1次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、十年以下の拘禁刑若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1 不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、詐欺等行為(人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為をいう。次号において同じ。)又は管理侵害行為(財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成十一年法律第百二十八号)第二条第四項に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の営業秘密保有者の管理を害する行為をいう。次号において同じ。)により、営業秘密を取得したとき。
2 詐欺等行為又は管理侵害行為により取得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、使用し、又は開示したとき。
3 不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、前号若しくは次項第二号から第四号までの罪、第四項第二号の罪(前号の罪に当たる開示に係る部分に限る。)又は第五項第二号の罪に当たる開示によって営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示したとき。
4 不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、前二号若しくは次項第二号から第四号までの罪、第四項第二号の罪(前二号の罪に当たる開示に係る部分に限る。)又は第五項第二号の罪に当たる開示が介在したことを知って営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示したとき。
5 不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、自己又は他人の第二号から前号まで又は第四項第三号の罪に当たる行為(技術上の秘密を使用する行為に限る。以下この号において「違法使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供したとき(当該物が違法使用行為により生じた物であることの情を知らないで譲り受け、当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した場合を除く。)。
2次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の拘禁刑若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1 営業秘密を営業秘密保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得したもの
ア 営業秘密記録媒体等(営業秘密が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体をいう。以下この号において同じ。)又は営業秘密が化体された物件を横領すること。
ィ 営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成すること。
イ 営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装すること。
2 営業秘密を営業秘密保有者から示された者であって、その営業秘密の管理に係る任務に背いて前号イからハまでに掲げる方法により領得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、使用し、又は開示したもの
3 営業秘密を営業秘密保有者から示されたその役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。次号において同じ。)又は従業者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、その営業秘密を使用し、又は開示したもの(前号に掲げる者を除く。)
4 営業秘密を営業秘密保有者から示されたその役員又は従業者であった者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その在職中に、その営業秘密の管理に係る任務に背いてその営業秘密の開示の申込みをし、又はその営業秘密の使用若しくは開示について請託を受けて、その営業秘密をその職を退いた後に使用し、又は開示したもの(第二号に掲げる者を除く。)
5 不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、自己又は他人の第二号から前号まで又は第五項第三号の罪に当たる行為(技術上の秘密を使用する行為に限る。以下この号において「従業者等違法使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者(当該物が従業者等違法使用行為により生じた物であることの情を知らないで譲り受け、当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者を除く。)
3次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1 不正の目的をもって第二条第一項第一号又は第二十号に掲げる不正競争を行ったとき。
2 他人の著名な商品等表示に係る信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的で、又は当該信用若しくは名声を害する目的で第二条第一項第二号に掲げる不正競争を行ったとき。
3 不正の利益を得る目的で第二条第一項第三号に掲げる不正競争を行ったとき。
4 不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第二条第一項第十七号又は第十八号に掲げる不正競争を行ったとき。
5 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をしたとき(第一号に掲げる場合を除く。)。
6 秘密保持命令に違反したとき。
7 第十六条又は第十七条の規定に違反したとき。
4次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、十年以下の拘禁刑若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1 日本国外において使用する目的で、第一項第一号の罪を犯したとき。
2 相手方に日本国外において第一項第二号から第四号までの罪に当たる使用をする目的があることの情を知って、これらの罪に当たる開示をしたとき。
3 日本国内において事業を行う営業秘密保有者の営業秘密について、日本国外において第一項第二号から第四号までの罪に当たる使用をしたとき。
4 第十八条第一項の規定に違反したとき。
5次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の拘禁刑若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1 日本国外において使用する目的で、第二項第一号の罪を犯した者
2 相手方に日本国外において第二項第二号から第四号までの罪に当たる使用をする目的があることの情を知って、これらの罪に当たる開示をした者
3 日本国内において事業を行う営業秘密保有者の営業秘密について、日本国外において第二項第二号から第四号までの罪に当たる使用をした者
6第一項、第二項(第一号を除く。)、第四項(第四号を除く。)及び前項(第一号を除く。)の罪の未遂は、罰する。
7第三項第六号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
8第一項各号(第五号を除く。)、第二項各号(第五号を除く。)、第四項第一号若しくは第二号、第五項第一号若しくは第二号又は第六項(第一項第五号又は第二項第五号に係る部分を除く。)の罪は、日本国内において事業を行う営業秘密保有者の営業秘密について、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。
9第三項第六号の罪は、日本国外において同号の罪を犯した者にも適用する。
10第四項第四号の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。
11第四項第四号の罪は、日本国内に主たる事務所を有する法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者であって、その法人の業務に関し、日本国外において同号の罪を犯した日本国民以外の者にも適用する。
12第一項から第六項までの規定は、刑法その他の罰則の適用を妨げない。
13次に掲げる財産は、これを没収することができる。
1 第一項、第二項、第四項(第四号を除く。)、第五項及び第六項の罪の犯罪行為により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
2 前号に掲げる財産の果実として得た財産、同号に掲げる財産の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他同号に掲げる財産の保有又は処分に基づき得た財産
14組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)第十四条及び第十五条の規定は、前項の規定による没収について準用する。この場合において、組織的犯罪処罰法第十四条中「前条第一項各号又は第四項各号」とあるのは、「不正競争防止法第二十一条第十三項各号」と読み替えるものとする。
15第十三項各号に掲げる財産を没収することができないとき、又は当該財産の性質、その使用の状況、当該財産に関する犯人以外の者の権利の有無その他の事情からこれを没収することが相当でないと認められるときは、その価額を犯人から追徴することができる。
この条文が問われた枝 22問
誤り。違うのは「不正の目的をもっていたときに限り、不正競争防止法に規定する刑事罰の対象となる」の部分である。品質について誤認させるような虚偽の表示は21条3項5号により不正の目的がなくても処罰される。
21条3項1号は、不正の目的をもって2条1項1号又は20号の不正競争を行ったときを処罰の対象とするが、同項5号は、商品若しくは役務若しくはその広告等に、その商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をしたときを、1号に掲げる場合を除いて処罰の対象とする。20号の不正競争は誤認させるような表示であれば虚偽でなくても成立するため、刑事罰には不正の目的という絞りを付けたが、表示そのものが客観的に虚偽である場合は行為の違法性が明白で取引者や需要者を直接欺くから、目的を問わずに処罰することにしたものである。保管していた古米に新米と表示する行為は、商品の品質について客観的事実に反する虚偽の表示であるから、不正の目的があれば1号で、なくても5号で処罰される。したがって不正の目的をもっていたときに限るとする枝は誤っている。

商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をしたとき(第一号に掲げる場合を除く。)。
| 不正競争 | 罰則 | 目的の要件 |
|---|---|---|
| 周知表示混同惹起(1号)・誤認惹起(20号) | 3項1号 | 不正の目的 |
| 虚偽の表示 | 3項5号 | 目的を問わない |
| 著名表示冒用(2号) | 3項2号 | 信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的、又は害する目的 |
| 形態模倣(3号) | 3項3号 | 不正の利益を得る目的 |
| 営業秘密(4号〜10号) | 1項・2項(未遂も) | 不正の利益を得る目的又は保有者に損害を加える目的 |
| 技術的制限手段(17号・18号) | 3項4号 | 不正の利益を得る目的又は技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的 |
| 限定提供データ・ドメイン名・信用毀損・代理人等 | なし |
誤り。違うのは「その限定提供データを開示する行為は、刑事罰の対象となる」の部分である。13号の不正競争であり民事の救済は受けられるが、21条の罰則は限定提供データに係る不正競争を対象としていない。
2条1項13号は、その取得した後にその限定提供データについて限定提供データ不正取得行為が介在したことを知ってその取得した限定提供データを開示する行為を不正競争と定めるから、本枝の行為は不正競争に当たり、3条の差止請求や4条の損害賠償請求の対象となる。しかし、刑事罰を定める21条は、1項・2項で営業秘密の不正取得・使用・開示などを、3項で周知表示の混同惹起、著名表示の冒用、商品形態模倣、技術的制限手段の無効化、誤認惹起表示、秘密保持命令違反などを処罰の対象に挙げるが、限定提供データに係る11号から16号までの不正競争はどこにも掲げられていない。限定提供データは営業秘密と違って秘密ではなく、取引で広く提供されるデータであるため、制度の導入時に、刑事罰まで科すと萎縮が大きいとして民事の救済に限ることとされた。したがって、本枝の開示行為は不正競争ではあるが刑事罰の対象とはならず、誤りである。

その取得した後にその限定提供データについて限定提供データ不正取得行為が介在したことを知ってその取得した限定提供データを開示する行為
- 不正競争となる行為:2条1項11号から16号まで
- 民事の救済:差止請求(3条)、損害賠償(4条)と損害額の推定(5条)、信用回復措置(14条)
- 刑事罰:21条に規定がなく、科されない
- 適用除外:取引によって取得した時に不正取得・不正開示の介在を知らなかった者がその権原の範囲内で開示する行為、無償で公衆に利用可能となっている情報と同一の限定提供データの取得・使用・開示(19条1項9号)
誤り。違うのは「目的の如何を問わず刑事罰の対象となる」の部分である。周知表示混同惹起行為が処罰されるのは、21条3項1号により不正の目的をもって行った場合に限られる。出題当時はこの規定が21条2項に置かれていた。
21条3項1号は、不正の目的をもって2条1項1号又は20号に掲げる不正競争を行ったときに、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定める。2条1項1号の周知表示混同惹起行為は、他人の周知の商品等表示と同一又は類似の表示を使用して他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為であり、民事上は目的を問わず差止めや損害賠償の対象になる。しかし混同は結果として生じることもあり、たまたま似た表示を使った者まで刑罰で処罰するのは行き過ぎであるため、刑事罰には不正の目的という主観的要件を加えて処罰の範囲を絞っている。この目的要件は3項1号から4号まで類型ごとに違う形で置かれており、目的を要件としないのは5号の虚偽の表示だけである。枝は民事上の不正競争の成立要件をそのまま刑事罰に持ち込んでおり、不正の目的を欠く混同惹起行為は刑事罰の対象にならない。

不正の目的をもって第二条第一項第一号又は第二十号に掲げる不正競争を行ったとき。
| 不正競争 | 罰則 | 目的の要件 |
|---|---|---|
| 周知表示混同惹起(1号)・誤認惹起(20号) | 3項1号 | 不正の目的 |
| 著名表示冒用(2号) | 3項2号 | 信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的、又は害する目的 |
| 形態模倣(3号) | 3項3号 | 不正の利益を得る目的 |
| 営業秘密(4号〜10号) | 1項・2項(未遂も) | 不正の利益を得る目的又は保有者に損害を加える目的 |
| 限定提供データ(11号〜16号) | なし | |
| 技術的制限手段(17号・18号) | 3項4号 | 不正の利益を得る目的又は技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的 |
| ドメイン名(19号) | なし | |
| 信用毀損(21号) | なし | |
| 代理人等の商標冒用(22号) | なし |
正しい。21条3項5号は、役務の広告にその役務の内容について誤認させるような虚偽の表示をしたときを処罰し、同号には目的の要件が置かれていない。
21条3項5号は、商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信に、その商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をしたときを、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定める。同項の1号から4号までが目的の要件を置いているのに対し、5号にはそのような要件がない。虚偽の表示は、それ自体が需要者を欺く行為であり、表示が虚偽であることを認識して行えば、ほかにどのような目的があったかを問わずに処罰に値するからである。2条1項20号の誤認惹起行為を不正の目的で行えば3項1号で処罰されるが、5号は虚偽の表示に限って目的を要件としない。枝の役務の内容についての虚偽の表示は5号の文言そのものであり、目的の如何を問わず刑事罰の対象となる。

商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をしたとき(第一号に掲げる場合を除く。)。
- 表示の場所:商品、役務、その広告、取引に用いる書類、通信
- 商品について:原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量。価格は列挙されていない
- 役務について:質、内容、用途、数量
- 行為:誤認させるような表示をすること、その表示をした商品の譲渡・引渡し・展示・輸出・輸入・電気通信回線を通じた提供、その表示をしての役務の提供
- 刑事罰:不正の目的があれば21条3項1号、虚偽の表示であれば目的を問わず21条3項5号
誤り。違うのは「不正の利益を得る目的であっても、刑事罰の対象とはならない」の部分である。21条3項3号は不正の利益を得る目的で2条1項3号の不正競争を行った者を処罰し、模倣商品を譲渡若しくは貸渡しのために展示する行為は同号の不正競争に含まれる。
2条1項3号は、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為を不正競争とする。そして21条3項3号は、不正の利益を得る目的で2条1項3号に掲げる不正競争を行ったときに5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定める。商品形態の模倣に刑事罰が加わったのは、先行者が資金と労力を投下して開発した商品の形態をそっくり写して市場に出すデッドコピーが、民事の差止めだけでは抑止しきれないためである。処罰の対象は2条1項3号の不正競争の全体であり、譲渡や輸入だけでなく、譲渡若しくは貸渡しのために展示する行為も同号に列挙されている以上、不正の利益を得る目的があれば処罰される。枝は展示行為を刑事罰の対象から外しているが、条文は行為の態様で区別していない。

不正の利益を得る目的で第二条第一項第三号に掲げる不正競争を行ったとき。
誤り。違うのは「目的の如何を問わず刑事罰の対象となる」の部分である。21条3項4号により、技術的制限手段の効果を妨げる装置の譲渡が処罰されるのは、不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で行った場合に限られる。
2条1項17号は、営業上用いられている技術的制限手段により制限されている情報の処理などを、その効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置やプログラムを譲渡し、引き渡し、展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為を不正競争とする。この行為が刑事罰の対象となるのは21条3項4号によるが、同号は不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で行ったときに限って処罰する。無効化装置は技術的制限手段の試験又は研究のために譲渡されることもあり(19条1項10号)、目的を問わずに処罰すると正当な取引まで萎縮させるため、主観的要件で範囲を絞ったものである。枝は17号の文言を正しく引いているが、刑事罰について目的を問わないとしている点が4号と合わない。

不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第二条第一項第十七号又は第十八号に掲げる不正競争を行ったとき。
誤り。違うのは「当該他人の名声の毀損という結果が発生しなければ、刑事罰の対象とはならない」の部分である。21条3項2号は信用若しくは名声を害する目的で2条1項2号の不正競争を行えば成立し、名声の毀損という結果は要件でない。
21条3項2号は、他人の著名な商品等表示に係る信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的で、又は当該信用若しくは名声を害する目的で2条1項2号に掲げる不正競争を行ったときを処罰する。2条1項2号の著名表示冒用行為は、他人の著名な商品等表示と同一又は類似のものを自己の商品等表示として使用し、又はその表示を使用した商品を譲渡等する行為であり、混同も損害の発生も要件としない。著名表示の冒用は、表示の持つ顧客吸引力にただ乗りし、あるいは表示の品格を汚すこと自体が不正競争とされるからである。刑事罰の方も、民事と同じ行為に目的という主観的要件を加えて処罰の範囲を絞ったものであり、名声を害する目的で行為に及べば足りる。名声が現に毀損されたかどうかは量刑の事情にはなっても犯罪の成立要件ではない。枝は目的の要件を結果の要件に置き換えており、目的があって行為をすれば結果が発生しなくても刑事罰の対象になる。

他人の著名な商品等表示に係る信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的で、又は当該信用若しくは名声を害する目的で第二条第一項第二号に掲げる不正競争を行ったとき。
誤り。違うのは「在宅勤務のために営業秘密保有者に無断で自宅に持ち帰る行為は、営業秘密に係る刑事罰の対象となる」の部分である。21条2項1号の領得罪は不正の利益を得る目的又は保有者に損害を加える目的を要件とし、在宅勤務で業務を行うための持ち帰りはこの目的を欠く。出題当時はこの規定が21条1項3号に置かれていた。
21条2項1号は、営業秘密を営業秘密保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、横領、複製の作成、消去の仮装のいずれかの方法で営業秘密を領得した者を処罰する。持ち出しが禁止された書類を無断で自宅に持ち帰る行為は、任務に背いた横領又は複製に当たり得るが、処罰にはそれに加えて図利加害目的が要る。社内規程に反する持ち出しを目的を問わず処罰すると、便宜のための行為まで重い刑罰の対象になるため、主観的要件で範囲を絞っているのである。在宅勤務で業務を続けるための持ち帰りは、保有者のために働く目的であって自己や第三者の利益を図る目的でも保有者に損害を加える目的でもないから、規程違反にはなっても刑事罰の対象にはならない。

営業秘密を営業秘密保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得したもの
- 共通の要件:不正の利益を得る目的又は営業秘密保有者に損害を加える目的(図利加害目的)。目的を欠く規程違反や過失は処罰されない
- 示された者の領得(2項1号):任務に背いて横領、複製の作成、消去の仮装のいずれかで領得すること
- 領得した営業秘密の使用・開示(2項2号)と、役員・従業者による任務違背の使用・開示(2項3号)
- 退職者(2項4号):在職中に開示の申込みをし又は請託を受け、退職後に使用・開示すること
- 法定刑:10年以下の拘禁刑若しくは2000万円以下の罰金、又は併科。国外への加重は3000万円以下の罰金
誤り。違うのは「当該データを消去し忘れて、当該パソコンを保管し続けることは、営業秘密に係る刑事罰の対象となる」の部分である。21条2項1号ハの領得は消去すべき記録を消去せず、かつ、消去したように仮装することを要し、さらに図利加害目的が要るから、消去し忘れて保管しているだけでは当たらない。出題当時はこの規定が21条1項3号ハに置かれていた。
21条2項1号ハは、営業秘密を示された者が図利加害目的で、営業秘密の管理に係る任務に背き、営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装することを領得の一つの方法として掲げる。消去義務のある記録を手元に残す行為が処罰されるのは、保有者に消去したと信じさせて営業秘密を自分の支配下に置き続ける点で横領や複製と同じ実質があるからであり、そのために消去しないことと仮装することの両方が要件になっている。上司の承認を得て自己のパソコンに保存していた従業員が、消去義務に反してデータを消去し忘れたまま保管しているだけでは、保有者を欺く仮装の行為がなく、不正の利益を得る目的も保有者に損害を加える目的も認められない。消去義務の違反は契約上の責任を生じさせ得るが、刑事罰は意図的な領得に限られ、単なる失念は対象にならない。

営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装すること。
誤り。違うのは「その未遂も刑事罰の対象である」の部分である。21条6項が未遂を罰するのは営業秘密侵害罪とその加重類型に限られ、不正の目的による周知表示混同惹起行為の罪(21条3項1号)は既遂だけが処罰される。出題当時は21条2項1号・4項であった。
21条3項1号は、不正の目的をもって2条1項1号又は20号に掲げる不正競争を行ったときに、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定める。同条6項は、1項、2項(1号を除く。)、4項(4号を除く。)及び5項(1号を除く。)の罪の未遂を罰すると定め、3項の罪を挙げていない。未遂が処罰されるのは、営業秘密を不正に取得し、使用し、開示する罪とその国外加重の類型であり、営業秘密は一度漏れれば回復できないため、取得や開示に着手した段階で処罰する必要があるからである。これに対し周知表示の混同惹起は、表示を使用し又は使用した商品を譲渡等して混同を生じさせた時点で既遂となる行為であり、その手前の段階まで処罰する定めは置かれていない。したがって不正の目的による周知表示混同惹起行為の未遂も刑事罰の対象とする枝は誤りである。

第一項、第二項(第一号を除く。)、第四項(第四号を除く。)及び前項(第一号を除く。)の罪の未遂は、罰する。
- 1号:不正の目的をもって周知表示混同惹起(2条1項1号)又は誤認惹起表示(20号)を行ったとき
- 2号:著名表示に係る信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的で、又はこれを害する目的で著名表示冒用(2号)を行ったとき
- 3号:不正の利益を得る目的で商品形態模倣(3号)を行ったとき
- 5号:商品・役務の原産地、品質等について誤認させるような虚偽の表示をしたとき。目的を問わない
- 6号:秘密保持命令に違反したとき。親告罪である(7項)
- 未遂(6項):営業秘密侵害罪とその加重類型に限られ、3項の罪には未遂の処罰がない
誤り。違うのは「虚偽の事実を告知する不正競争は、刑事罰の対象である」の部分である。信用毀損行為(2条1項21号)は21条の罰則が掲げる不正競争に含まれておらず、不正の目的があっても不正競争防止法上の刑事罰は科されない。
2条1項21号は、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為を不正競争とする。この行為に対しては3条の差止請求、4条の損害賠償、14条の信用回復の措置が認められるが、21条は処罰する不正競争を2条1項の号で特定しており、3項に掲げるのは1号・20号、2号、3号、17号・18号であって、21号は含まれていない。21条3項5号は商品や役務の原産地、品質等について誤認させるような虚偽の表示を処罰するが、これは自己の商品等についての虚偽表示であり、他人の信用を害する虚偽の事実の告知とは別の行為である。信用毀損は言論に関わる行為であるため、不正競争防止法は民事上の救済にとどめ、刑事の規制は刑法の信用毀損罪などに委ねている。したがって不正の目的をもって行った信用毀損行為を不正競争防止法の刑事罰の対象とする枝は誤りである。

競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為
誤り。違うのは「ドメイン名を使用する権利を取得する不正競争は、刑事罰の対象である」の部分である。21条が処罰する不正競争は号で特定されており、ドメイン名の不正取得等(2条1項19号)はどの項にも掲げられていない。
2条1項19号は、不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為を不正競争とする。この行為は3条の差止請求や4条の損害賠償の対象になるが、罰則を定める21条は、処罰する不正競争を2条1項の号を挙げて限定しており、3項では1号・20号(1号)、2号(2号)、3号(3号)、17号・18号(4号)を掲げるにとどまる。刑罰は民事上の救済と違って行為の類型を明確に限定する必要があり、ドメイン名の取得や保有は表示の使用の手前の行為で、民事の差止めと損害賠償で足りるとされたからである。19号に掲げる不正競争が21条のいずれにも含まれていない以上、不正の利益を得る目的があっても不正競争防止法上の刑事罰は科されない。したがって刑事罰の対象とする枝は誤りである。

不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為
- 目的:不正の利益を得る目的又は他人に損害を加える目的のどちらか一つである
- 対象:他人の特定商品等表示と同一又は類似のドメイン名である。周知・著名は要らない
- 行為:ドメイン名を使用する権利の取得、保有、そのドメイン名の使用である
- 救済:差止め(3条)と損害賠償(4条)である。21条の罰則には掲げられていない
誤り。違うのは「告訴がなくても公訴を提起することができる」の部分である。秘密保持命令に違反した罪(21条3項6号)は、告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪である(同条7項)。出題当時は21条2項6号・5項であった。
21条3項6号は、秘密保持命令に違反したときに5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定め、同条7項は、3項6号の罪は告訴がなければ公訴を提起することができないと定める。秘密保持命令は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟で、準備書面や証拠に営業秘密が含まれる場合に、裁判所が当事者等や訴訟代理人に対して訴訟追行の目的以外での使用と他者への開示を禁じる命令である(10条)。その違反を刑事事件として公判にかければ、守ろうとした営業秘密の内容が法廷で明らかになるおそれがあるから、訴追するかどうかを営業秘密の保有者の判断に委ね、告訴を公訴提起の条件にしている。不正競争防止法の罰則のうち親告罪とされているのはこの罪だけである。したがって秘密保持命令違反について告訴がなくても公訴を提起できるとする枝は誤りである。

第三項第六号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
正しい。不正競争防止法の罰則のうち告訴がなければ公訴を提起できないのは秘密保持命令違反の罪(21条3項6号)だけであり(同条7項)、不正の目的による周知表示混同惹起行為の罪は親告罪ではない。出題当時は21条2項1号・5項であった。
21条3項1号は、不正の目的をもって2条1項1号に掲げる不正競争を行ったときに、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定める。同条7項は、3項6号の罪は告訴がなければ公訴を提起することができないと定め、親告罪とされているのは秘密保持命令に違反した罪だけである。秘密保持命令違反を親告罪にしたのは、刑事裁判になれば営業秘密の内容が公判で明らかになるおそれがあり、訴追するかどうかを保有者の意思に委ねる必要があるからである。周知表示の混同惹起にはそのような事情がなく、需要者の混同を通じて公正な競争秩序を害する行為であるから、被害者の告訴を待たずに公訴を提起できる。著作権法119条1項の著作権侵害罪が123条1項で原則として親告罪とされているのと異なる。したがって告訴がなくても公訴を提起できるとする枝は正しい。

第三項第六号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
正しい。商品形態模倣は不正の利益を得る目的で行えば21条3項3号の罰則の対象になるが、信用毀損行為は21条のどの項にも掲げられておらず、差止めと損害賠償などの民事上の救済だけが定められている。出題当時は21条2項3号であった。
不正競争防止法の民事上の救済は、3条の差止請求と4条の損害賠償、14条の信用回復措置が全類型の不正競争を対象とする。これに対し刑事罰は21条が号ごとに対象を限定しており、2条1項3号の商品形態模倣については、21条3項3号が不正の利益を得る目的で同号の不正競争を行ったときを5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はその併科の対象とする。2条1項21号の信用毀損行為は21条のいずれの項にも掲げられておらず、刑事罰の規定はない。虚偽の事実の告知や流布は表現活動に近く、真実かどうかの判断を刑罰で強制すると正当な批判や警告まで萎縮させるおそれがあるため、民事上の救済にとどめ、刑事的には刑法の信用毀損罪や名誉毀損罪に委ねている。商品形態模倣には民事上の救済と刑事罰の両方があり、信用毀損行為には民事上の救済のみが規定されているとする本枝は正しい。

不正の利益を得る目的で第二条第一項第三号に掲げる不正競争を行ったとき。
- 1号:不正の目的による周知表示の混同惹起(1号)と誤認惹起表示(20号)である
- 2号:著名表示に係る信用・名声を利用する目的等による著名表示の冒用(2号)である
- 3号:不正の利益を得る目的による商品形態模倣(3号)である
- 4号:不正の利益を得る目的等による技術的制限手段の無効化(17号・18号)である
- 信用毀損行為(21号)とドメイン名の不正取得等(19号)には罰則がない
正しい。21条の罰則は不正競争のうち刑事罰の対象とする類型を限定して列挙しており、2条1項19号のドメイン名の不正取得等は掲げられていないから、転売目的で類似のドメイン名を取得しても刑事罰の対象とならない。
不正競争防止法は、2条1項に列挙した不正競争のすべてを処罰するのではなく、21条で刑事罰の対象となる行為を個別に掲げている。21条3項は、不正の目的をもって行う1号・20号の不正競争、著名表示の信用を利用する目的等での2号の不正競争、不正の利益を得る目的での3号の不正競争、図利加害目的での17号・18号の不正競争などを掲げるが、19号のドメイン名に係る不正競争は21条のどの項にも掲げられていない。ドメイン名の取得や保有は、それ自体で需要者を欺いたり他人の成果を奪ったりする行為ではなく、民事上の差止めや登録の抹消、使用料相当額の損害賠償で足りるとされているからである。したがって転売の目的、すなわち不正の利益を得る目的で著名企業の商号と類似するドメイン名を取得する行為は19号の不正競争として差止めの対象になるが、刑事罰の対象とはならない。出題当時はドメイン名が13号、罰則が21条2項であった(平成30年改正前)が、ドメイン名の類型が罰則に掲げられていない点は同じである。

次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
正しい。図利加害目的で任務に背き営業秘密記録媒体等の複製を作成して領得し、それを開示する行為は21条2項1号ロ・2号の営業秘密侵害罪に当たり、親告罪は21条7項により秘密保持命令違反の罪だけであるから、告訴がなくても処罰される。出題当時は21条1項3号ロ・4号・5項であった(平成30年改正前)。
21条2項1号は、営業秘密を営業秘密保有者から示された者が、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録についてその複製を作成する方法(ロ)などで営業秘密を領得した場合を罰し、同項2号は、そのように領得した営業秘密を図利加害目的で任務に背き使用し、又は開示した場合を罰する。甲社の従業員乙は示された者であり、金銭を得る目的は不正の利益を得る目的に当たり、文書の複製を作成して丙社に売り渡す行為は領得と開示の両方に当たる。そして21条7項は、告訴がなければ公訴を提起することができない罪を3項6号の秘密保持命令違反の罪に限っている。営業秘密侵害罪は平成27年改正で非親告罪となり、保有者が告訴をためらう場合でも捜査・起訴ができるようにされた。したがって甲社の告訴がなくても乙の行為は刑事罰の対象になる。

第三項第六号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
正しい。21条3項が刑事罰の対象とする不正競争に、競争者の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知・流布(2条1項21号)は挙げられておらず、損害を与える目的があっても罰則の対象にならない。出題当時は21条2項・2条1項15号であった(平成30年改正前)。
21条3項は、不正の目的をもって2条1項1号又は20号の不正競争を行ったとき(1号)、著名表示冒用(2号)、形態模倣(3号)、技術的制限手段に係る不正競争(4号)、誤認させるような虚偽の表示(5号)、秘密保持命令違反(6号)、16条・17条違反(7号)を列挙して刑事罰を定める。営業秘密侵害罪は同条1項・2項に別に置かれている。罪刑法定主義のもとで処罰されるのは法律が明示した行為に限られ、2条1項の不正競争のすべてに罰則が対応しているわけではない。信用毀損行為(21号)はこの列挙に含まれておらず、限定提供データに係る不正競争やドメイン名に係る不正競争と同じく、民事上の差止め・損害賠償・信用回復の措置の対象にとどまる。乙社の無添加化粧品に着色料・保存料が使用されているという虚偽の事実をパンフレットで頒布した甲社の行為は、乙社に損害を与える目的があっても、不正競争防止法上の刑事罰の対象にならない。

不正の目的をもって第二条第一項第一号又は第二十号に掲げる不正競争を行ったとき。
| 不正競争 | 罰則 | 目的の要件 |
|---|---|---|
| 周知表示混同惹起(1号)・誤認惹起(20号) | 3項1号 | 不正の目的 |
| 著名表示冒用(2号) | 3項2号 | 信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的、又は害する目的 |
| 形態模倣(3号) | 3項3号 | 不正の利益を得る目的 |
| 営業秘密(4号〜10号) | 1項・2項(未遂も) | 不正の利益を得る目的又は保有者に損害を加える目的 |
| 限定提供データ(11号〜16号) | なし | |
| 技術的制限手段(17号・18号) | 3項4号 | 不正の利益を得る目的又は技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的 |
| ドメイン名(19号) | なし | |
| 信用毀損(21号) | なし |
正しい。秘密保持命令は対象の営業秘密を訴訟追行の目的以外で使用することを禁じるものであり、これに違反する行為は21条3項6号の秘密保持命令違反の罪として刑事罰の対象になる。出題当時は21条2項6号であった(平成30年改正前)。
10条1項は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、当事者が保有する営業秘密について一定の事由の疎明があった場合に、裁判所が当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができると定める。訴訟の中で営業秘密を開示しないと主張や立証ができないが、開示すれば相手方に秘密が渡ってしまうという矛盾を解くための制度であり、命令の実効性を担保するために21条3項6号は秘密保持命令に違反したときを罰則の対象とし、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はその併科を定める。使用の禁止と開示の禁止はいずれも命令の内容であるから、命令に違反して対象の営業秘密を使用する行為も刑事罰の対象になる。この罪は21条7項により告訴がなければ公訴を提起できない親告罪である。

第三項第六号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
- 命じる相手:当事者等(当事者、その代理人、使用人その他の従業者)、訴訟代理人又は補佐人である。訴訟代理人に限られない
- 命じる内容:当該訴訟の追行の目的以外の目的での使用の禁止と、命令を受けた者以外の者への開示の禁止の両方である
- 要件:準備書面・証拠に営業秘密が含まれること、目的外使用や開示で事業活動に支障を生ずるおそれがあり制限の必要があることを、申立人が疎明する
- 違反:21条3項6号の罪(5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科)で、告訴が要る親告罪である(21条7項)
誤り。違うのは「刑事罰の対象にはならない」の部分である。16条1項は外国国旗等類似記章を商標として使用した商品の譲渡等を禁じており、その違反は21条3項7号の刑事罰の対象になる。出題当時は21条2項7号であった(平成30年改正前)。
16条1項は、何人も、外国の国旗若しくは国の紋章その他の記章で経済産業省令で定めるもの(外国国旗等)と同一若しくは類似のもの(外国国旗等類似記章)を商標として使用し、又は外国国旗等類似記章を商標として使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならないと定める。ただし書で、その外国国旗等の使用の許可を行う権限を有する外国の官庁の許可を受けたときは除かれる。これはパリ条約6条の3の国の紋章等の保護を国内法化した規定で、2条1項の不正競争とは別の禁止行為である。そして21条3項7号は、16条又は17条の規定に違反したときを罰則の対象とし、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はその併科を定める。したがって外国の国旗と類似のものを商標として使用した商品を販売する行為は、外国官庁の許可がない限り刑事罰の対象になる。

第十六条又は第十七条の規定に違反したとき。
誤り。違うのは「乙がBを輸出する行為は、刑事罰の対象とならない」の部分である。模倣した商品を輸出する行為は2条1項3号に明記された不正競争であり、不正の利益を得る目的があれば21条3項3号で処罰される。
2条1項3号は、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為を不正競争と定めており、輸出は譲渡や輸入と並んで明文で列挙されている。模倣品を国外に送り出す行為も先行者の成果にただ乗りする行為であり、国内での販売と区別する理由がない。そして21条3項3号は、不正の利益を得る目的で2条1項3号に掲げる不正競争を行ったときを処罰の対象とし、3号に列挙された行為のうち一部を処罰の対象から外す定めは置いていない。したがって乙が財布Bを輸出する行為は、乙に不正の利益を得る目的があれば刑事罰の対象となる。処罰されないのは目的要件を欠く場合や、19条1項6号で適用除外となる場合であって、輸出という行為態様であることを理由に処罰を免れるわけではない。

不正の利益を得る目的で第二条第一項第三号に掲げる不正競争を行ったとき。
誤り。違うのは「乙が甲に損害を加える目的で販売したときに限られる」の部分である。形態模倣の罪の目的要件は不正の利益を得る目的であり、他人に損害を加える目的は要件になっていない。出題当時は21条2項3号であった(令和5年改正前)。
21条3項3号は、不正の利益を得る目的で2条1項3号に掲げる不正競争を行ったときに、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はその併科と定める。不正競争防止法の罰則は民事の規制対象である不正競争のすべてを処罰するのではなく、類型ごとに主観的な目的を加えて処罰範囲を絞っており、形態模倣については先行者の成果にただ乗りして利益を上げるという行為の本質に合わせて、不正の利益を得る目的だけを要件にした。他人に損害を加える目的が要件に入るのは、営業秘密侵害罪(21条1項)や技術的制限手段の罪(同条3項4号)のように、不正の利益を得る目的又は保有者等に損害を加える目的と並記された類型である。乙に不正の利益を得る目的があれば甲に損害を加える目的がなくても処罰される。したがって処罰を甲に損害を加える目的で販売したときに限るとする枝は、目的要件を別の類型のものと取り違えている。

不正の利益を得る目的で第二条第一項第三号に掲げる不正競争を行ったとき。
| 号 | 対象の不正競争 | 目的要件 |
|---|---|---|
| 1号 | 周知表示混同惹起(1号)・誤認惹起(20号) | 不正の目的 |
| 2号 | 著名表示冒用(2号) | 信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的、又は信用若しくは名声を害する目的 |
| 3号 | 商品形態模倣(3号) | 不正の利益を得る目的 |
| 4号 | 技術的制限手段(17号・18号) | 不正の利益を得る目的、又は技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的 |
| 5号 | 原産地・品質等の虚偽の表示 | 目的を問わない |