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意匠の類否判断とは|24条2項・3条1項3号と9条・23条を短答用に整理

意匠法 読了 約9分

弁理士試験短答式の意匠法・類否判断のまとめ。24条2項の需要者基準(平成18年改正)、3条1項3号の類似と3条2項の創作非容易性の違い、審査基準の判断手順(物品等の用途・機能→共通点と差異点→要部→総合判断)、物品の類否、9条・3条の2・10条・23条で類似が効く場面を条文と審査基準で整理します。

意匠法は「類似」という言葉を軸に組み立てられています。新規性(3条1項3号)、先願(9条)、関連意匠(10条)、意匠権の効力(23条)のどれも、同一だけでなく類似の範囲まで広げて働きます。短答式の意匠10問では、この類否がどの条文で、誰を基準に、何を比べて判断されるかが繰り返し問われます。

結論から言うと、意匠の類否は「需要者の視覚を通じて起こさせる美感」を基準に(24条2項)、物品等の用途・機能の類否と形状等の類否の両方を見て判断すると押さえれば、どの条文の枝にも対応できます。3条1項3号の「類似」は需要者の目で見た美感の近さを問い、3条2項の創作非容易性は当業者の目で見た創作の容易さを問う、別の規定です。そして、類否の基準は登録前の審査でも登録後の権利範囲でも同じ24条2項で統一されています。

この記事では、24条2項の位置付け、3条1項3号と3条2項の違い、意匠審査基準に沿った判断手順、物品の類否、類似が効く条文の一覧、短答で狙われる型の順に整理します。条文はe-Gov法令検索の意匠法原文で、審査基準は特許庁の意匠審査基準(令和5年12月改訂の現行版)で確認しています。意匠法全体の中での位置付けは「意匠法の短答対策」で扱っています。

類否判断の基準は24条2項にある

24条は「登録意匠の範囲等」という見出しの条文です。1項は、登録意匠の範囲は願書の記載及び願書に添付した図面に記載され、又は願書に添付した写真、ひな形若しくは見本により現された意匠に基づいて定めなければならないとし、2項が類否の基準を定めています。

登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。

条文:意匠法24条(e-Gov法令検索)

この2項は平成18年の意匠法改正で追加されました。それまで条文に類否の基準はなく、判断主体を需要者とするか当業者とするかで学説が分かれていました。改正で、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づく、と明文で定められました。

24条2項は意匠権の条文だが、審査でも同じ基準

24条2項は「登録意匠とそれ以外の意匠」の類否、つまり意匠権の効力(23条)が及ぶ範囲を念頭に置いた条文です。しかし意匠審査基準は、3条1項3号の新規性の判断でも、両意匠の類否判断は需要者(取引者を含む)の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うとしており、24条2項の考え方を審査の段階から使っています。

出願された意匠が公知意匠と類似すれば登録されず、登録された意匠は類似の範囲まで権利が及ぶ、という入口と出口の広さをそろえるためです。短答では「3条1項3号の類否は当業者を基準に判断する」という枝が誤りの定番です。

意匠の類否は、登録前の審査でも登録後の権利範囲でも、需要者の視覚を通じて起こさせる美感で判断する
意匠の類否は、登録前の審査でも登録後の権利範囲でも、需要者の視覚を通じて起こさせる美感で判断する

3条1項3号の「類似」と3条2項の「創作非容易性」は別の要件

3条は意匠登録の要件を定める条文で、1項が新規性、2項が創作非容易性です。どちらも公知の意匠や形状等を引き合いに出して登録を拒む規定なので混同されやすいのですが、問うていることが違います。

項目 3条1項3号(新規性) 3条2項(創作非容易性)
引用するもの 1号・2号の公知意匠(公然知られた意匠、刊行物記載・電気通信回線で公衆利用可能となった意匠) 公然知られ、刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像
判断の主体 需要者(取引者を含む) その意匠の属する分野における通常の知識を有する者(当業者)
問うこと 公知意匠と類似か(美感が近いか) 公知の形状等に基づいて容易に創作できたか
物品の類否 前提として問題になる 問わない(物品を離れた形状等を引用できる)
適用の順序 まず1項を見る 1項各号に該当しない意匠について2項を見る

条文:意匠法3条(e-Gov法令検索)

3条2項の引用対象は、令和元年改正で「公然知られた形状等」だけでなく、刊行物記載・電気通信回線で公衆に利用可能となった形状等や画像にまで広がりました。1項と2項で引用できるものの範囲がそろった形です。

重要なのは、3条2項には「類似」という言葉が出てこないことです。公知のモチーフをありふれた手法で置き換えたり寄せ集めたりしただけの意匠は、どの公知意匠とも類似していなくても、2項で拒絶されます。逆に、3条1項3号で公知意匠と類似すると判断された意匠について、重ねて3条2項を検討する必要はありません。

3条1項3号の類否と3条2項の創作非容易性の違い
3条1項3号の類否と3条2項の創作非容易性の違い

審査基準に沿った類否判断の手順

意匠審査基準(第III部第2章第1節)は、新規性の判断における類否判断を、次の流れで行うとしています。

手順 内容
(1) 対比する両意匠の意匠に係る物品等の認定及び類否判断
(2) 対比する両意匠の形状等の認定
(3) 形状等の共通点及び差異点の認定
(4) 共通点及び差異点の個別評価
(5) 総合的な類否判断

(1)物品等の類否を先に見る

意匠は物品等と形状等が一体になったものなので、形状等を比べる前に、物品等が同一か類似かを確認します。審査基準は、物品等の類否は用途及び機能に基づいて判断するとしています。用途及び機能が同一なら同一の物品等、用途及び機能に共通性があれば類似の物品等です。

物品等の用途・機能が同一でも類似でもなければ、形状等が似ていても意匠として類似しない
物品等の用途・機能が同一でも類似でもなければ、形状等が似ていても意匠として類似しない

物品等が同一でも類似でもなければ、形状等がどれほど似ていても意匠として類似とはなりません。この段階で非類似なら、形状等の対比に進む必要はありません。

(2)〜(3)形状等を認定し、共通点と差異点を拾う

両意匠の形状等を、意匠全体の構成(基本的構成態様)と、各部の具体的な形状等(具体的態様)に分けて認定し、共通点と差異点を書き出します。公知意匠は公報や刊行物に表れている範囲で認定し、出願意匠は願書と図面から認定します。

(4)要部を見極めて評価する

共通点と差異点のそれぞれについて、それが需要者の注意を惹く部分(要部)に関わるかどうかを評価します。審査基準が挙げている考慮要素は次のとおりです。

ありふれた形状等の共通点は類否にほとんど影響せず、需要者が注目する部分の差異点は大きく影響する
ありふれた形状等の共通点は類否にほとんど影響せず、需要者が注目する部分の差異点は大きく影響する
  • 対比観察した場合に注意を惹く部分か
  • 先行意匠群との対比に基づく評価(その分野でありふれた形状等か、新規な形状等か)
  • 物品等の大きさ、使用の態様、取引の実情(需要者がどこを見て選ぶか)
  • 意匠全体に占める割合

ありふれた形状等の共通点は類否の判断にほとんど影響せず、需要者が注目する部分の差異点は大きく影響する、という評価になります。

(5)総合判断

個別評価を踏まえ、意匠全体として需要者に共通の美感を起こさせるかどうかで結論を出します。一部に差異があっても全体の美感が共通していれば類似、共通点が多くても要部に明確な差異があり全体の美感が異なれば非類似です。

部分意匠・画像・建築物での考え方

部分意匠では、物品全体の用途・機能、意匠登録を受けようとする部分の用途・機能、その部分の位置・大きさ・範囲、その部分の形状等の4つの観点を加えて判断します。手順の骨格は全体意匠と同じで、比べる対象が「部分」に絞られる点が違います。詳しくは「部分意匠の要件と類否」で整理しています。

画像意匠と建築物の意匠でも、用途・機能の類否を先に見る構造は変わりません。建築物同士の用途・機能は詳細に比べる必要はなく、使用の目的や状態に共通性があれば類似と扱われます。画像意匠は、画像の用途(操作用か表示用か、何のための画像か)を基準に見ます。これらは「画像・建築物・内装の意匠」で扱っています。

「類似」が効く条文の一覧

類否判断の中身は1つですが、それが登場する条文は複数あります。短答では「この条文は類似まで含むか、同一だけか」を入れ替えた枝が作られます。

条文 場面 同一だけか、類似を含むか
3条1項3号 公知意匠との関係(新規性) 類似を含む
3条の2 先願の意匠の一部との関係 類似を含む
9条1項・2項 先願・同日出願の調整 類似を含む(同一又は類似の意匠)
10条1項 関連意匠の登録要件 本意匠に類似する意匠(同一は不可)
23条 意匠権の効力 登録意匠及びこれに類似する意匠
26条 他人の先願権利との利用・抵触 登録意匠が他人の登録意匠に類似する場合も含む
38条 間接侵害 登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品等

条文:意匠法3条・3条の2・9条・10条・23条・26条・38条(e-Gov法令検索)

9条:先願は類似の範囲まで調整する

9条1項は、同一又は類似の意匠について異なった日に二以上の意匠登録出願があったときは、最先の出願人のみが登録を受けられると定めます。特許法39条が「同一の発明」に限って調整するのと違い、意匠法は類似の範囲まで先願主義を広げています。意匠権の効力が類似まで及ぶので、類似する意匠が別々の人に登録されると権利が重なってしまうためです。同日出願は協議(9条2項)で、協議不成立なら誰も登録を受けられません。

意匠法9条は類似する意匠まで先願で調整し、特許法39条は同一の発明だけを調整する
意匠法9条は類似する意匠まで先願で調整し、特許法39条は同一の発明だけを調整する

10条:関連意匠は「類似するが同一でない」意匠

関連意匠になれるのは自己の本意匠に類似する意匠で、本意匠と同一の意匠は関連意匠にならない
関連意匠になれるのは自己の本意匠に類似する意匠で、本意匠と同一の意匠は関連意匠にならない

10条1項は、自己の登録意匠(本意匠)に類似する意匠について、関連意匠として登録を受けられると定めます。本意匠と同一の意匠は関連意匠になりません。9条の例外として機能する制度で、出願できる期間は令和元年改正で基礎意匠の出願日から10年を経過する日前までに延びました。制度の全体は「関連意匠まとめ」を参照してください。

23条:権利範囲も類似まで

23条は、意匠権者は業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有すると定めます。この「類似」の判断基準が24条2項です。特許権が「特許発明の技術的範囲」(特許法70条)で画されるのに対し、意匠権は登録意匠に類似する意匠まで最初から権利範囲に含めている点が、意匠法の特徴です。

意匠法で「類似」が効く条文
意匠法で「類似」が効く条文

短答の枝ではこう問われる

本試験と同じ形の枝を、条文と審査基準から書き起こしました(過去問そのものではありません)。

類否は需要者、創作非容易性は当業者が判断の主体で、入れ替えた枝は誤り
類否は需要者、創作非容易性は当業者が判断の主体で、入れ替えた枝は誤り

例題 意匠の類否に関し、正しいものはどれか。

  • イ 登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行う。
  • ロ 意匠登録出願に係る意匠が、公然知られた形状に基づいて当業者が容易に創作できたものである場合であっても、公知の意匠のいずれにも類似しないときは、意匠法3条2項の規定により拒絶されることはない。
  • ハ 意匠に係る物品が非類似であっても、形状等が同一であれば、両意匠は類似する。
  • ニ 同一又は類似の意匠について異なった日に二以上の意匠登録出願があったときは、最先の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。
  • ホ 自己の登録意匠と同一の意匠については、関連意匠として意匠登録を受けることができる。

正解はニです(9条1項)。イは24条2項の基準が需要者なので誤り。ロは3条2項が類似を要件とせず、公知の形状等から容易に創作できれば適用されるので誤り。ハは物品等の用途・機能が非類似なら意匠として類似しないので誤り。ホは10条1項が「類似する意匠」を対象とし、同一の意匠は関連意匠にならないので誤りです。

型としては次の4つが繰り返し使われます。

判断主体の入替え。類否は需要者(24条2項)、創作非容易性は当業者(3条2項)です。入れ替えた枝はどちらの方向でも作られます。

3条1項3号と3条2項の混同。「公知意匠に類似するので3条2項で拒絶」「類似しないので3条2項の適用はない」の両方が誤りです。類似の有無と創作の容易さは別に判断します。

物品の類否の省略。形状等だけを比べて類似と結論づける枝は、物品等の用途・機能の類否を落としています。

同一と類似の範囲。9条・23条は類似を含み、10条は類似に限られ同一を含まない、という違いを突く枝です。特許法39条(同一の発明のみ)との対比で出ることもあります。

学習の進め方

類否判断は、条文を覚えるだけでは枝が読めない分野です。24条2項と3条1項・2項を並べて読み、「誰が」「何と何を」「何に基づいて」比べるかを3つの欄に書き出すところから始めます。そのうえで、審査基準の判断手順を5段階で暗唱できるようにしておくと、事例の枝で迷いません。

次に、類似が出てくる条文(3条1項3号・3条の2・9条・10条・23条・26条・38条)を四法対照の条文集で印を付け、特許法の対応条文が「同一」に限られている箇所を確認します。特許法との差分で覚える方法は「条文の覚え方」で紹介しています。

まとめ

  • 類否判断の基準は24条2項。需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づく。平成18年改正で明文化され、審査でも権利範囲でも同じ基準
  • 3条1項3号は需要者基準の類似、3条2項は当業者基準の創作非容易性。別の要件で、2項は類似を要件としない
  • 判断手順は、物品等の用途・機能の類否→形状等の認定→共通点と差異点→要部の評価→総合判断
  • 物品等が非類似なら、形状等が同じでも意匠として類似しない
  • 9条・23条・26条・38条は類似まで含む。10条の関連意匠は類似に限られ、同一の意匠は不可
  • 特許法39条が同一の発明のみを調整するのと違い、意匠法9条は類似まで調整する
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