1工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
1 意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
2 意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠
3 前二号に掲げる意匠に類似する意匠
2意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
この条文が問われた枝 28問
誤り。違うのは「公知となった後は、内装の意匠ホについて意匠登録を受けることはできない」の部分である。内装の意匠の新規性と創作非容易性は内装全体で判断するから、構成物品の意匠が公知になっても内装全体が公知意匠と同一・類似でなく容易に創作できたものでなければ登録を受けられる。
8条の2の内装の意匠は、内装を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠を内装全体として一意匠として登録するものであるから、3条1項の新規性も3条2項の創作非容易性も、構成物品ごとではなく内装全体の意匠について判断する。3条1項が登録を受けられないとするのは出願前に公然知られた意匠又はこれに類似する意匠であり、公知になったのはテーブルの意匠イ、椅子の意匠ロ及びベッドの意匠ハという個々の物品の意匠であって、それらをクルーザーの室内に配した内装の意匠ホそのものではない。内装の意匠は、市販の家具を用いても配置や組合せによって統一的な美感を起こさせる点に創作があるから、構成物品が公知であることだけでは内装全体が公知意匠と同一又は類似になるとも、3条2項で容易に創作できたともいえない。枝は、構成物品の公知だけで内装の意匠ホの登録が受けられなくなるとしており、内装全体で判断する3条の適用と異なる。

工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
誤り。違うのは「乙は意匠イについて、意匠登録を受けることができる」の部分である。机2台を横並びにした態様は出願前に動画配信で電気通信回線を通じて公衆に利用可能となっており、これに類似する組物の意匠イは3条1項3号により、少なくとも3条2項により登録を受けることができない。
3条1項2号は、意匠登録出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠を、同項3号はこれに類似する意匠を、登録を受けることができない意匠とし、3条2項は、公衆に利用可能となった形状等に基づいて通常の知識を有する者が容易に創作できた意匠も登録を受けることができないとする。公衆に向けて配信された動画は、誰でも見られる状態に置かれた時点で2号に当たる。甲が令和7年9月1日に配信した動画には机2台を横並びにしたオフィスのレイアウトが登場しており、乙が10月1日に出願した組物の意匠イは、その動画の机と類似する机2台を横並びにした組物全体の形状であるから、公衆に利用可能となった意匠に類似する意匠として3号に当たる。かりに動画の態様が組物の意匠として捉えられないとしても、公知の机の形状と横並びの配置から容易に創作できた意匠として3条2項に当たる。乙は甲の公開に関与していないので4条の例外も使えない。

意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠
- 1号 公然知られた意匠:秘密を保つ義務のない者に現実に知られたことが要る
- 2号 頒布された刊行物に記載された意匠・電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠:公衆が見られる状態になれば足り、現実に知られたことの立証は要らない
- 3号 前二号に類似する意匠:物品の同一・類似を前提に、形状等の類否を見る。物品が非類似なら3条2項の問題である
- 場所と時:日本国内又は外国を問わず、出願の時を基準にする
誤り。違うのは「意匠について、意匠登録を受けることができる場合がある」の部分である。公開された映画のスマートフォンに表されたアイコン画像は出願前に公衆に利用可能となった画像であり、これに類似するアイコン画像の意匠は3条1項3号又は3条2項により登録を受けることができない。
3条1項2号・3号は、出願前に頒布された刊行物に記載され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠及びこれに類似する意匠を登録を受けることができない意匠とし、3条2項は、公然知られた形状等又は画像に基づいて容易に創作できた意匠を登録から除く。公開された映画に登場するスマートフォンの画面に表されたアイコン画像は、機器の操作の用に供される画像が公衆の目に触れたものであり、意匠審査基準も公知資料に表された表示部の画像を新規性判断の資料とするから、これに類似するアイコン画像の意匠は3条1項3号に当たる。かりに映画の中の表示を2条1項の画像の意匠と捉えないとしても、同項のかっこ書きは3条2項を除いているので引用する画像に限定はなく、公知のアイコン画像に類似する画像は容易に創作できた意匠として3条2項に当たる。4条の例外に当たる事情は枝に示されていない。

意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
- 限定が及ぶ条文:3条1項(新規性の「意匠」)、5条2号(他人の業務に係る画像)、登録を受けようとする画像そのものである
- 限定が外れる条文:3条2項(創作非容易性の引用画像)、37条2項(廃棄請求の対象)、38条7号・8号(間接侵害の対象)、44条の3第2項6号、55条2項6号である
誤り。違うのは「意匠ホは意匠登録を受けることができる」の部分である。意匠ホは先の出願に係る意匠イの一部である学習机と同一であり、意匠イの公報の発行後の出願であるから、3条の2のただし書に当たらず登録を受けられない。
3条の2は、意匠登録出願に係る意匠が、その出願の日前の他の意匠登録出願の願書の記載及び図面等に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、3条1項にかかわらず意匠登録を受けることができないと定める。ただし書は、出願人が同一の者であって、先の出願が掲載された意匠公報の発行の日前に当該出願があったときに限って適用を外す。同一人であっても、公報が発行されて先の出願の全体が公になった後は、その一部を取り出した出願をもはや保護する必要が無いからである。甲の意匠ホは、意匠イを構成する学習机と同一であり、意匠イの一部と同一の意匠に当たる。出願人は意匠イと同じ甲であるが、出願は意匠イの意匠公報の発行後にされているから、ただし書の「発行の日前」の要件を満たさない。公報で全体が公になった後の出願であるため、3条1項の新規性の面でも登録は認められにくいが、3条の2の本文に当たる以上、意匠ホは意匠登録を受けることができず、枝は誤りである。

意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。
誤り。違うのは「出願Bは意匠法第3条の2の規定により拒絶される」の部分である。3条の2の先の意匠登録出願は、後の出願の後に意匠公報に掲載されたものに限られるから、図面等を掲載した公報の発行後の出願Bには同条は働かない。
3条の2が先の意匠登録出願として引くのは、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であって当該意匠登録出願後に20条3項又は66条3項の規定により意匠公報に掲載されたものである。後の出願の時点で先願の内容がすでに公報で公開されていれば、その意匠は公知意匠として3条1項の新規性で扱えば足り、未公開の先願の一部との関係を補うために置かれた3条の2を使う必要がないからである。秘密意匠では20条4項により図面等の内容が秘密期間の経過後に掲載されるが、出願Bはその20条3項4号の事項を掲載した公報の発行後にされているので、出願Aは出願Bの後に公報に掲載されたものに当たらない。出願人が同一である点を見るまでもなく、出願Bは3条の2では拒絶されず、意匠イの公知を理由とする3条1項の問題として扱われる。

意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
誤り。違うのは「機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限られない」の部分である。3条1項1号の「意匠」は2条1項の意匠であり、画像は操作画像と表示画像に限られる。
2条1項は、画像を「機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り」と定め、そのかっこ書きで、この限定を外す条文として3条2項、37条2項、38条7号・8号、44条の3第2項6号、55条2項6号を列挙したうえで「以下同じ」としている。したがって列挙されていない3条1項の「意匠」には2条1項の限定がそのまま及び、同項1号の公然知られた画像の意匠も、操作画像又は表示画像である画像に限られる。新規性は出願に係る意匠と同じ土俵にある公知の意匠との比較であるから、意匠に当たらない映画やゲームの画面を公知の意匠として引くことはできないという理屈である。枝は3条1項1号の画像の意匠に限定が及ばないとしている点がずれている。限定が外れるのは、意匠であることを要しない3条2項の引用画像や、廃棄請求・間接侵害の対象となる画像である。

この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き、以下同じ。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
- 限定が及ぶ条文:3条1項(新規性の「意匠」)、5条2号(他人の業務に係る画像)、登録を受けようとする画像そのものである
- 限定が外れる条文:3条2項(創作非容易性の引用画像)、37条2項(廃棄請求の対象)、38条7号・8号(間接侵害の対象)、44条の3第2項6号、55条2項6号である
正しい。2条1項のかっこ書きは3条2項を限定の対象から除いているので、創作非容易性の引用画像は操作画像と表示画像に限られない。
3条2項は、通常の知識を有する者が公然知られ、刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「形状等又は画像」に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは登録を受けることができないと定める。基礎になるのは意匠ではなく形状等又は画像そのものであり、2条1項のかっこ書きは、画像の限定を及ぼさない条文として「次条第二項」を真っ先に挙げている。創作非容易性は、その分野の創作者にとってありふれた手法で作れるかを問う要件であるから、素材になる画像が意匠法上の画像意匠に当たるかどうかは関係がなく、映画やゲームの画面のように操作にも表示にも当たらない画像でも引用できるという理屈である。枝は3条2項の引用画像に限定が及ばないとしており、2条1項の除外の定めどおりで正しい。限定が及ぶ3条1項1号の公知の画像の意匠との違いが、かっこ書きの列挙の有無で決まる。

意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
- 主体:その意匠の属する分野における通常の知識を有する者である。需要者ではない
- 基礎:公然知られ、刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像である。意匠であることも物品の同一・類似も要らない
- 画像:引用する画像に2条1項の限定(操作画像・表示画像)は及ばない
- 除外:3条1項各号に当たる意匠は2項の対象から除かれ、新規性で判断する
誤り。違うのは「意匠ハについて意匠法第4条第2項の適用を受けなくても、意匠ハの存在によって拒絶されない場合がある」の部分である。出願Bの意匠ロは出願前に甲自身が公知にした意匠ハに類似するので、4条2項の手続を取らなければ3条1項3号で拒絶される。
3条1項3号は、出願前に公然知られた意匠に類似する意匠について登録を受けることができないと定め、4条2項は、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して公知となった意匠について、その日から1年以内にその者がした出願に限り、3条1項・2項の適用上公知にならなかったものとみなす。意匠ハは甲が展示会に出品して公知にしたものであるから、4条2項の適用を受けなければ、ハに類似する意匠ロの出願Bは3条1項3号で拒絶される。出願Aの参考図に意匠ロが表されていても、出願Aの出願日を意匠ロに与える仕組みはない。また10条2項の例外は関連意匠の出願で本意匠と同一又は類似の自己の意匠に限られるが、出願Bは関連意匠の出願ではなく、スマートフォンホルダーの意匠ハはスマートフォンの意匠イと類似しない。枝は4条2項の適用なしに拒絶を免れる場合があるとしている点がずれている。

意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項第一号又は第二号に該当するに至つたものを除く。)も、その該当するに至つた日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様とする。
誤り。違うのは「公知となった意匠イに基づき拒絶される場合はない」の部分である。意匠イと非類似でも、公然知られた意匠イの形状等に基づいて容易に創作できた意匠であれば3条2項で拒絶される。
3条2項は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が公然知られ、刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「形状等又は画像」に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、登録を受けることができないと定める。3条2項は意匠としての類似を問わず、公知の形状等を素材にしたありふれた転用や寄せ集めを拒絶するものである。意匠ロが意匠イと非類似であれば3条1項3号には当たらないが、意匠イの形状等に基づいて容易に創作できたと判断されれば3条2項で拒絶され得る。甲は意匠イを自ら公知にしているので、4条2項の適用を受ければ3条2項の適用上も公知にならなかったものとみなされるが、枝にはその手続がなく、出願Aは意匠イを基礎にした3条2項の拒絶を受ける場合がある。枝は非類似であることだけを理由に拒絶の余地がないとしている点がずれている。

意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
- 主体:その意匠の属する分野における通常の知識を有する者である。需要者ではない
- 基礎:公然知られ、刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像である。意匠であることも物品の同一・類似も要らない
- 除外:3条1項各号に当たる意匠は2項の対象から除かれ、新規性で判断する
- 4条の例外:意に反する公知と自己の行為に起因する公知は、3条1項だけでなく3条2項の適用上も公知にならなかったものとみなされる
正しい。10条2項により、関連意匠の出願では、公知となった自己の意匠のうち本意匠と同一又は類似のものは3条1項・2項の適用上公知にならなかったものとみなされるので、本意匠イに類似する甲の意匠ロは出願Bの拒絶理由にならない。
10条2項は、3条1項1号又は2号に該当するに至った「自己の意匠」のうち、関連意匠として登録を受けようとする意匠の本意匠と同一又は類似のものは、その関連意匠についての3条1項・2項の適用上、公知にならなかったものとみなすと定める。関連意匠制度は、本意匠の出願後に自ら公開したバリエーションを本意匠の出願日から10年の間に順次出願して保護する仕組みであるから、本意匠に類似する自己の公開意匠を関連意匠の拒絶理由にしたのでは制度が働かないという理屈である。意匠ロは甲自身が公知にした意匠で、本意匠イに類似するので、出願Bを意匠イを本意匠とする関連意匠の出願とすれば、ロに類似する意匠ハであっても3条1項3号の適用を受けない。4条2項と異なり書面や証明書の提出も公知の日から1年の期間も要らない点が、関連意匠に固有の例外である。

第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた自己の意匠のうち前項の規定により意匠登録を受けようとする意匠の本意匠と同一又は類似のものは、当該意匠登録を受けようとする意匠についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。
正しい。3条1項柱書の「工業上利用することができる」とは、工業的方法により同一の物品等を反復して量産できることをいい、一品制作の美術品のように量産を予定しないものは含まれない。
3条1項柱書は、工業上利用することができる意匠の創作をした者は、各号に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができると定める。意匠法は意匠の保護及び利用を図って産業の発達に寄与することを目的とし(1条)、保護の対象を工業製品として量産される物品等の形状等に置いているから、柱書の工業上利用できるとは、工業的方法により同一のものを反復して多量に生産し得ることを意味する。特許法29条1項柱書の「産業上利用することができる」が農業やサービス業まで広く含むのと違い、意匠法は工業的な量産を前提とし、自然物をそのまま主な要素にしたものや、一回限りの製作を予定した純粋美術の著作物は意匠登録の対象にならない。農具のような製品も工業的に量産される以上は対象になるので、物品の用途で切るのではなく、生産の方法で切るのがこの要件である。工業上利用できないことは拒絶理由(17条1号)であり無効理由(48条1項1号)でもある。

工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
- 柱書:工業上利用することができる意匠であること。工業的方法により量産できることをいう
- 1号:出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠でないこと
- 2号:出願前に頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠でないこと
- 3号:1号・2号の意匠に類似する意匠でないこと
誤り。違うのは「機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限られる」の部分である。2条1項の画像の限定は、かっこ書で3条2項を除いているから、創作非容易性の判断の基礎となる画像には操作画像・表示画像以外の画像も含まれる。
2条1項は、意匠法で「意匠」というときの画像を、機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限ると定めつつ、同じかっこ書で「次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き」と書いて、3条2項をこの限定の外に置いている。保護の対象となる画像を機器との関係で限ったのは、映画やゲームのコンテンツのような画像まで意匠権で独占させないためである。これに対し3条2項は、ありふれた形状等や画像から誰でも思いつく意匠に権利を与えないための規定であり、創作の基礎となる画像が機器の操作や機能の表示に係るものである必要はない。したがって、創作非容易性の拒絶理由に引用される画像には、壁紙の模様や映像作品の一場面のように保護対象から外れた画像も含まれる。画像の限定が及ぶ3条1項の「意匠」や5条2号との区別が、2条1項のかっこ書の読み方で決まる。

この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き、以下同じ。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
- 限定が及ぶ:3条1項(新規性の「意匠」)、5条2号(他人の業務に係る画像)、登録を受けようとする画像そのもの
- 限定が外れる:3条2項(創作非容易性の引用画像)、37条2項(廃棄請求の対象)、38条7号・8号(間接侵害の対象)、44条の3第2項6号、55条2項6号
誤り。違うのは「現実に知られたという事実が立証されない限り」の部分である。3条2項が創作の基礎とする形状等には、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものが含まれ、現実に知られたことの立証は要らない。
3条2項は、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が、日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、意匠登録を受けることができないと定める。創作の基礎となる形状等は三つの態様で並べられており、「公然知られ」は現実に知られたことを要するが、「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった」は公衆が見られる状態に置かれたことで足りる。インターネット上の公開は閲覧者を特定できないことが普通であり、現実に閲覧された事実の立証を求めれば、誰でも見られる状態にある形状等を基礎にした容易な創作まで登録することになるから、法は利用可能となったことで足りる態様を別に置いた。インターネット上で公開された意匠イは利用可能となった形状等であり、現実に知られたことが立証されなくても、意匠ロの創作非容易性の判断の基礎になる。

意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
- 主体:その意匠の属する分野における通常の知識を有する者である。需要者ではない
- 基礎:日本国内又は外国において公然知られ、刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像である。意匠であることも物品の同一・類似も要らない
- 画像:引用する画像に2条1項の限定(操作画像・表示画像)は及ばない
- 除外:3条1項各号に当たる意匠は2項の対象から除かれ、新規性で判断する
正しい。10条2項により新規性の判断で公知でなかったものとみなされる自己の公知意匠は、本意匠と同一又は類似のものに限られるから、本意匠イと非類似の公知意匠ホは除外されず、意匠ホに類似する意匠ニは3条1項3号で登録を受けられない。
10条2項は、3条1項1号又は2号に該当するに至った自己の意匠のうち、関連意匠の本意匠と「同一又は類似のもの」は、その関連意匠についての3条1項及び2項の適用については該当するに至らなかったものとみなすと定める。本意匠を出願した後は、出願人が本意匠やそれに類似する意匠を公表して事業を進めるのが通常であり、それが自己の後の関連意匠の新規性を失わせるのでは制度の意味が無いから、本意匠と同一又は類似の自己の公知意匠に限って公知でなかったものとみなす。本意匠と非類似の公知意匠まで除外すれば本意匠の類似範囲を超えて権利が広がるので、除外はそこで区切られている。意匠ホは意匠ニと類似するが本意匠イとは非類似であるから10条2項の対象に入らず、令和5年5月10日に公知となった意匠ホに類似する意匠ニは、3条1項3号に該当する。公知の日から1年を超えた令和7年5月10日の出願Dには4条2項の適用も無い。意匠ニは意匠イを本意匠とする関連意匠として登録を受けることができない。

第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた自己の意匠のうち前項の規定により意匠登録を受けようとする意匠の本意匠と同一又は類似のものは、当該意匠登録を受けようとする意匠についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。
誤り。違うのは「出願A及び出願Bについて、意匠イ及び意匠ロの公開を理由とする意匠法第3条に規定する新規性要件違反による拒絶を回避することができる」の部分である。出願Aにとっては類似する意匠ロの公開も3条1項3号の拒絶理由になり、意匠イの公開だけを証明しても回避できない。出題当時は公開した意匠ごとに証明書が要り、令和5年改正で4条3項にただし書が加わった後も、最先の公開行為について証明しなければ後の公開は救われない。
4条2項は、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して3条1項1号又は2号に該当するに至った意匠を、その日から1年以内にその者がした出願に係る意匠について1号又は2号に該当しなかったものとみなす。3項の令和5年改正で加わったただし書は、同一又は類似の意匠について二以上の公開行為があったときは最先の日の一の行為について証明すれば足りるとする。意匠イの出願Aにとって、類似する意匠ロの公開は3条1項3号で新規性を失わせる事実であるから、意匠ロの公開も例外の対象に入れなければ拒絶を回避できない。出題当時は公開ごとに証明書が要り、意匠イのみの手続では意匠ロの公開が残った。現行法でも、意匠イの公開が最先の行為でなければ意匠ロの公開は救われず、枝は公開の先後を問わず回避できると言う点がずれている。出願Bは10条2項により手続なしでも拒絶されない。

前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面(以下この条及び第六十条の七において「証明書」という。)を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同一又は類似の意匠について第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至る起因となつた意匠登録を受ける権利を有する者の二以上の行為があつたときは、その証明書の提出は、当該二以上の行為のうち、最先の日に行われたものの一の行為についてすれば足りる。
- 1項(意に反する公知):手続は要らない。公知の日から1年以内の出願に適用される
- 2項(行為に起因する公知):適用を受ける旨の書面を出願と同時に、証明書を出願の日から30日以内に提出する(3項)
- 3項ただし書(令和5年改正):同一又は類似の意匠について二以上の公開行為があったときは、最先の日の一の行為について証明すれば足りる
- 効果:その出願に係る意匠について3条1項・2項の適用上、公知でなかったものとみなす。先願(9条)や他人の出願には効かない
誤り。違うのは「意匠法第3条第1項第1号の「公然知られた意匠」に該当するとして拒絶される」の部分である。秘密保持契約の下で守秘義務を負う乙社の従業員に知られても、秘密の状態を脱していないから公然知られた意匠に当たらない。
3条1項1号は、意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠を登録しないと定める。公然知られたとは、秘密を保つ義務を負わない者に現実に知られ、意匠が秘密の状態を脱したことをいう。新規性を求めるのは、すでに社会の共有財産となった意匠に独占権を与えないためであり、守秘義務を負う者の内部にとどまっている限り社会に知られたとはいえないからである。甲社は開示の前に乙社との間で意匠に関する秘密保持契約を締結しており、乙社の従業員は契約に基づき秘密を保つ義務を負う立場で意匠イを見ている。開示を受けた者が多数であっても、秘密を保つ義務のある者に知られたことに変わりはなく、人数の多さで公然知られたことにはならない。したがって出願Aは、乙社の従業員に意匠イが開示されたことを理由に1号で拒絶されることはない。

意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
- 1号 公然知られた意匠:秘密を保つ義務のない者に現実に知られたことが要る。守秘義務契約の下での開示は当たらない
- 2号 頒布された刊行物に記載された意匠・電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠:公衆が見られる状態になれば足り、現実に知られたことの立証は要らない
- 3号 前二号に類似する意匠:物品の同一・類似を前提に形状等の類否を見る
- 場所と時:日本国内又は外国を問わず、基準は出願の時である
正しい。2条1項の意匠は物品の形状等であることを要するが、タオルを折り畳んでバラの花の形にした置物は、置物という物品自体の形状等として扱われるから、意匠登録を受けることができる。
2条1項は、物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるものを意匠と定め、3条1項柱書は工業上利用することができる意匠の創作をした者がその意匠について意匠登録を受けることができると定める。意匠が物品の形状等であることを要するのは、意匠法が物品と離れた抽象的なデザインではなく物品に化体したデザインを保護する法律だからである。意匠審査基準は、物品自体の形状等でないものを意匠と認めない一方で、物品の形状等を維持できるものは、販売などのために形作った形状等であっても物品自体の形状等として扱う。タオルを折り畳んでバラの花に似せた形状の置物は、折り畳んだ形状が置物として維持されるものであり、置物という物品自体の形状等に当たる。したがって、他の登録要件を満たせば意匠登録の対象として登録を受けることができ、本枝は正しい。

この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き、以下同じ。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
誤り。違うのは「出願A、出願B共に意匠登録を受けることができる場合がある」の部分である。出願Aの意匠イは出願前に甲が公開した意匠ロに類似し、Aと同時に4条3項の書面を出していない以上、Aは3条1項3号で登録を受けられない。
3条1項3号は、出願前に公然知られた意匠又は刊行物記載・電気通信回線で公衆に利用可能となった意匠に類似する意匠について登録を受けられないと定める。4条2項は、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して公知となった意匠について、1年以内のその者の出願では公知にならなかったものとみなすが、3項はその旨の書面を意匠登録出願と同時に提出し、証明書を出願の日から30日以内に提出することを求める。甲は意匠ロを自ら公開しており、意匠イはロに類似するから、出願Aの意匠イはロを引用して3条1項3号に当たる。Aについて例外の適用を受けるには、公開したのがロであっても、Aと同時に書面を出す必要があったが、甲はイを公開していないという理由で手続をしていない。出願Bの関連意匠について10条2項や4条の手続を整えても、本意匠となるAが登録を受けられない以上、共に登録を受けられる場合はない。

前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面(以下この条及び第六十条の七において「証明書」という。)を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同一又は類似の意匠について第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至る起因となつた意匠登録を受ける権利を有する者の二以上の行為があつたときは、その証明書の提出は、当該二以上の行為のうち、最先の日に行われたものの一の行為についてすれば足りる。
誤り。違うのは「必要な手続をして意匠登録出願をすれば、意匠登録を受けることができる」の部分である。乙が独自に創作して公開した類似の意匠は甲の意に反する公知でも甲の行為に起因する公知でもないから、4条の例外の対象にならない。
4条1項は意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して公知となった意匠を、2項はその者の行為に起因して公知となった意匠を、それぞれ1年以内のその者の出願について公知にならなかったものとみなす。例外の対象は、いずれも権利者自身の意匠が権利者に由来する経緯で公になった場合に限られ、第三者が独自に創作した意匠が公開された場合は含まれない。甲が展示会でパンフレットを配布した行為については、4条3項の手続をすれば2項で救われるが、乙が独自に創作した意匠イに類似する意匠に係る物品が別の展示会で公開された事実は、甲の意に反するものでも甲の行為に起因するものでもなく、3条1項1号の公然知られた意匠としてそのまま残る。意匠イはこれに類似するので3条1項3号に当たり、パンフレット配布から1年以内であっても登録を受けられない。本枝は誤りである。

意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項第一号又は第二号に該当するに至つたものを除く。)も、その該当するに至つた日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様とする。
誤り。違うのは「必要な手続をしなくても、意匠登録を受けることができる」の部分である。自己のウェブサイトへの掲載は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に当たり、自己の行為に起因する公知であるから、4条3項の手続をしなければ登録を受けられない。
3条1項2号は、意匠登録出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠について登録を受けられないと定める。公衆が閲覧できる状態に置かれたことで足り、サイトを個人が作成したことや、現実に見た者やコメントした者の数の多少は要件に関わらない。甲が自己のウェブサイトに意匠イの写真を掲載した行為は、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して2号に該当するに至った場合であるから、4条2項の例外の対象にはなるが、3項により、その旨の書面を意匠登録出願と同時に提出し、証明書を出願の日から30日以内に提出しなければ適用を受けられない。本枝は、サイトの規模と反応の少なさを理由に手続なしで登録を受けられるとしており、公衆に利用可能となったかどうかの判断と、2項の適用に手続が要ることの両方で誤っている。

意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠
- 1号 公然知られた意匠:秘密を保つ義務のない者に現実に知られたことが要る
- 2号 頒布された刊行物に記載された意匠・電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠:公衆が見られる状態になれば足り、個人サイトでも閲覧者が少なくても当たる
- 3号 前二号に類似する意匠:物品の同一・類似を前提に形状等の類否を見る
- 場所と時:日本国内又は外国を問わず、出願の時を基準にする
誤り。違うのは「意匠法第6条に規定する要件を満たしていないことを理由とした拒絶をすべき旨の査定がなされる」の部分である。17条の拒絶理由に6条は掲げられておらず、図面から形状を特定できない意匠は3条1項柱書の工業上利用することができる意匠に当たらないとして拒絶される。
17条は、審査官が拒絶をすべき旨の査定をしなければならない場合を各号に限定して列挙し、3条、3条の2、5条、8条、8条の2、9条、10条、7条などを挙げるが、願書と図面の記載を定める6条は含まれていない。6条の違反は方式上の不備として68条2項で準用する特許法17条3項の補正命令の対象となるのが原則であり、それ自体は拒絶理由ではないからである。一方、図面の記載が不正確で当業者が形状を特定できない意匠は、意匠として具体的に特定されておらず、3条1項柱書の工業上利用することができる意匠に当たらないとして17条1号で拒絶される。本枝は、拒絶査定がされ得ること自体は正しいが、その理由を6条の要件違反とする点で17条の限定列挙とずれており、誤りである。特許法では36条違反が49条の拒絶理由に明記されているのと対照的である。

審査官は、意匠登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
- 1号:3条、3条の2、5条、8条、8条の2、9条1項・2項、10条1項・4項・6項、15条1項で準用する特許法38条、68条3項で準用する特許法25条により意匠登録をすることができないとき
- 2号:条約の規定により意匠登録をすることができないとき
- 3号:7条(一意匠一出願)の要件を満たしていないとき
- 4号:出願人が意匠登録を受ける権利を有していないとき
- 6条の願書・図面の不備は列挙されておらず、意匠が特定できないときは3条1項柱書で扱う
正しい。鍋ぶたの販売でその外観に現れた摘みの意匠は公然知られた意匠となり、これに類似する意匠イは3条1項3号に該当する。
3条1項は、意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠(1号)と、1号・2号の意匠に類似する意匠(3号)について意匠登録を受けることができないと定める。意匠は物品の外観であるから、物品が販売されて不特定の者が見られる状態になれば、その外観に現れている形状等は公然知られた意匠になる。鍋ぶたがデパートで販売されれば、鍋ぶたに取り付けられた摘みの形状は外から見える部分として、鍋ぶたの意匠の一部として公然知られたものとなり、摘みそのものの意匠としても公知になる。意匠イは「鍋ぶたの摘み」の意匠であり、この公知の摘みの意匠に類似するから、3条1項3号の意匠に該当する。公知の意匠を創作したのが甲であり、意匠イを別に創作したのが乙であることは関係がなく、乙が独自に創作しても新規性は失われる。したがって出願Aは甲が鍋ぶたを販売した事実を理由に拒絶される。

工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
一 意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
二 意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠
三 前二号に掲げる意匠に類似する意匠
誤り。違うのは「置物は、意匠登録の対象とならない」の部分である。液体や粒状物を密封容器に収めた置物は、全体として一定の形態を備えた一つの動産であり、置物として意匠登録の対象となる。
2条1項は、意匠を物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるものと定め、3条1項柱書は工業上利用することができる意匠に登録を認める。物品に当たるのは有体物のうち市場で流通する動産であり、審査基準は、液体のように固体でないものや粉状物・粒状物の集合は、それ自体では決まった形態を持たないため物品と認めない扱いをしている。しかし枝の置物は、透明な密封容器の中に雪だるまの模型と白い粒と液体を収めたものであって、容器を含めた全体が一つの固定した形態を備え、そのまま市場で取引される動産である。中身に液体や粒状物が含まれていても、置物という物品自体の形態として視覚を通じて美感を起こさせるものであるから、意匠登録の対象となる。角砂糖のように粉状物の集合でも固定した形態を有すれば物品と認められるのと同じ理屈である。

この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き、以下同じ。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
- 固体以外のもの(気体・液体・電気など):それ自体では決まった形態を持たないので物品に当たらない
- 粉状物・粒状物の集合:物品に当たらない。ただし角砂糖のように固定した形態を有するものは物品に当たる
- 容器に収めた置物:容器を含めた全体が固定した形態を備えた一つの動産であれば物品に当たる
- 物品の一部で独立して取引されないもの:物品に当たらない。ただし部分意匠として物品の部分の形状等は保護される
正しい。貝殻をつなげたネックレスは、つなぎ方という加工による形態を備え同じものを反復して生産できるから、工業上利用することができる意匠として登録の対象となる。
3条1項柱書は、工業上利用することができる意匠の創作をした者がその意匠について意匠登録を受けることができると定める。工業上利用することができるとは、工業的な技術で同一のものを反復して多量に生産できることをいい、審査基準は、自然石をそのまま置物にしたようにほとんど加工をしない自然物を意匠の主たる要素として使用したもので量産できないものを、工業上利用することができない意匠の例に挙げる。枝のネックレスは、さくら貝と巻貝の貝殻を素材として用いているが、二種類の貝殻を交互に多数つなげるという加工によって全体の形態が作り出されており、同じ種類の貝殻を使えば同じ形態のネックレスを繰り返し生産できる。自然物を素材にしていても、形態が加工によって決まり量産が可能である以上、工業上利用することができる意匠に当たり、ネックレスとして意匠登録の対象となる。

工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
- 自然物を意匠の主たる要素として使用したもので量産できないもの:自然石をそのまま使用した置物など
- 純粋美術の分野に属する著作物:絵画や彫刻そのもの
- 量産できる形態なら対象となる:自然物を素材にしても、加工で形態が決まり反復生産できれば工業上利用できる
誤り。違うのは「出願Cは、意匠登録を受けることができる」の部分である。意匠公報で公開された意匠イ・ロをそのまま組み合わせただけの組物の意匠ハは、公知の形状等に基づいて容易に創作できた意匠として3条2項で登録を受けられない。
3条2項は、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が公然知られ、刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠について意匠登録を受けることができないと定める。公知の形態をほとんどそのまま寄せ集めただけの意匠は、審査基準でも創作が容易な意匠の例に挙げられている。出願Cの前に意匠イ・ロは設定登録を受けて意匠公報に掲載され、公知となっている。運転席用と助手席用のフロアマットを一組にすることは当業者にとってありふれた手法であるから、公知の意匠イ・ロのみを構成物品とする組物の意匠ハは容易に創作できたものと判断される。甲自身の意匠であっても、4条2項は公報掲載による公知をかっこ書で除いているため、新規性喪失の例外による救済もない。

意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
正しい。日本国を指定締約国としない国際出願Iは日本の意匠登録出願とみなされず9条や3条の2の先願にならず、意匠トが公知となった国際公表の日は出願Cの出願日とみなされる平成28年4月1日より後であるから、3条の引例にもならない。
60条の6第1項が国際登録の日にされた意匠登録出願とみなすのは、日本国を指定締約国とする国際出願で国際公表がされたものに限られる。丁の国際出願Iは指定締約国に日本国を含まないので、日本では意匠登録出願として扱われず、9条1項の先願にも、3条の2の先の意匠登録出願にも当たらない。残るのは意匠トが公知の意匠として3条1項・2項の引例になるかであるが、意匠トが公知になったのは国際公表の平成28年4月5日であり、それより前に公知になっていないことは枝が示している。出願Cは特許出願Aからの分割と変更により平成28年4月1日にしたものとみなされるから、意匠トは出願C前に公然知られた意匠にも刊行物に記載された意匠にも当たらず、意匠イが意匠トに類似していても3条1項3号の問題は生じない。したがって出願Cが出願I又は意匠トの存在を理由として拒絶されることはない。

日本国をジュネーブ改正協定第一条(xix)に規定する指定締約国とする国際出願であつて、その国際出願に係るジュネーブ改正協定第一条(vi)に規定する国際登録(以下「国際登録」という。)についてジュネーブ改正協定第十条(3)(a)の規定による公表(以下「国際公表」という。)がされたものは、経済産業省令で定めるところにより、ジュネーブ改正協定第十条(2)に規定する国際登録の日にされた意匠登録出願とみなす。
誤り。違うのは「最先の画像イの公開の事実について意匠法第4条第2項の適用を受けることにより、意匠ロについて意匠登録を受けることができる場合がある」の部分である。意匠ロは Tシャツの販売により甲の行為で公知になっており、その販売について4条2項の適用を受けなければ3条1項1号で拒絶される。出題当時は6月以内であったが、結論は変わらない。
4条2項は、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して3条1項1号又は2号に該当するに至った意匠について、その日から1年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠につき、1号又は2号に該当しなかったものとみなす。みなされるのは手続の対象にした公知の事実に限られ、4条3項により旨の書面と証明書でどの行為について適用を受けるかを特定する。甲が最初に公開したのはキャラクターの画像イだけで、Tシャツという物品の形状等である意匠ロ自体が公知になったのは、その後のTシャツの販売である。画像イの公開について手続をしても、意匠ロを公知にした販売の事実は手続の対象に入らないから、意匠ロは3条1項1号により拒絶される。令和5年改正の4条3項ただし書は、同一又は類似の意匠について権利者の二以上の行為があったとき最先の一の行為の証明書で足りるとするが、キャラクターの画像イは操作画像でも表示画像でもなく、Tシャツの意匠ロと同一又は類似の意匠とはいえないので、この救済も働かない。

意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項第一号又は第二号に該当するに至つたものを除く。)も、その該当するに至つた日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様とする。
誤り。違うのは「意匠登録を受けることができる場合がある」の部分である。他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠は5条2号で登録を受けられず、例外を認める規定はない。
5条2号は、他人の業務に係る物品、建築物又は画像と混同を生ずるおそれがある意匠を、3条の規定にかかわらず意匠登録を受けることができない意匠とする。他人の著名な商標や広く知られた形態を物品に表した意匠は、それ自体に創作性があっても、出所の混同を招いて取引秩序を乱し、他人の信用に便乗することになるので、新規性や創作非容易性を満たしていても登録させないという趣旨である。この号は混同を生ずるおそれがあると認められた意匠を一律に不登録とし、その他人の承諾があれば登録できるといった例外規定を置いていない。1号の公序良俗は国旗の模様のようにおそれの有無を個別に判断して登録される余地があるが、2号は混同のおそれがあると認められた時点で登録の道が閉ざされる。枝は、例外の無い不登録事由に登録を受けることができる場合を作っている点がずれている。

他人の業務に係る物品、建築物又は画像と混同を生ずるおそれがある意匠


























































































































































































































































