地域団体商標とは|7条の2の主体・周知性と登録後の制限を整理
弁理士試験短答式の地域団体商標(商標法7条の2)を条文で整理。出願できる組合等の範囲、地域の名称+商品の普通名称という構成、周知性の程度、3条1項1号・2号との関係、譲渡禁止・専用使用権の不可・32条の2・46条1項7号・47条2項まで短答の型に沿ってまとめます。
地域団体商標は、「地域の名称+商品の名称」という、本来なら識別力がないとして登録できない商標を、一定の団体に限って登録させる制度です。条文は7条の2の4項だけですが、出願できる者、商標の形、周知性、登録後の権利の制限が別々の条文に散らばっているため、短答ではそれぞれを入れ替えた枝が作られます。
結論から言うと、地域団体商標の枝は「出願人は組合等(加入の自由が保障された組合・商工会・商工会議所・特定非営利活動法人と相当する外国法人)に限る」「地域の名称と普通名称等の文字のみからなる商標」「使用の結果、需要者の間に広く認識されている」「3条は外れるが1号・2号は外れない」「譲渡できず専用使用権も設定できない」の5点で判断できます。これに、登録後の無効理由(46条1項7号)と除斥期間の特則(47条2項)を加えれば、条文問題はほぼ網羅できます。
この記事では、7条の2を項ごとに読み、3条・4条との関係、登録後の扱い、団体商標(7条)との比較、短答で狙われる型の順に整理します。条文はe-Gov法令検索の商標法原文で確認しています。商標法全体の中での位置付けは「商標法の短答対策」で扱っています。
地域団体商標の趣旨
「地域の名称+商品の普通名称」という形の商標は、産地と商品名を普通に表示しているだけなので、3条1項3号(産地・品質等の表示)などに当たり、原則として登録できません。
例外は3条2項の使用による識別力ですが、3条2項は「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる」ほどの識別力を求めるので、特定の一事業者の商品として全国的に知られるまでは登録できません。複数の生産者が同じ名前を使っている地域ブランドでは、この要件を満たすのは困難です。
そこで7条の2は、地域の生産者をまとめる団体が出願し、その名前が一定の範囲で知られている場合には、3条にかかわらず登録を認めることにしました。制度は平成17年改正で設けられ、平成18年4月1日に施行されています(平成17年法律第56号附則1条)。
7条の2を項ごとに読む
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 1項柱書 | 組合等が、構成員に使用をさせる商標で1項各号のいずれかに当たるものについて、使用の結果、自己又は構成員の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、3条(1項1号・2号に係る場合を除く)にかかわらず登録を受けられる |
| 1項1号〜3号 | 地域の名称と商品・役務の普通名称(または慣用名称)などを普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標 |
| 2項 | 「地域の名称」の定義 |
| 3項 | 3条1項1号・2号の適用について「自己の」を「自己又はその構成員の」と読み替える |
| 4項 | 出願人が組合等であることを証明する書面と、地域の名称を含むことを証明するため必要な書類の提出 |
出願できる者(組合等)
1項柱書は、出願できる者を次のように限定し、まとめて「組合等」と呼んでいます。

- 事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合。ただし、法人格を有しないものを除き、かつ、その特別の法律に「正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない」旨の定めがあるものに限る
- 商工会
- 商工会議所
- 特定非営利活動促進法2条2項に規定する特定非営利活動法人
- これらに相当する外国の法人
加入の自由を求めるのは、地域の同業者が誰でも構成員になって商標を使えるようにし、一部の者による独占を防ぐためです。
商工会、商工会議所、特定非営利活動法人は、平成26年改正(平成26年法律第36号)で登録主体に加えられ、平成26年8月1日に施行されました。それまでは事業協同組合等の組合だけが出願できました。
出典:特許庁「平成26年特許法等の一部改正 産業財産権法の解説」第5章(特許庁「平成26年法律改正(平成26年法律第36号)解説書」ページ掲載、2014年12月26日更新)
逆に言えば、株式会社、一般社団法人、個人は出願できません。一般社団法人は7条の団体商標なら出願できるので、この違いが枝になります。
構成員に使用をさせる商標
1項柱書の対象は「その構成員に使用をさせる商標」です。組合等自身が使うことは排除されていませんが、構成員が使うことが前提の制度です。登録されると、構成員(地域団体構成員)は組合等の定めるところにより登録商標を使用する権利を持ちます(31条の2第1項)。
商標の構成(1項各号)
1項各号は、登録できる商標の形を3つに限っています。いずれも「文字のみからなる商標」です。
| 号 | 構成 | 例のイメージ |
|---|---|---|
| 1号 | 地域の名称+商品・役務の普通名称 | 「○○みかん」 |
| 2号 | 地域の名称+商品・役務を表示するものとして慣用されている名称 | 「○○焼」のような慣用名称 |
| 3号 | 1号・2号の文字+産地・提供の場所を表示する際に付される文字として慣用されている文字 | 「本場」「特産」などを加えたもの |
どの号も「普通に用いられる方法で表示する」ものに限られます。図形を組み合わせた商標や、特殊な書体で表した商標は各号に当たらないので、7条の2の対象外です。
地域の名称(2項)
2項は「地域の名称」を、自己または構成員が出願前から当該商標を使用している商品の産地、役務の提供の場所、その他これらに準ずる程度に商品・役務と密接な関連性を有すると認められる地域の名称またはその略称と定義しています。商品と無関係な地名を付けても地域団体商標にはなりません。4項で、地域の名称を含むことを証明するため必要な書類の提出が求められるのはこのためです。
周知性の要件
1項柱書は「その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとき」を要件にしています。

ポイントは3つです。1つ目は、使用の結果であること。2つ目は、組合等自身の業務だけでなく「構成員の業務に係る」商品・役務の表示として知られていればよいこと。3つ目は、周知の程度です。
周知の程度について、特許庁の商標審査基準は、全国的な需要者の間に認識されるに至っていなくても、商品・役務の種類や流通経路に応じた一定範囲の需要者に認識されている場合を含むとしています。たとえば比較的低価格で日常的に消費される商品であれば、地域が属する都道府県を越える程度の範囲、主に生産地で販売される商品や工芸品であれば、少なくとも一都道府県における多数の需要者の間に広く認識されていることを要するとしています。
出典:特許庁「商標審査基準〔改訂第17版〕」(令和8年4月1日施行)第7(第7条の2)6.
3条2項の使用による識別力よりも、求められる認識の範囲が狭くて足りる、というのが短答で押さえる骨格です。
3条・4条との関係
3条は外れるが、1項1号・2号は外れない
1項柱書は「第三条の規定(同条第一項第一号又は第二号に係る場合を除く。)にかかわらず」と書いています。7条の2が乗り越えられるのは、3条1項3号や6号などによる拒絶であって、普通名称(1号)と慣用商標(2号)は乗り越えられません。

地域の名称と商品名の組合せ全体が、その商品の普通名称として一般に使われている場合(地名が付いたまま普通名称化している場合)には、7条の2によっても登録できないということです。
3項は、この3条1項1号・2号の適用について「自己の」を「自己又はその構成員の」と読み替えます。構成員の商品について使用する商標であることを前提に判断する、という調整です。
4条1項は通常どおり適用される
7条の2は3条の例外であって、4条1項の不登録事由を外すものではありません。たとえば他人の先願登録商標と類似する場合(4条1項11号)や、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある場合(4条1項16号)には、周知性を満たしていても登録されません。
また、7条の2第1項の要件を満たさないこと自体が拒絶理由(15条1号)と無効理由(46条1項1号)に挙げられています。地域団体商標として出願した以上、7条の2の要件を欠けば登録されません。
出願の変更
11条は、通常の商標登録出願、団体商標の出願、地域団体商標の出願を相互に変更できることを定めています(1項〜3項)。変更は査定・審決の確定前に限られ(4項)、変更するともとの出願は取り下げたものとみなされます(5項)。変更の時期の制限と、もとの出願の取下げ擬制は、商標法の他の出願の変更(65条・12条)と同じ組み立てです。
登録後の扱い
地域団体商標は、地域の同業者が共同で使うための権利なので、通常の商標権とは違う制限がかかります。
譲渡できない(24条の2第4項)

24条の2第4項は「地域団体商標に係る商標権は、譲渡することができない」と定めています。同じ条の3項が公益事業の商標権について「移転することができない」と書くのに対し、4項の文言は「譲渡」です。団体商標(7条)の商標権は移転でき、移転されると原則として通常の商標権に変更されたものとみなされます(24条の3)。
専用使用権は設定できない(30条1項ただし書)
30条1項ただし書は、4条2項に規定する出願に係る商標権と並べて、地域団体商標に係る商標権には専用使用権を設定できないとしています。一方、通常使用権の許諾(31条)を禁じる規定はありません。
地域団体構成員の権利(31条の2)
地域団体構成員は、組合等の定めるところにより登録商標を使用する権利を持ちます(1項)。この権利は移転できません(2項)。また3項により、構成員は24条の4、29条、50条、52条の2、53条、73条の適用について通常使用権者とみなされます。構成員が使用していれば、50条の不使用取消審判で「通常使用権者の使用」として数えられるということです。不使用取消の要件は「商標法の不使用取消審判」で整理しています。
先使用権の特則(32条の2)
地域団体商標の出願前から、不正競争の目的でなく、同一・類似の商品・役務について同一・類似の商標を使用していた者は、継続して使用する場合、その商品・役務について使用する権利を持ちます(32条の2第1項)。

通常の先使用権(32条)は、出願の際に現にその商標が需要者の間に広く認識されていることを要件にしますが、32条の2には周知性の要件がありません。地域の名前を昔から使っていた構成員以外の事業者を保護するためです。商標権者は、先使用権者に混同を防ぐのに適当な表示を付すよう請求できます(2項)。32条との比較は「商標権の効力が及ばない範囲(26条)と先使用権」で扱っています。
後発的無効(46条1項7号)
46条1項7号は、地域団体商標の登録後に、次のいずれかになったことを無効理由にしています。
- 商標権者が組合等に該当しなくなったとき
- 登録商標が商標権者またはその構成員の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものでなくなっているとき
- 登録商標が7条の2第1項各号に該当するものでなくなっているとき
この号による無効審決が確定すると、商標権は該当するに至った時から存在しなかったものとみなされます(46条の2第1項ただし書)。
除斥期間の特則(47条2項)
無効審判の除斥期間(47条1項)は、3条違反などについて設定登録の日から5年です。ところが、7条の2第1項違反は47条1項に挙げられておらず、47条2項が別に定めています。

47条2項は、7条の2第1項違反の場合であって、周知でなかったことを理由とするものに限り、設定登録の日から5年を経過し、かつ、その登録商標が現に商標権者またはその構成員の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、無効審判を請求できないとしています。
5年の経過だけでは足りず、「現に周知である」ことが加わる点と、周知性以外の7条の2違反(たとえば出願人が組合等でなかった)には適用がない点が枝になります。
防護標章登録
64条3項は、地域団体商標に係る商標権についての防護標章登録について、64条1項・2項の「自己の」を「自己又はその構成員の」と読み替えます。地域団体商標も、要件を満たせば防護標章登録の基礎になります。制度の全体は「防護標章登録」で整理しています。
団体商標(7条)との比較
名前が似ているため、団体商標との入れ替えは定番です。
| 項目 | 団体商標(7条) | 地域団体商標(7条の2) |
|---|---|---|
| 出願人 | 一般社団法人その他の社団(法人格を有しないもの・会社を除く)、特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除く)、相当する外国の法人 | 加入の自由の定めがある組合、商工会、商工会議所、特定非営利活動法人、相当する外国の法人 |
| 商標の構成 | 制限なし | 地域の名称+普通名称等の文字のみ(1項各号) |
| 周知性 | 不要 | 必要(使用の結果、需要者の間に広く認識) |
| 3条との関係 | 3条が通常どおり適用(3条1項柱書の「自己の」を読み替え) | 3条1項1号・2号を除き、3条にかかわらず登録 |
| 移転 | できる(原則として通常の商標権に変更。24条の3) | 譲渡できない(24条の2第4項) |
| 専用使用権 | 設定できる | 設定できない(30条1項ただし書) |
短答で狙われる型
第1の型:出願人の入れ替え。「株式会社は地域団体商標の出願をすることができる」「一般社団法人は地域団体商標の出願をすることができる」はいずれも誤りです。逆に「商工会議所は出願できない」も誤りです。組合については、法人格があり、加入の自由の定めがあることまで条文どおりに言えるようにします。
第2の型:3条の除外範囲。「普通名称に当たる商標であっても、周知であれば7条の2により登録を受けられる」は誤りです。7条の2が外すのは3条のうち1項1号・2号以外の部分です。
第3の型:商標の構成。図形を含む商標、地域の名称を含まない商標は7条の2の対象外です。
第4の型:登録後の制限の入れ替え。譲渡できない、専用使用権を設定できない、団体商標は移転できる、の3点を入れ替えた枝が作られます。
第5の型:先使用権と除斥期間。32条の2には周知性の要件がないこと、47条2項は周知性を欠いた場合に限り、5年経過に加えて現に周知であることを要件にすることを、32条・47条1項と入れ替えて問います。
短答の枝ではこう問われる
本試験と同じ形の枝を、条文から書き起こしました(過去問そのものではありません)。
例題1 地域団体商標に関し、正しいものの数はいくつか。
- イ 商工会議所は、地域団体商標の商標登録を受けることができる。
- ロ 地域の名称及び自己の構成員の業務に係る商品の普通名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標であれば、その商標全体がその商品の普通名称に該当する場合であっても、需要者の間に広く認識されていれば地域団体商標の商標登録を受けることができる。
- ハ 地域団体商標に係る商標権は、譲渡することができない。
- ニ 地域団体商標に係る商標権について、専用使用権を設定することができる。
- ホ 地域団体構成員は、50条の規定の適用については、通常使用権者とみなされる。
正しいのはイ・ハ・ホの3つです。ロは7条の2第1項柱書の括弧書きにより3条1項1号は外れないので誤り、ニは30条1項ただし書により誤りです。
例題2 地域団体商標に関し、誤っているものはどれか。
- イ 一般社団法人は、団体商標の商標登録を受けることはできるが、地域団体商標の商標登録を受けることはできない。
- ロ 他人の地域団体商標の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標の使用をしていた者は、継続して使用する場合、その商標が需要者の間に広く認識されていなくても、その商品についてその商標の使用をする権利を有する。
- ハ 地域団体商標の商標登録が、商標が需要者の間に広く認識されていなかったにもかかわらずされた場合、商標権の設定の登録の日から5年を経過したときは、その後その登録商標が周知であるか否かを問わず、無効審判を請求することができない。
- ニ 地域団体商標の商標登録出願は、査定が確定する前であれば、通常の商標登録出願に変更することができる。
- ホ 地域団体商標の登録後に商標権者が組合等に該当しなくなったことは、無効理由となる。
誤っているのはハです。47条2項は、5年の経過に加えて、その登録商標が現に需要者の間に広く認識されていることを要件にしています。
学習の進め方
7条の2は、1項柱書を「主体」「対象(構成員に使用をさせる商標)」「構成(1号〜3号)」「周知性」「3条の除外(1号・2号は除く)」の5つに区切って線を引くと、枝の読み違えが減ります。そのうえで、24条の2第4項、30条1項ただし書、31条の2、32条の2、46条1項7号、47条2項を順に開き、条文の余白に「地域団体」と書き込んでおきます。
3条・4条の登録要件全体は「商標法3条・4条の登録要件まとめ」で整理しています。枝を「主体」「構成」「周知性」「登録後」のどれの話かで仕分けて記録する方法は「短答式の過去問は肢別で回す」で扱っています。
まとめ
- 出願できるのは組合等(法人格があり加入の自由の定めがある組合、商工会、商工会議所、特定非営利活動法人、相当する外国の法人)。商工会等は平成26年8月1日施行の改正で追加。株式会社・一般社団法人・個人は不可
- 商標は、地域の名称+普通名称・慣用名称等を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなるもの(1項1号〜3号)。地域の名称は2項で定義
- 使用の結果、自己または構成員の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることが必要。全国的な周知までは求められない
- 3条にかかわらず登録できるが、3条1項1号・2号は外れない。4条1項は通常どおり適用
- 譲渡できない(24条の2第4項)、専用使用権は設定できない(30条1項ただし書)、構成員は50条等で通常使用権者とみなす(31条の2第3項)
- 32条の2の先使用権は周知性不要。46条1項7号で後発的無効。47条2項は周知性欠如に限り、5年経過かつ現に周知なら請求不可
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