著作権の保護期間|死後70年・公表後70年・翌年起算を短答用に整理
弁理士試験短答式の著作権の保護期間のまとめ。原則は著作者の死後70年(51条2項、平成30年改正で50年から延長)、無名・変名(52条)と団体名義(53条)・映画(54条)は公表後70年、翌年起算(57条)、継続的刊行物(56条)、著作者人格権の死後の保護、著作隣接権の70年と50年(101条)を条文で整理します。
著作権の保護期間は、短答式の著作権・不正競争防止法10問の中で、計算を伴う数少ない論点です。条文は51条から58条までの短い章ですが、著作物の種類によって起算点が死亡時・公表時・創作時と変わり、さらに翌年起算の特則が加わります。50年から70年に延びた改正の経緯も絡むため、古い記憶のまま枝を読むと誤ります。
結論から言うと、保護期間は「創作の時に始まり、原則として著作者の死後70年で終わる。著作者の死亡が基準にできない著作物(無名・変名、団体名義、映画)は公表後70年で、いずれも翌年の1月1日から数える」の一文に集約できます。著作者人格権は保護期間という考え方になじまず、著作者の死亡とともに消滅しますが、死後も一定の保護が残ります。著作隣接権は70年と50年が混在します。
この記事では、51条の原則、52条から54条の例外、56条と57条の起算の特則、保護期間の計算例、著作者人格権の死後の扱い、著作隣接権の保護期間、短答で狙われる型の順に整理します。条文はe-Gov法令検索の著作権法原文で確認しています。科目全体の優先順位は「著作権法・不正競争防止法の短答対策」で扱っています。
原則:創作の時に始まり、死後70年で終わる(51条)
51条1項は、著作権の存続期間は著作物の創作の時に始まると定めます。登録や公表は要件ではなく、創作と同時に発生する無方式主義(17条2項)と対応しています。
51条2項は、著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後70年を経過するまでの間存続すると定めます。共同著作物については、最終に死亡した著作者の死後70年です。
条文:著作権法51条・17条2項(e-Gov法令検索)

50年から70年への延長(平成30年改正)
死後70年という期間は、平成30年のTPP11整備法による改正で、それまでの死後50年から延長されたものです。平成30年12月30日に施行されました。延長は施行時に保護期間が続いていた著作物に適用され、施行前にすでに保護期間が満了していた著作物は復活しません。

短答では、「著作権の存続期間は著作者の死後50年」という枝が改正前の知識を突くものとして、また「映画の著作物の保護期間は平成30年改正で70年になった」という枝が後述の54条の経緯を取り違えさせるものとして出ます。
例外:公表後70年になる3つの著作物
著作者の死亡時が分からない、あるいは死亡という概念がない著作物については、公表の時を基準にします。
| 条文 | 著作物 | 保護期間 | 公表されない場合 |
|---|---|---|---|
| 52条1項 | 無名又は変名の著作物 | 公表後70年 | 死後70年の経過が明らかなときはその時まで |
| 53条1項 | 団体名義の著作物 | 公表後70年 | 創作後70年以内に公表されなければ創作後70年 |
| 54条1項 | 映画の著作物 | 公表後70年 | 創作後70年以内に公表されなければ創作後70年 |
条文:著作権法52条〜54条(e-Gov法令検索)
無名・変名の著作物(52条)
著作者名が表示されていない著作物や、ペンネームで公表された著作物は、著作者が誰か分からず死亡時を基準にできません。そこで公表後70年とされています。ただし、公表後70年の経過前に著作者の死後70年が経過したと認められるときは、死後70年の時点で消滅したものとされます。

52条2項は、次の場合には1項を適用せず、原則(51条2項)に戻すと定めています。
- 変名が著作者のものとして周知のものである場合
- 公表後70年以内に実名の登録(75条1項)があった場合
- 著作者が公表後70年以内に実名又は周知の変名を著作者名として表示して公表した場合
いずれも著作者が特定できるようになった場合です。実名登録の制度は、変名で公表した著作者が死後70年の保護を確保するための手段と位置づけられます。
団体名義の著作物(53条)
法人その他の団体が著作の名義を有する著作物は、公表後70年です。創作後70年以内に公表されなければ、創作後70年で終わります。53条2項により、公表後70年以内に著作者である個人が実名又は周知の変名を表示して公表したときは、原則に戻ります。
53条3項は、職務著作(15条2項)により法人等が著作者となるプログラムの著作物について、公表の名義がなくても団体名義の著作物とみなして53条1項を適用すると定めています。プログラムの職務著作は法人名義の公表が要件になっていないため、この読替えが必要になります。職務著作の要件は「職務著作(15条)」で整理しています。
映画の著作物(54条)
映画の著作物は、公表後70年です。創作後70年以内に公表されなければ創作後70年で終わります。映画は多数の関与者がいて著作者の死亡を基準にしにくく、また29条で著作権が映画製作者に帰属することとも対応しています。
映画については、平成15年改正で先に50年から70年に延長されていました。平成30年改正で延びたのは映画以外の著作物です。54条2項は、映画の著作権が存続期間の満了で消滅したときは、その映画の利用に関しては原著作物(原作小説や脚本など)の著作権も消滅したものとすると定めます。54条3項は、映画の著作物には51条2項・52条・53条を適用しないとして、無名・変名や団体名義の規定との重複を避けています。
起算の特則:継続的刊行物と翌年起算
継続的刊行物(56条)
公表時を基準にする著作物のうち、分けて公表されるものについて、56条が「公表の時」を定めています。
| 著作物の形 | 公表の時 |
|---|---|
| 冊、号又は回を追って公表する著作物(雑誌の連載など) | 毎冊、毎号又は毎回の公表の時 |
| 一部分ずつ逐次公表して完成する著作物(分冊の長編など) | 最終部分の公表の時 |
後者について、継続すべき部分が直近の公表の時から3年を経過しても公表されないときは、すでに公表された最終の部分をもって最終部分とみなします(56条2項)。
翌年起算(57条)
57条は、死後70年・公表後70年・創作後70年の期間を計算するときは、著作者が死亡した日、著作物が公表された日又は創作された日のそれぞれ属する年の翌年から起算すると定めます。保護期間の終期は常に12月31日になり、日付の特定が難しい昔の著作物でも年単位で管理できます。
条文:著作権法56条・57条(e-Gov法令検索)

計算例
| 事例 | 計算 | 消滅の時 |
|---|---|---|
| 著作者が令和8年3月に死亡した小説 | 翌年の令和9年1月1日から70年 | 70年目の12月31日の終了時 |
| 令和8年に公表された団体名義の報告書 | 翌年の令和9年1月1日から70年 | 70年目の12月31日の終了時 |
| 令和8年に完成した映画が公表されないまま経過 | 創作の翌年から70年 | 70年目の12月31日の終了時 |
死亡した月や日がいつであっても、起算は翌年1月1日からで、終期は同じ年の末日になります。短答で「死亡した日の翌日から起算する」という枝が出れば誤りです。
外国の著作物の期間(58条)
ベルヌ条約やWTO協定により保護を受ける外国の著作物で、本国における保護期間が日本の保護期間より短いものは、本国の期間だけ保護されます(58条)。相互主義の規定で、日本の方が長いときに短い方へそろえる仕組みです。なお、戦時中に連合国民が有していた著作権については、特別法により戦時期間に相当する年数を加算する扱いがあり、その対象となる著作物では上の計算より長く保護が続くことがあります。短答では「加算の制度がある」ことを知っていれば足ります。
著作者人格権は死亡で消滅するが、保護は残る
著作者人格権は著作者の一身に専属し、譲渡できません(59条)。保護期間の規定(51条以下)は著作権の存続期間を定めるもので、著作者人格権には適用がありません。著作者が死亡すれば、権利としての著作者人格権は消滅します。

ただし60条は、著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、著作者が存しなくなった後でも、著作者が存しているとしたならば著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならないと定めます。行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでないというただし書が付いています。
この60条違反に対しては、116条により遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹)が、差止請求(112条)や名誉回復等の措置の請求(115条)をすることができます。著作者は遺言で、遺族に代えて請求できる者を指定できます(116条3項)。遺族による請求は、著作者の死亡の日の属する年の翌年から起算して70年を経過した後はできませんが、その時に遺族が存する場合はその者が存しなくなるまで請求できます。
| 項目 | 著作権 | 著作者人格権 |
|---|---|---|
| 存続期間 | 原則死後70年(51条2項) | 著作者の生存中(一身専属、59条) |
| 死後 | 相続人に承継され、期間満了まで存続 | 消滅するが、60条で侵害となるべき行為が禁止 |
| 死後の請求権者 | 相続人 | 遺族(116条)。遺言で指定も可 |
条文:著作権法59条・60条・116条(e-Gov法令検索)
著作者人格権の中身は「著作者人格権の3つの権利」で整理しています。
著作隣接権の保護期間(101条)
実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者の権利は、著作権とは別に101条で期間が定められています。
| 権利 | 始期(101条1項) | 終期(101条2項) |
|---|---|---|
| 実演 | 実演を行った時 | 実演が行われた日の属する年の翌年から70年 |
| レコード | 音を最初に固定した時 | 発行が行われた日の属する年の翌年から70年(固定後70年以内に発行されなければ固定の翌年から70年) |
| 放送 | 放送を行った時 | 放送が行われた日の属する年の翌年から50年 |
| 有線放送 | 有線放送を行った時 | 有線放送が行われた日の属する年の翌年から50年 |
条文:著作権法101条(e-Gov法令検索)
実演とレコードは平成30年改正で50年から70年になりましたが、放送と有線放送は50年のままです。「著作隣接権の保護期間はすべて70年」という枝は誤りです。また、レコードの終期は固定時ではなく発行時が基準で、実演は実演時が基準という違いも押さえておきます。
短答の枝ではこう問われる
本試験と同じ形の枝を、条文から書き起こしました(過去問そのものではありません)。

例題 著作権の保護期間に関し、正しいものはどれか。
- イ 著作権の存続期間は、著作物の公表の時に始まる。
- ロ 共同著作物の著作権は、最初に死亡した著作者の死後70年を経過するまでの間、存続する。
- ハ 変名の著作物であっても、その変名が著作者のものとして周知のものであるときは、その著作権は著作者の死後70年を経過するまでの間、存続する。
- ニ 映画の著作物の著作権の存続期間は、著作者の死後70年である。
- ホ 著作者の死後70年の期間は、著作者が死亡した日の翌日から起算する。
正解はハです(52条2項1号)。イは創作の時に始まる(51条1項)ので誤り。ロは最終に死亡した著作者の死後70年(51条2項括弧書)なので誤り。ニは映画が公表後70年(54条1項)なので誤り。ホは死亡した日の属する年の翌年から起算する(57条)ので誤りです。
型としては次の4つが繰り返し使われます。
基準時の入替え。死亡時・公表時・創作時のどれが基準かを著作物の種類ごとに入れ替えます。無名・変名、団体名義、映画は公表時です。
改正の年と対象の入替え。映画は平成15年改正、それ以外は平成30年改正で70年になりました。
起算日の入替え。翌日起算と翌年起算の違いです。著作権法は57条・101条2項のいずれも翌年起算です。
隣接権の70年と50年。実演・レコードは70年、放送・有線放送は50年です。
学習の進め方
保護期間は、条文の数が少ないので51条から58条までを一度通して読み、著作物の種類と基準時を1枚の表にまとめます。そのうえで、57条の翌年起算を具体的な年を使って計算してみると、枝の数字の読み方が安定します。
次に、著作者人格権(59条・60条・116条)と著作隣接権(101条)を同じ表に書き足します。「著作権」と書かれた枝なのか「著作者人格権」「著作隣接権」なのかを読み分けるだけで、正誤が決まる枝は少なくありません。権利制限と並べて出題されることも多いので、「権利制限規定の一覧」もあわせて確認してください。
まとめ
- 著作権は創作の時に始まり(51条1項)、原則として著作者の死後70年(51条2項)。共同著作物は最終に死亡した著作者が基準
- 平成30年改正(TPP11整備法)で50年から70年に延長。映画は平成15年改正で先に70年
- 無名・変名(52条)、団体名義(53条)、映画(54条)は公表後70年。公表されなければ創作後70年(52条は死後70年の経過が明らかな時)
- 変名が周知、実名登録、実名表示での公表があれば原則に戻る(52条2項)
- 期間の計算は死亡・公表・創作の属する年の翌年から起算(57条)。終期は12月31日
- 著作者人格権は一身専属で死亡により消滅するが、60条で侵害となるべき行為が禁止され、遺族が116条で請求できる
- 著作隣接権は実演・レコードが70年、放送・有線放送が50年(101条2項)。いずれも翌年起算
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