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弁理士の口述試験とは|形式・合格基準・過去の出題テーマと対策

試験情報 読了 約10分

弁理士の口述試験は、特許・実用新案、意匠、商標の3科目を各10分程度の面接で問われ、C評価が2科目以上なら不合格です。令和7年度の口述合格率91.3%の計算根拠、令和5〜7年度の出題テーマ、定義・要件・比較・趣旨の4つの型と、論文合格発表からの1か月の準備法を特許庁の公表資料で整理します。

弁理士試験の最後の関門が口述試験です。論文式筆記試験に合格した人が、10月に東京で、試験委員と向き合って口頭で答えます。

結論から言うと、口述試験は「落とすための試験」ではなく、「論文式で確認した理解を、その場で口に出して説明できるか」を確かめる試験です。令和7年度の口述合格率は91.3%で、受験者の大半が最終合格しています。ただし残りの1割弱は不合格になっています。書く試験では答えられた人でも、その場で「要件を順に言う」「趣旨を短く説明する」ことに慣れていないと、口述では言葉に詰まります。この記事では、特許庁の公表資料で確認できる形式と合格基準、合格率の計算根拠、過去の出題テーマから見える問われ方の型、準備の進め方を整理します。

口述試験の形式

口述試験の実施方法。試験室を移動し、1科目10分程度、A・B・Cで評価される
口述試験の実施方法。試験室を移動し、1科目10分程度、A・B・Cで評価される

口述試験は、弁理士法10条3項により、筆記試験に合格した人について工業所有権に関する法令について行うとされています。特許庁の案内と、工業所有権審議会の「弁理士試験の具体的実施方法について」に書かれている形式をまとめると次のとおりです。

項目 内容
試験科目 特許・実用新案、意匠、商標に関する法令(3科目)
出題範囲 工業所有権に関する条約の規定を含む(工業所有権法令の範囲内で条約の解釈・判断を考査)
試験方法 面接方式。受験者1名ごとに試問し、受験者が各科目の試験室を順次移動する
試験時間 各科目とも最大10分程度を目安。問題数は自由
試験委員 各科目2名。採点は試験室ごとに行う
法文 試験室に用意された法文を、試験委員の許可を受けて参照できる
受験地 東京
公表 出題に係るテーマを試験後に公表。解答は公表しない

出典:弁理士法10条3項(e-Gov法令検索)、特許庁「弁理士試験の案内」、工業所有権審議会「弁理士試験の具体的実施方法について」(令和6年4月18日改正)、特許庁「令和8年度弁理士試験受験案内」

実施方法の文書は、口述試験の目的を「論文式筆記試験で確認された総合的思考力等に基づく口述による説明力を問う」ものとしています。新しい知識を試すのではなく、論文式で書けた内容を口頭で説明できるかを見る、という位置づけです。

「問題数は自由」という点は重要です。1科目で何問聞かれるかは決まっておらず、10分程度の中で答えの進み方によって質問の数が変わり得ます。1問に長く詰まると、その分だけ他の質問に答えて挽回する時間も減ります。

短答式・論文式との違い

同じ四法を扱っていても、3つの試験では問われ方と「失点の仕方」が違います。

短答式はマーク、論文式は書く、口述はその場で話す
短答式はマーク、論文式は書く、口述はその場で話す
項目 短答式 論文式(必須科目) 口述試験
答え方 枝イ〜ホの正誤を判断してマーク 事例に条文を当てはめて書く 試験委員の質問に口頭で答える
時間 60問を3時間30分 特実2時間、意匠・商標各1時間30分 1科目10分程度
法文 なし 貸与される 許可を受けて参照できる
評価 正答数 標準偏差で調整した得点 A・B・Cの3段階
考え直す時間 見直しができる 答案構成で組み立てられる ほぼない。その場で答える

出典:特許庁「弁理士試験の案内」、工業所有権審議会「弁理士試験の具体的実施方法について」

口述で特有なのは最後の行です。短答式なら迷った枝に戻れ、論文式なら答案構成の段階で論点を並べ替えられますが、口述は質問を聞いた数秒後に話し始めなければなりません。知識の量より、知識を取り出す速さと順序が評価に直結します。

合格基準と口述合格率

A・B・Cのゾーン方式

口述試験には科目別の配点がなく、採点基準はA・B・Cの3段階です。

口述試験の評価はA・B・Cの3段階で、C評価が2科目以上あると不合格
口述試験の評価はA・B・Cの3段階で、C評価が2科目以上あると不合格
評価 基準
A 答えが良くできている場合
B 答えが普通にできている場合
C 答えが不十分である場合

合格基準はC評価の科目が2科目以上ないことです。3科目のうち1科目がCでも、残り2科目がAかBなら合格です。逆に、2科目でCを取るとその時点で不合格になります。

出典:特許庁「弁理士試験の案内」、工業所有権審議会「弁理士試験の具体的実施方法について」

令和7年度の口述合格率91.3%の計算根拠

令和7年度の口述試験の結果。受験者218人、口述合格率91.3%
令和7年度の口述試験の結果。受験者218人、口述合格率91.3%

特許庁の最終合格者統計には「口述合格率91.3%」と記載されています。この数字は次の計算と一致します。

項目 人数 資料
口述試験の受験者 218人(受験率99.5%) 口述試験受験者統計
最終合格者 205人 最終合格者統計
うち工業所有権法免除者(口述を受けない) 6人 最終合格者統計
口述試験の合格者(205−6) 199人 上の2行から計算
口述合格率(199÷218) 91.3% 最終合格者統計の記載と一致

出典:特許庁「令和7年度弁理士試験口述試験受験者統計」「令和7年度弁理士試験最終合格者統計」

最終合格者から工業所有権法免除者を引くのは、特許庁で審判または審査の事務に5年以上従事した人は、申請により口述試験も免除されるためです(弁理士法11条5号、令和8年度受験案内)。同じ計算で、令和6年度の口述合格率は91.7%です(最終合格者統計の前年度欄)。

218人のうち19人が口述で合格に届かなかった計算です。論文式を突破した人でも、準備なしに通れる試験ではないことが分かります。

口述で不合格になっても論文式からやり直しではない

令和7年度の口述受験者218人の内訳には、「筆記試験免除者」15人が含まれています。論文式の必須科目に合格すると、合格発表の日から2年間は必須科目が免除され(弁理士法11条2号)、選択科目は合格すれば以後免除されます(同条3号)。そのため、口述で不合格になった人は、翌年と翌々年は筆記試験を受けずに口述試験から受け直せます。

論文式の必須科目は合格発表から2年間免除されるので、口述で不合格でも翌年は口述から受け直せる
論文式の必須科目は合格発表から2年間免除されるので、口述で不合格でも翌年は口述から受け直せる

出典:特許庁「令和7年度弁理士試験口述試験受験者統計」、弁理士法11条(e-Gov法令検索)

ただし必須科目の免除は2年で切れます。口述に2回続けて届かないと、論文式の必須科目から受け直しになります。

日程と当日の流れ

令和8年度の口述試験は、令和8年10月17日(土)から10月19日(月)のいずれかの日に東京で行われ、具体的な日時は受験者に別途通知されます。最終合格発表は令和8年11月9日の予定です(令和8年度弁理士試験受験案内)。論文式の合格発表(令和8年度は9月18日)から口述試験までは、約1か月です。

口述試験の当日は特許・実用新案、意匠、商標の試験室を順に回り、各室で試験委員2名から10分程度の試問を受ける
口述試験の当日は特許・実用新案、意匠、商標の試験室を順に回り、各室で試験委員2名から10分程度の試問を受ける

当日について公表されている流れは次のとおりです。

  1. 通知された日時に試験会場へ行く
  2. 特許・実用新案、意匠、商標の各試験室を順に回る
  3. 各試験室で、2名の試験委員から10分程度の試問を受ける。法文は試験委員の許可を受けて参照できる
  4. 評価は試験室ごとに付けられる

試験室の回る順番や待機の方法などの細部は、受験者への通知と当日の案内に従います。この記事で確認できるのは、特許庁が公表している上の範囲までです。

過去の出題テーマ(令和5〜7年度)

特許庁は口述試験の終了後、試験日ごと・科目ごとの「問題テーマ」を公表しています。直近3年度は次のとおりです。

年度・試験日 特許・実用新案 意匠 商標
令和7年度 1日目 外国語書面出願 意匠公報・秘密意匠制度・先使用・建築物の意匠 設定の登録前の金銭的請求権
令和7年度 2日目 差止請求、損害賠償請求 国際登録に係る意匠の実施と補償金請求権 地域団体商標等
令和6年度 1日目 方法の発明の効力等 関連意匠制度 色彩のみからなる商標
令和6年度 2日目 代理権・手続の補正 一意匠、組物の意匠、内装の意匠 商標法第52条の2の審判
令和5年度 1日目 明細書等の補正 意匠に係る物品、意匠権の効力、意匠の登録要件 商標の保護
令和5年度 2日目 訂正審判と訂正の請求 意匠の公示、他の権利との関係 不使用取消審判

出典:特許庁「令和7年度弁理士試験口述試験問題テーマの公表」「令和6年度弁理士試験口述試験問題テーマの公表」「令和5年度弁理士試験口述試験問題テーマの公表」

この表から読み取れることは3つあります。

1つ目は、試験日によってテーマが違うことです。同じ年度でも、1日目と2日目で聞かれる制度が変わります。「今年は○○が出た」という情報を追っても、自分の受験日のテーマは分かりません。

2つ目は、テーマは制度単位で、範囲が広くないことです。「関連意匠制度」「不使用取消審判」のように1つの制度を10分かけて掘り下げる形なので、その制度の定義・要件・効果・手続を一通り言える必要があります。

3つ目は、論文式や短答式でおなじみの制度が中心だということです。補正、訂正、侵害への救済、関連意匠、秘密意匠、不使用取消など、どれも基本書の中心にある制度です。口述のための特別な範囲はないと考えてよいでしょう。

テーマから準備の範囲を決める

テーマの並びを見ると、科目ごとに準備すべき制度の輪郭が見えてきます。

  • 特許・実用新案:出願の手続(補正、外国語書面出願、代理権)、権利の効力(方法の発明の効力)、権利行使(差止請求・損害賠償請求)、審判(訂正審判と訂正の請求)
  • 意匠:保護対象(意匠に係る物品、建築物の意匠、一意匠・組物・内装)、意匠独自の制度(関連意匠、秘密意匠)、国際登録(ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく国際登録)
  • 商標:保護対象(色彩のみからなる商標)、登録前の保護(設定の登録前の金銭的請求権)、取消審判(不使用取消審判、52条の2の審判)、地域団体商標

意匠の「国際登録に係る意匠」のように条約と国内法が重なるテーマも出ています。口述の出題範囲に条約の規定が含まれるとされているとおりで、四法の条文のうち条約を受けた規定も準備の対象です。

過去のテーマは「過去の試験問題」のページに平成14年度分から掲載されています。論文式の問題・論点と同じページにあるので、使い方は「論文式の過去問の使い方」もあわせて参照してください。

よく問われる4つの型

公表されるのはテーマだけで、実際の質問文と解答は公表されません。ただ、テーマの性格から、質問はおおむね次の4つの型に分けて準備できます。

口述の質問は定義型・要件型・比較型・趣旨型の4つに分けて準備できる
口述の質問は定義型・要件型・比較型・趣旨型の4つに分けて準備できる
型 質問の形 答えの骨格 例(根拠条文)
定義型 「○○とは何ですか」 条文の定義をそのまま言う 意匠の定義(意匠法2条1項)
要件型 「○○の要件を挙げてください」 要件を条文の順に番号を付けて言う 間接侵害(特許法101条各号)
比較型 「○○と△△の違いは」 違いの軸を先に言い、軸ごとに対比する 専用実施権と通常実施権(特許法77条・78条)
趣旨型 「なぜ○○が必要なのですか」 制度がない場合の不都合→制度の役割 実用新案技術評価書の提示(実用新案法29条の2)

根拠条文:意匠法2条1項、特許法77条・78条・101条、実用新案法29条の2(e-Gov法令検索)

たとえば定義型で「意匠とは何ですか」と聞かれたら、意匠法2条1項のとおり、物品(物品の部分を含む)の形状・模様・色彩またはこれらの結合、建築物の形状等または一定の画像であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの、と答えます。「建築物」「画像」を落とすと、そこを聞き返されやすくなります。

要件型は、要件の数を先に言うのがコツです。「3つあります。第一に…」と始めれば、途中で詰まっても試験委員は何が足りないかを把握でき、助け舟を出しやすくなります。

比較型は、いきなり片方の説明を始めずに、「権利の性質、登録の要否、第三者への対抗の3点で異なります」のように軸を先に示します。

趣旨型は、条文を丸暗記していても答えにくい型です。「無審査で登録されるので、権利の有効性が不確かなまま権利行使されると相手方に不測の損害を与える。そこで技術評価書の提示を権利行使の条件にしている」のように、不都合→手当ての2文で言えるよう準備します。

準備の進め方

1. 論文式の論点を「声に出す」形に作り直す

口述の範囲は論文式の必須科目と同じ3科目で、テーマも基本制度が中心です。新しい教材を増やすより、論文式のために作った論点のまとめを、上の4つの型の「質問と答え」の形に書き直す方が効率的です。1つの答えは声に出して30秒〜1分で言い切れる長さにそろえます。

2. 条文番号と要件を口で言う練習をする

口述では、答えの途中で「それは何条ですか」と聞かれることがあります。条文番号を覚えているかどうかは、書く試験より話す試験の方が露骨に出ます。条文の覚え方は「条文の覚え方」で扱っています。

3. 法文を引く練習をしておく

法文は試験委員の許可を受けて参照できます。ただし10分程度の中で条文を探す時間は長く取れません。「要件は覚えているが条文の文言を確認したい」という場面で素早く引けるよう、四法の目次構成(どの章に何があるか)を頭に入れておきます。

4. 人に聞いてもらう

口述で避けたいのは、知っているのに言葉が出てこない状態です。家族や受験仲間に質問を読み上げてもらい、制限時間を決めて答えるだけでも、本番の緊張にかなり慣れます。相手がいなければ、自分の答えを録音して聞き直し、要件の抜けと言いよどみを確認します。

5. 分からないときは黙らない

試験委員は受験者の説明力を見ています。答えが分からない質問が来たら、「その点は正確に覚えていませんが、趣旨から考えると…」と考え方を示すか、法文の参照を願い出ます。沈黙が続くのが最もC評価に近い状態です。

答えが分からない質問が来ても黙らず、趣旨から考え方を示すか法文の参照を願い出る
答えが分からない質問が来ても黙らず、趣旨から考え方を示すか法文の参照を願い出る

論文式の合格発表からの1か月の配分例

時期 やること
1週目 3科目の論点を4つの型の問答に書き直す。過去のテーマを制度ごとに並べる
2週目 特許・実用新案を中心に、声に出して1問1分で答える練習
3週目 意匠・商標の独自制度(関連意匠、秘密意匠、不使用取消など)を重点的に
4週目 人に質問してもらう模擬練習。詰まった問答だけを繰り返す

まとめ

  • 口述試験は特許・実用新案、意匠、商標の3科目を、各10分程度の面接で問われる
  • 評価はA・B・Cの3段階で、C評価が2科目以上なら不合格。法文は許可を受けて参照できる
  • 令和7年度の口述合格率は91.3%(口述合格199人÷口述受験者218人)
  • 口述で不合格でも、必須科目の免除(2年)があるので翌年は口述から受け直せる
  • テーマは試験日ごとに違い、補正・訂正・関連意匠・不使用取消など基本制度が中心
  • 定義・要件・比較・趣旨の4つの型で問答を作り、声に出して1分で答える練習をする

口述に進む前提となる論文式の合格基準は「論文式の合格基準」で、弁理士試験全体の合格率の推移は「弁理士試験の合格率と難易度」で確認できます。

読んだあとに、今日の1問を

過去問ベースの肢別演習で、読んだ内容をそのまま演習に移せます。

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