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意匠法14条の秘密意匠|請求の時期と権利行使の制限を整理

意匠法 読了 約10分

弁理士試験短答式の意匠法14条・秘密意匠のまとめ。設定登録の日から3年以内という期間、出願と同時か第1年分の登録料納付と同時という請求の時期、期間の延長・短縮、特許庁長官が意匠を示す4つの場合、37条3項の警告と40条ただし書の過失推定の不適用、関連意匠との関係を整理します。

秘密意匠は、特許法にも商標法にもない、意匠法だけの制度です。短答式の意匠10問では、関連意匠や部分意匠と並んで「意匠法にしかない制度」の定番として出題されます。条文は14条の4項だけですが、登録公報(20条)、差止請求(37条)、過失の推定(40条)、閲覧の制限(63条)、関連意匠(10条3項)と、他の条文に効果が散らばっているのが特徴です。

結論から言うと、秘密意匠の枝は「誰が・いつ・どれだけの期間を請求できるか」「秘密期間中、公報と閲覧はどうなるか」「権利行使に何が加わり、何が外れるか」の3つに分けて読むと整理できます。請求できるのは意匠登録出願人で、時期は出願と同時か第1年分の登録料の納付と同時、期間は設定の登録の日から3年以内。秘密期間中は、差止請求の前に特許庁長官の証明を受けた書面を示して警告する必要があり(37条3項)、過失の推定は働きません(40条ただし書)。

この記事では、制度の趣旨、14条の項ごとの内容、秘密期間中の公報と閲覧、権利行使の制限、関連意匠などとの関係、短答で狙われる型の順に整理します。条文はe-Gov法令検索の意匠法原文で確認しています。意匠法全体の中での位置付けは「意匠法の短答対策」で扱っています。

秘密意匠の趣旨

意匠は物品などの外観のデザインなので、公表されると一目で内容が分かり、模倣されやすいという性質があります。意匠権の設定の登録があると、20条3項により、願書と図面の内容が意匠公報に掲載されます。製品の発売前に登録を受けると、公報を通じて競合他社にデザインが知られてしまいます。

秘密意匠は、意匠権は早く確保しつつ、意匠の公表を製品の発売のタイミングまで遅らせるための制度
秘密意匠は、意匠権は早く確保しつつ、意匠の公表を製品の発売のタイミングまで遅らせるための制度

そこで14条は、意匠登録出願人が、設定の登録の日から3年以内の期間を指定して、その期間、意匠を秘密にすることを請求できるとしました。権利は早く確保し、公表は発売のタイミングまで遅らせる、という使い方ができます。

特許法には、出願公開を遅らせる制度や、登録後に発明の内容を秘密にする制度はありません。意匠法には出願公開の制度がなく、登録の後に初めて公報で内容が公になるので、その公表時期を出願人が調整できるようにしたのが秘密意匠です。

14条を項ごとに読む

項 内容
1項 意匠登録出願人は、意匠権の設定の登録の日から3年以内の期間を指定して、その期間その意匠を秘密にすることを請求できる
2項 請求は、出願人の氏名等と秘密にする期間を記載した書面を、出願と同時に、又は第1年分の登録料の納付と同時に特許庁長官に提出して行う
3項 意匠登録出願人又は意匠権者は、秘密にすることを請求した期間の延長又は短縮を請求できる
4項 特許庁長官は、一定の場合には、秘密にすることを請求した意匠を意匠権者以外の者に示さなければならない

1項:期間は「設定の登録の日から3年以内」

期間の起算点は「意匠権の設定の登録の日」です。出願日でも、査定の日でもありません。期間は3年以内で出願人が指定します。3年ちょうどでも、1年や6か月でも構いません。

請求できるのは「意匠登録出願人」です。登録を受ける前の段階でする請求なので、意匠権者ではなく出願人が主語になっています。

2項:請求できる時期は2つだけ

請求の時期は、次の2つに限られています。

秘密の請求ができるのは、出願と同時か第1年分の登録料の納付と同時の2つの時点だけ
秘密の請求ができるのは、出願と同時か第1年分の登録料の納付と同時の2つの時点だけ
  • 意匠登録出願と同時
  • 42条1項の規定による第1年分の登録料の納付と同時

第1年分の登録料は、43条1項により、意匠登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があった日から30日以内に納付しなければならず、20条2項により、その納付があったときに設定の登録がされます。つまり、秘密の請求は、出願から設定の登録の直前まで、どの時点でも自由にできるわけではありません。審査の途中(たとえば拒絶理由通知への応答時)に請求することは、2項の時期に当たらないのでできません。

時点 秘密の請求
出願と同時 できる
審査中(出願後、登録料納付前) できない
第1年分の登録料の納付と同時 できる
設定の登録の後 新たな請求はできない(期間の延長・短縮は3項)

登録料の納付と同時の請求が認められているので、出願時には発売時期が決まっておらず、登録査定を受けた段階で秘密にするかどうかを判断する、という使い方ができます。

3項:期間の延長・短縮

3項は、意匠登録出願人又は意匠権者が、秘密にすることを請求した期間を延長し、又は短縮することを請求できるとします。主語に意匠権者が加わっているので、設定の登録の後でも期間の変更を請求できます。

延長には上限があります。特許庁の案内では、秘密にできる期間は設定の登録の日から3年間に限られ、その範囲内であれば期間を変更できるとされています。1項の「3年以内」という枠を、延長によって超えることはできません。設定の登録の後に短縮する場合も、すでに経過した期間より短い期間にはできないと案内されています(例:登録から1年を経過していれば、1年未満には変更できない)。

出典:特許庁「意匠登録出願の設定登録料の納付と同時の秘密意匠の請求及びその期間変更について」(令和8年6月15日更新)

発売が前倒しになれば短縮し、発売が遅れれば3年の枠内で延長する、というように、製品の事情に合わせて調整するための規定です。

4項:特許庁長官が意匠を示さなければならない場合

秘密期間中でも、特許庁長官は、次のいずれかに当たるときは、秘密にすることを請求した意匠を意匠権者以外の者に示さなければなりません。

号 場合
1号 意匠権者の承諾を得たとき
2号 その意匠又はその意匠と同一若しくは類似の意匠に関する審査、審判、再審又は訴訟の当事者又は参加人から請求があったとき
3号 裁判所から請求があったとき
4号 利害関係人が意匠権者の氏名又は名称及び登録番号を記載した書面その他経済産業省令で定める書面を特許庁長官に提出して請求したとき

2号は、秘密意匠と「同一若しくは類似の意匠」に関する手続の当事者を含みます。自分の出願が秘密意匠との類似を理由に拒絶された出願人は、2号によって、その秘密意匠を見ることができます。4号の利害関係人は、意匠権者の氏名又は名称と登録番号を記載した書面などを提出して請求する必要があります。

いずれの号も「示さなければならない」という形で、特許庁長官の裁量ではありません。一方で、「何人も」請求できるわけではない点が枝になります。

秘密意匠の請求時期と秘密期間の流れ
秘密意匠の請求時期と秘密期間の流れ

秘密期間中の公報と閲覧

意匠公報への掲載(20条4項)

設定の登録があったときは、20条3項により、意匠権者の氏名等(1号)、出願の番号・年月日(2号)、登録番号・設定の登録の年月日(3号)、願書と図面等の内容(4号)などが意匠公報に掲載されます。

秘密意匠は登録直後の公報に書誌的事項だけが載り、意匠の内容は秘密期間の経過後に掲載される
秘密意匠は登録直後の公報に書誌的事項だけが載り、意匠の内容は秘密期間の経過後に掲載される

秘密意匠については、20条4項が、4号の「願書及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本の内容」を、14条1項で指定した期間の経過後遅滞なく掲載するとしています。つまり、設定の登録の直後に、権利者や登録番号などの書誌的な事項だけが公報に載り、意匠の内容は秘密期間の経過後に改めて掲載されるという2段階になります。意匠権そのものは設定の登録によって発生しているので(20条1項)、秘密期間中も権利は存在しています。

閲覧の制限(63条1項2号)

63条1項は、何人も、特許庁長官に対し、意匠登録に関する書類の閲覧などを請求できるとしたうえで、ただし書で、特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めるときは一定の書類等について請求に応じないとしています。その2号が「第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠に関する書類、ひな形又は見本」です。

秘密期間中の意匠の内容に第三者がアクセスできるのは、14条4項の4つの場合に限られる、と整理しておけば十分です。

拒絶された出願の公報(66条3項)

9条2項後段(同日出願で協議が成立しない等)により拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定した出願は、66条3項により、願書や図面の内容などが意匠公報に掲載されます。このとき、その出願の中に秘密にすることを請求した出願があるときは、全ての出願の図面等の内容は、確定の日から指定した期間(二以上あるときは最も長い期間)の経過後遅滞なく掲載するとされています。

権利行使の制限

秘密意匠は、第三者から見ると、どんな意匠が登録されているのか分からない状態です。そのまま通常の意匠権と同じ権利行使を認めると、知らずに実施した第三者に酷になります。そこで、差止請求と損害賠償の場面で、それぞれ調整規定が置かれています。

差止請求には警告が必要(37条3項)

37条3項は、秘密にすることを請求した意匠に係る意匠権者又は専用実施権者は、その意匠に関し20条3項各号に掲げる事項を記載した書面であって特許庁長官の証明を受けたものを提示して警告した後でなければ、差止請求(37条1項)をすることができないとします。

要件は2つです。

秘密意匠の差止請求は、特許庁長官の証明を受けた書面を提示して警告した後でなければできない
秘密意匠の差止請求は、特許庁長官の証明を受けた書面を提示して警告した後でなければできない
  • 20条3項各号の事項(権利者、出願番号・年月日、登録番号・設定の登録の年月日、願書・図面等の内容など)を記載した書面であること
  • その書面について特許庁長官の証明を受けていること

この書面を提示して警告することで、相手方は、どんな意匠が登録されているのかを知ることができます。警告が「提示して」行われることが要件なので、口頭で「意匠権を侵害している」と伝えるだけでは足りません。また、主体には意匠権者だけでなく専用実施権者も含まれています。

過失の推定が働かない(40条ただし書)

40条本文は、他人の意匠権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があったものと推定するとします。特許法103条と同じ趣旨の規定です。

ところが40条ただし書は、14条1項の規定により秘密にすることを請求した意匠に係る意匠権又は専用実施権の侵害については、この限りでないとします。秘密意匠の侵害では過失の推定が働かないので、損害賠償を請求する意匠権者側が、相手方の過失を立証しなければなりません。

場面 通常の意匠権 秘密意匠に係る意匠権
差止請求(37条1項) そのまま請求できる 特許庁長官の証明を受けた書面を提示して警告した後でなければ請求できない(37条3項)
過失 推定される(40条本文) 推定されない(40条ただし書)
損害賠償請求そのもの できる できる(過失の立証が必要)
秘密意匠に係る意匠権の権利行使の違い
秘密意匠に係る意匠権の権利行使の違い

短答で注意したいのは、37条3項は差止請求についての規定で、損害賠償請求に警告を要件とする規定ではないことです。逆に40条ただし書は過失の推定についての規定で、差止請求には関係しません。「秘密意匠に係る意匠権者は、警告をした後でなければ損害賠償を請求できない」という枝は、37条3項と40条ただし書を混ぜた誤りの型です。

関連意匠などとの関係

関連意匠と3条の2(10条3項)

3条の2は、先願の意匠の一部と同一又は類似の後願意匠は登録を受けられないとする規定で、ただし書で、同一の出願人が、先の出願が掲載された意匠公報の発行の日前に出願したときは適用しないとしています。このただし書の括弧書きは、公報から「20条4項の規定により同条3項4号に掲げる事項が掲載されたもの」、つまり秘密期間経過後に意匠の内容を掲載した公報を除いています。

秘密にした本意匠の内容が公報に載るまでの間に出願した関連意匠は、3条の2で拒絶されない
秘密にした本意匠の内容が公報に載るまでの間に出願した関連意匠は、3条の2で拒絶されない

10条3項は、関連意匠として登録を受けようとする意匠について、この括弧書きを読み替えます。先の意匠登録出願について秘密にすることを請求したときは、20条4項により意匠の内容が掲載された公報に限るとしています。秘密意匠を本意匠にした場合、意匠の内容が公報に載るまでの間に出願した関連意匠は、3条の2で拒絶されません。本意匠を秘密にしたまま、関連意匠のバリエーションを追加していけるようにするための規定です。関連意匠の制度全体は「意匠法の関連意匠まとめ」で整理しています。

国際意匠登録出願には適用されない(60条の9)

ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく国際出願で、日本を指定締約国とするもの(国際意匠登録出願)については、60条の9が「国際意匠登録出願の出願人については、第十四条の規定は、適用しない」と定めています。国際意匠登録出願の出願人は、14条の秘密の請求をすることができません。

短答で狙われる型

警告は差止請求の前提、過失の推定がないのは損害賠償の場面で、この2つを混ぜた枝は誤り
警告は差止請求の前提、過失の推定がないのは損害賠償の場面で、この2つを混ぜた枝は誤り

第1の型:起算点と期間の入替え。「出願の日から3年以内」「設定の登録の日から5年以内」は誤りです。起算点は設定の登録の日、期間は3年以内です。延長しても設定の登録の日から3年を超えられません。

第2の型:請求の時期。「審査官から拒絶理由の通知を受けた後、意見書の提出と同時に秘密にすることを請求できる」は誤りです。時期は出願と同時か、第1年分の登録料の納付と同時の2つだけです。

第3の型:示す相手の範囲。「秘密期間中であっても、何人も特許庁長官に請求して秘密意匠を閲覧できる」は誤りです。特許庁長官が示さなければならないのは、14条4項の4つの場合に限られます。類似する意匠に関する審査の当事者や、所定の書面を提出した利害関係人が含まれることは、正しい枝として出ます。

第4の型:37条3項と40条ただし書の混同。警告は差止請求の前提、過失の推定がないのは損害賠償の場面です。差止請求で「過失の立証が必要」、損害賠償で「警告が必要」とする枝はいずれも誤りです。

第5の型:権利の存否。秘密期間中も意匠権は設定の登録により発生しています。「秘密期間中は意匠権の効力が生じない」は誤りです。制限されるのは差止請求の手順と過失の推定であって、権利そのものではありません。

学習の進め方

秘密意匠は、14条だけを読んでも全体像がつかめません。14条、20条3項・4項、37条3項、40条、63条1項2号、10条3項を1枚の紙に並べ、「請求」「公報」「閲覧」「権利行使」「関連意匠」の5つの場面に振り分けると、条文の散らばりが整理できます。

時系列の図も有効です。出願、査定、第1年分の登録料の納付、設定の登録、秘密期間の満了、意匠の内容を掲載した公報の発行を横に並べ、どの時点で請求でき、どの時点まで警告が必要かを書き込みます。意匠法全体の独自制度は「意匠法の短答対策」、枝単位で記録を付ける方法は「弁理士短答式の過去問は「肢別」で回す」で紹介しています。

まとめ

  • 秘密意匠は、意匠登録出願人が、設定の登録の日から3年以内の期間を指定して意匠を秘密にすることを請求できる制度(14条1項)
  • 請求の時期は、出願と同時か、第1年分の登録料の納付と同時の2つだけ(14条2項)
  • 期間の延長・短縮は、意匠登録出願人又は意匠権者が請求できる(14条3項)。延長しても設定の登録の日から3年を超えられない
  • 特許庁長官は、意匠権者の承諾、類似意匠に関する審査等の当事者・参加人の請求、裁判所の請求、利害関係人の所定の書面による請求のときに意匠を示す(14条4項)
  • 設定の登録の公報では書誌的事項だけが掲載され、意匠の内容は秘密期間の経過後に掲載される(20条4項)
  • 差止請求は特許庁長官の証明を受けた書面を提示して警告した後でなければできない(37条3項)。過失の推定は働かない(40条ただし書)
  • 関連意匠では、秘密にした本意匠について3条の2ただし書の公報を読み替える(10条3項)。国際意匠登録出願には14条は適用されない(60条の9)

法域別の足切りと、意匠法の目標点の考え方は「短答式の合格基準と科目別足切り」で確認してください。

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