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社会人が働きながら弁理士試験に合格する時間の作り方と年間計画

学習法 読了 約10分

社会人が働きながら弁理士試験に合格するための時間の作り方と年間計画。令和7年度合格者の職業・年齢の内訳、平日と休日の時間帯ごとの使い方、繁忙期の最低ライン、短答式・論文式の免除を使った段階型の計画、選択科目の免除の確認、受験日程と仕事の調整までを整理します。

弁理士試験の受験生の多くは、仕事をしながら学習しています。学生のようにまとまった時間を取れない中で、短答式・論文式・口述試験の3段階を突破するには、学習の中身より先に「時間をどう作り、どう年をまたいで使うか」の設計が必要です。

結論から言うと、社会人の弁理士試験は「1年で全部を通す」前提を捨て、短答式と論文式の免除制度を使って段階的に突破する計画にするのが現実的です。短答式に合格すると、合格した年の論文式に加えて、その後2年間は短答式を受けずに論文式へ進めます。この仕組みを前提に、平日は短い時間を毎日確保し、休日にまとまった演習を置きます。この記事では、合格者の属性データ、時間の作り方、繁忙期の乗り切り方、免除を使った年間計画、受験日程と仕事の調整を扱います。

合格者の多くは働きながら受験している

まず、特許庁が公表している合格者の属性を確認します。令和7年度の最終合格者205人の職業別の内訳は次のとおりです。

職業 人数 割合
会社員 101人 49.3%
特許事務所 61人 29.8%
公務員 11人 5.4%
学生 9人 4.4%
無職 9人 4.4%
法律事務所 3人 1.5%
自営業 3人 1.5%
教員 2人 1.0%
その他 6人 2.9%

出典:特許庁・工業所有権審議会『令和7年度弁理士試験の結果について』

会社員・特許事務所・公務員を合わせると173人で、合格者の8割を超えます。職業は受験願書の受付時の情報に基づくもので、勤務形態や学習時間までは分かりませんが、仕事を持ちながら合格している人が大半であることは読み取れます。

年齢別では、30代が89人(43.4%)で最も多く、20代が71人(34.6%)、40代が29人(14.1%)、50代が14人(6.8%)、60代が2人(1.0%)です。合格者の平均年齢は34.3歳でした。

出典:特許庁・工業所有権審議会『令和7年度弁理士試験の結果について』、特許庁『令和7年度弁理士試験最終合格者統計』

もう一つ見ておきたいのが、合格者の種別です。最終合格者205人のうち、短答式を受けずに(短答式免除者として)合格した人が107人(52.2%)で、半数を超えています。論文式まで免除されて口述試験だけを受けた筆記試験免除者も15人(7.3%)います。

出典:特許庁『令和7年度弁理士試験最終合格者統計』

この数字は、前の年までに短答式や論文式に合格しておき、免除を使って次の段階に進んだ合格者が多いことを示しています。働きながら合格する人の多くが、段階型の計画を取っていると考えるのが自然です。

平日の時間の作り方

社会人の1日の時間帯と、そこに置く学習
社会人の1日の時間帯と、そこに置く学習

社会人の平日は、まとまった時間がほとんど取れません。そこで、1日を時間帯で区切り、時間帯ごとに「そこでしかできない学習」を固定するのが基本です。何をやるかをその場で考えていると、短い時間はすぐに消えます。

時間帯 目安 向いている学習 向いていない学習
始業前(朝) 30〜60分 新しい単元のテキストと条文の読み込み 答え合わせだけの演習
通勤 片道20〜40分 肢別の過去問、前日に間違えた枝の復習 条文集を広げる学習
昼休み 15〜20分 条文を1〜2条読む、期間の数字の確認 新しい単元の読み込み
帰宅後(夜) 60〜90分 その日に進めた範囲の過去問、記録の整理 60問の通し演習

朝の時間を新しい単元の読み込みに当てるのは、仕事の疲れが少なく、理解に頭を使う作業に向いているからです。残業や急な予定で崩れやすいのは夜の時間なので、夜は崩れても翌日に取り返せる作業(過去問の復習と記録)に回します。

通勤と昼休みは、枝単位の演習に向いています。1枝なら1分前後で判断と確認ができ、途中で中断しても失うものがありません。問題単位ではなく枝単位で記録しておくと、細切れの時間でも前回の続きから再開できます。記録の方法は「短答過去問は肢別で回す」で整理しています。

休日の使い方

休日は、平日にはできない学習を置く日です。平日の細切れの時間では、60問を3時間30分で解く通しの演習や、論文式の答案を制限時間内に書き切る練習ができません。

休日は平日にできない通しの演習と積み残しの回収に使い、1日はしっかり、もう1日は半日にとどめる
休日は平日にできない通しの演習と積み残しの回収に使い、1日はしっかり、もう1日は半日にとどめる

休日に置くべき学習は次の3つです。

  1. 通しの演習:短答式の時期は月1回、60問を本試験と同じ3時間30分で解く。論文式の時期は1科目を本試験と同じ制限時間で書く
  2. 平日の積み残しの回収:平日に崩れた分を取り返す時間をあらかじめ確保しておく
  3. 翌週の準備:翌週に進める単元のテキストに目を通し、平日の朝にすぐ入れる状態を作る

休日を2日とも学習に使うと、家族との時間や休養がなくなり、長続きしません。1日はしっかり学習し、もう1日は半日にとどめる程度が、複数年の計画では現実的です。週単位の時間数と科目別の配分は「弁理士試験に必要な勉強時間」で詳しく扱っています。

繁忙期は「最低ライン」で途切れさせない

働きながらの学習で最も危ないのは、仕事の繁忙期に学習が完全に止まることです。2〜3週間止まると、過去問の感覚が抜け、再開に同じくらいの時間がかかります。

繁忙期は新しい単元を進めず、通勤時間の過去問の枝の演習だけを続けて学習を途切れさせない
繁忙期は新しい単元を進めず、通勤時間の過去問の枝の演習だけを続けて学習を途切れさせない

そこで、繁忙期用の最低ラインを決めておきます。

項目 通常期 繁忙期の最低ライン
平日 朝・通勤・昼・夜のすべて 通勤の肢別演習だけ
休日 1日はまとまった学習 半日だけ、間違えた枝の復習
新しい単元 週に1〜2単元進める 進めない
通しの演習 月1回 繁忙期明けに回す

繁忙期は「前に進む」ことを諦め、「忘れない」ことだけを目標にします。新しい単元を進めず、間違えた枝の復習だけを続ければ、繁忙期が明けたときにすぐ通常の学習に戻れます。

繁忙期が毎年同じ時期に来る仕事なら、年間計画の段階でその時期を「復習期間」として組み込んでおきます。

免除を使った段階型の年間計画

免除を使った3年の段階型計画
免除を使った3年の段階型計画

社会人の年間計画は、弁理士法11条が定める免除制度を前提に組みます。主な免除は次のとおりです。

合格・成績 免除される試験 期間
短答式に合格 短答式 合格発表の日から起算して2年を経過する日まで
論文式(必須科目)で相当と認められる成績 論文式の必須科目 合格発表の日から起算して2年を経過する日まで
論文式(選択科目)で相当と認められる成績 論文式の選択科目 その後の試験すべて

出典:e-Gov法令検索「弁理士法」第11条

たとえば短答式に合格すると、合格した年の論文式に加えて、翌年と翌々年の2回は短答式を受けずに論文式を受けられます。論文式の必須科目に合格すれば、同じ考え方で口述試験に3回挑めます。選択科目は一度合格すれば期限がありません。修士・博士の学位や一部の公的資格による選択科目の免除もあり、詳しくは「弁理士試験の選択科目免除」と「弁理士試験の免除制度一覧」で整理しています。

この仕組みを使った、社会人向けの3年の計画例です。

年 5月(短答式) 6〜7月(論文式) 10月(口述試験) 学習の中心
1年目 受験し合格を狙う 自己採点で合格圏なら受験 ― 5科目を一周し、肢別の過去問で短答式を仕上げる
2年目 免除 必須科目で合格を狙う 論文式に合格すれば受験 答案構成と答案練習、判例・審査基準
3年目 免除 2年目に届かなければ再挑戦 受験 論文式の弱点補強、口述の想定問答

1年目の論文式は、短答式の合格発表から論文式(必須科目)まで約3週間しかないため、合格を狙うというより本試験を経験する場として位置づけます。令和8年度は、短答式が5月17日、論文式(必須科目)が6月28日、選択科目が7月26日の実施でした。

出典:工業所有権審議会「令和8年度弁理士試験公告」(令和8年1月14日)

2年目は短答式の学習時間がまるごと空くので、平日の細切れの時間を論点カードの読み返しに、休日を答案練習に使えます。短答式の知識が抜けると論文式の当てはめが曖昧になるため、条文の読み込みは週に数時間残します。

1年で短答式に届かない場合は、この表を1年ずつ後ろにずらします。2年目に短答式に合格すれば、そこから同じ流れに乗れます。

選択科目の免除を最初に確認する

社会人が計画を立てるとき、最初に確認したいのが論文式の選択科目の免除です。選択科目を受験するかどうかで、論文式の年に必要な学習時間が大きく変わるからです。

修士・博士の学位や一部の資格で選択科目が免除されることがあるので、学習を始める前に確認する
修士・博士の学位や一部の資格で選択科目が免除されることがあるので、学習を始める前に確認する

令和7年度の最終合格者205人のうち、選択科目の免除者は180人でした。免除の根拠の内訳は、修士・博士の学位によるものが109人で最も多く、選択科目の合格者が30人と続きます。

出典:特許庁『令和7年度弁理士試験最終合格者統計』

弁理士法施行規則6条は、修士・博士の学位のほかに、技術士、一級建築士、第一種・第二種電気主任技術者、薬剤師、電気通信主任技術者、情報処理安全確保支援士などの資格による免除を定めています(資格ごとに免除される科目が決まっていて、一部は経済産業大臣の認定が必要です)。仕事で取得した資格が該当しないか、学習を始める前に確認しておきます。修士・博士の学位による免除は、受験願書の提出より前に工業所有権審議会会長への認定申請が必要です。

出典:e-Gov法令検索「弁理士法施行規則」第6条、工業所有権審議会「令和8年度弁理士試験公告」

免除が使えない場合は、選択科目の学習時間を2年目の計画に上乗せします。選択科目は必須科目と別の日に実施され、一度合格すれば期限なく免除されるので、2年目に必須科目と選択科目の両方を受け、届かなかった方だけを3年目に回す組み方もできます。

短答式の年と論文式の年で、平日の中身を切り替える

段階型の計画では、年によって平日の時間の中身が変わります。時間帯の使い方は同じでも、そこに置く学習を切り替えます。

段階型の計画では時間帯の使い方は同じまま、短答式の年と論文式の年で平日に置く学習を切り替える
段階型の計画では時間帯の使い方は同じまま、短答式の年と論文式の年で平日に置く学習を切り替える
時間帯 短答式の年 論文式の年
朝 新しい単元のテキストと条文 答案構成を1問(時間を計る)
通勤 肢別の過去問 論点カードの読み返し
昼休み 条文と期間の数字 判例・審査基準の要旨を1件
夜 過去問の復習と記録 前回の答案の復習と論点カードへの追記
休日 月1回は60問の通し 1科目を本試験と同じ制限時間で書く

論文式の年は、答案を書く時間を平日に取ろうとすると途中で中断し、書き切る練習になりません。書くのは休日にまとめ、平日は構成と復習に回します。

受験日程と仕事の調整

試験の日程と、そこに至るまでの手続は、仕事の予定と早めに突き合わせておきます。特許庁が示している例年の流れは次のとおりです。

口述試験は平日に当たることがあるので、論文式の合格発表のころには休暇を取れるよう職場と調整しておく
口述試験は平日に当たることがあるので、論文式の合格発表のころには休暇を取れるよう職場と調整しておく
手続・試験 例年の時期 仕事との調整のポイント
受験願書の提出 3月中旬〜4月上旬 年度末の繁忙期と重なる。願書の請求は早めに
短答式 5月中旬〜下旬の日曜 午後の実施。前週の残業を減らしておく
論文式(必須科目) 6月下旬〜7月上旬 1日で3科目。前日から体調を整える
論文式(選択科目) 必須科目の後の日曜(令和8年度は7月26日) 免除があれば受験不要
口述試験 10月中旬〜下旬 平日に当たる年がある。休暇の調整が必要

出典:特許庁「弁理士試験の概要」、特許庁「令和8年度弁理士試験受験案内」、工業所有権審議会「令和8年度弁理士試験公告」

注意したいのは口述試験です。令和8年度は10月17日(土)から10月19日(月)のうちいずれかの日の実施で、どの日になるかは受験者ごとに通知されます。平日に当たる可能性があるので、論文式の合格発表(令和8年度は9月18日の予定)の時点で、休暇を取れるように職場と調整しておきます。

受験願書の受付は年度末と重なります。令和8年度は、インターネットでの願書請求が令和8年2月2日から3月19日まででした。仕事が立て込む前に請求を済ませておきます。

出典:特許庁「令和8年度弁理士試験受験案内」

職場の理解と学習環境

特許事務所や企業の知財部で働いている人は、日常業務で条文や審査基準に触れる機会があり、学習内容が仕事と重なります。一方で、実務の運用と試験で問われる条文の文言は必ずしも一致しないので、「実務で知っているから」と過去問の根拠確認を省かないことが大切です。

知財と関係のない仕事をしている人は、学習時間の確保そのものが課題になります。受験していることを職場に伝えるかどうかは人それぞれですが、口述試験の休暇のように、どうしても調整が必要な場面はあります。少なくとも直属の上司には、試験の時期だけでも伝えておくと、繁忙期の割り振りで配慮を得やすくなります。

家族がいる場合は、試験日と直前期のスケジュールを家族と共有しておきます。直前期の1か月は休日の学習時間が増えるので、その分を別の時期に返す約束をしておくと、複数年の計画でも関係が崩れにくくなります。

よくある失敗

1年で全部を通す計画は崩れやすいので、最初から免除を使った段階型で計画する
1年で全部を通す計画は崩れやすいので、最初から免除を使った段階型で計画する

1年で全部を通す計画を立てて崩れる。短答式・論文式・口述試験を1年で通す計画は、社会人には負荷が大きすぎます。途中で崩れると、立て直す前提がないため学習そのものが止まります。最初から段階型で計画します。

夜の時間を学習の中心にする。残業や付き合いで最も崩れやすいのが夜です。夜を中心にすると、崩れた日にその日の学習がゼロになります。新しい単元の学習は朝に置きます。

繁忙期に完全に止める。止めると再開に時間がかかります。通勤の肢別演習だけでも続けます。

短答式の免除期間中に短答式の知識を放置する。免除期間は論文式に集中できる期間ですが、条文の知識が抜けると論文式でも失点します。条文の読み込みは続けます。

まとめ

  • 令和7年度の最終合格者205人のうち、会社員・特許事務所・公務員が8割を超え、短答式免除者として合格した人が半数を超える
  • 平日は時間帯ごとに学習を固定する。朝は新しい単元、通勤と昼は枝単位の演習、夜は崩れても取り返せる復習
  • 休日は通しの演習と、平日の積み残しの回収に使う
  • 繁忙期は「忘れない」ことだけを目標にした最低ラインで学習を途切れさせない
  • 短答式は合格発表の日から2年間、論文式の必須科目も2年間免除され、選択科目の免除は期限がない。この仕組みを前提に3年の段階型で計画する
  • 受験願書は年度末の繁忙期と重なり、口述試験は平日に当たることがある。早めに職場と調整する

学習時間の総量と科目別の配分は「弁理士試験に必要な勉強時間」で、独学でどこまで進めるかは「弁理士試験は独学で合格できるか」で整理しています。

読んだあとに、今日の1問を

過去問ベースの肢別演習で、読んだ内容をそのまま演習に移せます。

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