弁理士試験AIブートラボ 弁理士AIブートラボ
記事 / 著作権法・不正競争防止法 / 限定提供データとは|不競法2条7項と11号〜16号を営...

限定提供データとは|不競法2条7項と11号〜16号を営業秘密と比較

著作権法・不正競争防止法 読了 約11分

弁理士試験短答式の不正競争防止法・限定提供データのまとめ。2条7項の定義と令和5年改正で「営業秘密を除く」に変わった点、オープンなデータの適用除外、2条1項11号〜16号の6類型、19条1項9号の善意取得者の保護、差止め・損害賠償と15条2項、刑事罰がないことを、営業秘密との比較表で整理します。

限定提供データは、平成30年の不正競争防止法改正で新設された制度です。条文の数は多くありませんが、営業秘密の規定と同じ並びで書かれているため、両者の違いを入れ替えた枝が作りやすく、短答では営業秘密とセットで問われます。令和5年の改正で定義の括弧書きが変わったので、古い教材のまま覚えていると定義の枝で迷うことになります。

結論から言うと、限定提供データの枝は「その情報は2条7項の要件を満たし、営業秘密に当たらないか」「オープンなデータと同一ではないか」「行為は11号〜16号のどれか、行為者は悪意か」「善意で取引した者の開示か」の4段で読むと整理できます。これに、転得者の主観が「知って」だけであること、取得後に悪意となった者は開示だけが不正競争になること、刑事罰がないことの3点を重ねれば、限定提供データの枝はほぼ判断できます。

条文はe-Gov法令検索の不正競争防止法原文で確認しています。営業秘密の3要件と4号〜10号の構造は「営業秘密の3要件と侵害類型」で扱っているので、この記事では限定提供データの側を深掘りします。

限定提供データの定義(2条7項)

限定提供データの要件(不正競争防止法2条7項)
限定提供データの要件(不正競争防止法2条7項)

2条7項は、限定提供データを「業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(中略)により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(営業秘密を除く。)」と定義しています。電磁的方法は、電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法をいいます。

要件 条文上の表現 意味
限定提供性 業として特定の者に提供する情報として 事業として、一定の条件の下で特定の相手に提供される情報であること
相当蓄積性 電磁的方法により相当量蓄積され 電子的なデータとして相当の量が蓄積されていること
電磁的管理性 電磁的方法により(中略)管理されている 特定の者以外が取得できないよう、電磁的な方法で管理されていること
情報の種類 技術上又は営業上の情報 営業秘密と同じく、技術情報・営業情報の両方を含む
除外 営業秘密を除く 営業秘密に当たる情報は限定提供データにならない

「限定提供性」「相当蓄積性」「電磁的管理性」という呼び方は、経済産業省の「限定提供データに関する指針」で使われている整理です。条文の文言に戻って読めるようにしておけば、短答ではそれで足ります。

業として特定の者に提供する情報

想定されているのは、会員制のデータ提供サービスや、共同で集めたデータを参加者の間で共有する仕組みのように、データを相手を決めて提供する場面です。「特定の者」に提供する情報なので、誰でも自由に入手できる情報は対象になりません。他方で、提供先が1者に限られるわけではなく、条件を満たす多数の者に提供していても「特定の者」への提供になり得ます。

電磁的方法による蓄積と管理

蓄積も管理も「電磁的方法により」行われていることが必要です。紙の名簿や冊子を相当量集めていても、限定提供データには当たりません。管理の典型は、ID・パスワードによるアクセス制限や暗号化のように、提供先以外の者がデータを取得できないようにする措置です。営業秘密の秘密管理性が「秘密として」管理することを求めるのに対し、限定提供データの管理は、特定の者に提供することを前提にした管理である点が違います。

令和5年改正:「秘密として管理されているもの」から「営業秘密」へ

平成30年改正で設けられた当初の2条7項は、括弧書きを「(秘密として管理されているものを除く。)」としていました。令和5年の改正(令和6年4月1日施行)で、この括弧書きが「(営業秘密を除く。)」に改められています。

令和5年改正で括弧書きが「営業秘密を除く」になり、営業秘密に当たらない秘密管理データも対象になり得る
令和5年改正で括弧書きが「営業秘密を除く」になり、営業秘密に当たらない秘密管理データも対象になり得る
項目 改正前(令和6年3月まで) 現行
括弧書き 秘密として管理されているものを除く 営業秘密を除く
秘密管理されているが営業秘密の要件を欠く情報 限定提供データにも営業秘密にも当たらない 他の要件を満たせば限定提供データになり得る
営業秘密に当たる情報 限定提供データにならない 限定提供データにならない

改正前は、秘密として管理されていれば、それだけで限定提供データから外れました。そのため、秘密として管理されているのに非公知性などを欠いて営業秘密にも当たらない情報は、どちらの保護も受けられない隙間に落ちていました。現行法では、除かれるのは営業秘密に当たる情報だけなので、この隙間が埋められています。

一方で、同じ情報が営業秘密と限定提供データの両方に当たることはありません。営業秘密に当たれば2条1項4号〜10号、当たらなければ限定提供データとして11号〜16号を検討する、という順序で考えます。「秘密として管理されている情報は、限定提供データに該当することはない」という枝は、現行法では誤りです。

オープンなデータとの関係(19条1項9号ロ)

19条1項9号ロは、その相当量蓄積されている情報が無償で公衆に利用可能となっている情報と同一の限定提供データを取得し、又はその取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為を、11号〜16号の不正競争の適用除外としています。いわゆるオープンなデータです。

誰でも無償で使えるデータと同じものであれば、仮に特定の者向けに管理されたデータの形で入手しても、不正競争にはなりません。同じデータをオープンな経路から入手できる以上、保護する必要がないからです。要件は「無償で」「公衆に利用可能」「同一」の3つで、有償で公開されているデータや、一部だけが共通するデータはこの適用除外に当たりません。

無償で公衆に利用可能となっている情報と同一のデータは、取得・使用・開示しても不正競争にならない
無償で公衆に利用可能となっている情報と同一のデータは、取得・使用・開示しても不正競争にならない

不正競争の6類型(2条1項11号〜16号)

限定提供データの不正競争の6類型(11号〜16号)
限定提供データの不正競争の6類型(11号〜16号)

限定提供データに関する不正競争は、11号から16号までの6つです。営業秘密と同じく、入口が「不正取得」の系列(11号〜13号)と、入口が「保有者から示された」の系列(14号〜16号)に分かれます。営業秘密の10号に当たる、不正使用により生じた物の譲渡等の類型はありません。

不正取得の系列(11号〜13号)

号 行為者 不正競争となる行為 主観
11号 不正取得者本人 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段による取得(限定提供データ不正取得行為)と、それにより取得したデータの使用・開示 不要
12号 取得時に悪意の転得者 不正取得行為が介在したことを知って取得し、使用・開示 知って
13号 取得後に悪意となった者 取得した後に不正取得行為の介在を知って開示 知って

不正開示の系列(14号〜16号)

号 行為者 不正競争となる行為 主観・目的
14号 保有者から示された者 図利加害目的での使用(管理に係る任務に違反して行うものに限る)又は開示 図利加害目的
15号 取得時に悪意の転得者 不正開示行為であること又はその介在を知って取得し、使用・開示 知って
16号 取得後に悪意となった者 取得した後に不正開示行為があったこと又はその介在を知って開示 知って

14号の「限定提供データ保有者」は、限定提供データを保有する事業者です。15号の「限定提供データ不正開示行為」は、14号に規定する場合に図利加害目的で開示する行為と定義されています。

営業秘密の号との違い

条文を営業秘密の4号〜10号と並べると、違いは次の4点に集約できます。

  • 重大な過失が書かれていない:12号・13号・15号・16号の転得者は「知って」だけです。営業秘密の5号・6号・8号・9号にある「重大な過失により知らないで」はありません。重大な過失によって知らなかった者は、限定提供データの転得者類型には当たりません
  • 取得後に悪意となった者は開示だけ:13号・16号の行為は「開示する行為」に限られ、使用は含まれません。取得時に善意だった者が後で事情を知っても、使い続けることは不正競争になりません
  • 14号の使用には任務違反の限定:保有者から示された者の図利加害目的の使用は、「その限定提供データの管理に係る任務に違反して行うもの」に限られます。開示にはこの限定はありません。営業秘密の7号には任務違反の限定がありません
  • 15号の不正開示行為に守秘義務違反が入っていない:営業秘密の8号の不正開示行為には「秘密を守る法律上の義務に違反して」開示する行為が含まれますが、15号の定義は14号の目的による開示だけです

データの流通を過度に萎縮させないように、営業秘密より不正競争の範囲が絞られていると理解すると、4点をまとめて覚えられます。

善意取得者の保護(19条1項9号イ)

19条1項9号イは、取引によって限定提供データを取得した者で、取得した時に限定提供データ不正開示行為であることや、不正取得行為・不正開示行為の介在を知らない者が、その取引によって取得した権原の範囲内においてその限定提供データを開示する行為を適用除外としています。

要件 内容
取得の方法 取引によって取得したこと
取得時の主観 不正開示行為であることや介在を知らないこと(重大な過失の有無は書かれていない)
範囲 その取引によって取得した権原の範囲内
対象となる行為 開示する行為

営業秘密の19条1項7号が「使用し、又は開示する行為」を対象にし、主観を「知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者」としているのと比べると、限定提供データの9号イは対象が開示だけで、主観は「知らない者」です。対象が開示だけなのは、取得後に悪意となった者の使用がそもそも13号・16号に入っていないからです。不正競争に当たり得るのは開示だけなので、適用除外も開示について定めれば足ります。

取引で善意で取得した者は、後で事情を知っても取引で得た権原の範囲内なら開示できる
取引で善意で取得した者は、後で事情を知っても取引で得た権原の範囲内なら開示できる

19条1項の柱書は、3条から15条まで、21条及び22条の規定を適用しないとしています。9号に当たる行為には、差止請求も損害賠償請求もできません。

民事上の救済:差止め・損害賠償

限定提供データの不正競争に対しては、営業秘密と同じく民事上の請求ができます。

限定提供データの不正競争には、差止めと損害賠償を請求でき、使用行為への差止請求権は3年・20年で時効消滅する
限定提供データの不正競争には、差止めと損害賠償を請求でき、使用行為への差止請求権は3年・20年で時効消滅する
項目 条文 限定提供データでの扱い
差止請求 3条1項・2項 侵害の停止・予防と、侵害の行為を組成した物の廃棄などを請求できる。故意・過失は不要
損害賠償 4条 故意又は過失が必要。15条で差止請求権が消滅した後の使用による損害は除かれる(ただし書)
損害額の推定等 5条1項・2項・3項 5条1項・3項は11号〜16号を明記し、限定提供データの使用料相当額などを損害額にできる
差止請求権の消滅時効 15条2項 15条1項を準用。使用する行為に対する差止請求権が、知った時から3年・行為の開始から20年で消滅
使用行為の推定 5条の2 技術上の秘密に限られ、限定提供データには適用されない

15条2項は、15条1項を、11号〜16号の不正競争のうち限定提供データを使用する行為に対する差止請求権に準用し、「営業秘密保有者」を「限定提供データ保有者」と読み替えています。対象は使用行為に対する差止請求権だけで、開示行為に対する差止請求権や損害賠償請求権ではありません。この構造は営業秘密と同じです。

刑事罰がない

21条の罰則には、限定提供データの不正取得や不正開示を処罰する規定がありません。営業秘密侵害罪(21条1項・2項など)の対象は営業秘密に限られます。

「限定提供データを不正の手段により取得した者は、刑事罰の対象となる」「限定提供データの不正開示は、営業秘密侵害罪と同じ法定刑で処罰される」という枝は誤りです。限定提供データの保護は、差止めと損害賠償の民事上の請求によります。

限定提供データの不正取得・不正開示に刑事罰はなく、差止めと損害賠償の民事上の請求で対応する
限定提供データの不正取得・不正開示に刑事罰はなく、差止めと損害賠償の民事上の請求で対応する

営業秘密との比較表

項目 営業秘密 限定提供データ
定義 2条6項 2条7項。営業秘密は除かれる
中心となる要件 秘密管理性・有用性・非公知性 業として特定の者に提供、電磁的方法による相当量の蓄積と管理
媒体 限定なし(紙でもよい) 電磁的方法による蓄積・管理が必要
不正競争の号 4号〜10号 11号〜16号
転得者の主観 悪意又は重大な過失 悪意(「知って」)のみ
取得後に悪意となった者 使用・開示(6号・9号) 開示のみ(13号・16号)
保有者から示された者の使用 図利加害目的(7号) 図利加害目的かつ任務違反(14号)
物の譲渡等の類型 あり(10号) なし
善意取得者の適用除外 19条1項7号(使用・開示、善意・無重過失) 19条1項9号イ(開示、善意)
オープンなデータの適用除外 なし 19条1項9号ロ
差止請求権の消滅時効 15条1項(3年・20年) 15条2項で準用
使用行為の推定 5条の2(技術上の秘密) なし
刑事罰 あり(21条) なし

不競法の他の類型(周知表示・著名表示・商品形態)の要件と適用除外は「不正競争防止法2条1項1号・2号・3号」で整理しています。

短答の枝ではこう問われる

本試験と同じ形の枝を、条文から書き起こしました(過去問そのものではありません)。

枝の事例から主観と行為を拾い、「知って」か「重大な過失」か、使用か開示かを確かめる
枝の事例から主観と行為を拾い、「知って」か「重大な過失」か、使用か開示かを確かめる

例題 不正競争防止法上の限定提供データに関し、正しいものはどれか。

  • イ 秘密として管理されている情報は、営業秘密に該当しない場合であっても、限定提供データに該当することはない。
  • ロ 限定提供データ不正取得行為が介在したことを重大な過失により知らないで限定提供データを取得し、これを使用する行為は、不正競争に該当する。
  • ハ 限定提供データを取得した後に限定提供データ不正取得行為が介在したことを知った者が、その限定提供データを使用する行為は、不正競争に該当しない。
  • ニ 窃取により限定提供データを取得した者は、不正競争防止法上の罰則により処罰される。
  • ホ 限定提供データを開示する行為に対する差止請求権は、限定提供データ保有者がその事実及びその行為を行う者を知った時から3年間行わないときは、時効によって消滅する。

正しいのはハです。13号は取得後に悪意となった者の「開示する行為」だけを不正競争としており、使用は含まれません。イは令和5年改正で括弧書きが「営業秘密を除く」になったので誤り、ロは12号が「知って」だけを要件とし重大な過失を含まないので誤り、ニは21条に限定提供データの罰則がないので誤り、ホは15条2項の対象が使用する行為に対する差止請求権に限られるので誤りです。

学習の進め方

限定提供データは、営業秘密を先に覚えてから、違いだけを上乗せするのが効率的です。まず2条1項11号〜16号を条文で読み、営業秘密の4号〜9号の表の横に並べて、重大な過失の有無、取得後の行為が開示だけであること、14号の任務違反の限定に印を付けます。

次に、2条7項の定義を、令和5年改正の前後で書き分けられるようにします。改正の前後で何が限定提供データになり得るかを一文で説明できれば、定義の枝は判断できます。最後に、19条1項9号のイとロ、15条2項、21条に罰則がないことを確認します。科目全体の絞り込み方は「著作権法・不正競争防止法の短答対策」を参照してください。

よくある質問

同じデータが営業秘密と限定提供データの両方に当たることはありますか

ありません。2条7項は営業秘密を限定提供データから除いています。営業秘密の3要件を満たせば営業秘密として4号〜10号で、満たさなければ限定提供データの要件を検討して11号〜16号で判断します。

限定提供データを重大な過失により知らないで取得した者は責任を負いますか

12号・15号の転得者類型は「知って」取得した場合に限られるので、重大な過失により知らなかっただけでは、これらの号の不正競争には当たりません。営業秘密の5号・8号と違う点です。

限定提供データの侵害に刑事罰はありますか

ありません。21条の罰則は営業秘密を対象とし、限定提供データの不正取得や不正開示を処罰する規定は置かれていません。差止め(3条)と損害賠償(4条)で対応します。

まとめ

  • 限定提供データは、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(2条7項)。平成30年改正で新設
  • 令和5年改正(令和6年4月1日施行)で、括弧書きが「秘密として管理されているものを除く」から「営業秘密を除く」に変わった。秘密管理されていても営業秘密でなければ対象になり得る
  • 無償で公衆に利用可能となっている情報と同一のデータの取得・使用・開示は適用除外(19条1項9号ロ)
  • 不正競争は11号〜16号の6類型。転得者は「知って」のみで重大な過失を含まない。取得後に悪意となった者は開示だけ(13号・16号)。14号の使用は任務違反に限る。10号に当たる類型はない
  • 取引により善意で取得した者は、権原の範囲内で開示できる(19条1項9号イ)
  • 差止め(3条)・損害賠償(4条)・損害額の推定等(5条)ができ、使用行為に対する差止請求権は15条2項で3年・20年の消滅時効
  • 刑事罰はない。営業秘密侵害罪(21条)の対象は営業秘密に限られる
著作権・不正競争防止法の論点を、そのまま問題で確かめる

著作権・不正競争防止法の肢別演習を一覧で一気に○×。解説と条文がその場で開きます。

関連記事