実用新案権又は専用実施権を侵害した者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
この条文が問われた枝 3問
正しい。実用新案技術評価書の提示は、権利者が侵害者等に対して権利を行使するための要件であり(実用新案法29条の2)、56条の侵害の罪の成立要件ではない。
実用新案法29条の2は、実用新案権者又は専用実施権者は、その登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、自己の実用新案権又は専用実施権の侵害者等に対しその権利を行使することができないと定める。無審査で登録される実用新案権について、差止めや損害賠償を求める前に審査官の評価を示して相手方に有効性の判断材料を与え、根拠の薄い権利行使を防ぐための要件であり、民事上の権利行使の手続を規律するものである。これに対し同法56条は、実用新案権又は専用実施権を侵害した者を5年以下の拘禁刑等に処すると定めるだけで、評価書の作成や提示を構成要件に含めていない。刑事罰は国家が侵害行為そのものを処罰するものであり、権利者が警告の手順を踏んだかどうかで犯罪の成否が変わるものではない。したがって実用新案権を侵害する行為を行った者は、評価書が作成されていないことを理由として刑事罰を逃れることはできず、本枝は正しい。

実用新案権者又は専用実施権者は、その登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、自己の実用新案権又は専用実施権の侵害者等に対し、その権利を行使することができない。
誤り。違うのは「刑事罰が課されることはない」の部分である。実用新案法56条の侵害の罪は特許法196条のようにみなし侵害を行った者を除くかっこ書を置いておらず、28条のみなし侵害を行った者も56条で処罰される。
実用新案法56条は、実用新案権又は専用実施権を侵害した者は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定め、同法28条は、登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物の生産や譲渡等、課題の解決に不可欠な物を知りながら業として生産や譲渡等をする行為、物品を譲渡等又は輸出のために所持する行為を、実用新案権又は専用実施権を侵害するものとみなすと定める。特許法では196条がかっこ書で101条のみなし侵害を行った者を除き、196条の2がその者を別に5年以下の拘禁刑等に処する二段構えになっているが、これは直接侵害の法定刑を10年以下に引き上げた際にみなし侵害との刑の均衡を図ったものである。実用新案法では直接侵害の法定刑がもともと5年以下であるため56条にかっこ書を置く必要がなく、28条により侵害とみなされる行為を行った者もそのまま56条の侵害した者として処罰される。本枝は、実用新案のみなし侵害には刑事罰がないとしており、条文の構造と食い違う。

実用新案権又は専用実施権を侵害した者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
| 特許 | 実用新案 | |
|---|---|---|
| 直接侵害 | 10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又は併科(196条) | 5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又は併科(56条) |
| みなし侵害 | 196条から除かれ、196条の2で5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又は併科 | 56条にかっこ書がなく、28条のみなし侵害も56条で同じ刑 |
誤り。違うのは「その法人のその代理人は、罰金刑を科されることはない」の部分である。実用新案法61条1項の両罰規定は「行為者を罰するほか」法人に罰金刑を科すものであり、代理人自身も56条の侵害の罪で罰せられる。
実用新案法61条1項は、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し56条等の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して3億円以下の罰金刑を科すると定める。56条は実用新案権又は専用実施権を侵害した者を5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又は併科するとしており、侵害行為を実際にした代理人は、この56条によって拘禁刑又は罰金刑を受ける。両罰規定は、業務の中で行われた侵害について利益を受ける法人にも責任を負わせるために、行為者の処罰に法人の処罰を加えるものであって、行為者を免責して法人だけを罰する仕組みではない。したがって法人が罰金刑を科されることがあるという前半は正しいが、代理人が罰金刑を科されることはないという後半が誤りである。

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
