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意匠法の組物の意匠とは|8条の要件と組物の部分意匠を整理

意匠法 読了 約10分

弁理士試験短答式の意匠法8条・組物の意匠のまとめ。経済産業省令の別表に掲げる43の組物、同時に使用される二以上の物品等と組物全体としての統一という要件、令和元年改正で認められた組物の部分意匠、内装の意匠との違い、分割・補正・優先権の扱いを整理します。

組物の意匠は、意匠法7条の「一意匠一出願」の例外として、複数の物品をまとめて一つの意匠として登録できる制度です。短答式の意匠10問では、どんな組物なら認められるのか、組物の一部だけを部分意匠にできるのか、内装の意匠とどう違うのか、といった形で問われます。令和元年改正で組物の部分意匠が認められ、構成物品に建築物と画像が加わったため、改正前の知識のままだと誤りやすい論点です。

結論から言うと、組物の枝は「別表に載っているか」「同時に使用される二以上の物品等か」「組物全体として統一があるか」の3つで要件を判断し、登録後は組物全体で一つの意匠として扱うと整理できます。組物は経済産業省令(意匠法施行規則の別表)に掲げる43の組物に限られます。令和2年4月1日からは組物の部分意匠も登録でき、その場合は全ての構成物品等に意匠登録を受けようとする部分があり、その部分同士に統一があることが必要です。

この記事では、8条の条文、別表の組物、審査基準の3つの要件、組物の部分意匠、内装の意匠との比較、分割・補正・優先権などの扱い、短答で狙われる型の順に整理します。条文と施行規則はe-Gov法令検索の原文で、審査基準は特許庁の意匠審査基準(第IV部第3章ほか。令和5年12月改訂の現行版、令和6年1月1日以降の出願に適用)で確認しています。意匠法全体の中での位置付けは「意匠法の短答対策」で扱っています。

8条の条文を分解する

8条は次のように定めています。

組物の意匠は一意匠一出願(7条)の例外で、統一感のあるセットを一つの意匠として登録できる
組物の意匠は一意匠一出願(7条)の例外で、統一感のあるセットを一つの意匠として登録できる

同時に使用される二以上の物品、建築物又は画像であつて経済産業省令で定めるもの(以下「組物」という。)を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。

7条は「意匠登録出願は、経済産業省令で定めるところにより、意匠ごとにしなければならない」と定めています。一つの出願に含められるのは原則として一つの物品等ですが、食器のセットや家具のセットのように、複数の物品に統一感を持たせてデザインすることはよくあります。8条は、そうした創作を一つの意匠として保護するための規定です。

要素 8条の文言
構成するもの 同時に使用される二以上の物品、建築物又は画像
範囲の限定 経済産業省令で定めるもの
実体の要件 組物全体として統一があるとき
効果 一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる

改正前の8条は「同時に使用される二以上の物品であつて経済産業省令で定めるもの」で、構成するものは物品に限られていました(e-Gov法令検索の令和2年1月1日時点の条文)。令和元年改正で建築物と画像が保護対象に加わったのに合わせ、組物の構成物品等にも建築物と画像が入りました。保護対象の拡充そのものは「画像・建築物・内装の意匠」で整理しています。

経済産業省令で定める組物(別表)

意匠法施行規則8条は「意匠法第八条の経済産業省令で定める組物は、別表のとおりとする」とし、別表に43の組物を掲げています。一部を抜き出すと次のとおりです。

番号 組物
一 一組の食品セット
三 一組の衣服セット
十一 一組の飲食用容器セット
十三 一組の飲食用具セット
二十 一組の家具セット
三十 一組の電気・電子機器セット
四十二 一組の建築物
四十三 一組の画像セット

別表の備考は、建築物を含む組物の意匠について登録を受けようとするときは「意匠に係る物品」の欄に「一組の建築物」と記載し、物品と画像からなる組物の意匠については、その物品が属する組物の意匠を記載するとしています。

構成物品等の例として、特許庁の「組物の意匠の構成物品等の例」は、一組の飲食用具セットに「スプーン、フォーク、ナイフ」、一組の調理器具セットに「鍋、フライパン」、一組の清掃用具セットに「ほうき、ちり取り」などを挙げています。審査基準の事例には、「太陽光発電パネル付き家屋」と「発電量表示用画像」からなる一組の建築物や、「乗用自動車」と「乗用自動車用情報表示画像」からなる一組の運輸機器セットもあります。

別表にない組物は、どれだけ統一感があっても組物の意匠としては登録を受けられません。

審査基準の3つの要件

意匠審査基準(第IV部第3章)は、組物の意匠として登録を受けるための要件を次の3つに整理しています。

要件 審査基準の判断
(1)経済産業省令で定める組物に該当すること 別表に掲げる組物のいずれかに該当しなければ8条の拒絶理由
(2)同時に使用される二以上の物品等であること 社会通念上同時に使用される二以上の物品等で構成されていること
(3)組物全体として統一があること 構成物品等の形状等に統一があること

同時に使用される

(2)について審査基準は、現実に同一の時刻に全ての構成物品が使われる必要はなく、組物の用途・機能や使用の目的に沿った一連の使用の範囲内で用いられるものであればよいとしています。また、構成物品等が社会通念上一体的に流通するものである場合も、この要件を満たすとしています。物品同士だけでなく、建築物と画像、建築物と物品、物品と画像のような組合せでもかまいません。

同時に使用されるとは、同じ時刻に全てを使うことではなく、一連の使用の範囲内で用いられることを指す
同時に使用されるとは、同じ時刻に全てを使うことではなく、一連の使用の範囲内で用いられることを指す

組物全体として統一がある

(3)について審査基準は、次のいずれかに当たれば統一があると判断するとしています。

  • 各構成物品等の形状・模様・色彩又はこれらの結合が、同じような造形処理で表されている
  • 各構成物品等によって、組物全体として一つのまとまった形状又は模様が表されている
  • 各構成物品等の形状等によって、物語性など観念的に関連がある印象を与える

色彩については、形状や模様と結びついた一定の色彩によって全体の統一を成り立たせたもの、とされています。

組物の意匠の要件と、組物の部分意匠の追加要件
組物の意匠の要件と、組物の部分意匠の追加要件

無効理由ではない

8条の違反は拒絶理由にはなるが、意匠登録の無効理由にはならない
8条の違反は拒絶理由にはなるが、意匠登録の無効理由にはならない

17条1号は8条を拒絶理由に挙げていますが、48条1項1号の無効理由には8条が入っていません。審査基準はその理由を、(2)や(3)を満たさない出願でも、具体的な意匠が特定できて他の実体的要件に不備がなければ、本来は複数の出願にすべきだったという手続上の不備にとどまり、そのまま登録されても直接的に第三者の利益を著しく害しないためと説明しています。そのため審査官は、(2)(3)の要件を必要以上に厳格に判断しないよう留意するとされています。

登録要件は組物全体で判断する

8条の要件を満たした組物の意匠は、構成物品ごとではなく、組物全体として、3条1項柱書、新規性、創作非容易性、3条の2、5条、9条、10条などの要件が判断されます。4条の新規性喪失の例外の規定も、組物の意匠の出願に適用できます。

組物の部分意匠(令和元年改正)

改正前はなぜできなかったか

改正前の2条1項は「物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)」と定めていました。8条の「物品」には部分が含まれないため、組物の部分について意匠登録を受けることはできませんでした。令和元年改正で「第八条を除き」がなくなり、令和2年4月1日から組物の部分意匠も登録できるようになりました(特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」)。

組物の部分意匠の要件

審査基準は、組物の意匠に部分について登録を受けようとするものが含まれる場合、次の両方を満たすかを検討するとしています。

組物の部分意匠は、全ての構成物品等に意匠登録を受けようとする部分があり、その部分同士に統一があることが必要
組物の部分意匠は、全ての構成物品等に意匠登録を受けようとする部分があり、その部分同士に統一があることが必要
  • 全ての構成物品等に意匠登録を受けようとする部分があること(構成物品全体について登録を受けようとする場合を含む)
  • 全ての構成物品等の意匠登録を受けようとする部分に統一があること

一部の構成物品にしか意匠登録を受けようとする部分がない場合や、部分同士に統一がない場合は、8条の拒絶理由になります。部分意匠そのものの要件や類否判断は「意匠法の部分意匠」で整理しています。

内装の意匠との違い

8条の2の内装の意匠も、複数の物品等をまとめて一意匠として登録できる、7条の例外です。両者は似ていますが、要件の組み立てが違います。

項目 組物の意匠(8条) 内装の意匠(8条の2)
範囲の限定 経済産業省令(別表)の組物に限る 店舗、事務所その他の施設の内部
構成するもの 同時に使用される二以上の物品・建築物・画像 内装を構成する物品・建築物・画像
統一の要件 組物全体として統一がある 内装全体として統一的な美感を起こさせる
構成物品等の処理 部分意匠では全ての構成物品等に部分が必要 全ての構成物品等に統一的な処理は不問
図面 構成物品等ごと、又は組み合わせた状態で表す 床・壁・天井のいずれか一つ以上の開示が必要
拒絶理由・無効理由 拒絶理由(17条1号)、無効理由ではない 拒絶理由(17条1号)、無効理由ではない

審査基準は、組物の意匠として出願されたものが組物の要件を満たしているときは、組物の意匠から内装の意匠に変更する補正、組物の意匠から建築物の意匠に変更する補正は、いずれも要旨の変更に当たるとしています。一方、組物として出願されたものが複数の物品等を含んでおらず、本来建築物の意匠として出願すべきものと認められる場合は、建築物の意匠に変更する補正は要旨の変更に当たらないとされています。

組物の意匠と内装の意匠の比較
組物の意匠と内装の意匠の比較

手続上の扱い

3条の2との関係

組物の意匠の出願も、3条の2の「先の意匠登録出願」になります。審査基準(第III部第4章)は、先願が組物の意匠である場合に、その中の一つの構成物品等に係る意匠と後願の全体意匠とが同一又は類似であれば3条の2を適用できる例として、先願の「一組の飲食用具セット」と後願の「飲食用スプーン」を挙げています。

分割

審査基準は、8条の要件を満たす組物の意匠は全体として一意匠なので、構成物品等ごとに新たな出願とした場合は10条の2に基づく適法な分割とは認めず、新たな出願は分割のあった時にしたものとして扱うとしています。逆に、8条の要件を満たさない場合は全体として一意匠ではないので分割が認められ、新たな出願はもとの出願の時にしたものとみなされます(10条の2第2項)。

8条の要件を満たす組物の意匠は全体で一意匠なので、構成物品等ごとに分けても適法な分割とは認められない
8条の要件を満たす組物の意匠は全体で一意匠なので、構成物品等ごとに分けても適法な分割とは認められない

補正

願書の「意匠に係る物品」の欄に別表の組物が書かれていない場合に、別表の組物の一つに訂正する補正は、原則として要旨の変更に当たります。ただし、「一組の○○セット」のような記載で、願書と図面を総合して別表の組物の一つを当然に導き出せるときは、その組物に訂正する補正は要旨の変更に当たらないとされています。構成物品として適当な物品を追加したり削除したりする補正は、要旨の変更に当たります。

パリ条約の優先権

審査基準は、組物の意匠の出願については、第一国でもその構成物品等が日本の組物と同様に一意匠として出願されている場合にのみ、パリ条約による優先権等の主張の効果を認めるとしています。

国際意匠登録出願

ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく国際意匠登録出願は英語で手続されるため、審査基準(第IX部第6章)は、「意匠に係る物品」の欄に別表の組物のいずれかに相当するものが「a set of ○○」のように記載されていればよいとしています。国際出願の全体像は「ハーグ協定と国際意匠登録出願」で扱っています。

権利範囲の考え方

組物の意匠は一意匠として登録されるので、意匠権も組物全体で一つです。登録料(42条)は意匠権一件ごとに納付します。登録意匠の範囲は、24条1項により願書の記載と図面に現された意匠に基づいて定められるので、組物の意匠権の範囲は、図面に表された組物全体の意匠を基準に考えることになります。構成物品の一つを単独で保護したい場合は、その物品について別に出願しておくのが確実です。

組物の意匠権は組物全体で一つなので、構成物品の一つを単独で保護したいなら別に出願しておく
組物の意匠権は組物全体で一つなので、構成物品の一つを単独で保護したいなら別に出願しておく

短答の枝ではこう問われる

本試験と同じ形の枝を、条文と審査基準から書き起こしました(過去問そのものではありません)。

例題 組物の意匠に関し、誤っているものはどれか。

  • イ 組物を構成するものには、物品のほか、建築物及び画像も含まれる。
  • ロ 組物の意匠として意匠登録を受けることができるのは、経済産業省令で定める組物に該当するものに限られる。
  • ハ 組物の構成物品の一部についてのみ意匠登録を受けようとする部分を定め、他の構成物品には意匠登録を受けようとする部分を定めない場合でも、組物の意匠として意匠登録を受けることができる。
  • ニ 組物全体として統一がないにもかかわらず組物の意匠として意匠登録されたことは、意匠登録無効審判の請求の理由とならない。
  • ホ 組物の意匠の意匠登録出願について、意匠法4条の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けることができる。

誤っているものはハです。審査基準は、組物の部分意匠では全ての構成物品等に意匠登録を受けようとする部分があることを求めています。イは8条の文言どおり、ロは8条と施行規則8条・別表のとおり、ニは48条1項1号に8条が挙げられていないので正しい。ホは審査基準のとおり正しい枝です。

型としては次のものが繰り返し使われます。

別表の限定を外す。「組物全体として統一があれば、どのような組合せでも組物の意匠として登録を受けられる」という枝は、経済産業省令の限定を落としているので誤りです。

改正前の知識。「組物の部分について意匠登録を受けることはできない」「組物を構成するのは物品に限られる」は、改正前の制度に基づく誤りです。

同時使用の読み違え。「全ての構成物品が同一の時刻に使用されるものでなければならない」という枝は、審査基準が一連の使用の範囲内であればよいとしていることに反します。

拒絶理由と無効理由の混同。8条・8条の2・7条は拒絶理由ですが無効理由ではありません。関連意匠の10条も、無効理由になるのは6項だけです(「意匠法の関連意匠まとめ」参照)。

学習の進め方

組物は、8条・8条の2・7条・17条・48条を並べて読むと整理が早くなります。まず7条の原則と、その例外としての8条・8条の2を置き、次に17条(拒絶理由)には3つとも入っているが48条(無効理由)には入っていないことを確認します。そのうえで、組物と内装の要件の違いを上の表のように自分で書き出すと、入替えの枝に強くなります。

改正前の年度の過去問では、組物の部分意匠や建築物・画像を含む組物についての枝が、現行法と結論が変わっていることがあります。解き直しの記録の付け方は「短答式の過去問は肢別で回す」を参照してください。

まとめ

  • 組物の意匠は、同時に使用される二以上の物品・建築物・画像であって経済産業省令で定めるものを構成する意匠が、組物全体として統一があるとき、一意匠として登録できる制度(8条)
  • 組物は意匠法施行規則の別表の43に限られる。建築物を含む組物は「一組の建築物」、画像だけの組物は「一組の画像セット」
  • 審査基準の要件は、別表の組物に該当、同時に使用される二以上の物品等(一連の使用の範囲内でよい)、組物全体としての統一
  • 令和元年改正(令和2年4月1日施行)で組物の部分意匠が可能に。全ての構成物品等に意匠登録を受けようとする部分があり、統一があることが必要
  • 8条の違反は拒絶理由だが無効理由ではない。登録要件は組物全体で判断する
  • 内装の意匠(8条の2)とは、別表の限定の有無、統一の要件、図面上の要件が違う。組物の要件を満たす出願を内装に変える補正は要旨の変更
意匠の論点を、そのまま問題で確かめる

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