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防護標章登録とは|64条の要件・存続期間・従属性を短答用に整理

商標法 読了 約11分

弁理士試験短答式の防護標章登録(商標法64条〜68条)を条文で整理。著名性と出所混同の要件、登録商標と同一の標章、設定登録から10年の存続期間と更新登録の出願、原商標権への従属(66条)、侵害とみなす行為(67条)、使用義務がない点と準用の範囲まで短答の型でまとめます。

防護標章登録は、著名な登録商標の保護を、類似しない商品・役務にまで広げるための制度です。商標法の第7章(64条〜68条)にまとまって置かれていますが、商標権の規定を準用する部分と準用しない部分が細かく分かれていて、短答では「商標権と同じか違うか」を入れ替えた枝が作られます。

結論から言うと、防護標章の枝は「商標権者が、全国的に知られた登録商標と同一の標章について、非類似の商品・役務で混同のおそれがある範囲に受ける」「存続期間は設定登録から10年で、更新は審査を伴う更新登録の出願」「分割で消滅、移転に従う、消滅で消滅(66条)」「使用義務はなく、不使用取消審判は準用されない」の4点で判断できます。侵害とみなされる行為(67条)が同一の標章の使用に限られる点を加えれば、条文問題はほぼ網羅できます。

この記事では、制度の趣旨、64条の要件、出願と審査、存続期間と更新、原商標権との従属関係、侵害とみなす行為、準用の範囲、短答で狙われる型の順に整理します。条文はe-Gov法令検索の商標法原文で確認しています。商標法全体の中での位置付けは「商標法の短答対策」で扱っています。

防護標章登録の趣旨

商標権者は、指定商品・役務について登録商標を使用する権利を専有し(25条)、類似する範囲での他人の使用も侵害とみなされます(37条1号)。しかし、指定商品と類似しない商品についての他人の使用には、商標権の効力が及びません。

著名な商標は、類似しない商品に使われても、需要者が「あの有名な会社の商品だ」と誤認することがあります。4条1項15号は、そうした混同を生ずるおそれがある他人の出願を拒絶しますが、それは登録を止めるだけで、使用そのものを禁止する規定ではありません。

防護標章登録は、この隙間を埋めます。著名な登録商標と同一の標章について、混同のおそれがある非類似の商品・役務を指定して登録しておくと、その範囲での他人の使用が商標権の侵害とみなされます(67条)。あわせて、他人が登録防護標章と同一の商標をその指定商品・役務について出願しても、4条1項12号で拒絶されます。

防護標章登録の要件と効果
防護標章登録の要件と効果

登録要件(64条)

64条1項は商品に係る登録商標、2項は役務に係る登録商標について、同じ構造で要件を定めています。1項を分解すると次のとおりです。

要素 64条1項の文言
主体 商標権者
著名性 商品に係る登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている
対象の商品・役務 登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品、又は指定商品に類似する役務以外の役務
混同 他人が登録商標の使用をすることにより、その商品・役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがある
標章 その登録商標と同一の標章

著名性の程度

条文の言葉は「需要者の間に広く認識されている」で、4条1項10号などと同じ表現です。ただし特許庁の商標審査基準は、64条の「需要者の間に広く認識されている」を、原登録商標権者の出所表示として、その商品・役務の需要者の間で全国的に認識されているものをいうとしています。

防護標章登録の「需要者の間に広く認識されている」は、審査基準では全国的に認識されていることをいう
防護標章登録の「需要者の間に広く認識されている」は、審査基準では全国的に認識されていることをいう

出典:特許庁「商標審査基準〔改訂第17版〕」(令和8年4月1日施行)第14(第64条)1.

地域団体商標(7条の2)の周知性が一定範囲の需要者で足りるのとは対照的です。地域団体商標の要件は「地域団体商標とは」で整理しています。

対象は非類似の範囲

防護標章登録を受けられるのは、指定商品とこれに類似する商品「以外」の商品と、指定商品に類似する役務「以外」の役務です。類似の範囲は37条1号の禁止権ですでにカバーされているので、防護標章はその外側だけを受け持ちます。「指定商品に類似する商品について防護標章登録を受けることができる」という枝は誤りです。

防護標章登録を受けられるのは指定商品とこれに類似する商品の外側だけで、類似の範囲は37条1号の禁止権が受け持つ
防護標章登録を受けられるのは指定商品とこれに類似する商品の外側だけで、類似の範囲は37条1号の禁止権が受け持つ

標章は登録商標と同一

防護標章は「その登録商標と同一の標章」でなければなりません。類似の標章では登録を受けられません。審査基準も、原登録商標と同一の標章(縮尺のみ異なるものを含む)でなければならないとしています。

同一性に関連して、70条2項は、4条1項12号と67条の「登録防護標章」に、色彩を同一にすれば登録防護標章と同一になる類似の標章を含めています。色違いの標章は、拒絶や侵害の場面では同一として扱われるということです。

地域団体商標の場合

64条3項は、地域団体商標に係る商標権の防護標章登録について、「自己の」を「自己又はその構成員の」と読み替えます。構成員の業務に係る商品として著名であれば足ります。

出願と審査

防護標章登録出願には、商標登録出願の規定が68条1項で準用されます。願書(5条)、出願日の認定(5条の2)、一出願一商標と区分(6条1項・2項)、優先権・出願時の特例・分割(9条の2〜10条)、出願公開(12条の2)、特許法の準用(13条1項)、金銭的請求権(13条の2)です。願書には防護標章登録出願に係る商標登録の登録番号を記載します(68条1項の読替え)。

審査は68条2項で14条〜15条の2、16条〜17条の2が準用され、拒絶理由を定める15条1号は「第六十四条」に読み替えられます。つまり審査されるのは64条の要件だけで、3条や4条1項は拒絶理由になりません。

出願の変更は双方向に認められています。商標登録出願は防護標章登録出願に変更でき(65条1項)、防護標章登録出願は商標登録出願に変更できます(12条1項)。いずれも査定・審決の確定後はできません(65条2項、12条2項)。

存続期間と更新

存続期間は設定登録から10年

65条の2第1項は、防護標章登録に基づく権利の存続期間を設定の登録の日から10年と定めています。原商標権の存続期間とは連動しません。原商標権が設定登録から3年たった時点で防護標章登録を受ければ、防護標章の存続期間はその設定登録から数えて10年です。

更新は「更新登録の出願」

更新の手続は商標権と大きく違います。

防護標章の更新は審査を伴う更新登録の出願で、著名性を失っていれば更新は拒絶される
防護標章の更新は審査を伴う更新登録の出願で、著名性を失っていれば更新は拒絶される
項目 商標権 防護標章登録に基づく権利
存続期間 設定の登録の日から10年(19条1項) 設定の登録の日から10年(65条の2第1項)
更新の手続 更新登録の申請(19条2項・20条) 更新登録の出願(65条の2第2項・65条の3)
手続の時期 満了前6月から満了の日まで(20条2項) 満了前6月から満了の日まで(65条の3第2項)
実体的な審査 なし あり。64条の要件を満たさなくなっていれば拒絶(65条の4第1項1号)
期間経過後 経済産業省令で定める期間内に申請できる(20条3項) 経済産業省令で定める期間内に出願できる。故意に期間内に出願しなかったと認められる場合を除く(65条の3第3項)

65条の2第2項ただし書は、登録防護標章が64条の規定により防護標章登録を受けることができるものでなくなったときは、更新できないとしています。10年の間に商標の著名性が失われていれば、更新は拒絶されます。商標権の更新が使用の有無や識別力を問わないのと対照的です。

65条の3第4項により、更新登録の出願があったときは、存続期間はその満了の時に更新されたものとみなされます。ただし、拒絶査定・審決が確定した場合と、更新の登録がされた場合は除かれます。

原商標権との従属関係(66条)

防護標章登録に基づく権利は、原登録商標の商標権に付随する権利です。66条は1項〜3項で、その従属関係を定めています。

防護標章登録に基づく権利は原商標権に従い、商標権の分割で消滅し、移転に従って移転し、消滅で消滅する
防護標章登録に基づく権利は原商標権に従い、商標権の分割で消滅し、移転に従って移転し、消滅で消滅する
  • 1項:当該商標権を分割したときは、消滅する
  • 2項:当該商標権を移転したときは、その商標権に従って移転する
  • 3項:当該商標権が消滅したときは、消滅する

防護標章登録に基づく権利だけを切り離して譲渡することはできず、原商標権の運命に従います。存続期間は独自に計算されるのに、帰属と消滅は原商標権に従う、という組合せが枝の定番です。

66条4項〜6項は、原商標権が更新申請期間の経過や後期分割登録料の未納で消滅したものとみなされ、その後に回復した場合について、回復前の一定期間の67条各号の行為には防護標章登録に基づく権利の効力が及ばないと定めています。

侵害とみなす行為(67条)

67条は、次の行為を当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなします。

号 行為
1号 指定商品・指定役務についての登録防護標章の使用
2号 登録防護標章を付した指定商品を譲渡・引渡し・輸出のために所持する行為
3号・4号 役務の提供を受ける者の利用に供する物に登録防護標章を付したものについての所持・輸入・譲渡等
5号〜7号 登録防護標章を表示する物の所持・譲渡等・製造・輸入

押さえるべき点は3つです。

登録防護標章の使用は商標権の侵害とみなされるが、類似する標章の使用は含まない(色違いは同一として扱う)
登録防護標章の使用は商標権の侵害とみなされるが、類似する標章の使用は含まない(色違いは同一として扱う)

1つ目は、侵害とみなされるのが「当該商標権又は専用使用権」の侵害だということです。差止めや損害賠償は、原商標権(またはその専用使用権)の侵害として請求することになります。

2つ目は、対象が登録防護標章そのもの(70条2項の色違いを含む)の使用に限られることです。37条1号のように「類似する商標」の使用までは含みません。

3つ目は、37条8号に当たる「登録商標等を表示する物を製造するためにのみ用いる物」の製造等は、67条に規定がないことです。67条は1号〜7号までで終わっています。

使用義務がないこと

防護標章は、商標権者が自分で使うための登録ではなく、他人の使用を止めるための登録です。そのため、使用を前提とする規定が外されています。

防護標章には使用義務がなく不使用取消審判は準用されないが、更新のたびに著名性と混同のおそれが審査される
防護標章には使用義務がなく不使用取消審判は準用されないが、更新のたびに著名性と混同のおそれが審査される
  • 審査で3条1項柱書(使用をする商標)は問われない(68条2項で15条1号が「第六十四条」に読み替えられる)
  • 審判を準用する68条4項は、50条(不使用取消審判)を挙げていない
  • 68条3項の準用規定には、25条(専用権)、30条(専用使用権)、31条(通常使用権)が含まれていない

したがって、防護標章を何年使っていなくても不使用取消審判で取り消されることはありません。そのかわり、更新のたびに64条の要件(著名性と混同のおそれ)が審査されます。使用の有無ではなく、著名性の維持で権利の存続を管理する仕組みです。不使用取消審判の要件は「商標法の不使用取消審判」で整理しています。

準用される規定・されない規定

防護標章に準用される規定と準用されない規定
防護標章に準用される規定と準用されない規定

68条3項・4項の準用範囲は、枝で「準用される」「されない」を入れ替える材料になります。

区分 準用される(68条3項・4項) 準用されない(列挙なし)
権利の効力 26条〜28条の2(効力が及ばない範囲・判定等)、32条〜33条の3(先使用権・中用権等) 25条(専用権)、37条(侵害とみなす行為。67条が別に定める)
使用権 ― 30条(専用使用権)、31条(通常使用権)
登録異議 43条の2(3号を除く)〜45条 ―
無効審判 46条(1項3号・7号を除く)、46条の2 47条(除斥期間)
取消審判 53条の2・53条の3(代理人等の不当登録)、54条1項 50条(不使用)、51条(商標権者の不正使用)、53条(使用権者の不正使用)

無効審判では、46条1項1号の違反の対象が「第六十四条」に読み替えられ、後発的無効の6号は「その商標登録が第六十四条の規定に違反することとなつたとき」に読み替えられます。登録後に著名性を失った場合は、利害関係人が無効審判を請求できるということです。

また、防護標章登録出願や防護標章登録は、国際登録出願(マドリッド協定議定書による出願)の基礎にもなります(68条の2第1項)。国際登録の仕組みは「マドリッド協定議定書」で扱っています。

短答で狙われる型

第1の型:要件の入れ替え。「指定商品に類似する商品について防護標章登録を受けることができる」「登録商標に類似する標章について防護標章登録を受けることができる」はいずれも誤りです。非類似の範囲、同一の標章が正しい組合せです。

第2の型:存続期間の起算点。「防護標章登録に基づく権利の存続期間は、原登録商標の商標権の存続期間の満了とともに終了する」は誤りです。存続期間は防護標章登録の設定登録から10年です。ただし、原商標権が消滅すれば66条3項で消滅します。起算点と消滅事由を分けて判断します。

第3の型:更新の手続。「防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新は、更新登録の申請によって行う」は誤りです。「更新登録の出願」であり、64条の要件が審査されます。

第4の型:従属関係。分割で消滅、移転に従う、消滅で消滅です。「防護標章登録に基づく権利のみを移転することができる」「商標権を分割しても防護標章登録に基づく権利は存続する」は誤りです。

第5の型:使用と取消し。「登録防護標章が継続して3年以上使用されていないときは、不使用取消審判の対象となる」は誤りです。50条は準用されていません。

短答の枝ではこう問われる

本試験と同じ形の枝を、条文から書き起こしました(過去問そのものではありません)。

例題1 防護標章登録に関し、正しいものの数はいくつか。

  • イ 防護標章登録は、登録商標と同一の標章についてのみ受けることができる。
  • ロ 防護標章登録に基づく権利の存続期間は、その防護標章登録に係る商標権の設定の登録の日から10年をもって終了する。
  • ハ 防護標章登録に基づく権利は、当該商標権を移転したときは、その商標権に従って移転する。
  • ニ 防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願は、その登録防護標章が64条の規定により防護標章登録を受けることができるものでなくなったときは、拒絶される。
  • ホ 登録防護標章が継続して3年以上日本国内において使用されていないときは、何人も、その防護標章登録の取消しについて審判を請求することができる。

正しいのはイ・ハ・ニの3つです。ロは「防護標章登録の設定の登録の日から」(65条の2第1項)なので誤り、ホは68条4項が50条を準用していないので誤りです。

例題2 防護標章登録に関し、誤っているものはどれか。

  • イ 商標登録出願人は、査定又は審決が確定する前であれば、その商標登録出願を防護標章登録出願に変更することができる。
  • ロ 他人の登録防護標章と同一の商標であって、その防護標章登録に係る指定商品について使用をするものは、商標登録を受けることができない。
  • ハ 指定商品について登録防護標章を使用する行為は、当該商標権を侵害するものとみなされる。
  • ニ 指定商品について登録防護標章に類似する標章(色彩を登録防護標章と同一にするものとすれば登録防護標章と同一となるものを除く。)を使用する行為は、当該商標権を侵害するものとみなされる。
  • ホ 防護標章登録に基づく権利は、当該商標権を分割したときは、消滅する。

誤っているのはニです。67条1号は登録防護標章の使用に限っており、70条2項が同一に含めるのは色違いの標章だけです。

学習の進め方

防護標章は、64条・65条の2・66条・67条・68条の5つの条文を、この順に読むのが最短です。64条では「商標権者」「広く認識」「非類似の範囲」「混同のおそれ」「同一の標章」の5か所に線を引きます。65条の2〜65条の4では、商標権の19条・20条を横に置いて「申請」と「出願」、「審査なし」と「審査あり」の違いを書き込みます。68条3項・4項は準用の列挙を1つずつ確認し、50条・51条・53条・47条が入っていないことを自分の目で確かめておきます。

4条1項12号との関係は「商標法3条・4条の登録要件まとめ」、効力が及ばない範囲(26条)や先使用権の準用は「商標権の効力が及ばない範囲(26条)と先使用権」で整理しています。

まとめ

  • 64条:商標権者が、全国的に知られた(審査基準)登録商標と同一の標章について、非類似の商品・役務で出所混同のおそれがある範囲に登録を受ける
  • 審査されるのは64条の要件だけ。出願は商標登録出願と相互に変更できる(65条・12条)
  • 存続期間は防護標章登録の設定の登録の日から10年(65条の2第1項)。更新は更新登録の出願で、64条の要件を満たさなくなれば拒絶(65条の2第2項ただし書・65条の4)
  • 66条:商標権の分割で消滅、移転に従って移転、消滅で消滅
  • 67条:登録防護標章の使用等は商標権(専用使用権)の侵害とみなす。類似標章の使用は含まない(色違いは70条2項で同一扱い)
  • 使用義務はない。50条・51条・53条・47条は準用されない。4条1項12号で他人の同一商標の登録を阻む
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