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商標の類否判断(4条1項11号)|外観・称呼・観念とコンセント制度

商標法 読了 約10分

弁理士試験短答式の商標法4条1項11号のまとめ。他人の先願登録商標との関係、外観・称呼・観念を総合し取引の実情を考慮する類否判断、結合商標の分離観察、商品・役務の類否と類似群コード、10号・15号・19号との違い、4条3項の判断時期、令和5年改正のコンセント制度(4条4項)を条文に沿って整理します。

商標法4条1項11号は、短答式の商標10問の中で最も安定して出題される登録要件です。条文は「他人の先願に係る登録商標と同一・類似の商標を、同一・類似の商品・役務に使用するもの」という1文ですが、「他人」「出願の日前」「登録商標」「類似」という言葉のそれぞれに論点があり、さらに令和5年の改正でコンセント制度(4条4項)が加わって、枝の作り方が増えました。

結論から言うと、11号の枝は「先願が登録済みか(未登録なら8条)」「他人か(自己なら適用なし)」「商標と商品・役務の両方が同一・類似か」「判断時期は査定時か(4条3項に11号は含まれない)」「承諾と混同のおそれなしの両方があればコンセントで登録できるか」の5点で読めば判断できます。類否判断の中身は、外観・称呼・観念を総合して取引の実情を考慮するという判例の枠組みを押さえれば、短答で問われる範囲は足ります。

この記事では、11号の要件を分解し、商標の類否判断の枠組み、結合商標の扱い、商品・役務の類否、他の号との比較、判断時期、コンセント制度、短答で狙われる型の順に整理します。条文はe-Gov法令検索の商標法原文で、類否判断の枠組みは最高裁判例と商標審査基準の考え方によっています。3条・4条全体の構造は「商標法3条・4条の登録要件まとめ」で扱っています。

11号の要件を分解する

4条1項11号は、「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」は商標登録を受けることができないと定めています。

4条1項11号に当たるかの判断手順
4条1項11号に当たるかの判断手順
要件 内容 外れる場合
先願 当該出願の日前の商標登録出願に係るもの 同日の出願同士は8条2項・5項(協議・くじ)の問題
登録商標 設定の登録を受けている商標 先願がまだ登録されていなければ8条1項の問題
他人 出願人以外の者の登録商標 自己の登録商標とは11号の関係にならない
商標の同一・類似 登録商標と同一か、これに類似する商標 非類似なら11号には当たらない
商品・役務の同一・類似 指定商品・役務と同一か、これに類似する商品・役務について使用 非類似なら11号には当たらない(15号の検討に移る)

条文:商標法4条1項11号、8条(e-Gov法令検索)

先願が登録済みか未登録かで条文が変わる

11号は「登録商標」を引用する規定です。先に出願された商標がまだ審査中で登録されていなければ、11号ではなく先願主義を定める8条で処理されます。8条1項は、同一または類似の商品・役務について使用する同一または類似の商標について異なった日に2以上の出願があったときは、最先の出願人のみがその商標について登録を受けることができるとします。同日の出願は協議、協議が調わなければくじです(8条2項・5項)。

短答では「先願の商標が登録される前に後願を審査するときも11号を適用する」という枝が作られます。登録前の先願との関係は8条で判断するので誤りです。実務では先願の登録を待って11号を適用することが多いのですが、条文上の根拠は分けて覚えます。

先願の商標が登録済みなら4条1項11号、まだ登録されていなければ8条で処理する
先願の商標が登録済みなら4条1項11号、まだ登録されていなければ8条で処理する

「他人」の登録商標

11号は他人の登録商標についての規定です。出願人自身が持つ登録商標と同一・類似の商標を、同一・類似の商品について出願しても、11号には当たりません。自己の登録商標と類似する商標は、商標権の禁止権の範囲(37条1号)に重なっていますが、同じ人が複数の登録を持つこと自体は妨げられません。

「他人」かどうかは査定時に判断されます。出願時には他人の登録商標でも、査定までにその商標権を譲り受けて自己のものにすれば、11号は適用されません。逆に、先願登録商標の商標権が査定前に消滅していれば(存続期間の満了、放棄、不使用取消審判による取消しなど)、引用できる登録商標がなくなるので11号は適用されません。不使用取消審判が「後願の障害になっている登録を除く手段」として使われるのはこのためで、仕組みは「商標法の不使用取消審判」で扱っています。

商標の類否判断の枠組み

外観・称呼・観念を総合し、取引の実情を考慮する

商標の類否は、条文に判断基準が書かれていません。基準を示したのは最高裁の判例(いわゆる氷山印事件)で、その考え方は商標審査基準にも取り込まれています。要点は次のとおりです。

商標の類否は外観・称呼・観念を総合し、取引の実情を考慮して出所の混同のおそれがあるかで決める
商標の類否は外観・称呼・観念を総合し、取引の実情を考慮して出所の混同のおそれがあるかで決める
  • 類否は、対比される商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるかどうかで決める
  • そのためには、商標の外観・観念・称呼などによって取引者・需要者に与える印象、記憶、連想などを総合して、全体的に考察する
  • その際、商品の取引の実情を明らかにできる限り、具体的な取引状況に基づいて判断する

外観・称呼・観念は、類否を判断するための3つの観察点です。審査基準は、このうち1つでも類似すれば原則として類似商標と判断する一方、他の点で著しく相違するなど、取引の実情を考慮して出所の混同を生ずるおそれがないと認められるときは非類似とする扱いをしています。「称呼が同じであれば常に類似する」「外観が異なれば常に非類似」のどちらも、総合判断の枠組みに反する言い方です。

観察点 見るもの 例
外観 文字・図形・色彩などの見た目 書体や図形の構成の近さ
称呼 商標から生ずる読み方・音 同じ音数で1音だけ違う語
観念 商標から想起される意味 同じ意味を表す和語と外来語

判断の主体は、その商品・役務の取引者と需要者が通常払う注意力です。専門家がじっくり見比べたときに区別できるかではなく、通常の取引の場面で混同するおそれがあるかを基準にします。

結合商標と分離観察

文字と図形、複数の語などを組み合わせた結合商標では、商標の一部だけを取り出して他の商標と対比してよいかが問題になります。最高裁の判例(リラ宝塚事件、つつみのおひなっこや事件)の考え方をまとめると、次のようになります。

結合商標は原則として全体を一体として観察し、一部を取り出して対比できる場合は限られている
結合商標は原則として全体を一体として観察し、一部を取り出して対比できる場合は限られている
  • 結合商標は、原則として全体を一体として観察して類否を判断する
  • ただし、商標の構成部分の一部が取引者・需要者に対して商品・役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼・観念が生じないと認められる場合などには、その一部を取り出して対比することが許される
  • 各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合している場合は、一部だけを抽出して対比することは許されない

短答では、判例の事件名や細かい事実関係よりも、「結合商標は常に全体観察」「結合商標は常に要部観察」のどちらも誤りで、分離して観察できる場合が限定されているという理解が問われます。

商品・役務の類否

区分は類否の基準ではない

商品・役務の類否も条文に基準はなく、判例(橘正宗事件)が、商品自体が取引上誤認混同のおそれのないものであっても、それらの商品に同一または類似の商標を使用するときは同一の営業主の製造販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にある場合には類似の商品に当たるとしています。商品そのものが似ているかではなく、同じ商標を付けたときに出所が混同されるかで決めます。

商品・役務の区分は類似の範囲を定めるものではなく、同じ区分でも非類似、違う区分でも類似のことがある
商品・役務の区分は類似の範囲を定めるものではなく、同じ区分でも非類似、違う区分でも類似のことがある

ここで注意するのが6条3項です。6条1項は商品・役務の区分を指定して出願することを求めていますが、同条3項は商品及び役務の区分は、商品又は役務の類似の範囲を定めるものではないと明記しています。同じ区分にある商品同士でも非類似のことがあり、異なる区分の商品同士でも類似することがあります。「同一の区分に属する商品は互いに類似する」という枝は、6条3項の文言そのものに反します。

類似群コードは審査の目安

審査では、特許庁が「類似商品・役務審査基準」で商品・役務ごとに類似群コードを付し、同じ類似群コードの商品・役務は原則として類似すると推定して審査しています。これは審査の運用上の目安であり、法律上の基準ではありません。類似群コードが異なっても、取引の実情から類似と判断されることはあり得ます。

条文:商標法6条(e-Gov法令検索)

10号・15号・19号との違い

11号は、他人の商標との抵触を扱う4条1項の規定群の1つです。隣り合う号と要件を並べると、11号の守備範囲がはっきりします。

他人の商標と抵触する4条1項の主な号
他人の商標と抵触する4条1項の主な号
号 引用する他人の商標 商品・役務の範囲 主観的要件 4条3項の適用
10号 需要者の間に広く認識されている商標(登録を問わない) 同一・類似 なし あり
11号 先願に係る登録商標 同一・類似 なし なし
15号 他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれがある商標(10号〜14号を除く) 非類似の商品・役務にも及ぶ なし あり
19号 日本国内または外国の需要者の間に広く認識されている商標(10号〜18号を除く) 限定なし 不正の目的 あり

条文:商標法4条1項10号・11号・15号・19号、4条3項(e-Gov法令検索)

11号が守るのは登録商標で、登録されていればその商標が周知かどうかは問いません。10号は登録の有無を問わず周知性を要求し、15号は商品・役務が非類似でも混同のおそれがあれば登録を拒み、19号は不正の目的を要件にして外国の周知商標まで広げています。11号の要件(登録・同一類似の商品役務)を満たさない場合に、15号で拒絶されることがあるという関係です。

無効審判の除斥期間も違います。47条1項は、4条1項11号に違反してされた商標登録の無効審判は、設定の登録の日から5年を経過した後は請求できないとしています。10号・15号も原則5年ですが、不正競争の目的で登録を受けた場合は除外されます。19号は47条に挙げられておらず、除斥期間はありません。

判断時期:11号は査定時(4条3項)

4条3項は、1項8号・10号・15号・17号・19号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定を適用しないと定めています。これらの号は、査定時に該当するだけでなく出願時にも該当していなければ拒絶されません。

4条1項11号は4条3項に挙げられていないので査定時を基準に判断し、出願時の該当は要しない
4条1項11号は4条3項に挙げられていないので査定時を基準に判断し、出願時の該当は要しない

11号はこの列挙に入っていません。したがって11号は、原則どおり査定時(審決時)を基準に判断します。出願時には引用できる登録商標がなくても、査定時までに先願が登録されていれば11号が適用されますし、逆に出願時には他人の登録商標があっても、査定時までに消滅・譲受けで引用できなくなれば適用されません。「11号は出願時と査定時の両方で該当することを要する」という枝は、4条3項の列挙に11号がないことを問うものです。

条文:商標法4条3項(e-Gov法令検索)

コンセント制度(4条4項、令和5年改正)

令和5年の改正(令和6年4月1日施行)で、4条4項が追加されました。11号に該当する商標であっても、その商標登録出願人が、先願登録商標の商標権者の承諾を得ており、かつ、その商標の使用をする商品・役務と先願登録商標の商標権者・使用権者の業務に係る商品・役務との間で混同を生ずるおそれがないものについては、11号を適用しないとする規定です。先願商標権者の同意(コンセント)があれば、類似する商標でも併存登録できる制度で、改正前は同意があっても11号で拒絶されていました。

先願商標権者の承諾と混同のおそれがないことの両方がそろえば、類似する商標でも11号の適用を外れる
先願商標権者の承諾と混同のおそれがないことの両方がそろえば、類似する商標でも11号の適用を外れる
要件 内容
承諾 先願登録商標の商標権者の承諾を得ていること
混同のおそれなし 出願商標の使用をする商品・役務と、先願登録商標の商標権者・専用使用権者・通常使用権者の業務に係る商品・役務との間で混同を生ずるおそれがないこと

条文:商標法4条4項(e-Gov法令検索)

2つの要件は両方必要です。承諾さえあれば登録されるわけではなく、審査官が混同のおそれがないと判断できることが求められます。「商標権者の承諾があれば11号は適用されない」とだけ書いた枝は、2つ目の要件を落としています。

併存登録後の手当ても同時に設けられました。24条の4は、コンセントで併存した商標の一方の商標権者等に対し、他方が混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求できるとし、52条の2は、一方が不正競争の目的で混同を生ずる使用をしたときに、何人も商標登録の取消審判を請求できるとしています。この52条の2は、改正前から併存が生じていた場面(商標権の分割移転など)についての取消審判に、コンセントの場面を加えたものです。

短答で狙われる型

第1の型:8条との振分け。先願がまだ登録されていない段階の後願の拒絶は8条、登録済みなら11号です。先願が登録される前に11号を適用する枝、同日出願の処理を11号に委ねる枝が作られます。

第2の型:「他人」の入替え。自己の登録商標と類似する商標の出願は11号に当たりません。査定時に自己のものになっていれば足ります。

第3の型:類否の枠組み。「称呼が同一なら必ず類似」「区分が同じなら商品は類似」はいずれも誤りで、前者は総合判断、後者は6条3項に反します。結合商標について「常に全体観察」「常に分離観察」とする枝も誤りです。

第4の型:判断時期。11号は4条3項に挙げられていないので、査定時に該当すれば拒絶され、出願時の該当は要しません。10号・15号・19号と入れ替えた枝が作られます。

第5の型:コンセントの要件。承諾と混同のおそれなしの両方が必要です。また、4条4項が外すのは11号だけで、15号など他の号の判断には影響しません。

第6の型:除斥期間。11号違反の無効審判は設定登録から5年の除斥期間があり(47条1項)、19号にはありません。

学習の進め方

11号は、まず条文を音読して「出願の日前」「他人の」「登録商標」「指定商品若しくは指定役務」「類似する商品若しくは役務」の5か所に線を引きます。次に8条と4条3項を続けて読み、「登録前は8条」「11号は査定時基準」の2点を確定させます。類否判断の枠組みは、判例の事件名を覚えるより、外観・称呼・観念の総合判断と取引の実情の考慮、結合商標の分離観察が限定的であること、6条3項の文言、の3つを言えるようにします。

最後に4条4項・24条の4・52条の2をセットで読み、コンセントの2要件と事後の手当てを表にします。令和5年改正は施行から日が浅く、新しい条文は枝にされやすいので、条文の文言そのものを確認しておきます。

商標権の効力が及ばない範囲(26条)と類否の関係は「商標法26条の効力が及ばない範囲」で、商標法全体の学習順序は「商標法の短答対策」で扱っています。

まとめ

  • 4条1項11号は、他人の先願に係る登録商標と同一・類似の商標を、同一・類似の商品・役務に使用するものを登録しない規定。先願が未登録なら8条で処理する
  • 商標の類否は、外観・称呼・観念を総合し、取引の実情を考慮して、出所の混同のおそれがあるかで判断する。結合商標は原則として全体観察で、分離観察が許される場合は限定されている
  • 商品・役務の類否は、同じ商標を付けたときに出所が混同されるかで判断する。区分は類似の範囲を定めるものではない(6条3項)
  • 11号は4条3項に含まれないので査定時基準。10号・15号・19号は出願時にも該当する必要がある
  • コンセント制度(4条4項)は、先願商標権者の承諾と混同のおそれがないことの両方を満たすと11号を適用しない。併存後は24条の4の混同防止表示請求と52条の2の取消審判がある
  • 11号違反の無効審判は設定登録から5年の除斥期間(47条1項)。19号には除斥期間がない

登録後に他人の周知商標との関係で問題になる先使用権は「商標法の先使用権(32条)」で扱っています。

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