表された論点と自分の答案構成を突き合わせ、拾えた・不十分・落としたの3つに分ける

それでも論点は、過去問演習でいちばん役に立つ情報です。論文式の得点は、採点委員が採点した答案全体の平均点との差で決まる仕組みで(「論文式の合格基準」参照)、多くの受験者が書く論点を落とすと、その分だけ平均より下に位置づけられます。公表された論点は、出題者が「この問題でこれを問うた」と明示した、最低限落としてはいけない項目の一覧として読めます。

そこで過去問演習では、自分の答案構成に書いた論点と公表された論点を突き合わせ、次の3つに分類します。

分類 状態 やること
拾えた 構成に論点と根拠条文がある 条・項・号の正確さだけ確認
拾ったが不十分 論点はあるが条文や要件が曖昧 条文から要件を書き直す
落とした 構成に論点がない 問題文のどの事実が論点の手がかりだったかを確認し、同じ論点を含む別の年度の問題にも当たる

「落とした」論点では、問題文のどの事実がその論点の手がかりだったかを必ず確認します。論点を知っていても、事例の中から見つけられなければ答案には書けません。

論点の一覧は、問題を解く前の使い方もできます。25年度分の論点PDFを科目ごとに並べると、1年分が1枚程度なので短時間で読み通せます。どの制度が繰り返し問われているかが自分の目で確かめられるので、インプットの優先順位を決める材料になります。ただし、論点に出た回数は将来の出題を保証するものではないので、基本書の範囲を削る根拠には使いません。

何年分をどの順で回すか

年度の使い分け

公表されている25年度分をすべて同じ重さで解く必要はありません。目安は次のとおりです。

年度の範囲 使い方 周回
直近5年分 本試験と同じ時間でフル答案を書く。最後の仕上げに1年分ずつ残しておく 答案構成2〜3周、フル答案1〜2周
6〜10年前 答案構成を中心に回し、落とした論点を補う 答案構成2周
11年以上前 論点の一覧として読み、現行法で問われ方が変わっていないか確認 論点の確認1周

直近を厚くするのは、法改正の影響が小さく、現行の出題の形(設問の分け方、配点の置き方)に近いからです。古い年度は、制度の前提が変わっている問題が混ざるので、論点を拾う素材として使います。

回す順番

解く順番は、古い年度から新しい年度へが基本です。10年前の問題で答案の型と論点の拾い方を練習し、直近の問題は仕上げの時期に本試験と同じ条件で使います。直近の年度を学習の最初に使ってしまうと、本番前に「初見の問題を本試験と同じ時間で解く」練習の素材が残りません。

論文式の過去問は古い年度から新しい年度へ解き、直近の年度は仕上げの通し練習に残しておく
論文式の過去問は古い年度から新しい年度へ解き、直近の年度は仕上げの通し練習に残しておく

科目の順番は、特許・実用新案から始めるのが自然です。配点比率が2倍で、意匠・商標の多くの手続規定は特許法を準用しているため、特実で身につけた書き方がそのまま意匠・商標に使えます。

過去問1問の回し方

論文式の過去問1問の回し方。構成、論点との照合、条文での確認、答案作成、再現の5段階
論文式の過去問1問の回し方。構成、論点との照合、条文での確認、答案作成、再現の5段階

1問(1科目の1つの【問題】)を次の5段階で回します。

  1. 時間を計って答案構成を作る。特実なら1問20分、意匠・商標なら15分。論点ごとに根拠条文を条・項・号まで書く
  2. 公表された論点と照合する。前の節の3分類で印を付ける
  3. 条文で規範を確認する。落とした論点・不十分な論点について、法文を開いて要件を番号付きで書き出す。このとき、その条文が出題年度から改正されていないかも確認する
  4. 本試験と同じ時間で答案を書く。全問でやる必要はなく、週1通が目安
  5. 2〜3週間後に構成だけ再現する。同じ論点を落とさなくなるまで繰り返す

3の「条文で規範を確認する」が、模範解答のない論文式の過去問演習の中心です。市販の解答例や予備校の再現答案を参考にする場合も、要件は必ず自分で法文から確認します。答案の型と条文の引き方は「論文式の書き方」で整理しています。

論点を自分の言葉で残す

照合で見つかった論点は、「論点名・根拠条文・要件・出題年度」を1枚にまとめたカードの形で残しておくと、2周目以降の構成が速くなります。まとめるときは、過去問の問題文や市販教材の文章を写すのではなく、条文から自分で要件を抜き出して書きます。そのほうが著作権上も安全で、口述試験の準備にもそのまま使えます。

照合で見つけた論点は、論点名・根拠条文・要件・出題年度を1枚にまとめたカードに自分の言葉で残す
照合で見つけた論点は、論点名・根拠条文・要件・出題年度を1枚にまとめたカードに自分の言葉で残す

法改正への対応

問題は出題年度の法令が前提

令和7年度の問題冊子の受験上の注意には、弁理士試験が実施される日において施行されている特許法等に関する問題を掲載している、という趣旨の記載があります。貸与される法文も試験日時点のもので、令和8年度は令和8年6月28日時点とされていました。

古い年度の過去問はその年の試験日に施行されていた条文が前提なので、改正で変わった点は現行法で書き直す
古い年度の過去問はその年の試験日に施行されていた条文が前提なので、改正で変わった点は現行法で書き直す

出典:特許庁「令和7年度弁理士試験論文式筆記試験(必須科目)問題及び論点」(試験問題の受験上の注意)、特許庁「令和8年度弁理士試験貸与法文について」

つまり、古い年度の過去問は、その年の試験日に施行されていた条文を前提に作られています。その後の改正で要件や効果が変わっていれば、当時の論点どおりに書くと現行法では誤りになります。

例:令和元年の意匠法改正

意匠法は、令和元年法律第3号(特許法等の一部を改正する法律)により、令和2年4月1日施行分で大きく変わりました。e-Gov法令検索の改正履歴で改正前後の条文を比べると、次の違いがあります。

令和元年の意匠法改正で、意匠権の存続期間は設定の登録の日から20年から、出願の日から25年に変わった
令和元年の意匠法改正で、意匠権の存続期間は設定の登録の日から20年から、出願の日から25年に変わった
規定 令和2年4月1日より前 現行
意匠の定義(2条1項) 物品の形状、模様、色彩またはこれらの結合で、視覚を通じて美感を起こさせるもの 物品の形状等に加え、建築物の形状等と一定の画像を含む
存続期間(21条1項) 設定の登録の日から20年 意匠登録出願の日から25年
関連意匠の存続期間(21条2項) 本意匠の意匠権の設定の登録の日から20年 基礎意匠の意匠登録出願の日から25年

根拠条文:意匠法2条1項・21条(e-Gov法令検索。現行と、令和2年1月1日施行時点の条文を比較)

令和元年度以前の意匠の問題を解くときは、存続期間や保護対象に関わる設問がないかを先に確認し、あれば現行の条文で規範を書き直します。関連意匠の改正内容は「関連意匠の要件と令和元年改正」で詳しく扱っています。

改正の影響を受けた問題の扱い

短答式の枝と同じく、論文式の過去問も次の3つに分けて扱います。

分類 扱い
条文番号や文言だけが変わった 現行の条文番号で規範を書き直して、そのまま使う
要件や効果が変わった 現行法で答案構成を作り直す。記録に「改正で前提変更」と改正の年を残す
制度そのものがなくなった・大きく変わった 演習の対象から外す。論点の一覧としてだけ見る

改正の有無は、現行の条文をe-Gov法令検索で開き、改正履歴や附則で確かめます。直近5年分の過去問でも、出題後に改正された規定がないとは限りません。

論文式の過去問でよくある使い方の失敗

答案を書きっぱなしにする

フル答案を書いただけで満足し、論点との照合をしないと、同じ論点を何度でも落とします。書く時間より、照合と条文の確認に時間をかける方が伸びます。目安は、書いた時間と同じかそれ以上を復習に使うことです。

市販の解答例を暗記する

模範解答が公表されていないため、市販の解答例や再現答案を覚えたくなります。しかし本試験では同じ事例は出ません。覚えるべきなのは解答例の文章ではなく、論点ごとの根拠条文と要件、そして「どの事実がその論点の手がかりになるか」です。

本試験で同じ事例は出ないので、解答例の文章ではなく根拠条文と要件、論点の手がかりになる事実を覚える
本試験で同じ事例は出ないので、解答例の文章ではなく根拠条文と要件、論点の手がかりになる事実を覚える

直近の年度から解き始める

最新の問題を最初に解くと、仕上げの時期に初見の素材が残りません。直近1〜2年分は、本試験1か月前の通し練習のためにとっておきます。

改正を確認せずに古い論点を覚える

古い年度の論点は、当時の条文が前提です。論点カードに出題年度を書いておき、現行の条文と照らして違いがあれば、その場で書き直します。

過去問演習の年間の配置

論文式の学習時間の中で、過去問演習をいつ始めるかの目安です。

時期 過去問の使い方
論点のインプット期 単元ごとに、その単元の論点を含む過去問の論点PDFだけを読む
答案の型の習得期 6〜10年前の問題で答案構成を週3〜5問。フル答案は週1通
本試験3か月前〜 直近5年分を本試験と同じ時間で。1日で3科目を通す日も作る
本試験1か月前〜 残しておいた直近1〜2年分を本番と同じ時間割で解き、落とした論点だけを見直す

令和8年度の必須科目は、6月28日の1日に特許・実用新案(10時〜12時)、意匠(13時15分〜14時45分)、商標(15時30分〜17時)を続けて行う時間割でした(令和8年度弁理士試験受験案内)。1日で5時間書き続ける体力も、過去問で事前に確かめておきます。

まとめ

  • 特許庁は論文式の問題と論点を平成14年度から公表している(令和8年度まで25年度分)。模範解答はない
  • 論点は「最低限落としてはいけない項目の一覧」。自分の答案構成と照合し、拾えた・不十分・落としたの3つに分ける
  • 直近5年分はフル答案、6〜10年前は答案構成中心、それより前は論点の一覧として使う
  • 1問は「構成→論点と照合→条文で確認→答案→再現」で回す。条文で規範を組み立て直す工程が中心
  • 問題は出題年度の法令が前提。令和元年度以前の意匠は、令和元年改正で定義と存続期間が変わっている
読んだあとに、今日の1問を

過去問ベースの肢別演習で、読んだ内容をそのまま演習に移せます。

関連記事