意匠法の関連意匠まとめ|10条の要件と改正を短答用に整理
弁理士試験短答式の意匠法10条・関連意匠のまとめ。本意匠の出願日から10年を経過する日前という出願期間、関連意匠にのみ類似する意匠、基礎意匠の出願日から25年の存続期間、分離移転の禁止、令和元年改正の変更点を整理します。
関連意匠は、短答式の意匠10問の中で、意匠法にしかない制度として繰り返し問われる論点です。しかも令和元年の意匠法改正で、出願できる期間、関連意匠にのみ類似する意匠の扱い、存続期間の数え方がまとめて変わりました。改正前の知識のまま枝を読むと、正しい枝を誤りと判断してしまいます。
結論から言うと、関連意匠の枝は「起算点はどの意匠の出願日か」「どの時点で判断するか」「権利はひとまとまりで動くか」の3点で読むと整理できます。出願期間は本意匠(連鎖した場合は基礎意匠)の出願日から10年を経過する日前まで、存続期間は基礎意匠の出願日から25年、移転と専用実施権は基礎意匠とすべての関連意匠をひとまとまりとして扱う、というのが骨格です。
この記事では、9条との関係、10条の項ごとの内容、令和元年改正で変わった点、権利になった後のルール、本意匠が消滅したときの扱い、短答で狙われる型の順に整理します。条文はe-Gov法令検索の意匠法原文で確認しています。意匠法全体の中での位置付けは「意匠法の短答対策」で扱っています。
関連意匠とは何か
関連意匠の意味は、先願の規定から入ると分かりやすくなります。9条1項は、同一または類似の意匠について異なった日に二以上の意匠登録出願があったときは、最先の意匠登録出願人のみが意匠登録を受けることができると定めます。同日の出願は、9条2項により協議で定めた一の出願人のみが登録を受けられ、協議が成立しないときはいずれも登録を受けられません。

この規定は出願人が同じでも働きます。つまり、自分で出した意匠に類似する意匠を後から出願しても、原則として9条で拒絶されます。デザインのバリエーションを守りたい出願人にとっては不便です。
そこで10条1項は、意匠登録出願人が、自己の意匠登録出願に係る意匠または自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠を「本意匠」とし、これに類似する意匠を「関連意匠」として、一定の期間内に限り、9条1項または2項の規定にかかわらず意匠登録を受けられるとしました。要件を分解すると次のとおりです。
| 要件 | 条文上の表現 |
|---|---|
| 本意匠が自己のものであること | 自己の意匠登録出願に係る意匠または自己の登録意匠 |
| 本意匠に類似すること | 本意匠に類似する意匠 |
| 出願日の下限 | 本意匠の意匠登録出願の日以後 |
| 出願日の上限 | 本意匠の意匠登録出願の日から十年を経過する日前 |
本意匠は、登録意匠だけでなく出願中の意匠でも選べます。また関連意匠の出願日は「本意匠の出願日以後」なので、本意匠と同日の出願は認められ、本意匠より前の日の出願は認められません。優先権の主張を伴う関連意匠の出願については、1項の括弧書きにより、パリ条約上の最初の出願の日などで判断します。
10条を項ごとに整理する
10条は8項まであり、項ごとに役割がはっきり分かれています。枝を読んだときに、どの項の話かを即座に当てられるようにします。
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 1項 | 関連意匠の登録要件と期間。ただし書で本意匠が消滅等しているときは登録不可 |
| 2項 | 自己の公知意匠のうち本意匠と同一または類似のものは、3条の適用上公知でないとみなす |
| 3項 | 3条の2ただし書の読み替え(秘密意匠の場合の公報の扱い) |
| 4項 | 関連意匠にのみ類似する意匠も、その関連意匠を本意匠とみなして登録可 |
| 5項 | 4項の場合、10年の起算点を最初に選択した一の意匠の出願日とする |
| 6項 | 本意匠に専用実施権が設定されているときは関連意匠の登録不可 |
| 7項 | 基礎意匠に係る関連意匠同士には9条1項・2項を適用しない |
| 8項 | 自己の公知意匠のうち基礎意匠に係る関連意匠と同一または類似のものも、3条の適用上公知でないとみなす |
1項ただし書は「設定の登録の際」で判断する
1項ただし書は、関連意匠の意匠権の設定の登録の際に、本意匠の意匠権が44条4項の規定により消滅しているとき、無効にすべき旨の審決が確定しているとき、または放棄されているときは、関連意匠の登録を受けられないとします。44条4項は、登録料を追納できる期間内に登録料と割増登録料を納付しないときに、意匠権が遡って消滅したものとみなす規定です。判断の時点が関連意匠の「出願時」ではなく「設定の登録の際」である点が枝になります。

2項と8項は自己の公知意匠の救済
関連意匠は、本意匠の意匠公報が発行された後や、本意匠を使った製品を販売した後に出願されることがあります。そのままでは、自分の公報や製品によって関連意匠の新規性(3条1項)や創作非容易性(3条2項)が否定されかねません。2項は、3条1項1号または2号に該当するに至った自己の意匠のうち、本意匠と同一または類似のものは、関連意匠についての3条1項・2項の適用上、該当するに至らなかったものとみなします。

8項は同じ救済を、本意匠だけでなく基礎意匠に係る関連意匠と同一または類似の自己の意匠に広げます。ただし、その関連意匠の出願が放棄・取下げ・却下された場合や拒絶の査定・審決が確定した場合、その意匠権が44条4項で消滅した場合、無効審決が確定した場合、放棄された場合は除かれます。救済されるのは「自己の」意匠だけで、他人の意匠が公知になっていれば通常どおり3条が働きます。
3項は秘密意匠との組合せ
3条の2ただし書は、先願の出願人と同一の者が、先の出願が掲載された意匠公報の発行の日前に出願したときは、3条の2を適用しないとしています。3項はこのただし書を関連意匠について読み替え、先の意匠登録出願について14条1項の秘密にすることの請求をしたときは、20条4項により意匠の内容が掲載された意匠公報を基準にするとしています。秘密期間中は意匠の内容が公報に載らないため、その間に出願した関連意匠を3条の2で落とさないための規定です。
4項・5項は関連意匠の連鎖
4項は、関連意匠にのみ類似する意匠について、その関連意匠を本意匠とみなして1項により登録を受けられるとし、さらに段階的に連鎖する関連意匠にのみ類似する意匠も同様とします。5項は、この場合の1項の「当該本意匠」を「当該関連意匠に係る最初に選択した一の意匠」と読み替えます。
1項の条文は「その本意匠の意匠登録出願の日以後であつて、当該本意匠の意匠登録出願の日から十年を経過する日前」という形です。5項が読み替えるのは「当該本意匠」なので、10年の上限は最初に選択した一の意匠の出願日から数え、出願日の下限は直接の本意匠の出願日で見ると整理できます。7項の括弧書きは、この最初に選択した一の意匠を「基礎意匠」と定義しています。
6項と7項
6項は、本意匠の意匠権に専用実施権が設定されているときは、その本意匠に係る関連意匠は、1項・4項にかかわらず登録を受けられないとします。専用実施権者が本意匠を独占しているところに、意匠権者が類似範囲で別の権利を持つと、権利関係が重なってしまうためです。
7項は、関連意匠の出願が、基礎意匠に係る関連意匠にそれぞれ該当する二以上の意匠の出願であったときは、これらの意匠については9条1項・2項を適用しないとします。同じ基礎意匠から枝分かれした関連意匠同士が互いに類似していても、先願で落ちないということです。
令和元年改正で変わった点
関連意匠制度は、令和元年の意匠法改正で拡充され、令和2年4月1日に施行されました。特許庁の改正説明によれば、主な変更点は次のとおりです。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 出願できる期間 | 本意匠の意匠公報の発行前まで | 基礎意匠の出願から10年を経過する日前まで |
| 関連意匠にのみ類似する意匠 | 登録できない | 関連意匠として登録できる |
| 関連意匠を本意匠とする関連意匠 | 出願できない | 出願できる |
| 意匠権の存続期間 | 設定の登録の日から20年 | 出願の日から25年(関連意匠は基礎意匠の出願の日から) |
出典:特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」、特許庁「関連意匠制度の拡充に関するQ&A」
改正後は、本意匠の意匠公報が発行された後でも関連意匠を出願できます。そのぶん、自分の公報や製品が公知になった後の出願が増えるため、先に見た2項・8項の救済規定とあわせて読むことが欠かせません。改正前後の変更点が別々の条文に散っているのではなく、期間の拡大と救済規定が組になっていると理解すると覚えやすくなります。
また特許庁のQ&Aは、改正法の施行前に出願した意匠も本意匠として選択できるが、その場合も基礎意匠の出願から10年を経過する日前までに関連意匠を出願する必要があるとしています。
権利になった後のルール
登録された関連意匠の意匠権は、独立した意匠権として効力を持ちます。一方で、移転や専用実施権の設定、存続期間では、基礎意匠とその関連意匠をひとまとまりとして扱うルールが置かれています。
存続期間(21条)

21条1項は、意匠権(関連意匠の意匠権を除く)の存続期間は、意匠登録出願の日から25年をもって終了するとします。2項は、関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から25年をもって終了するとします。関連意匠を何年後に出願しても、満了日は基礎意匠と同じ日にそろいます。起算点は「関連意匠自身の出願日」でも「直接の本意匠の出願日」でもなく「基礎意匠の出願日」です。
移転(22条)
22条1項は、基礎意匠およびその関連意匠の意匠権は分離して移転することができないとします。2項は、基礎意匠の意匠権が44条4項により消滅したとき、無効審決が確定したとき、または放棄されたときも、その基礎意匠に係る関連意匠の意匠権は分離して移転することができないとします。基礎意匠がなくなっても、残った関連意匠同士はひとまとまりのままです。
専用実施権(27条)
27条1項は、意匠権者は専用実施権を設定できるとしたうえで、ただし書で、基礎意匠または関連意匠の意匠権についての専用実施権は、基礎意匠およびすべての関連意匠の意匠権について、同一の者に対して同時に設定する場合に限り設定できるとします。3項は、基礎意匠の意匠権が44条4項で消滅、無効審決の確定、放棄となったときは、関連意匠の意匠権についての専用実施権は、すべての関連意匠の意匠権について同一の者に対して同時に設定する場合に限り設定できるとします。
通常実施権には、このような制限の規定はありません。「関連意匠の意匠権について、本意匠と別の者に通常実施権を許諾できない」という枝は、専用実施権の規定を通常実施権に当てはめた誤りの型です。

本意匠が消滅したときの扱い
本意匠の意匠権が放棄や登録料の不納付で消滅しても、すでに登録された関連意匠の意匠権は消滅しません。関連意匠は独立した意匠権であり、存続期間は21条2項で定まるからです。本意匠が消滅した後の関連意匠は、22条2項と27条3項により、残った関連意匠同士のまとまりとして移転と専用実施権のルールに服します。

無効の場面も同じ考え方です。意匠登録無効審判は48条で請求でき、49条は無効審決が確定したときは意匠権は初めから存在しなかったものとみなすとします(後発的な無効理由である48条1項4号の場合は、その時から存在しなかったものとみなす)。本意匠が無効になっても関連意匠の登録が当然に無効になるわけではなく、関連意匠に無効理由があるかは別に判断します。48条3項により、無効審判は意匠権の消滅後でも請求できます。
未登録の関連意匠については、1項ただし書が効きます。関連意匠の設定の登録の際に本意匠の意匠権が消滅、無効審決の確定、放棄となっていれば、その関連意匠は登録を受けられません。
拒絶理由と無効理由の違いも押さえます。17条1号は拒絶理由として10条1項・4項・6項を挙げていますが、48条1項1号が無効理由として挙げるのは10条のうち6項だけです。
| 場面 | 条文 | 結論 |
|---|---|---|
| 登録済みの関連意匠がある中で本意匠が放棄 | 21条2項・22条2項 | 関連意匠は存続。分離移転はできない |
| 本意匠が消滅した後に関連意匠の設定の登録 | 10条1項ただし書 | 登録を受けられない |
| 本意匠に専用実施権が設定済み | 10条6項 | 関連意匠は登録を受けられない。拒絶理由かつ無効理由 |
| 本意匠の無効審決が確定 | 49条 | 本意匠は初めからなかったものとみなす。関連意匠は別に判断 |
短答で狙われる型
関連意匠の枝は、数字の入替えよりも「起算点」と「判断時点」の入替えで作られることが多い論点です。
起算点の入替え。10年の上限は本意匠(連鎖では基礎意匠)の出願日から、存続期間は基礎意匠の出願日から数えます。「関連意匠の出願日から25年」「本意匠の設定の登録の日から10年」は誤りの型です。
基礎意匠と本意匠の言い分け。連鎖した関連意匠では、直接の本意匠と基礎意匠が別の意匠になります。出願日の下限は直接の本意匠、10年の上限と25年の存続期間は基礎意匠で見ます。枝に出てくる「本意匠」がどちらを指しているかを必ず確かめます。
類似の連鎖。改正後は関連意匠にのみ類似する意匠も登録できます。「基礎意匠に類似しない意匠は、関連意匠として登録を受けることができない」という枝は、4項により誤りです。基礎意匠に類似しなくても、登録を受ける関連意匠に類似すれば、その関連意匠を本意匠とみなして登録を受けられます。逆に、自己の本意匠となりうる意匠のいずれにも類似しない意匠は関連意匠になりません。
判断時点。本意匠の消滅等による登録不可は「設定の登録の際」で判断します(1項ただし書)。出願時に本意匠が存続していたかだけで結論を出す枝に注意します。
秘密意匠との併用。本意匠を秘密意匠にしていても関連意匠の出願はできます。3条の2の関係では3項の読み替えにより、意匠の内容が掲載された公報を基準にします。秘密の請求自体の時期や期間は14条の論点なので、混ぜて出題されたら条文を切り分けて判断します。
分割・変更との組合せ。意匠登録出願の分割があったときは、新たな出願はもとの出願の時にしたものとみなされます(10条の2第2項)。特許出願などからの変更にも13条6項で準用されます。分割や変更で生まれた出願を関連意匠とする場合、出願日の判断はこの「みなし」を前提に考えます。
改正前の知識の枝。「関連意匠は本意匠の意匠公報の発行の日前に出願しなければならない」「関連意匠の関連意匠は登録を受けられない」は、改正前の制度に基づく枝です。現行法では誤りになります。
学習の進め方
関連意匠は、時系列の図を1枚作ると定着します。横軸に基礎意匠の出願日、本意匠の意匠公報の発行、10年を経過する日、25年の満了日を置き、その上に10条の各項を書き込みます。公報発行の後に出願した関連意匠には2項が効き、秘密意匠なら3項が効く、という位置関係が見えるようになります。
演習では、枝を読んだらまず「10条の何項の話か」を特定し、次に「起算点または判断時点がどこか」を確認します。関連意匠は10問のうち毎年必ず出るとは限りませんが、条文の構造が明確なので、一度整理すれば得点源になります。意匠法で落とさない得点を積むことが、法域別の足切りを避ける近道です。科目ごとの目標点の考え方は「短答式の合格基準と科目別足切りの攻略法」を参照してください。
過去問を解くときは、関連意匠の枝を改正前後で仕分けて記録します。施行前の年度の問題には、改正前の制度を前提にした枝が含まれているため、正解を今の条文で解き直す作業が必要です。枝ごとに記録を付ける方法は「短答式の過去問は肢別で回す」で整理しています。
まとめ
- 関連意匠は、自己の本意匠に類似する意匠を、9条1項・2項にかかわらず登録できる制度(10条1項)
- 出願できるのは本意匠の出願日以後、本意匠(連鎖では基礎意匠)の出願日から10年を経過する日前まで
- 関連意匠にのみ類似する意匠も登録でき(4項)、10年の起算点は最初に選択した一の意匠=基礎意匠の出願日(5項)
- 存続期間は基礎意匠の出願日から25年(21条2項)。移転は分離不可(22条)、専用実施権は全部を同一の者に同時に(27条1項ただし書)
- 本意匠が消滅しても登録済みの関連意匠は存続する。未登録の関連意匠は、設定の登録の際に本意匠が消滅等していれば登録不可(1項ただし書)
- 令和元年改正(令和2年4月1日施行)で、公報発行前までという期間制限と連鎖の禁止がなくなった。改正前の知識で作られた枝に注意する
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